―温―
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#296 [向日葵]
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とは言ったものの……。
昼間に外へ出るのはホント久しぶり。
出たとしても敷地内だから大して気にならなかった。
みんなの視線が、私の治りかけた傷に張ってあるガーゼや包帯へ行くのが分かる。
じろじろうっとおしい……。
見る人を軽く睨むとすぐに目をそらした。
野次馬根性だけはあるらしい。
:07/09/10 02:48 :SO903i :9xBi8V7I
#297 [向日葵]
無視する事は出来なかったけど、なるべく気にしないようにしてケーキ屋さんまで歩いて行った。
ケーキ屋さんに着くと、色鮮やかなケーキが沢山あった。
静流はイチゴのホールでいいんだろうか。
「いらっしゃいませ。お決まりでしょうか?」
店員が話かけたので、15センチのイチゴのホールを指さした。
「これ……一つ。」
「ハイ。メッセージはいれられますか?」
:07/09/10 02:52 :SO903i :9xBi8V7I
#298 [向日葵]
「あー入れて下さい。」
え?と思い、後ろを振り向くと
「香月さん。」
「よ!あ、お姉さん!メッセージは『静流君お誕生日おめでとう』で。あと、語尾にハート入れといて!」
店員は香月さんの注文を承ると、「少々お待ちください」と言って店の奥へと入って行った。
「……。」
あれ?静流がいない。
と私の視線でわかったのか、香月さんはニッと笑うと少し屈んで私と目線を合わせた。
:07/09/10 02:56 :SO903i :9xBi8V7I
#299 [向日葵]
「静流なら一緒じゃないよ。俺じゃ不満?」
「別になんとも思ってないから。」
すると店員が奥から現れてろうそくをどうするか聞いてきた。
私が答える前に香月さんが「十本入りを三袋下さい」と答えた。
何故三十歳に……?
そして綺麗に飾られた箱を持って、私はケーキ屋さんを後にした。
「あ、持ってあげる。それと、君はこっちに来な。」
箱を奪われ、私は道路じゃない方を歩かされた。
:07/09/10 03:01 :SO903i :9xBi8V7I
#300 [向日葵]
「別に子供じゃないんだからいいわよ。」
すると香月さんは眉を寄せて私を見てきた。
「子供?別にそんな扱いしたことないけど?」
「嘘よ。静流はするし。」
香月さんは立ち止まるとまた私と目線を合わせた。
しかも距離が近い。
「近いん……だけど。」
「あのさぁ。俺は静流じゃない訳。だから静流と一緒にしないでくれる?」
だから何だ。
私は近寄って来ないよう手を上げて香月さんの前に軽く出した。
:07/09/10 03:05 :SO903i :9xBi8V7I
#301 [向日葵]
「じゃあ貴方は私を何だと思ってるの?」
呆れ混じりに聞くと、香月さんはキョトンとした顔をした。
そしてフッと笑う。
「決まってんでしょ?女の子。だから荷物は持つし、道路側には歩かせない。鉄則じゃね?」
今度は私がキョトンとしてしまった。
初めて女の子扱いされた。
香月さんは私の頭を撫でるとまた進み始めた。
その横で女の子扱いされた私は、少し戸惑っけど、嬉しかった。
:07/09/10 03:09 :SO903i :9xBi8V7I
#302 [向日葵]
↑訂正
戸惑っけど×
戸惑ったけど○
――――――――――――
「……そういえば、静流どうしたの?」
「んー……。ケーキ投げないって誓える?」
「は?」
少しイラついて、逆に今投げてしまいそうだ。
「どうでもいいから早く教えて。」
もう家が見えた。
もしかしたら家にいるのかしら。
:07/09/10 03:13 :SO903i :9xBi8V7I
#303 [向日葵]
香月さんは私が誓うまで教えてくれないらしい。
にこにこしたまま私の言葉を待っている。
叫びたくなる衝動をぐっと堪えて私は呟いた。
「……誓う。」
香月さんはにこーっと笑うと門前で足を止めて私に向き直った。
「双葉ちゃんと二人で誕生日会やるってさ。今日は帰って来ないかもよ?」
その瞬間、誓ったのに私は香月さんが持っているケーキを持って投げつけようとしてしまった。……がそれは阻止された。
:07/09/10 03:18 :SO903i :9xBi8V7I
#304 [向日葵]
香月さんは胸元に私を引き寄せてケーキは片手で私の手が届かない位まで上げた。
香月さんは余裕の笑みで私に笑ってくる。
「誓ったよね?」
「―――!!」
端から見れば抱き合ってるように見えるのに気づいた私は直ぐ様離れた。
すると香月さんがクスクス笑う。
「顔赤いし……。」
「な……っ!」
図星だった。静流以外の男に抱き締められたのは初めてだったから、内心恥ずかしかった。
:07/09/10 03:22 :SO903i :9xBi8V7I
#305 [向日葵]
「ねぇ、教えてあげた代わりになんか俺に権利くれない?」
私は赤い顔を直す為、密かに静かに深呼吸して香月さんん見た。
「権利?」
こっちが聞き直してるって言うのに、香月さんは話を進めていた。
「そうだな……。紅葉ちゃんにくっつける権利は?」
「は?何それ。」
人差し指を立てながら香月さんは私の目の前までずいっと寄って来た。
とっさで逃げられなかった私はその場で固まる。
:07/09/10 03:26 :SO903i :9xBi8V7I
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