―温―
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#371 [向日葵]
「電話……終わった?」
苦笑気味に静流が聞いてくる。
私は何も言わず、ただ静流を見ていた。
一体、この人は私をどう見てるんだろう。
……決まってるか。
子供、もしくはそれに似たものだな。
ペットかもしれない。
「静流。」
「ん?何?」
「……。香月さんってどんな人?」
静流の表情が、何故か硬くなった。
なんだか少し悲しそうにも見える。
:07/09/16 02:13 :SO903i :2t8n8oBQ
#372 [向日葵]
「いい……奴だよ。」
「そーよね。……それなら、問題はないわよね。」
私は子機を置きにリビングへ戻った。
振り向くとすぐそこに静流がいた。
少し不機嫌気味に聞いてみる。
「何?」
「香月が好きなのか?」
……。だったら?
って言っても、その予想は外れているけれど。
好きな人はアンタだって言ったら静流どうするんだろ。
:07/09/16 02:16 :SO903i :2t8n8oBQ
#373 [向日葵]
そんな事、言うのは許されないけど。
「そうだとしても、静流には関係ないでしょ。」
冷たくあしらって、静流の横を通りまたベランダへ出ようとしたら、手を掴まれた。
――ドキ……。
「関係……無いけど。」
静流の顔がうつ向いてて、何か言ったみたいだけどあまり聞こえない。
「ねぇ何?」
静流は無言になる。
ちょっとイライラしてきた。
:07/09/16 02:20 :SO903i :2t8n8oBQ
#374 [向日葵]
「ちょっと!用がないなら離して!ってか約束と違」
「関係無いけど嫌なんだっ!!」
いきなり大きな声を出されて身がビクッとすくんだ。
ようやく上げられた静流の目はとても熱くて、私を射抜く。
まるでこの前ぬいぐるみの山から抱き上げられた時みたいに。
血がドクドクいって全身を駆け巡るのが分かる。
体が、静流の全てに反応してる。
「香月は友達だし……お前にも、幸せになってもらいたい。俺だって双葉がいることくらい分かってる……。」
:07/09/16 02:25 :SO903i :2t8n8oBQ
#375 [向日葵]
一部の言葉に胸がチクリとした。
静流の熱い視線はそのままだけど、悲しそうに、苦しそうに顔は歪む。
「――――分かってるけど……。……お前には、ずっと近くでいて欲しいんだ……。」
胸が震える。
どうしてそんな事言うの……?
「おかしいよ静流……。その言葉……間違ってる。」
だって、それは大切な人に向ける言葉じゃないの……?
「分かってるよ。自分がこの頃おかしいことくらいな。」
:07/09/16 02:29 :SO903i :2t8n8oBQ
#376 [向日葵]
間違ってる。
でも私は今、とても嬉しい。
静流の気持ちが分からなくて、何故ぶたれるのかとか、怒ってるかとか……意味もない行動を取られるよりも……何よりも……。
でも、好きとは違うんだよね……。
「静流。知ってる?」
「何……が?」
掴まれている手首をやんわり外しながら、私は続けた。
「静流が私に構いすぎたら、彼女さんが傷つくの。ううん違う。もう傷ついてる。」
静流の熱い瞳は途絶え、彼女を思う愛しい気持ちが瞳に映る。
:07/09/16 02:34 :SO903i :2t8n8oBQ
#377 [向日葵]
そう……。
これでいい。
これで……。
「私は、言ってみれば赤の他人なの。私より香月さん。香月さんより彼女さんを大事にしてあげなさいよ。」
あぁ……。涙出そう。
昨日のケーキ食べてた時みたい。
すっごい惨め。
すっごい虚しい。
「だから、そんな言葉、私に言ってはダメ。言う相手間違ってんじゃないわよ。」
間違ってほしくなんかなかった。
:07/09/16 02:37 :SO903i :2t8n8oBQ
#378 [向日葵]
その言葉は、私だけに欲しかった。
分かってる。分かってるよ!何度も繰り返した。
私は静流と幸せになってはいけない。
なれっこない。
私のせいで、彼女さんの幸せを取っては駄目。
頭の…心の隅に……ちゃんと刻んで、覚えてる。
でも欲深なの。
幸せの味を覚えてしまえばしまうほど。
もっと――――
もっと……って――――
心が叫ぶのが分かる。
胸が軋むのが分かる。
:07/09/16 02:42 :SO903i :2t8n8oBQ
#379 [向日葵]
ほら……。
笑え……。
「ね?分かった?」
笑えてる?静流。
久々に笑顔を見せれた。
久々すぎて、おかしな事になってないかな?
静流は何度も私の闇を拭いさってくれた。
だからせめて……静流には幸せになってほしいから……。
私は、例え苦しんでくじけそうになっても、いくらでも我慢出来る。
いつまで頑張って笑顔を作ればいいんだろう。
静流の反応が気になる。
:07/09/16 02:46 :SO903i :2t8n8oBQ
#380 [向日葵]
静流を見れば、静流の顔がまるでどこか痛いかのように泣きそうな顔をしていた。
あの、彼女さんを思う愛しい気持ちは消えている。
静流は一歩一歩よろよろと近づいてくる。
そして……そっと大きな手で私の顔を包んだ。
息を飲んで、大きく目を開いた。
顔に熱が集まる。
「初めてだ。……紅葉が笑うの。」
まだ悲しそうな顔で私を見つめながら、静流は力無く微笑む。
:07/09/16 02:51 :SO903i :2t8n8oBQ
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