―温―
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#252 [向日葵]
壁に体を預けてフワフワした足取りで進む。
キッチンまで来てコップを持つものの、どこかにつかまってないと平行感覚を見失いそうだった。
とりあえずなんとか水をくんでから一気に飲み干す。
少しだけ意識がはっきりした気がした。
でも体力を全部使ったせいで着替える元気がなかった。
……せめて涼しい場所…。
フラフラしながらベランダの戸を開ける。
涼しげな風が入って来たところで、世界が真っ暗になった……。
:07/09/05 22:50
:SO903i
:uTSNz6sY
#253 [向日葵]
―――――――
――――――――……
「――……。」
何?
「…………っ!」
誰か叫んでる。
「紅葉!」
静流?
うっすら目を開けると、文字通り目の前に静流の顔があって、一瞬息が止まった。
「お前こんな所で何寝てんだよ!」
「叫ばないで……頭に響く……。」
:07/09/05 22:54
:SO903i
:uTSNz6sY
#254 [向日葵]
頭を抑えながら起き上がると、綺麗な声が聞こえた。
「こんにちは。」
紛れもなく彼女さんだった。綺麗な声に綺麗な顔。
非の打ち所が無いとはこの人みたいな人の事なんだろうな。
「紅葉ちゃん熱引いたの?」
自分の手でおでこに手をやり調べてみるけど全然分からなかった。
「多分……まだ。」
短く返すと、彼女さんはにーっこり笑った。
どうやら私が返事をしてくれた事が嬉しかったらしい。
:07/09/05 22:58
:SO903i
:uTSNz6sY
#255 [向日葵]
その笑顔と、夢の中のでの無表情な顔が重なる。
あれは夢……。
現実じゃない。
頭では分かっていても少し身震いした。
「なんか食べたい物ある?私用意するから!」
「いいって!双葉は何もしなくて。」
二人はキッチンへと行った。
仲良さそうに言い合いをしながらキッチンで何かを用意している。
「……。」
服の裾を掴む手に力が入った。
慣れろ。
:07/09/05 23:02
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#256 [向日葵]
これが、当たり前。
これが、普通。
私は二人に危害を与える事は出来ない。
……ううん。しない。
バレない様に立ち上がり、部屋へ向かった。
意外にも汗を沢山かいたせいか、少しだけ体が軽くなっていた。
布団に入って、ぐちゃぐちゃ考える前に寝る事に専念した。
でもすぐに寝つけるものでもなかった。
それでも目をギュッと瞑って、夢への扉を探した。
すると
カチャ……
:07/09/05 23:06
:SO903i
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#257 [向日葵]
部屋のドアが開いた。
静流?
それとも彼女さん?
「紅葉……?」
それは静流の声だった。
今私の格好は、静流に背を向ける形で寝ている。
ギシギシと私に近づく足音。
今は話す気分じゃなかったので私は寝たフリをした。
静流はそれに気づいてない。
小さく「よいしょ。」と聞こえたと思うと、静流が私の近くに座った。
:07/09/05 23:10
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:uTSNz6sY
#258 [向日葵]
何か用なのだろうか神経を研ぎ澄ませながら目を瞑り続けた。
次の瞬間、私は目を開きそうになった。
優しく、柔らかく、静流の手が私の頭を撫でている。
それだけで心臓が縮まる感じがしたし、キュウゥっと音が聞こえる気がした。
やめて……。そんな事、彼女がいる今、やらないで……。
手から逃れたくて、寝返りをうつフリをして静流から遠ざかっても、手はしばらくするとついて来てまた私の頭を撫でた。
:07/09/05 23:15
:SO903i
:uTSNz6sY
#259 [向日葵]
静流……。
アンタは私をどう言う風に見てるの?
その問いに答えてくれる人なんていなかった。
コンコン
「静流?お粥作ったんだけど……寝ちゃってるみたいね。」
静かに話す彼女さん。
どうやら私に食事を作ってくれたらしい。
私は耳だけを二人に向ける。
「ありがとな。双葉も座りなよ。」
「うん。でも、良かった。大した事無さそうど。」
「ウン。」
:07/09/05 23:19
:SO903i
:uTSNz6sY
#260 [向日葵]
少し床が軋み、服が擦れる音が聞こえる。
「……静流?どうかした?」
「ん?ちょっと抱きつきたくなって。」
「フフフ……変なの……。」
やめてよ。わざわざ私の寝てる近くでそんな事しないでよ……っ。
耳だけが、二人が何をしているか分かる手がかり。
その耳を塞ぎたくなった。
しばらく沈黙が続いていた。
何故だか分からなかったけど、次に聞こえてきたのは「チュッ」と言う何かを吸え様な音。
:07/09/05 23:24
:SO903i
:uTSNz6sY
#261 [向日葵]
思わず目を開いた。
今後ろで、二人がキスをしている。
その真実が頭を鋭く突き抜けた。
熱のせいじゃないのになんだかクラクラした。
そして、涙が流れた。
知ってる。分かってる。
でも繰り返さないで。
――私が二人の仲を引き裂く権利なんてない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
長い地獄の時間が過ぎて、ようやく彼女さんが帰った。
静流が彼女さんを送り出すのに部屋を出たのを見計らって、私は一階に掛布団だけを持って降りた。
:07/09/05 23:28
:SO903i
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