―温―
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#326 [向日葵]
泣いてもわめいても、止むことのなかった母さんの手。
だから私は、涙を流すのを止めた。
なのに……
ここへ来てから、温かさとか、好きな人への恋しさとか、色々知っちゃったから……。
また涙を流す事を思い出してしまった。
「う……っ。んぐんぐ……っ。はぁっ……。うぅぅっっ……。」
私は少し手を止めて、ケーキを掴んでいなかった方の手で目を拭った。
:07/09/13 02:02 :SO903i :i0NKXNbs
#327 [向日葵]
ケーキは綺麗に、そして皮肉にも、メッセージの「静流」の部分だけが残っていた。
―――――――……
「―――……?」
目を開けると、目を瞑ってた時と変わらなかった。
真っ暗。
雨なので月の光すらない。
どうやら知らずの間に寝ていたらしい。
手には生クリーム。
少し起きればケーキの残骸が見えた。
とりあえず今は食べる気になれないので手を洗った。
:07/09/13 02:07 :SO903i :i0NKXNbs
#328 [向日葵]
今何時だろう……。
目をこらすも暗くて見えない。
まぁ別にいいだろう。
朝になれば、少しは明るくなるだろうし……。
ベランダの戸を開けた。
湿気が体にまとわりつく。
今、私が前みたいに消えたら、それでも静流は探してくれるのかな……。
ねぇ静流。私、静流と両想いになる事望んでるけど望んでない。
それでも、私が貴方に好きと言ったら、貴方はどうする?
:07/09/13 02:11 :SO903i :i0NKXNbs
#329 [向日葵]
でもきっと……貴方は彼女がいるからと、断るんだろうね。
苦笑しながら、雨空を見上げた。
すると
キンコーン
私は目を見開く。
うそ……っ。もしかして……。
足が勝手に玄関へ走り出す。
静流……。
静流!
バン!!
「わ!びっくりしたぁ!!」
:07/09/13 02:15 :SO903i :i0NKXNbs
#330 [向日葵]
「香月……さん。」
そこには傘を畳みながら立っている香月さんがいた。
あまりの自分の体の反応に、笑えた。
「?何かおかしかった?」
「何しに来たの?……あぁ。馬鹿にしに?フラレてやんのー!って?」
イライラしながら叫んで私はリビングへと帰ろうとした。
しかし
香月さんに腕を掴まれてしまった。
:07/09/13 02:19 :SO903i :i0NKXNbs
#331 [向日葵]
私はそのまま固まる。
玄関のドアを開けたままなので雨の音が大きく聞こえる。
それに重なって、香月さんの声が聞こえた。
「泣いてるかな……って。心配だったんだ。」
息を飲んだ。
でも弱いとこ見られたくなくて、何もない風に振る舞いながら香月さんを振り返る。
「何で?誰の為に?何のメリットがあって?」
香月さんを馬鹿にするように嘲笑いながら言っても、香月さんに通用しなかった。
:07/09/13 02:23 :SO903i :i0NKXNbs
#332 [向日葵]
それどころか、怒った様な、悲しそうな顔をして私を自分の近くまで引っ張った。
そして指先で目元をなぞる。
思わずビクッとして目を軽く見開いた。
「じゃあなんで目、赤いの?」
「――――!!」
言葉を考えてる余裕なんかなかった。
言い返すにふさわしい言葉が見当たらなかった。
それに、今の状況……。
「……っ。」
:07/09/13 02:28 :SO903i :i0NKXNbs
#333 [向日葵]
香月さんは自分の胸元に私ね顔を押し付け、抱き締めた。
私は何が怒ってるのか全然分からなくって、息が止まった。
「言ったでしょ。胸貸すって。」
それだけ言うと、更に私をキツク抱き締めた。
昼間の様なふざけた抱き締め方じゃない。
好きな人が傷つかないように、優しく、愛しく……。
私が……ずっと求めていたもの……。
:07/09/13 02:32 :SO903i :i0NKXNbs
#334 [向日葵]
――――
――――
今日はここまでにします
:07/09/13 02:33 :SO903i :i0NKXNbs
#335 [向日葵]
―拭―
香月さんの体温は暖かくて、すごく安心した。
確かに、私が欲しかった物をくれた。
でも欲しいのは、香月さんからじゃないの……。
玄関を見れば、既に九時を回っていた。
:07/09/14 02:10 :SO903i :Bf6JTbxA
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