―温―
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#356 [向日葵]
「殴れば済むと思ってんの?」

そこで静流はハッとして、振り上げたまま静止した。

どいつもこいつも気に入らない事があればすぐに暴力なのね。
静流も最近おかしい。
まるで監視されてるみたいでイラつく。

「殴りなさいよ。それで気が済むんでしょ。何度でも殴りなさいよ。そしてまたゴミ捨て場に捨てればいいじゃない。」

静流は目を凍らせたまま右手をゆっくり下ろした。
今度は私が冷たい目で静流を見ている。

⏰:07/09/14 11:16 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#357 [向日葵]
香月さんは初めて聞く私のエピソードに驚いて私を見下ろしていた。

「ごめん……紅葉。」

叩いた方の頬を撫でようとした手を私は乱暴に振り払った。

「お風呂入ってもないのに触らないで。それ以前に、私には当分触れないで。」

そう言ってから久々にベランダへ出て、ピシャリと戸を閉めた。

静流は……何も分かってない。

********************

俺は後悔していた。

⏰:07/09/14 11:21 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#358 [向日葵]
暴力に敏感になってる紅葉に手を上げるなんて、出ていけって言った時と同じくらいしてはいけない事なのに…………。

叩いた右手をギュッと握りしめた。

「なぁ静流……。」

「ん?何?」

香月は紅葉の背中を指差しながら俺に聞いてきた。

「ゴミ捨て場って……。」

「ウン。……本当なんだ。」

香月は紅葉を見つめながら「そっか……。」と呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

香月も帰り、家には俺と紅葉だけになった。

⏰:07/09/14 11:26 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#359 [向日葵]
相変わらず紅葉は飽きもせずにベランダにいて、空を見上げている。

「当分触るな宣言」をされていたけど、このままじゃいけないと思ってベランダに近づいた。

放っておくと、雨と一緒に紅葉がどこか行ってしまう気がして……。

紅葉の丁度後ろに座って、ガラス越しに背中に触れる。

「く……紅葉……。」

囁きは聞こえない。

「紅葉っ。」

声を大きめに名前を呼ぶと、聞こえたのか少し身じろぎした。

⏰:07/09/14 11:31 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#360 [向日葵]
戸をゆっくりと開ける。

「なぁ……紅葉。中に入れよ。」

その言葉を紅葉はことごとく無視した。
雨がまた少し強まって降っているのに気づく。

「な?ガーゼも貼り直さなきゃいけないだろ?」

俺は紅葉のすぐ側で膝まずいた。

********************

来ないでよ。
何で放っておいてくれないの。

予想通りだ。
やっぱり静流は帰って来たら優しくそう言うんだ。

⏰:07/09/14 11:37 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#361 [向日葵]
私は首を傾けて膝にフッつぶした。
静流の方は見ないようにして。

「紅葉。ごめんって。」

「そんな安っぽく謝らないで。」

機嫌をとるだけの言葉なんていらない。
でもだからって謝って欲しい訳でもない。

静流に、思い知らしてやりたい。
さっきの行動が、私をどれだけ傷つけたか。

「じゃあ……どうやったら、許してくれる?」

そこで頭を上げて静流を見た。

⏰:07/09/14 11:42 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#362 [向日葵]
静流はぎこちなく微笑む。
でもそんなの今の私にはイラつきの対象の他何でもなかった。

「言った筈よ。私に当分触れないでって。心の中まで触れてくんなって事。……いい?」

静流は傷ついた顔をして私を見つめる。

「紅葉、あの……。」

伸ばしてきた手をまた私は払うんじゃなく叩き落とした。

「日本語が通じるなら早くあっちへ行って。」

静流はゆっくりと立ち上がってベランダを後にした。

⏰:07/09/14 11:49 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#363 [向日葵]
もういい。

私は何なの?
どうしてこんな扱いを?

これは罰?
幸せになろうとしている神様からの罰なの?

……ならば、私は受けるしかないのかもしれない。

少し身動きすると、クシャッと何か紙のような音がした。
ポケットに何か入ってる。
探ると小さな紙切れ。

「香月さんの……。」

そう。あのケー番が書かれた紙。

⏰:07/09/16 01:34 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#364 [向日葵]
お風呂に入った後、洗濯しちゃう服から抜き取って今の服のポケットに入れたのを忘れていた。

そういえば、いつの間にか香月さんがいなくなってる。
少し助けて貰ったのに、お礼言えなかった。

「…………。」

私は立ち上がって、リビングへ入った。
リビングにある電話の子機を持って、下へ降りようと階段へ向かった。

リビングだともし静流が来たら嫌だからだ。

「えっと……090の……。」

⏰:07/09/16 01:39 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#365 [向日葵]
ボタンを押しながら階下へ向かおうとすると、後ろで部屋のドアが開いた。

「紅葉?……あの、どうかした?」

「……。6739と。」

無視してボタンを押し終える。
耳に当てるとプルルルと呼び出し音が鳴っていた。

ガチャ

{ハイ。}

「もしもし。紅葉です。香月さん。」

*******************

「もしもし。紅葉です。香月さん。」

俺は耳を疑った。

⏰:07/09/16 01:44 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


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