―温―
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#451 [向日葵]
「気をつけなよ。」

時が穏やかに流れる。

やっぱり私は……香月さんを選ぶべきなのかな……。

カシャン

「ただいま。」

門を開いて、静流が帰ってきた。
世界がまた一変。
何故かピリピリしてる感じがした。

「来てたのか。香月…。」

「あぁ。紅葉に会いになっ。」

⏰:07/09/19 02:55 📱:SO903i 🆔:1oBm0ns6


#452 [向日葵]
更にピリピリ度が増した。

え?何?
この二人ケンカでもしてる訳?

「ちょっと来いよ香月。」

「お?告白かぁ?」

と、ふざけ合ってるようでどこか間合いを取ってる二人は家へと入って行った。
*******************

パタン。

香月を連れ、玄関に入る。階段を上がって、俺らは部屋に入った。

⏰:07/09/19 02:58 📱:SO903i 🆔:1oBm0ns6


#453 [向日葵]
「なんだよ。俺犯されるとか?」

「なぁ香月。」

俺は香月に向き直る。

「俺はやっぱり、双葉が大事だ。紅葉は……違う。」

香月のふざけムードが一気に消える。
「ふぅーん」と言いながら、俺に歩み寄ってきた。
そして目の前でピタッと止まる。

「だったら闘争心むき出しにしてんじゃねぇよ。」

俺は眉を寄せて香月を見つめる。

「その言葉……忘れんなよ。」

⏰:07/09/19 03:10 📱:SO903i 🆔:1oBm0ns6


#454 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/19 03:10 📱:SO903i 🆔:1oBm0ns6


#455 [向日葵]
*********************

花壇の水やりを終えた私はリビングに戻っていた。
さっきは花を潤したけど、今度は私の喉を潤したくて水を一杯ゴクゴクと飲んだ。

それにしても、あの二人の険悪なムードは何なんだろうか。

ケンカであるなら早く仲直りするといいんだけど。

といらん心配をしていると、静流の部屋のドアがガチャリと開いた。

あ、部屋にいたのかとイスに座りながら思った。

リビングに顔を出した静流は何だか落ち込んでいた。だから思わず声をかけてしまった。

「そんなにヒドイケンカなの?」

⏰:07/09/21 01:56 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#456 [向日葵]
静流はハッとして私を見ると、苦笑を浮かべながらキッチンへ行って冷蔵庫を開けた。

「ケンカでは……ないんだよなぁー…。」

「ふぅん……?」

冷やした麦茶をコップに注ぎながらも静流は何だか上の空で私の方をぼーっと見ていた。

私は周りに何かあるのかと思い辺りを見回すが、静流の目当ての物と思う物は見当たらなかった。

「なぁ紅葉……。」

「うん?」

「好きって何だと思う?」

――ゴインッ!!

⏰:07/09/21 02:01 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#457 [向日葵]
頭をもろにテーブルにぶつけてしまった。

とうとう静流の頭がおかしくなったんだろうか……。

「彼女いるくせにそんなのもわからないの?」

「うん……。ちょっとさ、今混乱してて……。」

だからって……。
アンタを好きな私に聞くのはそれはなんか……酷じゃないかしら?

「香月さん来てるなら香月さんに聞いてみなさいよ。」

「アイツはお前が好きなんだぞ!」

「――――は?」

キャッチボールが出来てない……。
そして何が言いたいのかも分からない。
ってかなんで静流そんな事知ってんの。

⏰:07/09/21 02:06 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#458 [向日葵]
「なら尚更聞けばいいじゃない。」

「え?……あぁ。そっか。」

あー駄目だ。
私の頭上に今めちゃくちゃハテナが乱舞してる。

何このぐだぐだトーク……。

私がいぶかしんだ顔をしていると、静流はくんでいた麦茶を一気に飲み干す。

「俺さ……。双葉が大事なんだ。」

「……?」

ここで普通は胸が痛む筈……なんだけど、その言葉はまるで自分に言い聞かせてるみたいだった。

⏰:07/09/21 02:10 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#459 [向日葵]
「何?ノロケ?」

「そうじゃなくて……さ。」

静流はキッチンから私の前のイスまで早歩きしてきて座った。
少しテーブルに身を乗り出して、やや興奮気味にまた話だす。

「大事なのに……、他の奴が気になりって……。どういうことだと思う?」

うわぁ。
まさかの好きな人もう一人いる発言。

私双葉さんだけじゃなくてその人に対しても色々堪えなきゃならないの?

⏰:07/09/21 02:15 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#460 [向日葵]
「その人は……どんな人なの?」

半ば投げやりに聞くと、会話が途切れた。

どうしたものかと、呆れてそらしていた視線を静流に戻すと……

――ドクン……

え……?

静流の目が、まっすぐ私を捕えていた。
それも熱く、潤んだ瞳で……。

勘違いしてしまう……。
私の訳がない。
きっと私に似た誰かなのだろう。

……でも。

「どんな……人……?」

⏰:07/09/21 02:19 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#461 [向日葵]
静流は視線をそのままに、テーブルに頬杖をついてまた話だした。

「危なっかしくて……目が離せない子だよ。」

それを聞いて、私は静流の視線を下を向いて遮る。

私じゃないみたい……。
私そんなドジじゃないし。

「好きって自覚はあるの?」

「いや?その子は妹みたいな存在だから……。」

私の頭の引き出しが整理を始める。

まず、静流には彼女である双葉さんがいる。

⏰:07/09/21 02:24 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#462 [向日葵]
しかし最近出来た気になる人は妹みたいな存在の危なっかい子だ。
しかしそれは未だ恋かどうかは定かではない。

「じゃあやっぱり恋じゃないんじゃない?」

「……うん。俺もそう思いたい。双葉……傷つけたくないし。」

私はため息をついた。

双葉さんは静流が私を気に入ってるなんてよく言えたもんだよ。
静流の頭の中は、双葉さんでいっぱいだ……。

「あ!紅葉!」

「え?」

⏰:07/09/21 02:27 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#463 [向日葵]
「デートしないか?!」

――――……

{ダブルデートォ?!}

受話器から香月さんの声が響く。

只今香月さんと携帯でおしゃべり中なのだ。

「双葉さんが提案者らしいです。」

{めんどくさっ!そんなん言わばアイツらのお守りじゃん。}

そこまで手はかからないと思うけど。

静流は不安且つまだOKもしていない楽しみでありそうな双葉さんを見てどうしても断れなかったらしい。

⏰:07/09/21 02:32 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#464 [向日葵]
はっきし言ってやった。

「知るか。」

と。

{ってかさ、紅葉ちゃんは大丈夫なの?今以上のラブラブな二人を見る事になるよ?}

「途中から別行動すりゃあいいんです。」

じゃないとやってられない。
それでなくても家に来る度胸が痛くて息も出来ないくらいなのに……。

それがデートとなれば、定番であるUFOキャッチャー、プリクラはもちろんの事ボーリングに行けばハイタッチ。服を見れば双葉さんが似合いの服を静流に探すだろう。

⏰:07/09/21 02:37 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#465 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/21 02:37 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#466 [向日葵]
{そっか。分かった。じゃあ今度の日曜楽しみにしてる。}

「楽しみ……なの?」

{うん!楽しみ!じゃあまたね。}

何故楽しみなのか聞く前に電話は切られてしまった。

私もそろそろお風呂に入らなければ。
この頃傷が治ってきたのか、傷口が痒い。
だから早くお風呂に入って綺麗にしたい。

「紅葉。風呂入れよ。」

「今から入るとこ。いちいち言わないで。」

⏰:07/09/21 15:21 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#467 [向日葵]
横を通りすぎようとすると、静流は私の腕を掴んだ。
止められた私は静流を眉を寄せて「なんだ。」と言う風に見た。

静流は口を開けては閉めを繰り返して、中々言葉を出してこない。

痺をきらした私は腕を掴む手を振り払った。

「もーっ!何っ?!」

「……ごめん。何でもない。」

そう言って部屋に戻ってしまった。

********************

部屋に戻って、風呂上がりでびちゃびちゃの髪の毛をバスタオルで拭いた。

⏰:07/09/21 15:31 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#468 [向日葵]
ベッドに座り、今日一日を振り返る。

香月とはこじれるし……。訳の分からない気持ちにはイライラするし。

ってか気になる相手が紅葉だって事を本人が気づいてない。
いや、気づかなくていいけど。

今度の日曜で、俺の今のイライラを打ちきる。

俺は双葉を大切にする……。

双葉を悲しませたりは、決してしない……。

*********************

―――――……

そして日曜がやって来た。
暑い日差しの元で、長い時間歩いてられるかが心配だ。

⏰:07/09/21 15:41 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#469 [向日葵]
なんせ久々の遠出。
それに加えあちこち歩き回る。
私の足と体力はもつだろうか。

待ち合わせの場所で、香月さんと双葉さんを待つ。

「なんか心配?」

「体力には自信が無いの。分かってるでしょ?引きこもり生活が長いの。」

「心配しなくて倒れたら家までちゃんと運ぶから。」

「じゃあそうならない様にするわ。」

じゃないとまた双葉さんが悲しむし。

⏰:07/09/21 15:49 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#470 [向日葵]
結局私は、幸せになんかなれないのね。

「お待たせー!静流、紅葉ちゃん!」

「ちょっと手間取ったぁ〜!」

双葉さんと香月さんが一緒に来た。
双葉さんは真っ先に静流の元へ。
見せつける(私にはそう見えた。)様に静流の腕に抱きついた。

私は少しずつ後退して行くと、後ろから肩を静かに掴まれた。

振り返れば、そこに香月さんがいた。

そうだ……。
こういう場面。今日は一日ずっと見なくちゃいけないんだった。

そな覚悟を、もう一度しておくの、忘れてた。

⏰:07/09/21 16:04 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#471 [向日葵]
まだショック状態の私の手を、香月さんは握り締めて歩きだした。
足は、まだ思考についていってくれなくて、おぼつかない。

「昨日はよく寝れた?」

視線を向けると、香月さんは微笑んで私を見ていた。

静流達は後ろにいるらしい。

「普通。私はどっちかって言うと夜行性だから。夜はあまり寝たくないの。」

「へー。じゃあいつ寝るの?」

「……。あまり眠る事は……好きじゃない。」

⏰:07/09/21 16:18 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#472 [向日葵]
今だから、食事同様マシになった。

それでも、やっぱり夜は寝たくない。
これはクセ。

まだ、母さんからの暴力に堪えてた頃。

母さんが私を殴るのが飽きて寝静まった夜が、何より私の救いの時間だった。

寝てしまったら、また朝が来て、殴られる一日が始まる。
だから、私は救いの時間を貪る様に味わう。

単に言えば、眠るのが恐いのだ……。

まだ治りきっていない、腕のいくつかの痣を見つめ、思い返していた。

⏰:07/09/21 16:22 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#473 [向日葵]
「夜は……安らぐ。」

「……そっか。」

香月さんはそれ以上は聞いてこなかった。
私の雰囲気で読めたらしい。

「じゃあまた眠れなかったらさ、夜中に電話でもメールでもしといでよ。」

私は香月さんを見上げた。
香月さんはにこりと笑う。

「……ありがとう。」

上手く笑う事が出来ない分、精一杯思いを込めたありがとうを伝えた。

⏰:07/09/22 02:25 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#474 [向日葵]
香月さんも分かったのか、「うん。」と頷いて別の話題を話始めた。

*********************

「静流。どこ行こっか!」

「んー…?……どこでも。」

「……。」

するりと双葉の手が俺の腕を離れた。
不思議に思った俺はどうしたのかと思い、双葉を見ると、隣にはいず、いつの間にか立ち止まって少し後ろにいた。

「双葉?」

「……だ。」

「え?」

⏰:07/09/22 02:29 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#475 [向日葵]
聞こえないので聞き返すと、双葉がキッ!と俺を睨んだ。

「最近の静流はなんかやだ!上の空が多いし、私の事、ホントに好きか……分かんないよ……。」

泣き出しそうに話す双葉に気づいた紅葉と香月も立ち止まり、俺を振り返る。

一瞬、紅葉と目が合ったけど、すぐに双葉に目を戻して頭を撫でてやる。

「ゴメン双葉……。最近寝不足だったんだ。だから、調子出なかったって言うか……。」

「……ホントに?」

「うん……。」

⏰:07/09/22 02:33 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#476 [向日葵]
もちろんこんなのは嘘だ。

でも今双葉に真実を言ってしまったら、きっと双葉は傷つく。

それは嫌だ。

*********************

静流と双葉さんのやりとりを見て、なんだかその姿が遠く見えた。

停止してしまいそうな脳を強制的に動かして、私はまた歩き出した。
今度は私が香月さんを引っ張る形で……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やって来たのはCDショップ。
香月さんのお目当ての物が発売と言うことで立ち寄った。

⏰:07/09/22 02:37 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#477 [向日葵]
私達は各々好きなように動き出して店内をうろうろし始めた。

香月さんは目当てのCDを。双葉さんはDVD売り場。
静流は音楽雑誌。
そして私は適当に見て回った。

私はどうも時代の最先端に疎く、こういう音楽でも、どのバンドがメジャーだとか分からない。

適当に試聴でもしてみようと思い、女性アーティストのCDがあるヘッドホンを取った。

スタートを押して流れてきたのは暗めのメロディ。

題名は「恋」だった。
恋なのにメロディこんなに暗くていいのかと内心ツッコミを入れた。

⏰:07/09/22 02:44 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#478 [向日葵]
ダラダラした始まりだったので早送りして、サビ近くまで飛ばした。

ありきたりな歌詞は、なんの感動もなかった。
はっきり言って私はあまり歌詞や詞が好きじゃない。

綺麗ごとを並べてる感じが、とてもイライラした。
「愛してる」だの「君だけ」だの……。
もっと本心を歌え。と心がこうなってしまってから、思うようになってしまった。

やはり、私には音楽が向かないらしい。

短くため息をついて、ヘッドホンを元の場所に置いた。

⏰:07/09/22 02:50 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#479 [向日葵]
「何聞いてたんだ?」

びっくりして声がした方に体ごと向くと、静流が立っていた。

私は指差して聞いてた曲を教えた。

静流はそれを手にとって、「ふぅん。」と言ってから元に戻した。

その間、私は静流から離れた。
それに気づいた静流は私について来た。

とっさに双葉さんがいる位置を確かめた。
遠くにいて、まだ私達が一緒にいることに気づいてない。

⏰:07/09/22 02:54 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#480 [向日葵]
「何か用?」

ついトゲトゲしくなる。

「気に入ったのがあるなら買ってやろうと思って。」

「いらない。私こういうの興味無いから。さっさと双葉さんの元に戻ったら?」

やかましい店内。
明るい曲が店内を包む。
でもここだけ空気がやけに冷たい。

「耳あるの?戻れっつってんの。」

「俺が……。しっかりすればいい事だから。」

「は?」

静流はCDが並ぶ棚から私に体を向けて、また話す。

⏰:07/09/22 02:58 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#481 [向日葵]
「俺がしっかりしてないから双葉が不安になったんだ。例え……不安要素がお前だとしても、俺が」

「私のせいって言いたいの?」

何よ不安要素って……。
そんなに私が邪魔って言いたいの?

静流がしっかりしてないのも私のせい?
私の面倒ばっかりで彼女に手が回らなかったから?

「く、紅葉?」

「自分の失敗を……全部私のせいにしないでよ!!」

私はやかましい店内から、暑苦しい外へと出て行った。

⏰:07/09/22 03:02 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#482 [向日葵]
早歩きで街中を通り過ぎる。
陸橋を渡り、信号を渡り、雑踏をくぐり抜けて……。

なんでアンタ達はそんなバカみたいに笑えるの?

子供は楽よね?
泣けばすぐ助けがくるんだから。

皆……
自分が邪魔だとは思わないの?

私は自分が嫌いで、邪魔で、どうにもならないのがもどかしい。

好きな人の……手伝いすらろくに出来ず、逆に足を引っ張り続ける自分。

⏰:07/09/22 03:07 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#483 [向日葵]
私も笑えば楽しくなる?

――楽しいことなんて何もない。

泣けば誰か助けにくるかな?

――そんなヒーロー存在する訳がない。

「卑屈……。」

自嘲しながら、ひしめくビルの街を頼りなく歩いた。
パシッ!

「!」

「可愛いー!ねぇ一人?」

は?ナンパ?
今時ナンパってあるんだ……。

⏰:07/09/22 03:10 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#484 [向日葵]
肩に置かれた手を振り払って、一睨み。

「ベタベタ触んないで。気持ちの悪い。」

「……んだてオイ!」

今度は胸ぐらを掴まれた。

あー近頃の若者はキレやすい……。
って私もキレたばっかか。
殴るんだ。
私を殴るんだ。
頭の隅で……何か聞こえる……。

―――ヤメテェ!!痛イヨ――!!オ母サン!!

やばいなぁ。足が震えてる。

⏰:07/09/22 03:16 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#485 [向日葵]
バキッ!!

胸ぐらが外れて息が楽になったと思ったら、目の前に

「……香月さん。」

「大丈夫?」

チンピラはいつの間にやら逃げた。
逃げ足だけは早い。

「怪我は?どっか痛む?」

私はストンと座り込んでしまった。
泣きそうになる。
でもこんな人の大勢いる場所で泣きたくなんかない。

⏰:07/09/22 03:19 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#486 [向日葵]
「大……丈夫。」

「ハイ嘘ぉー。ハイおいでー。」

と止める間もなく香月さんは私を引っ張ってどこかに歩いて行く。

着いたのは路地裏。
人通りは無いに等しい。

「歩く……の、早い……。」

少々息切れした。

「アハハ!ゴッメン!」

しばしの沈黙が訪れた。

私は息を整えながらさっきまでの事を思い返していた。

双葉さん企画「ダブルデート」は見事におじゃん。
…いや、香月さんが来たからこれで良かった?

⏰:07/09/22 03:25 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#487 [向日葵]
そして私の性格。

卑屈。短気。生意気。
そして邪魔者……。

「香月さん……。」

「ん……?」

「私……。何しに生まれてきたんだろ……。」

邪魔だから捨てられて、拾われて好きな人が出来て、その人の重荷になって……。

もう……疲れた……。

すると香月さんがゆっくり私に近づいて、優しく私を抱き締めた。

「紅葉。そんなお前見てたら俺……、待てないよ。」

⏰:07/09/22 03:31 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#488 [向日葵]
それから力を入れて、ギュッと私の体を腕で縛る。

「俺と付き合おうよ……。紅葉。」

付き合おう……?
香月さんと……?

付き合ったら……もう邪魔にならないかな。
足引っ張らずにすむかな。

静流の事で、泣かないですむのかな……。

私は香月さんの腕の中でゆっくり頷いた。
香月さんの腕に更に力が加わる。

しばらく抱き締めていた香月さんは、私の体を離した。

⏰:07/09/22 03:34 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#489 [向日葵]
知ってる。

今から何をするか。
何が起こるか。

・・・
あの時は、まだ分からなかったけど……。

香月さんの顔が近づいてくる。
それをぼーって見ていると、香月さんが囁いた。

「目……閉じろよ。」

言われるがままに閉じた瞬間、香月さんの唇が触れた。

でも、驚くことも、鼓動が高鳴ることもない。

それはやっぱり、どんなに辛い目にあったとしても、私の心が静流に向いている証拠なのだった……。

⏰:07/09/22 03:39 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#490 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/22 03:39 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#491 [向日葵]
―醒―











自分の気持ち押し殺すって、以外と難しいことで、息が出来ないくらいに苦しい。

でもそれをも超える想いがもしかしたら存在するのかもしれない。

その僅かな可能性に、私は賭ける事にした。

⏰:07/09/23 00:40 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#492 [向日葵]
今日は中途半端な曇り。
だけど私は外に出かける。

約束があるからだ。

[午後四時半。門前にいてな。]

香月さんからそんな感じのメールが届いた。

私はその通りに動く。
何故なら私は香月さんの彼女だからだ。

カレカノなら、毎日でも会いたくなるのが普通でしょ?
だから私は会いにいく。

例えそれが偽りの気持ちだとしても。

⏰:07/09/23 00:45 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#493 [向日葵]
門前に来て、塀にもたれながら空を見上げた。

きっと私にいつかとてつもない罰が下る。

あんなに優しい香月さんの気持ちを踏みにじって、私は香月さんと付き合う事にした。
香月さんは嫌で仕方ないと思う。

だから私は努力する。
香月さんが好きになれるように。

カシャン

「ただいま。」

ハッとして横を見ると、静流が帰ってきた。

「お……おかえり……。」

「……ん。」

それだけ言って、静流は家に入ってしまった。

静流は何も聞いてこない。

⏰:07/09/23 00:52 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#494 [向日葵]
ダブルデートの日、香月さんと何かあったのかとか。
香月さんと付き合うのかとか……。

*********************

本当は問い正したい気持ちでいっぱいだった。

香月から聞いた時は耳を疑った。
まさか紅葉が香月と付き合うだなんて……。

でも……俺には、関係無いことだから。
俺は……双葉がいるから……。

それでも不思議だった。

もともと紅葉はあまり顔に出ないタイプだけど、好きな人と付き合うって言うのに全然嬉しそうに見えない。

⏰:07/09/23 00:55 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#495 [向日葵]
紅葉は香月が好きなんだろうか……。

ピルルルル!

ビクッ!

携帯だ。
発信者は……

「?もしもし。何で俺に?」

{なんか用事ないとしちゃいけねぇのかよ。}

香月だった。

「そういう訳じゃない。……ただ、紅葉にしないのかと思っただけだ。」

{それについて聞きたいんだ。}

⏰:07/09/23 00:59 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#496 [向日葵]
俺は口を一文字にキュッと縛って香月の言葉を待った。

{最後の忠告だ。俺は確かに紅葉が好きだ。でも、お前は俺と紅葉が付き合って本当に後悔しないのか?}

「……俺は、双葉がいるから……。」

{最近のお前さ、双葉ちゃんを好きって言わないよな。}

――ドクン……

「それが……何だよ。」

{大切だの傷つけたくないだの。お前は今双葉ちゃんを好きなのか?}

⏰:07/09/23 01:03 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#497 [向日葵]
「やめろよっ!!」

家に俺の叫び声が響いた。

やめろ……。
これ以上混乱させないでくれ……。

「お前は念願が叶ったんだから、紅葉と仲良くすればいいだろ……っ!」

目元を片手で覆って、玄関のドアにもたれた。
香月からはまだ返事が来ない。

だってそうだろ?
何でいちいち俺に聞くんだ!俺には双葉って彼女がいて、彼女を幸せにす…………。

待てよ俺……。
今なんて思った?
その言葉の続きは……絶対思っちゃいけないだろ。

⏰:07/09/23 01:07 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#498 [向日葵]
{俺だって……限界があんだよ。}

それだけ言って、香月は電話を切った。

プープーと受話器の向こうになってる音を聞きながら、俺はその場に立ち尽くしていた。

あの言葉の続き……。

彼女を幸せにする……義務がある……と。

義務だなんて、思っちゃいけない。
それはつまり…………双葉が好きじゃなくなったってことだろ?

**********************

携帯のバイブが鳴ったので見てみると、香月さんからメールが入った。

[もうすぐ着くから(^.^)]

⏰:07/09/23 01:12 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#499 [向日葵]
返信をせずに、塀から身を乗り出して遠くを見ると、それらしき人物が見えた。

あちらも私に気づいたのか、軽く走って私の所までやって来た。

「……あれ?」

今日は眼鏡かけてる……。

それに気づいた香月さんは人差し指で眼鏡をトントンと軽く叩いて「あぁコレ?」と言いながら微笑んだ。

「実は目、悪いんだわ。いつもコンタクトなんだけどさ、代えが無くって。だから今日は眼鏡!」

⏰:07/09/23 01:16 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#500 [向日葵]
「似合う?!」って言いながら、黒渕眼鏡をクイッとあげる。

私はコクコクと頷いて肯定した。

すると香月さんが真剣な(顔をしたもんだから、私はドキッとしてしまった。

「無理……してない?」

「え……。」

ザァァァ……と風が吹く。
髪の毛で香月さんの顔が見えなくなるのを防ぐ為に髪の毛を手で抑える。

「静流の事。いいの?」

「……。」

「いいんだよ?フッても。」

⏰:07/09/23 01:21 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


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