―温―
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#471 [向日葵]
まだショック状態の私の手を、香月さんは握り締めて歩きだした。
足は、まだ思考についていってくれなくて、おぼつかない。

「昨日はよく寝れた?」

視線を向けると、香月さんは微笑んで私を見ていた。

静流達は後ろにいるらしい。

「普通。私はどっちかって言うと夜行性だから。夜はあまり寝たくないの。」

「へー。じゃあいつ寝るの?」

「……。あまり眠る事は……好きじゃない。」

⏰:07/09/21 16:18 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#472 [向日葵]
今だから、食事同様マシになった。

それでも、やっぱり夜は寝たくない。
これはクセ。

まだ、母さんからの暴力に堪えてた頃。

母さんが私を殴るのが飽きて寝静まった夜が、何より私の救いの時間だった。

寝てしまったら、また朝が来て、殴られる一日が始まる。
だから、私は救いの時間を貪る様に味わう。

単に言えば、眠るのが恐いのだ……。

まだ治りきっていない、腕のいくつかの痣を見つめ、思い返していた。

⏰:07/09/21 16:22 📱:SO903i 🆔:FFR2DAXk


#473 [向日葵]
「夜は……安らぐ。」

「……そっか。」

香月さんはそれ以上は聞いてこなかった。
私の雰囲気で読めたらしい。

「じゃあまた眠れなかったらさ、夜中に電話でもメールでもしといでよ。」

私は香月さんを見上げた。
香月さんはにこりと笑う。

「……ありがとう。」

上手く笑う事が出来ない分、精一杯思いを込めたありがとうを伝えた。

⏰:07/09/22 02:25 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#474 [向日葵]
香月さんも分かったのか、「うん。」と頷いて別の話題を話始めた。

*********************

「静流。どこ行こっか!」

「んー…?……どこでも。」

「……。」

するりと双葉の手が俺の腕を離れた。
不思議に思った俺はどうしたのかと思い、双葉を見ると、隣にはいず、いつの間にか立ち止まって少し後ろにいた。

「双葉?」

「……だ。」

「え?」

⏰:07/09/22 02:29 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#475 [向日葵]
聞こえないので聞き返すと、双葉がキッ!と俺を睨んだ。

「最近の静流はなんかやだ!上の空が多いし、私の事、ホントに好きか……分かんないよ……。」

泣き出しそうに話す双葉に気づいた紅葉と香月も立ち止まり、俺を振り返る。

一瞬、紅葉と目が合ったけど、すぐに双葉に目を戻して頭を撫でてやる。

「ゴメン双葉……。最近寝不足だったんだ。だから、調子出なかったって言うか……。」

「……ホントに?」

「うん……。」

⏰:07/09/22 02:33 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#476 [向日葵]
もちろんこんなのは嘘だ。

でも今双葉に真実を言ってしまったら、きっと双葉は傷つく。

それは嫌だ。

*********************

静流と双葉さんのやりとりを見て、なんだかその姿が遠く見えた。

停止してしまいそうな脳を強制的に動かして、私はまた歩き出した。
今度は私が香月さんを引っ張る形で……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やって来たのはCDショップ。
香月さんのお目当ての物が発売と言うことで立ち寄った。

⏰:07/09/22 02:37 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#477 [向日葵]
私達は各々好きなように動き出して店内をうろうろし始めた。

香月さんは目当てのCDを。双葉さんはDVD売り場。
静流は音楽雑誌。
そして私は適当に見て回った。

私はどうも時代の最先端に疎く、こういう音楽でも、どのバンドがメジャーだとか分からない。

適当に試聴でもしてみようと思い、女性アーティストのCDがあるヘッドホンを取った。

スタートを押して流れてきたのは暗めのメロディ。

題名は「恋」だった。
恋なのにメロディこんなに暗くていいのかと内心ツッコミを入れた。

⏰:07/09/22 02:44 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#478 [向日葵]
ダラダラした始まりだったので早送りして、サビ近くまで飛ばした。

ありきたりな歌詞は、なんの感動もなかった。
はっきり言って私はあまり歌詞や詞が好きじゃない。

綺麗ごとを並べてる感じが、とてもイライラした。
「愛してる」だの「君だけ」だの……。
もっと本心を歌え。と心がこうなってしまってから、思うようになってしまった。

やはり、私には音楽が向かないらしい。

短くため息をついて、ヘッドホンを元の場所に置いた。

⏰:07/09/22 02:50 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#479 [向日葵]
「何聞いてたんだ?」

びっくりして声がした方に体ごと向くと、静流が立っていた。

私は指差して聞いてた曲を教えた。

静流はそれを手にとって、「ふぅん。」と言ってから元に戻した。

その間、私は静流から離れた。
それに気づいた静流は私について来た。

とっさに双葉さんがいる位置を確かめた。
遠くにいて、まだ私達が一緒にいることに気づいてない。

⏰:07/09/22 02:54 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


#480 [向日葵]
「何か用?」

ついトゲトゲしくなる。

「気に入ったのがあるなら買ってやろうと思って。」

「いらない。私こういうの興味無いから。さっさと双葉さんの元に戻ったら?」

やかましい店内。
明るい曲が店内を包む。
でもここだけ空気がやけに冷たい。

「耳あるの?戻れっつってんの。」

「俺が……。しっかりすればいい事だから。」

「は?」

静流はCDが並ぶ棚から私に体を向けて、また話す。

⏰:07/09/22 02:58 📱:SO903i 🆔:1kREaRMM


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