―温―
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#496 [向日葵]
俺は口を一文字にキュッと縛って香月の言葉を待った。

{最後の忠告だ。俺は確かに紅葉が好きだ。でも、お前は俺と紅葉が付き合って本当に後悔しないのか?}

「……俺は、双葉がいるから……。」

{最近のお前さ、双葉ちゃんを好きって言わないよな。}

――ドクン……

「それが……何だよ。」

{大切だの傷つけたくないだの。お前は今双葉ちゃんを好きなのか?}

⏰:07/09/23 01:03 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#497 [向日葵]
「やめろよっ!!」

家に俺の叫び声が響いた。

やめろ……。
これ以上混乱させないでくれ……。

「お前は念願が叶ったんだから、紅葉と仲良くすればいいだろ……っ!」

目元を片手で覆って、玄関のドアにもたれた。
香月からはまだ返事が来ない。

だってそうだろ?
何でいちいち俺に聞くんだ!俺には双葉って彼女がいて、彼女を幸せにす…………。

待てよ俺……。
今なんて思った?
その言葉の続きは……絶対思っちゃいけないだろ。

⏰:07/09/23 01:07 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#498 [向日葵]
{俺だって……限界があんだよ。}

それだけ言って、香月は電話を切った。

プープーと受話器の向こうになってる音を聞きながら、俺はその場に立ち尽くしていた。

あの言葉の続き……。

彼女を幸せにする……義務がある……と。

義務だなんて、思っちゃいけない。
それはつまり…………双葉が好きじゃなくなったってことだろ?

**********************

携帯のバイブが鳴ったので見てみると、香月さんからメールが入った。

[もうすぐ着くから(^.^)]

⏰:07/09/23 01:12 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#499 [向日葵]
返信をせずに、塀から身を乗り出して遠くを見ると、それらしき人物が見えた。

あちらも私に気づいたのか、軽く走って私の所までやって来た。

「……あれ?」

今日は眼鏡かけてる……。

それに気づいた香月さんは人差し指で眼鏡をトントンと軽く叩いて「あぁコレ?」と言いながら微笑んだ。

「実は目、悪いんだわ。いつもコンタクトなんだけどさ、代えが無くって。だから今日は眼鏡!」

⏰:07/09/23 01:16 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#500 [向日葵]
「似合う?!」って言いながら、黒渕眼鏡をクイッとあげる。

私はコクコクと頷いて肯定した。

すると香月さんが真剣な(顔をしたもんだから、私はドキッとしてしまった。

「無理……してない?」

「え……。」

ザァァァ……と風が吹く。
髪の毛で香月さんの顔が見えなくなるのを防ぐ為に髪の毛を手で抑える。

「静流の事。いいの?」

「……。」

「いいんだよ?フッても。」

⏰:07/09/23 01:21 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#501 [向日葵]
明るく笑って言ってるけど、その顔はとても悲しそうだった。

「そんな顔……しないで。」

香月さんの顔にそっと触れた。

「今は静流でも、香月さんを好きになれると思う。それまで、待ってくれない……?」

香月さんから悲しそうな雰囲気が少し消えて、頬にある私の手の上から私の手を重ねた。

「待つよ。だから早く来て?」

そう言いながら私の掌に唇を押し付けた。

⏰:07/09/23 01:26 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#502 [向日葵]
今日はそれで香月さんは「またメールする」と言って帰ってしまった。

湿気を含んだ風がまた吹く。

きっと好きになれる。

だってホラ……。
こんなにドキドキしてる。

でも本当は知ってた。
静流が触れた時に比べれば、負けてる。
それを、わざと気づかないフリをした。

空がおかしい……。

今晩、何かが起こるかもしれない。

⏰:07/09/23 01:33 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#503 [向日葵]
―――――……

そしてその予感は呆気なく的中してしまった。

それは晩御飯の時。

いつものにこにこ顔で源さんが言った。

「僕明日から出張に行って来ますね。」

ブハ―――――!!!!

お茶を飲もうとしていた私と静流はそれぞれ別の場所にお茶を噴射してしまった。

「いっ!一週間って!なんでだよ父さん!!」

「今度の研究がちょっと手間取ってねぇ。ちょっと研究所に籠ってくる。」

そんなあっさり……。

人生とは本当におかしい。

一番嫌なコンディションの時に一番最悪なシュチュエーションを用意してくれる。

⏰:07/09/23 01:38 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#504 [向日葵]
そして正に今その状態が作り上げられようとしているのだ。

「そんな急に……っ!」

「仲良くするんだよ?ケンカはいけないからね?」

ささーっとお皿を片付けると、明日準備をしに源さんは自分の部屋へと行ってしまった。

リビングに呆然とする悩める子羊が二名に緊張と言う名の狼が襲いかかる。

「なんてこった……。」

と言わずにはいられない。

ソロリと静流を見ると、静流も同じように私を見ていた。

⏰:07/09/23 01:43 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#505 [向日葵]
静流はフゥ……とため息をついた。

「じゃあ明日から一週間、紅葉は洗濯と掃除係な。」

「えー……。洗濯はいつもだけど掃除まで?」

「俺一日の半分は学校だもん。」

と少しふんぞり返って静流は言った。
私は「ハイハイ」と妥協してお皿を片付ける。

こんな微妙な雰囲気で、一週間大丈夫なのかな。

……ん?
私はいいとして、なんで静流までが態度がおかしいんだろう。

⏰:07/09/23 01:48 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


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