―温―
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#576 [向日葵]
男の子だって言うのに、すごく肌が綺麗なのかスベスベしてる。
私は静流の頬を何度も指先で往復した。
胸が……苦しい……。
パシッ!
「っ!!」
寝てる静流が私の手を掴んだ。
寝てるのに素早い動きだったので私の心臓がバクバクと急に動き出した。
「……れ……。」
「れ?」
何の事か分からない私に教えてくれるように静流はもう一度寝言を言った。
:07/10/02 23:21 :SO903i :P1FKxZVI
#577 [向日葵]
「く…れ、は……。」
「――っ。」
私の……夢を見てるの?
掴まれた手は、離される気配がない。
静流……私は、どこにも行かない。
また、貴方の前に現れる。それがいつかは分からない。
でも必ず、また来るから……。
ありがとう。
私に優しくしてくれて……好きになってくれて……。
ありがとう……。
:07/10/02 23:24 :SO903i :P1FKxZVI
#578 [向日葵]
私は唇を、静流のおでこに当てた。
シャンプーの匂いが、鼻をかすめた。
―――――
――――――……
午前4時。
もっと見ていたかった。
静流の、綺麗なその顔。
でももう時間……。
タイムオーバー。
いつまでも掴まれたままだった手を、ゆっくりと外して行った。
「……バイバイ……。」
荷物を持って、私は静流の部屋を静かに出て行った。
:07/10/02 23:28 :SO903i :P1FKxZVI
#579 [向日葵]
下へ行くと、玄関に源さんがいた。
「静流君に、本当に言わなくていいの?」
私は頷いた。
「朝まで寝かしといてあげたいから。心配しないようにだけ言っておいて。」
「そっか……。あ、ハイ地図。」
渡された地図に目を落とす。
結構時間がかかりそうだ。
地図から目を離し、源さんを少し見てから頭を下げた。
:07/10/02 23:31 :SO903i :P1FKxZVI
#580 [向日葵]
「わがままを……聞いてくれて、ありがとうございました。」
すると源さんは、悲しそうな微笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。
「いつでも帰ってきてね。君は僕達の家族なんだから。」
家族……。
最初から源さんや静流は前から私がいたみたいに扱ってくれた。
それをとてもありがたく思う。
「行ってきます。」
私は源さんの方は向かずに戸を閉めた。
:07/10/02 23:35 :SO903i :P1FKxZVI
#581 [向日葵]
門を出て数歩歩いてからまた家を眺めた。
驚くほどの家のでかさ。
いつも自分が愛用していたベランダ。
いつも明るかったリビング。
水やりしていた花壇。
そして……あそこは静流の部屋……。
じって見つめる。
もしかしたら静流が止めにくるかななんて馬鹿な事を思いながら。
そんな事をしたら意味が無くなるのに。
どうしてだろう。
永遠の別れじゃない筈なのに、もう二度と会えない気がする。
:07/10/02 23:39 :SO903i :P1FKxZVI
#582 [向日葵]
でも、それでもいい……静流さえ幸せになってくれれば、それでいい。
そして私は歩き出した。
6月の早朝はなんだか湿っぽい。
遠くで新聞配達の音が聞こえる。
私のジャリジャリと言う歩く音が聞こえる。
その途端、胸が一杯になった。
涙がボロボロ流れ始める。
「―――っう……っ。ふうぅ……っっ!」
歩くのが何だかもどかしくて、私は走り出した。
:07/10/02 23:43 :SO903i :P1FKxZVI
#583 [向日葵]
「ハッ!ハァッ!!……んくっ……っ。」
泣いてるせいで、呼吸困難になりそう。
でも走り続けた。
幸せに憧れた。
幸せになりたかった。
もっと一緒にいたかった。
もっと一緒にいてほしかった。
でも私はそれほどの人間でもなく、自分が幸せに敏感なだけに人の幸せを奪うのはどうしても出来なかった。
ずっと頭の中で、そう唱えてた。
【俺は紅葉が好きだ。】
:07/10/02 23:47 :SO903i :P1FKxZVI
#584 [向日葵]
朝日が見え始め、その光を全身に目一杯浴びる。
静流。
私も好き。大好き。
ゴメンネ。
答えてあげられなくて。
静流……静流……。
「っうあぁぁ!!……ひっ!ハァッハァッ!!」
またね……って、言えない気がする。
だから
さようなら。
:07/10/02 23:50 :SO903i :P1FKxZVI
#585 [向日葵]
―会―
朝だ……。起きなきゃいけない。
今日も学校だ。
俺はぼんやりしながら体を起こした。
ふと、右手を見てみる。
何か感触が残ってるような。
:07/10/02 23:53 :SO903i :P1FKxZVI
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