―温―
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#586 [向日葵]
それが何かなんて、検討もつかない。
そのまま視線を滑らすと、紅葉の布団に紅葉がいない。
彼女は確かにいつも早起きなのだが、起きたような布団の形はしていなかった。
敷いてそのままと言う感じだ。
もしかしたらまたソファーで寝てしまっているのかもしれない。
確認の為、俺は部屋を出た。
リビングに向かうと、シーンと静寂に包まれていた。
:07/10/03 00:00 :SO903i :RMOaFhzI
#587 [向日葵]
寝息のような音すら聞こえない。
でもとりあえず呼んでみる。
「紅葉ー?」
もちろん返事などなかった。
ソファーに一歩一歩近づいて行く。
何故だろう。
心臓が高鳴っていくのがわかる。
胸騒ぎと言ったらいいのだろうか。
予感は的中。
……紅葉が
いない……。
:07/10/03 00:07 :SO903i :RMOaFhzI
#588 [向日葵]
「……れは……?」
よたよたと後退して行き、ザッ!っと体を翻して父さんの部屋へ向かった。
階段をこけそうなくらい早く降りて、廊下を大股で走って行く。
ドンドンドンドン!!
俺は父さんの部屋のドアを思いっきり叩いた。
「父さん!父さん!大変だ!!」
俺がこれだけ混乱してるって言うのに、父さんはゆっくりとドアを開けた。
「父さん……っ?!大変だってば……っ!」
:07/10/03 00:17 :SO903i :RMOaFhzI
#589 [向日葵]
父さんは何故か無表情だった。
そこで俺は分かった。
「知ってんの……?紅葉いないこと……。」
父さんはゆっくりと頷いた。
俺は訳がわからなかった。何故?何故出ていく必要があったんだ?
俺のせい?
俺が好きだとか言ったから?
パニック状態になった俺の表情を読み取った父さんが言った。
「大丈夫。一人旅に出かけただけだから。」
「一人……旅?」
:07/10/04 00:58 :SO903i :InOsgAz6
#590 [向日葵]
「旅がしたかったんだって。心配しなくても、いつか帰ってくるから。」
いつか?
「いつかって……いつ?」
父さんは静かに微笑んで言った。
「いつか……だよ。」
つまり決まってない。
明日帰ってくるかもしれないし、1週間後に帰ってくるかもしれない。
それが、もし、何年も先だったら……?
俺は急いで階段を駆け上がり、携帯を手にした。
リダイアルで紅葉の番号を出し、電話をかけた。
:07/10/04 01:02 :SO903i :InOsgAz6
#591 [向日葵]
コールが鳴り続ける。
紅葉が出る気配が全くない。
プツッ
「!紅葉!今どこに」
{おかけになった電話は、電波の届かない所か、電源が入ってない為……}
携帯アナウンスに失望して、最後まで聞かないまま電話を切った。
どうして、こうなってしまったんだろう……。
*********************
段々と、景色が田舎になってきた。
見る限り、山、田んぼ、山田んぼ……。
緑一色しかない不思議な世界。
:07/10/04 01:06 :SO903i :InOsgAz6
#592 [向日葵]
ぼんやりと、初めて行く場所に向かっていた。
私は途中自販機で買ったミネラルウォーターを一口飲み、しばらく寝ることにした。
なんだか……目が重い気さえした。
*********************
「紅葉が消えた?!」
今朝の出来事を香月に伝えた。
驚いている事から香月にも知らされていなかったらしい。
「何で消えるんだよ!意味分かんねぇぞ?!」
:07/10/04 01:10 :SO903i :InOsgAz6
#593 [向日葵]
「俺だって分かんねぇよ!!」
俺の荒けげた声に、クラスメイト何人かが振り向く。
香月は少しびっくりしていて目を見開いている。
「どこに行ったかとか……聞いてないのか?」
香月の言葉に、俺はうなだれて首を振った。
父さんからはただ一人旅だとしか聞かない。
何故俺には内緒だとか、何故行ってしまったとか、聞きたいのは俺の方だった。
「携帯にも繋がらないんだ……。メールも返ってこねぇし……。」
:07/10/05 14:59 :SO903i :Xf33hPuo
#594 [向日葵]
「おじさん、行き先知ってるんじゃないのか?」
「さぁ……。」
「「さぁ」っじゃねぇよ!イジイジしてる暇あるんだったら少しは行動して見ろよ!!」
……?
なんで俺が?
いや、行動するのには何も抵抗は無い。
寧ろ動きたくてウズウズしてるくらいだ。
「お前、何で俺の応援してんの?」
問いた時、香月はフゥ……と息を吐いた。
「お前ら、両想いだって知らなかったのか?」
:07/10/05 15:04 :SO903i :Xf33hPuo
#595 [向日葵]
頭の機能が、停止した。
真っ白になって、視界も何を見てるかなんて分からなかった。
紅葉が……?
だって俺が前、好きになる確率がないかと聞いた時、アイツは
[ない。]
……って……。
なら……どうして?
「ついでプラス、嫌味でお前にある事を教えてやろう。」
香月の声がしたのをきっかけに、俺は現実へ戻ってきた。
:07/10/05 15:08 :SO903i :Xf33hPuo
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