―温―
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#621 [向日葵]
開いていくと……

「……っ。なんで……。」

全て、静流からのものだった。

<紅葉!どこにいるんだ!>
<居場所教えてくれ。>
<どうして勝手に出て行った。>

<怒らないから連絡しろ。>

そんな内容のメールがいくつもいくつもあった。

そして最後のメールを開く。

<……会いたい。>

⏰:07/10/10 00:33 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#622 [向日葵]
「紅葉ー。久しぶ……っどうしたの?!」

いつの間にか流れていた涙を見て、渚さんはとても驚いていた。

離れて薄れさせようとした静流の想い。
しかしそれは薄れるばかりか強まっている事が、この短文なメールいくつかで分かってしまった。

それが嬉しくて、でも歯がゆかった。

―――――……

久しぶりに一緒に寝に来た渚さんが、こんな事を話してくれた。

「私捨て子なのよ。10の頃くらいまで弧児院にいてね。」

⏰:07/10/10 00:38 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#623 [向日葵]
私は渚さんの方を首だけ向いて話を聞いていた。
渚さんは天井を向いて話している。

「それで、私、親の顔知らないの。」

「え……っ。」

「赤ん坊の頃から捨てられてたみたい。気がついたらずっとあそこだったから。」

渚さんは笑いながら喋っているけど、同じ様な仕打にあった私としては無理をしてるんじゃないかと気を遣った。

「あの頃はそれは自分が嫌だったわよ。丁度、今のアンタみたいな状態。誰も寄せ付けたくない。自分には幸せなんてないんだーみたいな感じ。」

⏰:07/10/10 00:43 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#624 [向日葵]
「……。」

「でもね……。ここで過ごしていくうちに、思ったの。絶対、自分に求める幸せの温かさは手に入るんだ。って。それは、何かを犠牲にするんじゃなくって、自然とそう仕向けられるのよ。よく言うでしょ?この世に偶然は無くって全てが必然で成り立ってるって。」

私は渚さんの話にただ耳を傾けていた。
時々入る波の音が、頭の中のごちゃごちゃした感情を一掃してくれる気がした。
「紅葉が、何に悩んでるかは聞かないけど、自分の幸せと、その周りの幸せを大切にしていけばいいのよ。」

⏰:07/10/10 00:48 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#625 [向日葵]
「周りの……幸せ……。」

ボツリと呟いた。

源さんは私がいて幸せだったのかな。

静流は……私といて幸せだったのかな。

********************

紅葉がいなくなって2週間が経とうとしていた。

そんなある水曜日の事。

痺を切らした俺は父さんに詰め寄った。

「いい加減にしてくれっ!場所くらい教えてくれてもいいじゃないかっ!!」

⏰:07/10/10 00:52 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#626 [向日葵]
父さんはリビングにある机で新聞を見ていた。

「場所を教えたら君は行ってしまうでしょう?」

「当たり前じゃないかっ!」

「それじゃ紅葉ちゃんの希望に沿わない。だから却下。」

色んな感情が渦巻いて、俺はダンッ!!と足を鳴らしてから自室へ向かった。

居場所は分からない。
連絡もつかない。

いらだちで頭が狂いそうになっていた。

どうして紅葉の態度に気づいてやれなかったのかと今更後悔する。

⏰:07/10/10 00:57 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#627 [向日葵]
「ハァ……。……。――あっ!!」

俺は急いで携帯を手に取った。

********************

ブー ブー

携帯のバイブが鳴ったのに気づいた私は外を眺めるのを止めて携帯を手に取った。

「もしもし。」

{久しぶり。やっと繋がったよ。……元気?}

「!!香月さん……っ。」

あの日以来、私は香月さんと連絡は取らずにいた。
彼女と言う立場でありながら自分でもいけないと思った。

⏰:07/10/10 01:01 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#628 [向日葵]
{今何処にいるの?}

「……。」

{クスクス。心配しなくても連れ戻したりなんかしないから。}

先に気持ちを読み取った香月さんはそう言った。
前と変わらない穏やかな声で。

「明星岬ってとこの旅館にいる。」

{あぁ。あそこね。随分遠くまで行ったんだね。}

なんだか、会話が続かなかった。
何を言えばいいか。
ううん。言う事なんか決まってた。
でも、言い出せなかった。

⏰:07/10/10 01:05 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#629 [向日葵]
{ゴメンネ。}

!!

「ど…して、謝るの?」

{紅葉を困らせた。分かってるよ。もう、決心してんだろ?}

ここで泣いたら卑怯な気がして、私は携帯を持ってない手をギュッと握りしめて涙を強制的に出ない様にした。

「ごめんなさい……っ。やっぱり……静流を諦めれなかったっ……。ダメって、分かってても、苦しんでも……。」

心は一つ。ただ真っ直ぐに静流のもとへ。

⏰:07/10/10 01:09 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


#630 [向日葵]
こんな優しい人の気持ちを踏みにじって、私は苦しい道を選んでる。

{アホ!誰が諦めるっつったよ。言っておくけど、まだ挽回のチャンスなんていくらでもあるんだからな!}

いつもと変わらない香月さんの口調。
でも知ってる。
私に気を遣ってくれてるんだね……。
そんな香月さんに惹かれていた事は事実だった。

「……ありがとう。」

いつも背中を押してくれて……大事にしてくれて……。

⏰:07/10/10 01:13 📱:SO903i 🆔:220qOU2E


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