.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#121 [桔妁]
と、そこに。
「そらやー!ばっちゃんから饅頭くすねてきたから食おう!!」
「…おぉ頼仲!いいところにやってきたじゃんか!!」
「は?」
――――
――
―
「わかった。つまり、おまいは繭に簪をあげたいというわけ。」
「そう!よろしくな!」
:07/12/24 20:01 :SH903i :8vB3PghU
#122 [桔妁]
仕事の都合上、さらに繭を何日も家に一人にするのは危険と考えたので、頼仲にお使いを頼むことにした。
「三日で帰るけ!」
「まじかよ。」
余りに早いなと思いながら、天弥は頼仲に手を振った。
「さァ、今日から日にちをきちんと数えなくちゃな…。」
――――
―
:07/12/24 20:04 :SH903i :8vB3PghU
#123 [桔妁]
三日後…。今日は十二月二日だ。
「……」
盛り上がった土の上で手を合わせる。
これは、仕事の"後片付け"だ。
と、草の外から人の影があった。
「誰ですかァ!!!」
裏返った声で、明らかにビビっていた。女か?
「怪しいモンじゃね-よ。」
そう言うと、返ってきたのは繭の声。
:07/12/24 20:10 :SH903i :8vB3PghU
#124 [桔妁]
「天、弥?」
まさか、こんな夜に迎えに来るなんて思わないから、動揺して、
さっき頼仲からもらった簪を胸元から落とすところだった。
しかも、この仕事が繭にばれるのは嫌だ。
さらに慌てた俺だった。
そんな俺の事を知りもしない繭だから。
「迎えにきたんだ」
なんて言われたら恥ずかしい。
:07/12/24 20:14 :SH903i :8vB3PghU
#125 [桔妁]
しかし、最近よくない噂の侍が居るようで、繭がよく無事だったと安心した。
だから叱ってやったのに。
天弥のほうが小さいから説得力が無いといわれた。
と、頼仲が女と家に来ていたようで。
あれほど言うなと言ったのに、繭に"お届け物"のことを喋ったようだ。
:07/12/24 20:17 :SH903i :8vB3PghU
#126 [桔妁]
しつこく聞いてくる繭。
まぁ、あとで分かるんだから…って言ったらお見通しか。
冷たい木枯らしが、吹いていた。
.
:07/12/24 20:19 :SH903i :8vB3PghU
#127 [桔妁]
その日の、夜の事だった。
「…何コレ?」
繭は俺に茶色い球体を渡してきた。
…イヤ、多分"アレ"ではないと思うが……
「コレなに?…やだなぁ!過去きて三年しか経ってないのに忘れちゃったの!?チョコボールだよ!!」
「は?……あ、あぁ!!」
:07/12/24 23:00 :SH903i :8vB3PghU
#128 [桔妁]
ようやく、わかった。
チョコボールといえば…あのキョロちゃんの、あれか。
銀のエンジェル、三つ集めたのに…過去来てパァだったんだ、そういえば。
「で、これがなんだっていうんだ?」
:07/12/25 00:00 :SH903i :ooso8LXg
#129 [桔妁]
「ん-…。勿体ないから、一人で食べようかと思ったんだけどね……。あげる、よ。」
繭がチョコボールを差し出す。
「?」
タダでくれるなんて、なんか繭には有り得ないと思い、不思議に思っていた。
「ほ、ほら、クリスマスだと思って!!今、もう少しで雪降りそうじゃん!ね?」
けど、何故か今日の繭は素直に受け取れたから、俺も素直に受け取った。
:07/12/25 00:06 :SH903i :ooso8LXg
#130 [桔妁]
「…あ、ありがと……」
チョコボールって、食べるのにこんなに緊張しただろうか…。
俺はゆっくり口に運んだ。
「……あ!!」
「!!?ななな何だよ!!」
食べようと思ったら、繭が大声あげるもんだから口ん中に落っことしてしまった!!
:07/12/25 00:08 :SH903i :ooso8LXg
#131 [桔妁]
「し、賞味期限…平気かナ?」
「え、」
冷や汗かいたふうに笑う繭は、なんか憎めないが…
腐ったチョコだったら…どーするんだよ俺!!
「あ、来年の一月まで平気だ!あははっ!!」
口の中のチョコボールのことを気にしていたら繭がいった。
「な、なんだよ……。…ていうか…なんで本当に俺にチョコボールなんか?」
:07/12/25 00:12 :SH903i :ooso8LXg
#132 [桔妁]
そこがやはり疑問だ。
誰より食い意地のはった女だから、絶対に有り得ないのに……
「ん?…本当にクリスマスプレゼントだよ!」
そういう繭を、今日は信じようと思う。
「でもさ、普通…チョコはバレンタインじゃねーの?」
そこで、俺がチョコボールを食べながら、そうやっていえば。
:07/12/25 00:16 :SH903i :ooso8LXg
#133 [桔妁]
「いいじゃん!…ほんと、有り難うのひとつくらい言ってくれればいいのにっ!!」
がみがみ言う繭が楽しくて仕方ない。
こいつにとって、家族や友達に会えないのは不幸なのだろうけど、俺は繭に会えて、今までの三年間の不幸な日々が変われたから幸せだ。
本当のクリスマスの日には、きちんとプレゼントをあげよう。少なくとも、俺と過去に居て、楽しいと思える日が、ひとつでも増えるように。
.
:07/12/25 00:21 :SH903i :ooso8LXg
#134 [桔妁]
―Side繭――
夕刻―――…。
「静かでつまらない……。」
床に座っている繭だが、自分の心臓の音が聞こえるくらい静かで、つまらない。
と、収納スペースに一際古い箱があるのに気がついた。
「…金めのものかな……。小判とかならもらっちゃおー…」
興味本位で、箱に手をかけて、中を見た。
:07/12/25 00:25 :SH903i :ooso8LXg
#135 [桔妁]
「?服??」
それは、小さめのTシャツと短パンだった。
恐らく、というか確信を持ち天弥のだろう。
そして箱の底に、紙が入っていた。
手紙のようだ。
「…旅行楽しんでいらっしゃい……、おばあちゃんの言う事を聞くのよ。寂しくなったら、電話するのよ。」
お母さんの字だろうか。愛情が滲み出ているようだ。
:07/12/25 00:29 :SH903i :ooso8LXg
#136 [桔妁]
慣れた慣れたと、天弥は言っているだろうけど。
「天弥だって…帰りたい、よね…」
三年間、どんな思いだったんだろう。知らない土地で一人きりで…。
「よしっ!!元気つけてやらなくっちゃね!!」
私は、隠し持っていたチョコボールを鞄から取り出した。
「現代の味を食べさせてやろうかな!!」
:07/12/25 00:31 :SH903i :ooso8LXg
#137 [桔妁]
そう、私だって寂しいけど。
天弥が居たからだいぶ違う。
そのへんは、私だって分かってるんだから。
少しでも、繭が来てくれてよかったよ俺。とか思ってくれたらいいなって。
だから、まぁ…
早川先輩よりは下だけどね、天弥だって幸せでいて欲しいなって思うわけです。
―――
―
.
:07/12/25 00:36 :SH903i :ooso8LXg
#138 [桔妁]
―
―
―
―
―
―
通じていないようで
通じている
そんなふたりの
冬の始まりは
なんとなく
暖かかった。―
―
―
―
―
―
:07/12/25 00:39 :SH903i :ooso8LXg
#139 [桔妁]
―第4章―
―新しい心の名前
さようなら古い心――
.
:07/12/25 00:41 :SH903i :ooso8LXg
#140 [桔妁]
「お疲れ様、今日はあがりでいいよ。」
この店の主人の言葉は決まって定刻に。
「有り難うございます!」
私は、いつもとはきっと違う明るい声で言う。
だって今日はデートなんだから!
「…て、あれれ…天弥?」
:07/12/25 01:40 :SH903i :ooso8LXg
#141 [桔妁]
岩影に、天弥が居た。
「趣味悪いなぁ-。デートののぞき見?」
「………行くのか、本当に?」
私の厭味を無視し、天弥は聞いてきた。なんか、この顔は母性本能をくすぐるというか…。
でも今日は外せない!!早川先輩似の人とのデートは!
:07/12/25 01:43 :SH903i :ooso8LXg
#142 [桔妁]
「行くよ?…ていうか…天弥は、ど-したのよ?こんな時間に…」
「…仕事。」
そっけなく答える天弥に多少の苛々を覚える。
「ああ、ふ-ん。……あ、あの人だ!…じゃあ行く…」
足を一歩進めようとすると、不意に天弥が着物の裾を掴んだ。
「…やめとけ。」
そう私には聞こえた。…だが振り払って歩いていった。
:07/12/25 01:48 :SH903i :ooso8LXg
#143 [桔妁]
「本当にいらしたのですね!」
「俺が契りを破るとでも思ったか。…では、行くか。乗れ。」
前方に、馬――…。
しかも白馬!!!
王子様ァ!!!!
「チッ………」
二人が乗り、そして走りだす馬を追う少年が居た事は、誰も知らない。
:07/12/25 01:54 :SH903i :ooso8LXg
#144 [桔妁]
「そらや-……あれ、居ないんか?」
同時刻。頼仲とお雪が家にやってきたが、二人は居ない。
「折角一緒に呑もうとしたのにのう…。」
「何処へ行かれたのでしょう?」
頼仲は、持ってきていた酒を少し呑み、言った。
「まぁ…仕事でもやっとるんだろうねぇ……」
:07/12/25 08:38 :SH903i :ooso8LXg
#145 [桔妁]
「…ここ、ですか?」
繭がついたのは、町はずれの小屋の中だ。
中には高級そうな着物や、金銀財宝が置いてある。
「あぁ、今の宿泊場所だ。さぁ、座れ。」
「あ、有り難うございます…」
微笑んでくれると、やはりカッコイイ。
:07/12/25 08:42 :SH903i :ooso8LXg
#146 [桔妁]
「茶屋の娘…名は何と?」
出された飲み物は、お酒のようだった。まだ未成年だけど…早川先輩が出してくれたのだから…と、ちびちび飲む。
「私は繭と申します……あの…貴方は…」
「俺か?ナギだ。…まぁ、流れ者だから……………て…………るん……」
あ、れ……?
繭の意識は遠退いていった。いつの間にか、ナギさんの声も聞こえない。お酒の飲み過ぎ、にしては少な過ぎる量だし……
そんなことを考えている間に、完全に意識がなくなった。
:07/12/25 12:55 :SH903i :ooso8LXg
#147 [桔妁]
:07/12/25 21:01 :SH903i :ooso8LXg
#148 [桔妁]
その頃…息を切らした天弥は町中に居た。
天弥の脚力は、並外れていた。だが、さすがに馬に追い付く事は不可能で…
「くそ…見失った……」
町に入った所で、馬を見失った。
「なんで繭を……………ん?」
急に、後ろから気配を感じた。
「天弥殿!!!!」
それはひとりの侍格好をした男だった。そして、天弥のよく知る人物…
「頼仲の兄上…?」
:07/12/25 21:18 :SH903i :ooso8LXg
#149 [桔妁]
頼仲とは打って変わった真面目な人柄の彼は、いつも何かと力になってくれる。
「弟から聞いたよ。今日"奴ら"が動いたんだって…。」
「…頼仲が?」
呼吸を直しながら俺は天弥は聞く。
「まぁ、正確には遊郭のお雪の客が漏らした話だが……今晩、娘を売って一儲けするらしい。」
娘…いわずと知れた、繭だろう。
「有り難うな…」
:07/12/25 21:31 :SH903i :ooso8LXg
#150 [桔妁]
場所の目星はついていた。
繭に出会ってしばらくのとき、村に現れた不貞な奴らの処理任務についた。
そのときに突き止めた場所は、町の端にある賭博場の地下だ。
取引はそこで行われるに違いない。待ち伏せればいいだろう。
「…じゃあ、俺は行く。」
そう頼仲の兄に別れを告げようとすると、彼は言った。
:07/12/25 21:37 :SH903i :ooso8LXg
#151 [桔妁]
「天弥殿は…変わったな。あの、繭殿のお陰だろうが……。余り、見失うなよ。」
それを聞いた天弥が、頼仲の兄の方を振り向いた時の眼は、冷えていた。とてもとても暗く…………。
年上の彼から見ても身震いをするような。
"これ"が天弥の職業なのだと、余計に実感させられる。
「……息を切らしていくな。負けるぞ。」
それだけを言うと、頼仲の兄は戻っていった。
:07/12/25 21:46 :SH903i :ooso8LXg
#152 [桔妁]
「………………。」
町の端の賭博場に急いだ。
まだ、間に合うか。奴らより先に繭を救わなくては。
過去世界での自分の苦しみを変えたのは繭だ。
いつの間にか、俺にとってかけがえのない人になった。
そう。とにかく、繭を…………
そんな気持ちとは裏腹に、冷酷な眼が言う。
:07/12/25 21:50 :SH903i :ooso8LXg
#153 [桔妁]
お前に幸せなどはない。
ささやかな自分の幸せさえも犠牲にしなくては、この職業はままならない。
でなければ、迷い死ぬ。
ただ頼まれた通りに、どんな奴らだろうと殺す…
それが"天弥"の新しい生き方であり、きれいごとに染まる事はもうできない、と。
過酷な生活の中で生き残るためには、リスクを背負わなくてはならないのだ、と。
:07/12/25 21:55 :SH903i :ooso8LXg
#154 [桔妁]
生活のために、ささいな幸せを、明け渡したのだ。
父も母も兄弟も友達も諦めた。
もう、自分が生きる事に全てを捧げようとした。
"神隠し"。
神がそう自分を定めたのは何故だろう。なぜ自分が。
通常の居るべき次元から離されて、そこに生きていたという跡を消された。
なら、ここで作ろう。自分は此処に居たのだと。
:07/12/25 22:03 :SH903i :ooso8LXg
#155 [桔妁]
たしかに自分は存在していたと、たくさんの魂にしらしめる。
間違いだ、分かっているのに。
過去に来た自分、此処に居る自分を認められない。
もはや自分が何なのかと、わからない。
だから、そうするしかない。
例え、嫌われても、かけがえのない者の前で血が舞おうとも。
:07/12/25 22:09 :SH903i :ooso8LXg
#156 [桔妁]
―――――
――
―
「……?」
ざわざわと、周りがうるさい。これが目が覚めた時の印象だ。
そして、暗い部屋のひんやりとした土の上に座っているような感覚で、なおかつ腕は縛られていた。
「なんでこんな…確か…」
そう、この場は間違いなく、天弥が読んだ場所である。
:07/12/25 22:40 :SH903i :ooso8LXg
#157 [桔妁]
「ナギさん……」
そうだ。ナギさんの小屋に入ったら…
意識がなくなったんだ…。
(腕が拘束されてるのは気分悪いなぁ…。
ていうかまさか……ナギさんが私を…?)
過去に来たんだから、ある程度の変な出来事は想定していたが…
:07/12/25 22:47 :SH903i :ooso8LXg
#158 [桔妁]
まさか、絶対いい人だと思ってた人がこんなことを……
っていうか結んで何しようとしてるの!?
繭が余裕をこいてめくるめく妄想をしていると、左側が明るくなった。
扉が開いたようだ。
:07/12/25 22:51 :SH903i :ooso8LXg
#159 [桔妁]
「目が、覚めたようだね?」
一瞬眩しくて分からなかったが、確かに早…じゃなくて、ナギさんだった。
「ナギさん、あのこれ…」
聞こうとした瞬間だった。
ナギさんの両脇から二人の男が現れた。
「出せ。」
二人の男に命じたナギさんは、一足先に部屋を出た。
:07/12/25 22:55 :SH903i :ooso8LXg
#160 [桔妁]
一抹の不安を感じずには……?
いいえ一抹なんて、そんな小さくない。
本能が、第六感が…?
分からないけれど。
私からは、汗が一滴垂れた。…じめじめした涼しい空間なのに……。
:07/12/25 22:58 :SH903i :ooso8LXg
#161 [桔妁]
部屋の外も、薄暗い部屋だった。…言うなれば地下室。
「今日、皆に集まっていただいたのは他でもない。」
二人の男に取り押さえられていた私には、いつの間にか猿轡がされていた。
つまり何も喋れず、何事かと聞く事もできない。
そのうちに、上擦った声のナギさんが話し始める。
「今日は、私自らが出向いて会得した代物だ。」
(何……?)
二人の男たちを見ると、ニヤッと笑っている。
:07/12/26 22:44 :SH903i :TpUAuREM
#162 [桔妁]
「さぁ、大判三枚との交換だ!」
(…大判三枚……?)
皆、一様に息を呑むのが聞こえた。
今まで意識に止めなかったが、部屋には所狭しと目つきの悪そうな男が居る。
(どういう、こと……)
拘束されて、訳のわからない所に連れられて、あやしいおじさん達が居るのだ。
いいところではないだろう。
:07/12/26 23:02 :SH903i :TpUAuREM
#163 [桔妁]
「せめて大判一枚にしておくれよ。高すぎだろうね。」
「いくらなんでも三枚は無理じゃろうね、遊女よりもお高いだろう。」
しばらく静かだった空間がざわめきだした。
と、同時に繭は状況も掴めてきた。
(売られようとしてる?)
そ、そんなの!冗談じゃないっ!!
繭は急にテンパり始めた。ものすごく、あがいた。
:07/12/26 23:07 :SH903i :TpUAuREM
#164 [桔妁]
「……ほう…あの女、まだ動く元気があると…。不良品だな…?」
ひとりの男が呟いた気がする。
と、同時に周りが値下げコールをしてきているではないか。
「ええい!仕方のない!!…大判一枚、小番三枚で手を打とう!!」
(は!!??ななナギさん!?)
:07/12/26 23:10 :SH903i :TpUAuREM
#165 [桔妁]
私が驚く間に、三人の男が前に出た。
…私を買おうとする奴か……。
「ほほう…久しい顔ぶれだな。」
ナギさんは三人を目下に見ながら言っていた。
ああ、こんな訳のわからない連中に売られてしまうんだ…。
さっき、天弥は行くなって言ってたっけ…。言う事を聞けばよかった……。
:07/12/26 23:15 :SH903i :TpUAuREM
#166 [桔妁]
今更になり、後悔が頭中を駆け巡った。
涙も出た。
甘く見た自分が馬鹿だったなと…。今更では遅いとも。
(天弥、呆れてるだろうな。…俺が折角忠告したのによー、とか言って……)
と、悟り始めた時であった。
:07/12/26 23:20 :SH903i :TpUAuREM
#167 [桔妁]
部屋の奥…(否、恐らく入口部分だろう)から、火の手が上がった。
「な、なんだ……!!」
ナギさんも想定外らしく、慌てふためいている。
そして入口の男達から、じわじわと焼かれていく。
逃げる者も居ない。
入口も出口も、あそこのみなのだということだろうか…。
「だ、誰だ!?役人か!?」
ナギさんがそう言う頃には、異臭が漂って、周りは火の海だった。
:07/12/26 23:24 :SH903i :TpUAuREM
#168 [桔妁]
煙が、苦しい…。
というより、意識がまた薄れていくような気持ちだ。
目がチカチカして、なおかつ室内温度が高くて、釜戸の中ってこんな感じなのか。
と、次の瞬間。
(………っ!?)
目の前に居たナギさんから、赤い液体――もとい、血が飛び散り、首が消えた…。
時代劇もびっくりである。そして後ろには人影。
こいつが切った事は明白だろう…。誰かは、判らないが。
:07/12/26 23:28 :SH903i :TpUAuREM
#169 [桔妁]
そして、びっしょびしょの布が被せられる。
………と、いう所から、繭の意識は途絶えた。
気付いた時には、見たことのない部屋に居た。
:07/12/26 23:31 :SH903i :TpUAuREM
#170 [桔妁]
「…頼仲ー。こい。」
ぼんやりした意識の中、知らない男の人が頼仲を呼んでいることだけが分かった。
しばらくすると、頼仲が私の顔を覗きこんでいる。
「繭!よかった!!生きとってくれた!!」
そんなことを、いいながら。
ああ、そっか…私――。
あの時の状況が私の中にあらわれた。
:07/12/26 23:35 :SH903i :TpUAuREM
#171 [桔妁]
「――…天弥は、?」
頼仲くんの前で、失礼だったろう。いきなり天弥とは。
ただ、謝りたかったからなんだけれども。
言う事きかなくて、ごめんて。
「そらやか?……あいつなら…ちょっと怪我をして休んじょるよ。」
「え?け、怪我??…それに私はどうやって頼仲くんの所に…」
:07/12/26 23:39 :SH903i :TpUAuREM
#172 [桔妁]
なんでも天弥は山菜採りの最中に、山から転がり落ちたらしい。
なので自宅療養中とのこと。
「…繭は……うちの前に倒れていたんよ。で、意識ないから預かったという訳じゃ。」
つまり、ここは頼仲くんの家ということか。
"誰か"が運んだのだろう。ナギさんの首を斬った"誰か"が。
:07/12/27 14:20 :SH903i :troNYYyc
#173 [桔妁]
「と、面倒見てくれてありがとう!!…じゃあ、天弥が心配だから行くね!」
こうしちゃあいられない。私は元気な訳だし、天弥の看病でもしなくては。
「平気なんか!?」
頼仲が繭の身体を支えようとする。だが、繭の足はしっかり地についている。
「うん!じゃあね-!」
外を見ると、町の中のようだ。これなら一人でも帰れる…………。
:07/12/27 14:24 :SH903i :troNYYyc
#174 [桔妁]
―――――
―
帰れる…………?
「そんな訳ないだろ-っ!!!」
町から村まで8キロあるのに、そんなにパパッと帰れる筈がないのだ。
「有り得ない-……。でももう5キロは歩いたよね…。」
そう、繭はがんばったつもりだった。だいぶ歩いたつもりだった……。
だが、実際は3キロしか進んでいなかった。
そろそろ途方に暮れる繭。
:07/12/27 14:29 :SH903i :troNYYyc
#175 [桔妁]
と、向かいから人が歩いて来るではないか。
「……お…天弥ぁ?」
しかも自宅療養中の天弥だ!
腕に箱を抱えながら歩いて……いや、走っている。
向こうも繭に気が付いたようで、さらに速く走ってきた。
:07/12/27 14:33 :SH903i :troNYYyc
#176 [桔妁]
「ま、繭かよ!!」
目を丸くして繭を見る天弥。
「や、ていうか…天弥、怪我は…?しかも服違うし、その箱は何…etc」
つっこみ満載の繭も、目を丸くしている。
:07/12/27 14:35 :SH903i :troNYYyc
#177 [カナ]
面白いです☆★
頑張って下さい
:07/12/30 22:40 :F703i :4Y81UAeU
#178 [桔妁]
カナさんありがとう!!
年末年始は忙しくて、あまり更新できないかもしれませんが、頑張ります
:07/12/31 14:04 :SH903i :ioR6Y8w2
#179 [桔妁]
「え、いや……これは…」
しどろまどろしているために、怪しい感じが滲み出ている。
「…まぁ、何があってもいいけど……凄い怪我じゃん!!なんで、休んでないのよ!!」
感情に任せて怒鳴る繭に、背中の筋が伸びる天弥。
だが、その後は微笑みが止まらない。
:07/12/31 14:12 :SH903i :ioR6Y8w2
#180 [桔妁]
「な、何!?笑わなくたって…」
「いや、はは…なんでもね-よ…あはは!」
折角怒ってやったのに笑われるなんて…。
なんかいつでも上に見られているようで腹が立つ…。
「じゃあ、俺これ届けるから行くな!」
:07/12/31 14:18 :SH903i :ioR6Y8w2
#181 [桔妁]
「ど、どさくさに紛れて逃げるつもり!?」
まだ喚く繭の横を風のように走って通り抜ける天弥。
「ちょ…待って、よっ!」
間一髪、横を過ぎ去る前に繭は天弥の腕を掴んだ。
「……痛いぃッ!!!!」
ゴトン、と天弥の腕から木箱が落ちた。
:07/12/31 14:27 :SH903i :ioR6Y8w2
#182 [桔妁]
「あ、ごめ…」
掴まれているのとは逆の手で、地面に爪を立てる天弥。
その痛さを物語るには十分だった。
そこから繭が視線を掴まれた腕に移すと、そこに巻いてあった包帯(真っ白でなくて黄ばんでいる)が、ひらひらと外れていった。
「あ……」
天弥がそう一声、発したときにはもう、繭は見てしまっていた。
:07/12/31 14:35 :SH903i :ioR6Y8w2
#183 [桔妁]
痛々しい、火傷を負った腕を。
(火傷…?嘘、だって天弥は山菜を………)
はっと、繭は思い出した。
いつだったか。頼仲と遊んだ日の帰り道に、盗賊が死んでいて、その先に刀を持った天弥がいて。
そのときも、天弥は"山菜採り"と言っていた、と。
:07/12/31 14:40 :SH903i :ioR6Y8w2
#184 [桔妁]
(じゃあ、まさか…天弥は嘘をつくときに"山菜採り"って言うんだとしたら……)
では、この火傷はつまり…
「いや、や…違くて…な…」
苦笑いで弁解する天弥の事を、繭の目にはどう映っただろうか。
「ナギさんを斬ったのも、何人の人も焼いたのも、私を助けたのも……天弥、?」
否、多分、何も見えてはいないだろう。だって繭の目は、水で滲んでいたのだから。
:07/12/31 14:46 :SH903i :ioR6Y8w2
#185 [桔妁]
それを、後から見る影があった。
頼仲の兄だ。
繭が家に辿り着けるか心配で、こっそり後をつけていたのだ。
「……繭殿に、気付かれてしまいましたか…。繭殿がどう心変わりしてしまうか…。天弥殿、残念だったな…」
ぽつりとつぶやいた頼仲の兄は、町の方に向くと歩きだした。
後ろに感じる空気は、耐えられるようなものではなかった。
:07/12/31 15:04 :SH903i :ioR6Y8w2
#186 [桔妁]
―第5章―
――見えなくて、大きくて
抱えきれない大切なもの。―
.
:07/12/31 15:09 :SH903i :ioR6Y8w2
#187 [桔妁]
「…繭が、おかしいんだ!」
ここは頼仲の家である。
そこに押しかけたのは、天弥だ。
雪降る中を走って来た天弥はあまりに寒々しく見えて、
普段は家に上がっても挨拶ひとつしない頼仲の兄が、今回ばかりは手ぬぐいを差し出してくれた。
「…で、繭がどうしたのじゃ。」
:07/12/31 15:18 :SH903i :ioR6Y8w2
#188 [桔妁]
「繭、なんか…寝てないみたいで……。体調が悪そうで…」
本気で心配しているようであったが、頼仲の兄がぽそりと言った。
「それは、天弥殿が殺し屋だってばれたから、だろう。」
「え、なんで頼弦(ヨシツル)がそんなこと言えるんだ?」
天弥は膝を抱えて、そこに頭を入れた。「兄上と呼びなさい」という頼仲の兄の声は、天弥に遠く聞こえた。
(…やっぱり、ばれたらやべーよな……。)
頭の中は数日前から、繭の潤んだ目の像を鮮明に映し出す。
:07/12/31 15:34 :SH903i :ioR6Y8w2
#189 [桔妁]
「………」
「……………すまん…」
頼弦が謝るが、空気はよどんだままだ。
「…や、でも!あれじゃ、そらやが言っていた"くらすめす"?のときに簪渡したら、機嫌もよくなるじゃろ?」
「…クリスマス、な。…でも、頼仲の言うことも一理あるかもしれねーな…」
天弥の目に、生気が戻りつつあった。
:07/12/31 15:47 :SH903i :ioR6Y8w2
#190 [桔妁]
来年もよろしくお願いします!!
紅白は見てませんでしたが
白組が勝ちましたね!!
私はよゐこの無人島SPを
見ていました!笑
本当、来年はさらに成長を
遂げて、皆様に小説を
お送りしたいと思います!
では、残り少し!!よいお年を!!
:07/12/31 23:46 :SH903i :ioR6Y8w2
#191 [桔妁]
――――
―
「あ、あの…ま繭―…繭…」
夕刻。数日前までは華のある話が舞っていたはずの夕食時だ。
近寄るだけでピリピリしそうな空気の中心に居る主に、天弥は話し掛ける。
だが、主である繭は目も合わせてくれようとしない。
「…ま、繭………」
と、急に繭が立ち上がった。
繭は、家を飛び出して、走っていった。
:08/01/01 02:07 :SH903i :a.l0GRvc
#192 [桔妁]
ただ一直線に、目指すのは崖の下へ――…。
降りしきる雪の寒さは、現代の北風よりも冷たく、身体に染みていった。
ひとつひとつの雪が、涙を流す言い訳となった。
だが、どの雪も繭の心にはかなわなかった。
:08/01/01 02:18 :SH903i :a.l0GRvc
#193 [桔妁]
気が付けば、正面が壁…。
そう、崖の下だ。
繭は、崖を素手の拳でなんども殴るようにしていた。
ここ数日、繭はあることを思っていた。
(天弥は、ここで私を救ってくれて…ご飯もくれたし、現代同士で仲良くしてくれた……。
野蛮な連中とかエロ親父からもかばってくれてた…
:08/01/01 02:24 :SH903i :a.l0GRvc
#194 [桔妁]
ただ、まさか人を殺すような人だとは思わなかった。
性悪なんだろうけど優しくて、どっか幼稚だけど暖かくて大きくて、そんな天弥が…。)
「……っ。…――帰してよぉ―。…いやだよいやだよ…私は、私は…」
そこへ、走って追い掛けた天弥の姿が崖の前に現れたが、繭の目に映る事はなく。
「いやだよ…。時代に流されて、人殺しになりさがるのは、嫌だよ……っ…。私も、変わる前に、帰してよ………!!」
天弥は、その場から動けなかった。
:08/01/01 02:30 :SH903i :a.l0GRvc
#195 [桔妁]
気が付いたときに繭は、頼仲の家に居た。
意識を失った訳ではなく、うっすらしか記憶にないだけで、声をあげて泣いていたようだ。
しかも家に頼仲は居なく、その兄だったのだから迷惑極まりないだろう。
「……あ、あの…なんかすみませんでした…頼弦さん…」
落ち着いた時の繭は、隣に居た頼弦に深く謝った。
:08/01/01 19:43 :SH903i :a.l0GRvc
#196 [桔妁]
「いや、いい…。だが、一言言わせてもらう…いいか?」
しゃくりがおさまり、自分の息遣いしか聞こえないことが少し恥ずかしいと思いながら、繭は頼弦の方を向き、頷いた。
「奴の…天弥殿の気持ちを、分かってやってはくれぬか…?
天弥殿は、生活のため、仕方なく…人斬りをしていたんだ。身寄りもなく、だからどうしようもなく…
幸せと引き換えにな…。」
:08/01/02 00:04 :SH903i :V3Yv/f4g
#197 [桔妁]
隙間風が余計に寂しさを煽った。
繭には、その意味がよくわからなかった。
「仕方ない……。…天弥殿―。」
頼弦は扉に向けて天弥を呼んだ。
すると、外から雪を被った天弥が現れた。
それと同時に少し吹雪が入って来て、その寒さが伝わった。
:08/01/02 17:02 :SH903i :V3Yv/f4g
#198 [桔妁]
「繭、っ…」
天弥は、繭の方に駆け寄った。
「俺、もう帰れないと思ったから……だからヤケになってた。
でも、もう…繭が来てからは…やめようと思って、上の方に言いにいったんだ…。
だけど、最後に極悪事件を任されて…。」
:08/01/02 17:08 :SH903i :V3Yv/f4g
#199 [桔妁]
「言い訳は、いらない!!」
繭は、一生懸命に話す天弥を蹴飛ばした。
と、天弥の胸元から布の包みが落ちた。――簪だ。
繭は静かに、胸元から落ちた物を拾った。
「あ、ごめ……これ、何―…?」
いつの間にか、頼弦は部屋から居なくなっていた。
:08/01/02 22:08 :SH903i :☆☆☆
#200 [桔妁]
「…や、これは、その……」
今出すべきではないことは承知であるそれは、繭の手へと渡り、布を開けられて、中身が見えてしまった。
「簪、何するつもりで…」
「いや、今日、現代でいうとクリスマスで…で…」
天弥は下を向いたまま答えた。
「つまり、クリプレ?……天弥が買ったの?」
:08/01/02 22:13 :SH903i :☆☆☆
#201 [桔妁]
「あ、あぁ…うん。」
繭の空気が明るくなりつつありそうだと、天弥は顔を上げた、が。
「人殺しの、給料?」
それはそれは綺麗な簪であったのだ。
それが、天弥の給料だとしたら…つまり人殺しをした分の給料ということだ。
「受け取れない…」
:08/01/02 22:16 :SH903i :☆☆☆
#202 [桔妁]
「それは平気じゃ!」
そこへ、聞き覚えのある声が響いた。
「「頼仲(くん)!?」」
「そらやの奴ァ、俺んところで働いちょるんよ!その少ない銭集めて買ったんじゃ!
だから繭、貰ってやってくれんか?」
なっ、と頼仲は天弥の肩をたたく。
:08/01/02 22:21 :SH903i :☆☆☆
#203 [桔妁]
「じゃあ、もう…殺してない?…人は、殺さない?」
簪を見つめながら繭が言った。
天弥も頼仲も頷いた。
「そのかわり"此処"は過去なんだ。いつかやむを得ないときがある…。そのときは、許してくれ。」
「繭を守りたいから」
「おい!!!!!誰が守りたいからだ!!」
:08/01/02 22:27 :SH903i :☆☆☆
#204 [桔妁]
頼仲が口を挟んだことにより、なんとなく格好がつかない天弥はぶんむくれていた。
繭は、そんな二人を見て微笑み、簪を髪に刺した。そして天弥のほうへ駆け寄り、
「帰ろう?……なんか、ごめんなさい…でした。」
ばつが悪そうに繭が天弥に言い、手を差し出した。
:08/01/02 22:31 :SH903i :☆☆☆
#205 [桔妁]
天弥は驚きながらも手を取り、頼仲に会釈した。
ぱしゃんと家の扉が閉まり、天弥と繭は帰っていった。
「あ-…繭が取られちったよ…。」
頼仲が繭に本気だったのかは知れないが、空しく響いた声は土壁が吸収した。
その後すぐに二人が雪まみれで戻って来て、明るくなるまで頼仲の家に居たのは、また違う話だ。
:08/01/04 14:58 :SH903i :☆☆☆
#206 [桔妁]
―第6章―
――守るためにと
男は泣いて剣を振る―
.
:08/01/04 15:01 :SH903i :☆☆☆
#207 [桔妁]
「うわ-!こんなにいいんですか??」
冬、村に人が来る事は滅多にないそうで、お茶屋は休業中である。
だからと言う事で、お雪ちゃんに連れられて、お雪ちゃんの家(?)の年始の手伝いに誘われたのだ。(家というか…仕事場?)
そう、今はその手伝いが終わり、一番偉い人からお金を貰った所である。
:08/01/04 15:09 :SH903i :☆☆☆
#208 [桔妁]
「あぁ、こんなに働いてくれたんだ。当たり前さね。」
姐御的なその人は、美人で気の強そうな人だ。
「有り難うございます!」
横ではお雪が腕をつつく。
「やりましたね!これでお着物を買って髪を結ってもらって…天弥様に…キャッ!」
めくるめく妄想を始めそうなお雪に、繭はため息をついた。
:08/01/04 15:16 :SH903i :☆☆☆
#209 [桔妁]
「着物か…。そ-だねっ!あ-でも髪は……」
チラリ、と繭はお雪の髪を見る。
綺麗に時代劇的に結ってある髪がヅラじゃないと思うと、もはやそれは芸術であると見えた。
ただ、やはり抵抗がある。
そのために繭はいつもポニーテールなのだ。
「髪は、……私の国ではこうだから…いいかな、これで。」
苦笑いすると、お雪も頷いた。
:08/01/04 15:20 :SH903i :☆☆☆
#210 [桔妁]
「まぁ、それでいいですよね!貴女らしいです!」
ふふ、と微笑むお雪に繭も微笑み返した。
と、奥からお雪の仕事仲間がやってきた。その人によると、客人らしい。
「繭を呼んでくれ、とお若い殿方が…」
あぁ、天弥が迎えに来たんだ。繭は立ち上がって姐御(違)に挨拶をする。
:08/01/04 15:25 :SH903i :☆☆☆
#211 [桔妁]
「いいねぇ、色男が居るときた!…あたしらも負けてはられないねぇ!!」
「や、別に男って…え??や!!違いますけどっっ!!」
誤解ですよと必死に否定する繭に、姐御はニタッと笑う。
「また、いつでも遊びにきて!!歓迎するからさ!!」
:08/01/04 15:29 :SH903i :☆☆☆
#212 [桔妁]
姐御がそう言うと、すくっとお雪が立ち上がり、
「玄関まで案内します」
と、連れていってくれた。
玄関先には天弥が居て、なんとも言えない平和な笑みで迎えてくれていた。
繭はお雪に礼を言い、天弥に駆け寄った。
すると、天弥は万遍の笑みで、こう言った。
「町に家を貰ったぞ!」
:08/01/04 15:33 :SH903i :☆☆☆
#213 [桔妁]
「は!?」
「だから、一人暮らしのジーサンが死んでな、家が空いたからくれたんだよ!」
今年最後の、神様からのプレゼントみたいだ。
「家…ってことは、部屋が幾つかあるんだよね!?…ドアついてるんだよね!?」
繭は上擦った声で尋ねる。
これで、寒い寒い家とはお別れだと思うと嬉しくてたまらない。
「当たり前だろっ!!さ、荷物は俺が持ってったから、早く行こう!!」
:08/01/04 15:38 :SH903i :☆☆☆
#214 [桔妁]
「うわ-!立派なモンじゃない!!」
居間と寝室と客間の三部屋ある家は、今時のマンションより立派だと思う。
居間にある囲炉裏を焚けば、今時期の冬もあったかいだろう。
「な!すげ-だろ!!」
「これで二人で同じ部屋に寝なくて済むね!!…私の部屋、寝室に決めた!」
「え」
:08/01/04 15:43 :SH903i :☆☆☆
#215 [桔妁]
「や、寝室は寝室じゃネ?」
繭はププッと笑って天弥に言う。
「や、「ネ?」っていうか、年頃の娘としては違う部屋が当たり前じゃネ?…天弥がなんかしてきたら嫌だしー…」
早速、寝室に自分の荷物を運び込む繭。
愕然とする天弥は渋々、自分の荷物を客間に運んだ。
:08/01/04 15:48 :SH903i :☆☆☆
#216 [桔妁]
(そ、そりゃ-頼仲とか、笹原とかに「よく我慢できるのう」とか言われてるけどなァ…別に、まだ平気じゃねーか…)
ぶつくさ言う天弥は、やはり納得が行かないらしい。
「さぁ、部屋に入れるもの入れたし…。頼仲と頼弦さん呼んで…―カウントダウンパーティーしよ!!」
打って変わってハイテンションの繭は、天弥に全力な笑顔を向けた。
「―…はいはい…呼びに行くよ…」
:08/01/04 15:54 :SH903i :☆☆☆
#217 [桔妁]
―――――
―
大晦日パーティーは大成功を納めた。
今は明け方である。
頼仲はおちょこを握りながら眠っていて、天弥は飲み過ぎでハイテンション、頼弦は酔い覚ましにと外に出ていた。
繭は酒に抵抗があるので、玄米茶を飲んで過ごしていた。
「まゆー」
酔った天弥は、餓鬼んちょで可愛いげがある。
:08/01/04 15:58 :SH903i :☆☆☆
#218 [桔妁]
が、ひっつかられると中々嫌なものなので、思わず繭得意の蹴りが飛び出してしまった。
「………ぐへ…っ」
何かが出たような音がしたが、気持ちが良さそうに眠る姿を見て安心した。
と、頼弦さんが戻って来た。
:08/01/04 18:05 :SH903i :☆☆☆
#219 [桔妁]
「あ、外は寒かったんじゃないですか?」
繭は頼弦に柔らかい笑みを向けながら、ぬるくなった玄米茶を一気飲みした。
「や、寝正月だとあんまりだから、みんなを起こしに来たのだが…それ…」
「あひゃれ?」
頼弦が見たときには遅かった。
:08/01/04 18:11 :SH903i :☆☆☆
#220 [桔妁]
「そ、そりゃあ頼仲が飲んでた酒だぞ……」
酒好きの頼仲が持ってきた中でも、自分専用だと言いはっていた強い酒を一気飲みしてしまったのだ。
運の悪い事に、玄米茶の隣にあったので仕方ないといえば仕方ないが…
そうこうしている間に、繭は意識を手放してしまった。
「結局皆……寝正月か…」
頼弦は繭の飲んでいた玄米茶を飲み干し、自分は壁によりかかり、眠りについた。
:08/01/04 19:47 :SH903i :☆☆☆
#221 [桔妁]
次に繭が目覚めたのは、二日の夕方であった。
寝室で寝ているあたり、誰かが運んでくれたのだろう。
「頼弦さんかな…お礼言わなくっちゃ……」
と、半身を起こしたところで、家に人の気配がないことに気がついた。
戸が半分開いていて、居間の様子がわかった。
勿論、正月の後片付けはしてある居間は、誰も居なく、囲炉裏の火が寂しそうに瞬いていた。
:08/01/05 00:16 :SH903i :☆☆☆
#222 [桔妁]
居間に出ると、微かながらに白粉と香袋(多分お雪さんのだろう)の匂いが鼻をくすぐる。
「何か、あったのかな…」
とりあえず、天弥の部屋である客間を覗く。
やはり居ない。
そして、確かに部屋の奥に立て掛けてあった刀がなかった。
念のために部屋を見回したが、やはりない。…余計に、嫌な予感がした。
:08/01/05 00:21 :SH903i :☆☆☆
#223 [桔妁]
「……天弥…」
そのまま表に出て、宛も無く走った。ただ身体が進むままに走った。
気がつくと山に居た。
日はまだ冬で短く、もう西の地へと落ちていた。
東を見ると、暗闇が追い掛けて来ている。…星が、それこそ宝石のように輝いていた。
と、近くから金属が混じり合う、リアルな音が聞こえる。
:08/01/05 00:27 :SH903i :☆☆☆
#224 [桔妁]
少し近くまで歩みよると、カチンと足に何かが当たった。
「…ん?」
拾い上げればそれは、小刀。血も何もついていない、輝く小刀だった。
そして、暗くなりつつあった視界が慣れてきた頃と同時に、目線を金属音の方へ向けた時、繭はその場に固まった。
「……!!」
そこには、生臭い臭いを漂わせて、一人の男を後ろに庇い複数の人と戦う天弥の姿があった。
:08/01/05 01:22 :SH903i :☆☆☆
#225 [桔妁]
白い雪は多分、紅く染まっているんだろう。
庇われている人は動かない。
しばらく見ていると、一人が天弥にやられた。
それに恐れて、あとの人達は逃げて行った。
「………」
:08/01/05 13:39 :SH903i :☆☆☆
#226 [桔妁]
繭はすかさず駆け寄る。
そして、天弥の目の前まで行った。
頬を思いきり叩こうと思った。
けど、天弥は泣いていて叩く気は、何故か失せた。
「…どうしたの?」
天弥の涙は、自分の涙も誘った。
:08/01/05 13:48 :SH903i :☆☆☆
#227 [桔妁]
ふと、さっき庇われていた人の方に目が向いた。
天弥もそちらを向き、冷たい雪の上に、何の躊躇もなくしゃがんだ。
そして、庇われていた人からは息がもうないようで、ピクリとも動かない。
先程より暗いので、繭には誰かも解らない。
そこで、やっと天弥が口を開いた。
「…繭、これ、な…頼、仲…」
:08/01/05 16:07 :SH903i :☆☆☆
#228 [桔妁]
繭は、耳を、天弥を疑った。
「頼仲くん…?え、ま、まさか…」
冗談っぽく笑うと、視界が暗闇に慣れた。
雪の上に、確かに見たのは…
本当に頼仲くんだった。
:08/01/05 16:11 :SH903i :☆☆☆
#229 [桔妁]
「え、な、なんで…」
一日の朝方、確かに気持ちがよさそうに眠る頼仲を見たのに。
「ただ、酔っ払いに絡まれたんだよ…母親の、墓参りの途中だと、思う…。………ごめん、ごめん頼仲…」
天弥が頼仲を抱きかかえて謝るとき、繭は顔を反らさずにはいられなかった。
:08/01/05 17:10 :SH903i :☆☆☆
#230 [桔妁]
――――
―
それから天弥は動かない頼仲を背負い、繭と山を下りた。
時は既に深夜に回っていたので余計に寒く、指はかじかんで、足は霜焼けで酷かった。
でも天弥はそんな事など頭中に無いだろう。
ただ、悔しさだけが腹を巡っていた。
繭は何も、励ましも、ましては話し掛ける事すらも出来なかった。
:08/01/05 22:55 :SH903i :☆☆☆
#231 [桔妁]
天弥の涙は、渇いていた。
繭の涙は、出なかった。出す事さえも出来なかった。
ただ、隣で天弥におぶられている頼仲くんは、本当に眠っているようだった。
天弥の歩くリズムの振動が息遣いによく似ていたからだろうか。
二人は、何の会話も交わさずに町へと着いた。
:08/01/05 23:01 :SH903i :☆☆☆
#232 [桔妁]
――――
―
頼仲の家に戻ったけれど頼弦は寝ていて、繭は起こすのが嫌だった。
それでも天弥が繭に起こせと言うので、泣きそうなのを堪えながら頼弦を起こした。
「――…繭殿??」
寝ていたらいきなり女が目の前に居たとなればびっくりだろう。
いかにも何も知りませんという顔の頼弦を見ると、繭はさらに心が痛んだ。
:08/01/06 10:42 :SH903i :☆☆☆
#233 [桔妁]
「よ、頼弦さ-…ん……」
とうとう繭は泣き出してしまった。
「どうした、?」
繭の涙にただ事ではないと感じたが、また大形、天弥から逃げて来たのだろうというところだった。
「繭、お前……」
繭の泣き声を聞き、天弥が頼弦の部屋に来た。
頼弦はさらに目を丸くして二人を見た。
「二人共、こんな夜にどうした?」
:08/01/06 10:47 :SH903i :☆☆☆
#234 [桔妁]
頼弦は部屋に明かりを燈した。
そこで頼弦の目に浮かび上がるのは、血に服を濡らした天弥と、泣きじゃくる繭だった。
これはやはり、ただ事ではないと感じた頼弦は言った。
「…今、父上が帰ってきているから話しを聞こう。……頼仲も呼ぶか?」
正月休みだから、父親が出稼ぎから帰っているのだ。
「…頼仲の兄上……そ、そのな…頼仲なんだけど、さ…」
:08/01/07 13:04 :SH903i :☆☆☆
#235 [桔妁]
「ん?」
「頼仲…死ん…死んだ…」
頼弦は、天弥の言葉に目を丸める。
その、天弥の服に付く赤が頼仲のものかと言った。
「いや、数人の奴に、喧嘩を売られてたんだと、思う…」
天弥が頼弦の前で土下座をした。
繭も、頼弦もびっくりだ。
:08/01/07 13:09 :SH903i :☆☆☆
#236 [桔妁]
「俺が行った時にはまだ、息があったんです!!…喋って、俺に、
"人は殺しちゃ駄目じゃ、酒に酔ってるだけじゃ、こ奴らは何も悪い事はない"
そうやって、言ってたんです。でも、
頼仲を救うためには、酔っ払いを消す他なかった…
でも、皆居なくなったとき…頼仲の息は、もう……
すいません…!!!すいません、すいません!!」
:08/01/07 13:14 :SH903i :☆☆☆
#237 [桔妁]
天弥の話を聞く繭は、はっと気がついた。
足に当たった、あの小刀を。
あれは確か、頼仲のだ。
いつか一緒に遊んだ時、変な侍に向けていた。
繭がいるから、無駄な殺生はしないよ
そのときの、小刀だ。
そして気がついた。
頼仲は、本当に無駄な殺生はしない人なんだ。
:08/01/07 13:18 :SH903i :☆☆☆
#238 [桔妁]
あのときの侍だって、その場だけの戦いだった。
真剣勝負じゃなくて。
今回も、酔っ払いなら、悪いのはその人自身じゃないって…お酒だったって。
だから剣は振るわなかったんだ。
だから、死にそうな時にも自分の志を、天弥に告げてたんだ……。
それでも、天弥は守る者を優先して、たんだ…
:08/01/07 13:23 :SH903i :☆☆☆
#239 [桔妁]
―――――
―
その後、頼仲を墓に連れて行き、事は済んだ。
頼仲の父親は、泣き顔こそ見せなかったが、瞼の腫れからすると、相当泣いたに違いない。
「頼仲は、心の広い奴だった。――それでも、人を殺めぬ理由を
"わしは、無駄に殺しはせんよ。まァ、ただ自分が臆病なんじゃけどな"
と、臆病だからと申していた…。
そこが、仇になったのか、頼仲は本望だったのか…」
:08/01/07 13:29 :SH903i :☆☆☆
#240 [桔妁]
誰に話しかけたのか、頼弦は空を向いていた。
そのあとは、お線香が空に昇るのを一同眺めていた。
.
:08/01/08 17:49 :SH903i :☆☆☆
#241 [桔妁]
―第7章―
――昔話旅人さんの
鬼道洞窟昔話―
.
:08/01/08 17:58 :SH903i :☆☆☆
#242 [桔妁]
「繭、お前いい加減になァ…」
天弥は髪をかいて、面倒臭そうに欠伸をした。
季節は、雪解けの春。
小春日和でついついうたた寝の今日この頃。
「な、天弥だって薄情じゃない!?友達じゃん!」
私、繭は元気になれません。
頼仲くんにもらったハートのお守りをきゅっと握る。
:08/01/08 18:05 :SH903i :☆☆☆
#243 [桔妁]
「もう、頼仲は居ないんだからさ。……前向け。前。
頼仲だって、望んでないと思う。こんなクヨクヨされるのは。」
分かる。
天弥の気持ちも、頼仲くんの気持ちも。
……うん。そうなんだよね…!!
「うん、分かった。…そーだよね!!頼仲くんも…ってアレ??
話聞けぇぇ!!!!」
.
:08/01/08 20:33 :SH903i :☆☆☆
#244 [桔妁]
天弥は村外れへと歩いていく、旅人のような人にくぎづけだ。
そう!繭と天弥は久しぶりに村に居るわけである。
「ん?変わった人だね…」
村の端には鬼道の洞窟があるために、滅多に人は近づかないと天弥もよく言っていたが。
だが、旅人は奥へ奥へと進む。
いつの間にか無意識に二人も、奥へ奥へと尾行していた。
:08/01/08 20:37 :SH903i :☆☆☆
#245 [桔妁]
「ちょ、なんで後つけてるの!?」
草村に隠れながら洞窟の前にいる旅人を指差し繭は小声で言う。
「馬ー鹿。だったら付いてくんなよ。……でも、なんかさ、珍しいじゃん。人が洞窟に居るのって。」
「確かにそうだけど…あれ?なんか…あの人こっち見てるよ?」
.
:08/01/09 15:16 :SH903i :☆☆☆
#246 [桔妁]
繭が旅人をチラ見した瞬間に、目が合った気がした。
「そんなはずないだろ…って………!!!」
そう言うと天弥は固まった。
しばらくして、しゃがみこんでいる繭の頭上に影がかかった。
それは紛れも無く人の影。
繭が上をむくと、旅人がにっと笑った。
:08/01/09 15:21 :SH903i :☆☆☆
#247 [桔妁]
「え、あ、あれれれ…」
笠を被った旅人の顔は確認出来ず、余計に緊張させられる。
旅人は、透き通る声で二人に言った。
「お前ら、ここの村人か?」
確実にその声に少し酔いしれていた二人だが、しばらくしてからこくこく頷いた。
「そうか!!で…この洞窟の噂を知っているか??…私は、この事を物語にしたく来たのだが。」
:08/01/09 15:26 :SH903i :☆☆☆
#248 [桔妁]
二人はブンブンと首を横に振る。
「二人とも何も喋らないとは、似た者夫婦だな!!」
あはははと笑うその声も、稟としていて美しい。
天弥もつられて笑っている。
「ん?夫婦じゃないですよ!!??」
笑いで掻き消され、繭の必死な声は届かなかった。
:08/01/09 15:44 :SH903i :☆☆☆
#249 [桔妁]
「…―ていうか、そもそも…この洞窟の噂って、なにがあるの?」
しばらく笑っている二人を見ていた繭がそういうと、旅人がまた、にっと笑った。
「なんと、村人なら知っているかと思ったんだがな!!…中々心を引かれる噂があるんだよ!!」
天弥の方をむくと、俺も洞窟については知らないと首を振った。
「それじゃあ私が話してやろうか。」
旅人は繭達としゃがみ込み、洞窟の昔話を始めた。
:08/01/09 15:49 :SH903i :☆☆☆
#250 [桔妁]
「この洞窟はな、名前の通りの"鬼の道"なんだ。恐ろしい鬼の国への通路となっているらしい。
"何らかの事"をすれば、道は開けるらしい―…まあその"何か"は今調べようとしているんだけども…
そしてその道が繋がった瞬間、ふいに暗闇に包まれ……いつの間にか、意識を失っているんだ。
目を覚ますと…すでに鬼の国に着いてしまっているそうだ。
:08/01/09 20:17 :SH903i :☆☆☆
#251 [桔妁]
目が覚めると、沢山のお墓の並ぶ太い道があるそうだ。そして、遠くからは鬼の鳴き声が。
そうして、お墓の並ぶ道を段々と道を進んでいくと……鬼の都を見渡せるという話だ。
家屋がところ狭しと立ち並び、人々が慌ただしく働く。…人々は鬼の配下のようだ。
それに目を向けていれば、お次は巨大な大蛇が鳴きながら高速で駆け抜ける。
だが、鬼の姿は見当たらないというのが不思議なところだ。」
:08/01/11 23:34 :SH903i :☆☆☆
#252 [桔妁]
話が終わると、旅人はよっこらせと立ち上がった。
「私はだな、この洞窟の外に行ってみたいんだよ。」
澄んだ声でそういった。
「え、だって鬼の国行って帰ってこれるの?」
繭がそう言い、ムードは少々崩れたが。
「まぁ、この話があるということは帰ってこれたから伝えているんだろう?」
旅人が話を元に戻せば、口端をあげて微笑んだ。
:08/01/12 14:23 :SH903i :☆☆☆
#253 [桔妁]
「そこでだ!…私と共に洞窟の外へと行ってみたくはないか?」
繭と天弥の二人は顔を見合わせた。そして旅人に顔を向けた。
「いいですよ!!」
「あ、今回は…やめときます。」
繭が断り、天弥は思わずポカンと殴った。
:08/01/13 18:18 :SH903i :☆☆☆
#254 [桔妁]
「何するのよ!!」
「お前、普通そこは参加だろ?」
天弥はキラキラ輝く目をこちらに向けている。
繭は一瞬どもったが…
天弥の誘いはしつこいために、しかたなく。
「う-ん…。あたしは入らないけどね?」
承諾したのだった。
.
:08/01/13 22:12 :SH903i :☆☆☆
#255 [桔妁]
―第8章―
――おばあちゃんの知人の
蔵の奥から―
.
:08/01/13 22:14 :SH903i :☆☆☆
#256 [桔妁]
――――――――
―
「繭が居なくなってからもう半年以上か?」
「…………。」
繭の居た現代では、両親が心配に心配をしていた。
母はやつれていた。
テレビでも、もうとっくに顔を見せる事はなく、その存在は、天弥と同様に世界から薄れていた。
:08/01/13 22:18 :SH903i :☆☆☆
#257 [桔妁]
繭の捜査をする上で、両親は天弥の両親にも会っていた。
だが、全く情報はなかった。
天弥の友達は現在中学三年生である。
彼等の中からも天弥の存在は確実に消えつつあった。
:08/01/13 22:21 :SH903i :☆☆☆
#258 [桔妁]
しかし、立ち上がった人達は僅かながらに居たのだ。
警察にも見放されてきている二人に目を向けた者達……
――――
―
「ねぇ、今回の議題は?」
髪の長いおかっぱの少女が話し掛ける。その先には少年が。
気付けば丸い机を数人の生徒が囲んでいる。
:08/01/14 09:50 :SH903i :☆☆☆
#259 [桔妁]
「今回は―…"神隠し"にしないかい?」
彼等は小さな町のある学校の生徒たち…
心霊非科学研究部のメンバーだった。
「神隠し…って去年の夏のですか?あれは没になったじゃないですか。」
「いや、それが調べてみたんだけど…。ミステリー…。きっと凄いことになる気がするんだよ。」
:08/01/14 09:56 :SH903i :☆☆☆
#260 [桔妁]
彼等は校内で、色々な意味で噂になっている。余り活動的な部活ではない為に、部員は四人。部費は常に赤字であるのは言うまでもない。
その部員達を詳しく説明するとしよう。
面白そうな事を見つければ"ミステリー"と言う部長。
気の強そうなおかっぱ頭の副部長。自称座敷わらし。
座敷わらしに連れられて、ひょんな事から部員になった二年生。元サッカー部員。
全ての雑務をなんなくこなし、違う波動をキャッチできる一年生の女子。
:08/01/23 15:06 :SH903i :☆☆☆
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