.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#129 [桔妁]
 
「ん-…。勿体ないから、一人で食べようかと思ったんだけどね……。あげる、よ。」

繭がチョコボールを差し出す。

「?」

タダでくれるなんて、なんか繭には有り得ないと思い、不思議に思っていた。

「ほ、ほら、クリスマスだと思って!!今、もう少しで雪降りそうじゃん!ね?」

けど、何故か今日の繭は素直に受け取れたから、俺も素直に受け取った。

⏰:07/12/25 00:06 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#130 [桔妁]
 
「…あ、ありがと……」

チョコボールって、食べるのにこんなに緊張しただろうか…。

俺はゆっくり口に運んだ。

「……あ!!」

「!!?ななな何だよ!!」

食べようと思ったら、繭が大声あげるもんだから口ん中に落っことしてしまった!!

⏰:07/12/25 00:08 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#131 [桔妁]
 
「し、賞味期限…平気かナ?」

「え、」

冷や汗かいたふうに笑う繭は、なんか憎めないが…

腐ったチョコだったら…どーするんだよ俺!!


「あ、来年の一月まで平気だ!あははっ!!」

口の中のチョコボールのことを気にしていたら繭がいった。

「な、なんだよ……。…ていうか…なんで本当に俺にチョコボールなんか?」

⏰:07/12/25 00:12 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#132 [桔妁]
 
そこがやはり疑問だ。

誰より食い意地のはった女だから、絶対に有り得ないのに……

「ん?…本当にクリスマスプレゼントだよ!」

そういう繭を、今日は信じようと思う。

「でもさ、普通…チョコはバレンタインじゃねーの?」

そこで、俺がチョコボールを食べながら、そうやっていえば。

⏰:07/12/25 00:16 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#133 [桔妁]
 
「いいじゃん!…ほんと、有り難うのひとつくらい言ってくれればいいのにっ!!」

がみがみ言う繭が楽しくて仕方ない。


こいつにとって、家族や友達に会えないのは不幸なのだろうけど、俺は繭に会えて、今までの三年間の不幸な日々が変われたから幸せだ。


本当のクリスマスの日には、きちんとプレゼントをあげよう。少なくとも、俺と過去に居て、楽しいと思える日が、ひとつでも増えるように。


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⏰:07/12/25 00:21 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#134 [桔妁]
 
―Side繭――


夕刻―――…。

「静かでつまらない……。」

床に座っている繭だが、自分の心臓の音が聞こえるくらい静かで、つまらない。

と、収納スペースに一際古い箱があるのに気がついた。

「…金めのものかな……。小判とかならもらっちゃおー…」

興味本位で、箱に手をかけて、中を見た。

⏰:07/12/25 00:25 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#135 [桔妁]
 
「?服??」

それは、小さめのTシャツと短パンだった。

恐らく、というか確信を持ち天弥のだろう。

そして箱の底に、紙が入っていた。

手紙のようだ。

「…旅行楽しんでいらっしゃい……、おばあちゃんの言う事を聞くのよ。寂しくなったら、電話するのよ。」

お母さんの字だろうか。愛情が滲み出ているようだ。

⏰:07/12/25 00:29 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#136 [桔妁]
 
慣れた慣れたと、天弥は言っているだろうけど。

「天弥だって…帰りたい、よね…」

三年間、どんな思いだったんだろう。知らない土地で一人きりで…。

「よしっ!!元気つけてやらなくっちゃね!!」

私は、隠し持っていたチョコボールを鞄から取り出した。

「現代の味を食べさせてやろうかな!!」

⏰:07/12/25 00:31 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#137 [桔妁]
 
そう、私だって寂しいけど。

天弥が居たからだいぶ違う。

そのへんは、私だって分かってるんだから。

少しでも、繭が来てくれてよかったよ俺。とか思ってくれたらいいなって。


だから、まぁ…

早川先輩よりは下だけどね、天弥だって幸せでいて欲しいなって思うわけです。

―――

.

⏰:07/12/25 00:36 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


#138 [桔妁]
 



通じていないようで

通じている


そんなふたりの

冬の始まりは

なんとなく

暖かかった。

⏰:07/12/25 00:39 📱:SH903i 🆔:ooso8LXg


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