.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#298 [桔妁]
――
―
「暁さん、今度は何かあったんですか?」
横から顔を伺うようにして天弥が暁に尋ねた。
暁はそんな天弥に対し、くすくすと笑いながら言った。
「嫌だな、兄さんでもいいぞ??」
悪戯っぽく言う声はやはり透き通っていて美しい。
:08/04/04 00:52 :SH903i :☆☆☆
#299 [桔妁]
「えぇ!?…いや、あのときは失礼しました!」
初めて女だと気付いた日から比べればほとぼりは冷めていたので今では普通の対応は出来た。
それよりも今は素っ気ない繭についての方に思考回路は動いていた。
「……今日はだね、ほれ。物語の名前を考えたんだ。」
少しぽやっとしている天弥に対し、暁は一枚の紙を渡した。
:08/04/04 00:58 :SH903i :☆☆☆
#300 [桔妁]
「…ん?……お伽村、鬼国の書、……?」
そこには綴られた沢山の本の題名たち。
この中から一つに絞るのであろう。余り達筆すぎて天弥には読みにくい。
「…うわー、こりゃ完成が楽しみですね、兄さ…暁さん!」
そう言えば暁は目を細めて微笑んだ。
「完成したら天弥と繭に一番に見せてやろう!」
:08/04/04 01:04 :SH903i :☆☆☆
#301 [桔妁]
―――――――
―
その頃、電車に五月蝿いノイズがかかり、五月蝿い声が響いた。
吉原たちの目指す駅を言う声だった。
そしてそんな声のかかる一時間前、柳園は夢を見ていた。
そう、彼女の特異能力ともいえる異波動を掴んだ事によって見る夢の事…。
:08/04/04 01:08 :SH903i :☆☆☆
#302 [桔妁]
柳園の目の前には倉が。
そして彼女は知らずのうちにその中へと侵入することを許されて、中にいた。
そこに広がるのは薄暗い中に微かに光る太陽の光と、時たまに舞う埃、沢山積まれた雑貨たちであった。
ただそのどれにも、柳園は目に止めはしなかった。
ただ一番上に忘れられたように置かれた、その本だけを除いては。
:08/04/04 01:13 :SH903i :☆☆☆
#303 [桔妁]
「…これが、今回の……」
それを手にする所で、柳園は慶に肩を揺すられて目を覚ましてしまった。
「慶、駅着いたの?」
夢見後の柳園は少し人格が変わる。…先輩の慶にも容赦なしに素っ気ない無表情な顔で、冷酷に言い放つ。
「…何か、見たのか?」
それを知る部員は特に何もおかしいとは思わない故に言葉を続けた。
:08/04/04 01:17 :SH903i :☆☆☆
#304 [桔妁]
「ん、部長…。本でしたよ。なんかボロボロな倉の中に置かれた。」
徐々に戻りつつある自意識の中で、その夢の記憶を辿り、柳園は言った。
「早速、ミステリー?」
くくっと嬉しそうに部長は微笑んだ。慶は明らかに冷たく、部長を見た。
「…もしも部長が部長じゃなかったら蹴りたいっス。」
そして無邪気な部長にそんな言葉を浴びせた。
:08/04/04 01:22 :SH903i :☆☆☆
#305 [桔妁]
―――――
―
寒い、寒い夕方だった。
なのに身体はポカポカしていて、家に居る所ではなかった。
そしてそれに付け加えて苛々の止まらない繭はとうとう家を出た。
「外なのにポカポカするっ………」
向かうは無意識ながらにきちんと意志を持ち、頼仲の墓であった。
:08/04/04 01:25 :SH903i :☆☆☆
#306 [桔妁]
死人に口無し。
頼弦に話すのも何か恥ずかしいので頼仲の所へ向かい、独り言を喋ろうと思っていたのであった。
――――
―
暁と別れ、再び落ち合った頼弦に酒を持たされて言われた。
「…天弥殿、今日は月が綺麗だから外で呑もう。」
そんな話は繭の知らない事。
:08/04/04 01:29 :SH903i :☆☆☆
#307 [桔妁]
―――…。
「…ははは、何か変だよねぇ…ごめんね、頼仲くん…」
繭はといえば、頼仲の墓前で泣き笑いをしていた。
気が付けば、夏が過ぎ秋が流れて冬を越してきていた。
一周分の季節を此処で、過去で過ごしてきていた。
皆と、天弥と。
:08/04/05 00:19 :SH903i :☆☆☆
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