.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#304 [桔妁]
「ん、部長…。本でしたよ。なんかボロボロな倉の中に置かれた。」
徐々に戻りつつある自意識の中で、その夢の記憶を辿り、柳園は言った。
「早速、ミステリー?」
くくっと嬉しそうに部長は微笑んだ。慶は明らかに冷たく、部長を見た。
「…もしも部長が部長じゃなかったら蹴りたいっス。」
そして無邪気な部長にそんな言葉を浴びせた。
:08/04/04 01:22 :SH903i :☆☆☆
#305 [桔妁]
―――――
―
寒い、寒い夕方だった。
なのに身体はポカポカしていて、家に居る所ではなかった。
そしてそれに付け加えて苛々の止まらない繭はとうとう家を出た。
「外なのにポカポカするっ………」
向かうは無意識ながらにきちんと意志を持ち、頼仲の墓であった。
:08/04/04 01:25 :SH903i :☆☆☆
#306 [桔妁]
死人に口無し。
頼弦に話すのも何か恥ずかしいので頼仲の所へ向かい、独り言を喋ろうと思っていたのであった。
――――
―
暁と別れ、再び落ち合った頼弦に酒を持たされて言われた。
「…天弥殿、今日は月が綺麗だから外で呑もう。」
そんな話は繭の知らない事。
:08/04/04 01:29 :SH903i :☆☆☆
#307 [桔妁]
―――…。
「…ははは、何か変だよねぇ…ごめんね、頼仲くん…」
繭はといえば、頼仲の墓前で泣き笑いをしていた。
気が付けば、夏が過ぎ秋が流れて冬を越してきていた。
一周分の季節を此処で、過去で過ごしてきていた。
皆と、天弥と。
:08/04/05 00:19 :SH903i :☆☆☆
#308 [桔妁]
「…早川先輩、もう表情が思い出せないんだもん…」
しばらく色々と繭は墓石(大きな岩だけど)に語りかけていれば、不意に後ろに気配がした。
繭はそちらの気配を確認しようと振り向こうとした。
だが、驚きの声によりそれは止められた。
「振り向くな、」
「―――…!?」
:08/04/05 11:28 :SH903i :☆☆☆
#309 [桔妁]
―――――――
――
「寒っ!!頼弦山ん中に用事があるとか言ってたけど…何だ?」
しばらく二人で呑んでいた訳であるが、突然頼弦は山の中へと入って行った。
確かそっちは頼仲の墓…。
「俺放って、弟の墓参りか!?」
いても立ってもいられなくなってきた天弥は墓へと向かった。
:08/04/05 11:43 :SH903i :☆☆☆
#310 [桔妁]
――
―――――――――
(そん、な…)
繭は言われた直後から微動さえ出来ない状況に居た。
「そうそう、振り向いたら、いけんよ?……繭、」
少し、訛ったような口調が繭の耳に入ってくる。
「な、…よ、頼仲くん……!?」
:08/04/05 12:18 :SH903i :☆☆☆
#311 [桔妁]
繭の心臓は以外にも静かに、静かに動いていた。
「何、泣いとるんじゃ?…やっぱり天弥じゃなくて、わしにしておけば、繭は泣かさないのに。」
「い、いやだな…頼仲くんはもう死んじゃってるし…。」
不思議と、普通に話が出来た。
…頼仲の声は少し低く聞こえたが、温かいものであった。
:08/04/05 12:25 :SH903i :☆☆☆
#312 [桔妁]
「あははは!!死んじゃってるからって、そりゃあそうじゃけど!」
「……はは、」
そんな繭の少し後ろの木の上、そこに頼仲の正体は居た。
(…頼仲の声、難しいな…)
誰より頼りになる兄、頼弦だ。
:08/04/05 14:30 :SH903i :☆☆☆
#313 [桔妁]
(だけどこうして、成功すれば繭殿と天弥殿がもう泣きに来ないからな…もう少し頑張ろう…)
実はきちんと、頼弦がここまで繭と天弥を応援するには理由があった。ただ、泣きに来られたら迷惑だという理由が。
それからしばらく繭の愚痴を静かに聞いていたが、
「…じゃけど、そらやは繭を好いてるのは丸分かりじゃ!」
:08/04/05 14:36 :SH903i :☆☆☆
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