-Castaway-
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#349 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「ならこの娘だ!」
内藤「しまった藍を!」
内藤が踏み込むより早く、グラシアが背後の窓ガラスを突き破る。直ぐ様燦に乗って内藤らを一瞥し、そのまま窓から飛び下りた。
内藤「くそっ!」
内藤が慌てて窓から身を乗り出す。降下するグラシアの足下には中庭のような空間が広がっていた。
司令室は5階で、下は恐らく1階。壁に取っ掛かりも無いのに飛び降りるのは危険かもしれない。
ふと、対面の中庭の端からグラシアの着地点に向かって走る人影が、3人見えた。
着地しようとするグラシアに思い切り攻撃する3人を見て、内藤が安堵と真剣さの混じった息を吐いた。
:08/01/25 01:01 :P903i :piHG.QUc
#350 [◆vzApYZDoz6]
内藤「…とりあえずは大丈夫か」
内藤が振り返ると、まだ動けないでいる京介とアリサとラスダンが見えた。
内藤「っと、まだ動けないままか。仕方ないな」
内藤が、さっきまで藍が座っていた椅子に一足で近付き、風船人形に手を掛ける。さっきまで触れる事が出来なかった風船に触れられたのは、発生装置が機能を停止させている事を示唆していた。
内藤が風船の顔に拳を叩き付ける。風船は散々に割れて、それと同時に動けないでいた3人の体に突然自由が戻った。
アリサ「やっと体が戻った♪」
ラスダン「てゆうか僕ら絶対存在を忘れられてたような…」
:08/01/26 18:05 :P903i :ug1pEsy.
#351 [◆vzApYZDoz6]
京介「それよかあいつを追い掛けないと!」
京介がすぐに振り返り、エレベーターのボタンを押す。4階と5階を往復するだけのエレベーターは、すぐに京介らの居る5階に到着した。
京介、ラスダン、アリサに続いて、内藤もエレベーターに乗り込む。京介が4階のボタンを押し、扉を閉めるボタンに手をかけようとしたところで、内藤が唐突に口を開いた。
内藤「川上…焦るなよ。自分の力を自覚するんだ」
京介「えっ?」
思わず振り返ると、内藤は少し俯いて腕を組んでいた。京介は言葉の意味が分からなかったが、内藤はそれ以上何も喋りそうにない。
エレベーターの扉は、そうこうするうちに閉まった。
:08/01/26 23:32 :P903i :ug1pEsy.
#352 [◆vzApYZDoz6]
-中庭・京介らが5階に到着する15分前-
拳が空を切る音と風船が弾ける音が連続で響く。時折、小爆発の音と共に幾体かの風船人形が宙を舞う。
ハル兄弟とリーザが風船人形を潰し始めてから、既に20分近く経過している。初めは中庭を埋め尽くす程に無数の風船人形が蠢いていたが、今はもうハル兄弟とリーザの周囲に居る数十体を残して、それ以外の全ては残骸と化して中庭の地面を覆っていた。
リーザが『ストライクボム』を使うために刀を鞘に納めた回数は、最早数え切れない程。残りも少なくなった風船を前に、リーザが何回目かも分からない鞘納めをする。
:08/01/26 23:51 :P903i :ug1pEsy.
#353 [◆vzApYZDoz6]
これまでは一瞬納めただけですぐに抜刀していたが、今度は刀を抜かない。その様子を尻目にした兄弟が、息を切らしながら背中を合わせて話し掛けた。
ライン「だいぶ数も減ってきたし…」
レイン「できるだけ1ヵ所に集めてみようか?」
リーザ「お願いしますわ」
よし、と小さく頷き、兄弟が左右に分かれて跳ぶ。周りを囲む風船の外側に着地した。
兄弟が風船の腕を掴み、次から次へと中庭の端へ投げ飛ばす。リーザは鞘を持つ左手以外の四肢を使い、風船の単純な攻撃を往なしている。
30秒程で中庭の端に全ての風船が積み上げられる。もがきバラけようとする風船よりも先にリーザが踏み込んだ。
:08/01/27 00:03 :P903i :aI5Q63wk
#354 [◆vzApYZDoz6]
リーザが納められた刀の柄に手をかけ、鞘をしっかりと握り直す。
一瞬足が止まり、次の瞬間には一閃の光と鍔鳴りの音を残して、積み上げられた風船の後ろに居た。鞘には刀が納められたまま。
その刀は、一度抜かれていた。
突如として、積み上げられた風船の中腹から爆発が起こり、辺りに散々になった風船の残骸が飛び散る。
リーザがゆっくりと立ち上がり、振り返る。唇を持ち上げながらこちらに歩いてくる兄弟に微笑んだ。
ライン「やっと終わったな」
リーザ「ええ…疲れました」
レイン「それにしても全くふざけた数だな。なんでここにこんなに風船が居るんだ」
:08/01/27 00:16 :P903i :aI5Q63wk
#355 [◆vzApYZDoz6]
3人が辺りを見回す。
本来なら芝生が生えている中庭の地面は、風船の残骸が覆い尽くして黒いビニールだらけになっている。
レイン「まぁ…今は考えても仕方がないな。とりあえずグラシアを…」
喋り声を遮るように、ガラスが割れる音が響いた。
音がした方を見ると、上からバラバラとガラス片が落ちてくる。続いて落下してきたのは、ハル兄弟にとっては憎役の人間。
レイン「お、今日はついてるな。向こうから降ってきやがった」
ライン「そりゃカウントダウンハイパーで2位だったからな」
リーザ「行きましょう!」
リーザの掛け声と同時に、3人が走り出した。
:08/01/27 00:38 :P903i :aI5Q63wk
#356 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「ぶはぁ!!」
内藤を見上げながら落下していたグラシアの腹に衝撃が走る。
飛び出したハル・レインの蹴りが鳩尾にめり込んでいた。
グラシア「貴様…!」
ライン「おっと、余所見はすんなよな」
グラシア「ぶふっ!」
今度は後頭部。ハル・ラインがダブルスレッジハンマーを食らわせた。
続いてリーザが飛び出し、抜刀して斬りかかる。が、斬撃は寸でのところでグラシアの左手に止められた。
グラシア「小癪な!」
グラシアが刀を振り回し、リーザ諸とも吹っ飛ばす。上手く着地したリーザの両隣にハル兄弟が跳んできた。着地するグラシアに立ち塞がるように周りを囲んだ。
:08/01/27 00:48 :P903i :aI5Q63wk
#357 [◆vzApYZDoz6]
ライン「これはこれは、どーも社長」
レイン「ウチの母親がすっかりお世話になったみたいで」
グラシアを指差しながら、からかうように話す。リーザはグラシアの退路を絶つように後ろに回り込んだ。
グラシアがゆっくりと息を吐く。怒りは既に臨界点を通り越し、逆に冷静さを取り戻していた。
グラシア「…まったく次から次へと…」
レイン「まぁまぁ、そう怒らないで。お世話になった代金は労災保険で支払いますから」
ライン「心優しい社長なら、今まで働いた分の給料貰えますよね?」
グラシア「は…こんな気分は久しぶりだよ」
その時、グラシアの体に変化が起きた。
:08/01/27 04:54 :P903i :aI5Q63wk
#358 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの着ていたスーツが破ける。
額には角のような突起が現れ、手や胸板は甲殻類のように硬質化していく。
全身の筋肉が急速に膨張し厳のように赤くなる。人間の5倍はあろうかという圧倒的な体躯がスーツの破れカスを体に巻き付けて、尚膨れ上がっていく。
グラシア「一体なんだろうな…何もかもがどうでもよくなるようなこの気分は」
ライン「それは…オヤジのスキル!!」
レイン「貴様! まさかオヤジにまで手を掛けたのか!?」
グラシア「君達がこの要塞に住み込んだ後でね。家に1人残されては可哀想だろう?」
リーザ「なんて非道な…!」
:08/01/27 10:26 :P903i :aI5Q63wk
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