-Castaway-
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#401 [◆vzApYZDoz6]
京介「くそっ…藍に手を出すな!」
内藤「すみませんグラシア様あなた様は神様ですどうか下僕にしてください」
グラシア「五月蝿い!そこを動くなよ!全員だ!」

グラシアが爪を振りかざしながら、フェンスを伝い入口に移動する。京介らは、睨むことしかできなかった。
やがて入口にまで到着し、後ずさるように階段へ向かう。

グラシア「くくく…やはり最後に勝つのはこの俺だったよう…」
ハルキン「通行の邪魔だ低能!」

言いかけたグラシアの無防備な後頭部に、ハルキンの強烈な蹴りが直撃した。

内藤「よし今だ!」
京介「あいつやっぱり馬鹿だぜ!」

⏰:08/02/05 01:36 📱:P903i 🆔:D0w4yy/Y


#402 [アリス]
あげときます(o>_<o)

⏰:08/02/06 15:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#403 [◆vzApYZDoz6]
突然現れたハルキンに不意の一撃を食らい、グラシアが吹き飛ぶように転がる。そのグラシアを追うように、京介らが走った。

グラシア「ぐっ…寄るなぁ!」

グラシアが爪を藍に突き立てようとしたとき、体の異変に気が付いた。
体が、萎んでしまっている。レッドデーモンの効果が切れ、体躯は元の大きさに戻っていた。
鋭利な爪が付いていた手が元に戻ったことで抑制力を失い、途端に京介らに囲まれる。グラシアはそれでも藍を抱えたまま、ハルキンを睨み付けた。

グラシア「貴様…私に何をした?」
ハルキン「俺は何もしていないが?まぁイルリナは助けたがな」
グラシア「まさか…!」

⏰:08/02/06 22:04 📱:P903i 🆔:jsejo7Lc


#404 [◆vzApYZDoz6]
グラシアがフェンスから外を見て、目を見開いた。
眼下に広がる雪原にジェイト兄弟が潰した戦車やら戦闘機やらが転がる合間を、2人の女性が走っていた。透明な薄紅色の結界を張りながら、恐らくこの基地の出口であるトンネルへ向かって。
走る2人との大きな離差に加えて要塞の屋上から見ているため、豆粒ほどの大きさにしか見えないが、片方の女性の格好はグラシアに見覚えがあった。

グラシア「イルリナと…あれはラスカか…!」
ハルキン「あれだけ離したんだ、お前のスキル支配はもう効かない。観念するんだな」

⏰:08/02/07 07:34 📱:P903i 🆔:WUGfi2tM


#405 [◆vzApYZDoz6]
グラシアが視線を戻し、陰湿な目でハルキンを睨み付ける。

グラシア「確かに私のスキルの効力は、離れると薄くなる…だがなぜ貴様がそれを知っている?」
ハルキン「クルサをわざわざ司令室に居させたり、イルリナを地下に監禁したり…支配してる連中は皆、お前の側にいたからな。何と無くだ」
グラシア「…そうか。…だがな、まだこの娘がいる!」

グラシアは懐から素早くナイフを取り出して、再び藍の喉元に突き付けた。

グラシア「俺から離れろ!!」
ハルキン「…全く。悪足掻きは…」
藍「……んっ……うん…?」

ハルキンが言いかけた時、藍が目を覚ました。

⏰:08/02/07 14:01 📱:P903i 🆔:WUGfi2tM


#406 [◆vzApYZDoz6]
藍の瞼がゆっくりと開いていく。その場にいた全員の視線が集中する中で、藍が呑気な声を出した。

藍「あれっ…ここどこ?」

藍の視界に写るのは沢山の人間。京介と内藤とアリサ以外の顔は知らない。誰だろうと考えている最中に、ようやく自分が誰かに抱えられている事に気付く。
抱えている人間を見上げると、引きつった顔をしている男と目があった。続いて見えたのは、振りかぶった男の右腕と、その先に握られている鋭利なナイフ。
震える男の唇が、僅かにつり上がった。
眠っていた藍の現状を理解できていない脳でも、自分が殺されそうな事は理解した。

⏰:08/02/07 14:21 📱:P903i 🆔:WUGfi2tM


#407 [◆vzApYZDoz6]
グラシアが最後の悪足掻きに打って出た。どうせ逃げられないなら――

グラシア「――死に花だ!」
京介「藍!!」

京介が叫んで駆け出すのと、グラシアがナイフを振り下ろしたのは同時だった。

藍「きやっ!!」

思わず藍が目を瞑る。
だが、ナイフは刺さった感触はない。代わりに大岩が降ってきたような大きな音と、抱えられている腕から体が落ちたような感覚がした。
藍が恐る恐る目を開けると、そこにあったのは見覚えのある古ぼけた茶色い扉。既に閉まりかけだった扉がゆっくりと閉じていき、閉まりきった途端に点のような光を巻いて消滅する。

京介とグラシアは、居なくなっていた。

⏰:08/02/07 23:34 📱:P903i 🆔:WUGfi2tM


#408 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの元へ駆けた京介の視界は突然真っ白になり、浮遊感に襲われ、次の瞬間には芝生のような地面を転がっていた。

京介「いってぇ…」

京介が、地面で打った後頭部をさすりながら辺りを見回した。

京介「ここって…」

周囲は見渡す限りの大草原。生き物は見当たらず、建物はおろか、木の1本すら生えてない。地平線の彼方に高い山々が霞んで見えるだけで、まるでモンゴルの大草原を彷彿とさせる。
そこは、京介と藍がレンサーの住む異世界『ディフェレス』に来た時、扉を通って最初に出た場所だった。
バタン、と扉の閉まる音が響く。振り返ると、既に扉は無くなっていた。

⏰:08/02/08 00:02 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#409 [◆vzApYZDoz6]
京介は光が巻いた跡が残る場所を一瞥し、訳の分からないまま地面を睨む。膝を付いて、最初にここへ来た時の記憶を手繰り寄せた。
あの時も同様に扉が消え、藍が同じような扉を見付けていた。その扉をくぐって出たのが、さっきまで居た場所。

京介(扉…)

京介が顔を上げ、扉を求めて周囲を見回す。

京介「あっ…グラシア!」

京介から少し離れた横で、グラシアが先程の京介と同じように頭をさすっている。
京介に気付いて顔を上げ、これまた同じように膝を付いて周囲を見回す。遠くを眺めながら溜め息をついて、芋虫を噛み締めるような苦い表情を浮かべた。

⏰:08/02/08 00:19 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#410 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「あの娘は…ここに居ないのか」

グラシアが遠くを眺めたまま、静かに呟いた。

京介「あの娘…ってのは藍か。多分いない」
グラシア「…そうか…こんな事になろうとは…くくく…」

グラシアが俯き、くぐもった笑いをする。その不気味な声とは裏腹に、表情はどこか哀愁さが漂っていた。
1人現状を理解しているようなグラシアに、京介が眉をしかめた。

京介「おい、お前は何か知ってるのか?…ここはどこなんだよ?」

京介が少し強めに言い放つ。グラシアは薄く笑みを浮かべたまま、目を細めて冷ややかに京介を見詰めた。

グラシア「ここは…あの娘のスキルが生んだ世界だ」

⏰:08/02/08 00:36 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#411 [◆vzApYZDoz6]
京介「藍の?…って事は藍も、スキルを持ってるのか…」

京介が記憶を遡る。
思い出すのはディフェレスに来た当初。1体の風船人形と対峙した時に内藤が現れて、風船人形をあっという間に倒した後の会話。
内藤が『レンサーにしか開けれない』と確かに言っていた。その扉を最初に開けたのは、紛れもなく藍だった。

グラシア「あの娘とお前はディフェレスに来た時に、扉を通った筈だ。その扉は、クルサがモルディブに繋がるように作ったものだ」

京介が会話を思い返す。
一度草原に出た事を聞いた内藤の独り言に、確かにそれらの単語があった。
グラシアはさらに話を続けた。

⏰:08/02/08 00:55 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#412 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「お前らはスキルさえ戴けば地球に返す予定だった…手早く終わらせる為に、モルディブに出来るだけ戦闘員を配備した。バニッシ、お前らの言う内藤は感付いていたがな」

グラシア「だが、クルサの扉を通ったにも拘わらず、お前らはモルディブからかなり離れた場所に出た。たまたま別行動を取っていたアリサがお前らを見付けたがな。お前とバニッシの会話の内容をアリサから聞いて驚いたよ…」

グラシアがそこで少し沈黙し、京介を見詰めた。

グラシア「…俺の、そしてバニッシの推測が正しければ…あの娘のスキルはディフェレスの伝説に残っているものだ。名を…『キャストアウェイ』と言う」

⏰:08/02/08 15:07 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#413 [◆vzApYZDoz6]
-ウォルサー基地・要塞屋上-

藍「伝説に…?」
ハルキン「ああ。そもそも地球人の存在、そして地球人の強力なスキルの存在をディフェレスが知ったのは、その時だ」

京介とグラシアが居なくなった屋上。
残された人間は今の状況を話し合っていた。突然出現した扉について、内藤とハルキンが述べる見解を皆が静かに聞いていた。

内藤「キャストアウェイの能力は『亜空間』と『通行』の2つの支配…新たに空間を創造する事ができ、その創造空間若しくは既存空間へ繋がる『扉』を作り出す。扉には他者や物質をスキル所持者の意思で通行させる事ができる」

⏰:08/02/08 23:14 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#414 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「最初にディフェレスに来た地球人は『ジオ』と呼ばれた。詳細は分かっていないが、その能力でディフェレスの危機を救ったとされている」
内藤「浅香、お前確かここに来る時に草原を通ったらしいな?」
藍「はい…」
内藤「その草原は創造空間だ。キャストアウェイは所持者の身に危険が迫っているときに自動的に発動し、危険を回避する…と伝説にも残っている。最初、お前と川上が通った扉は、本当ならウォルサーが待ち受ける場所に行く筈だったんだ。恐らく扉に触れた時にそれを感知したんだろう」
藍「…って事は京ちゃんはまさか…?」
内藤「自動発動に巻き込まれて、グラシアと草原に居る筈だ」

⏰:08/02/09 03:35 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#415 [◆vzApYZDoz6]
-藍の創造空間・大草原-

グラシア「その力は強力だ。俺はそれを欲し、あの娘を捕らえた訳だ。まぁ、なぜあの娘が伝説のスキルを所持しているのかは知らんがな」


グラシアが一通り話すのを、京介は黙って聞いていた。
ディフェレスの事など分からない京介が理解できたのは、今の状況が藍のスキルによって引き起こされた、という事だけ。そして、それと同時に1つの不確定要素が頭に浮かんだ。

京介「…元の場所に戻る方法はあるのか?」

グラシアが少し沈黙する。思わず京介が固唾を飲んだ時、グラシアが重い口を開いた。

グラシア「…方法はある。だが期待はできない」

⏰:08/02/09 08:17 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#416 [◆vzApYZDoz6]
京介「方法があるのか!?」
グラシア「あの娘がスキルを使えれば、な」
京介「なんだ…簡単な事じゃん」

京介の体に異変が起きた。紅く発光し、髪が逆立ち、黒目が銀色に染まっていく。
その様子を静かに眺めていたグラシアが、小さく含み笑いをした。

グラシア「くくく…なぜ使える?」
京介「内藤が教えてくれたよ。俺がスキルを使えなかったのは…俺のスキルが何なのか、自覚してなかっただけだ。俺のスキルは、『他者の行動選択権を支配する』…だったな」
グラシア「だが、お前は俺に勝てない」

言いかけたグラシアが、一瞬京介の前から消える。次の瞬間には、青く光る掌が京介の胸に当てられていた。

⏰:08/02/09 12:05 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#417 []
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-600

失礼しましたあ

⏰:08/02/09 14:11 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#418 [◆vzApYZDoz6]
青い掌は、いつかのパンデモの時のように京介のスキルの使用権を奪う筈だった。

グラシア「なっ…」

だがグラシアがいくら頑張っても、京介の紅い光は消えず、髪は逆立ったままで目は銀色に染まったまま。それはつまり、スキルを支配できていない事を示唆していた。
懐に入ったまま目を見開いて自分の掌を見詰めるグラシアの脇腹に、京介が膝を蹴り上げる。

グラシア「がっ!!」

支配が効かない事に驚いて硬直していたグラシアの体は避ける意思を見せず、思わず前屈みになり悶絶する。たった1回の膝蹴りが、絶大な威力を誇っていた。

グラシア「馬鹿な…!なぜ支配できない…なぜこれ程の威力が…!」

⏰:08/02/09 19:37 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#419 [◆vzApYZDoz6]
京介「お前、本当に馬鹿だな」
グラシア「なにぃ!?」

京介が、足下で蹲るグラシアを小馬鹿にしたように冷たく見下ろす。

京介「俺のスキルは『他者の行動選択支配』。俺のスキルは『支配者』で、自動的に身体強化の付加がつく。お前が言ってたんじゃなかったっけ?」
グラシア「ぐっ…くそぉ!!」

蹲っていたグラシアが急に体を上げて、京介の顔面目掛けて拳を撃つ。グラシアの拳は大気を切り裂き、その威力は決して小さくはない。

京介「動くな!」

だが、京介の一言でいとも容易く停止する。
次の瞬間に撃ち出された京介の拳は、グラシアに視認させる暇も与えず顔面をえぐり抜いた。

⏰:08/02/09 19:55 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#420 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの表情が歪み、地を転がるように勢いよく体が吹き飛ぶ。何度も転がった後もんどりうって、うつ伏せに停止した。

グラシア「ぐふっ…」

ゆっくりと地から離した顔は鼻が潰れて鼻血が滴り、京介の拳が当たった部分が赤く変色して、まるで顔がへこんでいるように見えた。
顔をしかめて、止めどなく溢れる鼻血をなんとか止めようと鼻を押さえる。そのまま顔を上げたグラシアの視界に、ゆっくりとこちらに歩いてくる京介が写った。
グラシアは頭では逃げなければ、と考えていても、顔と脇腹の痛みと謂れのない恐怖で体がすくみ、卑しく睨み付ける事しかできなかった。

⏰:08/02/09 20:08 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#421 [◆vzApYZDoz6]
京介「お前はもう謝っても許さないぜ?」

京介は歩みを止めずに、唇の端を軽くつり上げながら言い放つ。
地に這いつくばって見ていたグラシアは、愕然と肩を落としわなわなと震わせた。
今まで自分が一番格上だったと思い込んでいた脳に、上には上がいるという事実を叩き付けられる。
京介の毅然とした態度の前に、怒りや屈辱はもとより絶対的な敗北感すら生まれてきていた。
だが、ここまで来て逃げる訳にもいかなかった。

グラシア「俺は…この世界を支配してやるんだ」

すくむ足を抑え立ち上がる。
京介は眉をハの字に曲げ、端から見れば滑稽に見えるグラシアを悲しそうに見詰めた。

⏰:08/02/09 21:06 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#422 [◆vzApYZDoz6]
京介「何でだ?何でそんなに…」
グラシア「五月蝿い…!お前に俺の気持ちが分かってたまるか!」

グラシアが京介に拳を突き立てる。
だがその拳には力が込もらず、京介の胸に弱々しく埋まる。そのまま崩れ落ち、京介の足下にもたれ掛かった。

グラシア「俺はまだ戦える…お前を倒して、世界を支配して…認めてもらうんだ…!」

すがるように何度も力の入らない拳を振る。
京介は眉をしかめて苦い表情を浮かべた。

京介「…もう無理だよ」
グラシア「五月蝿い…こんな無様を晒すわけにはいかないんだ!」

グラシアが更に拳を叩きつけようと振りかぶったその時。
2人の隣に、再び扉が出現した。

⏰:08/02/09 22:07 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#423 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「これは…」
京介「うわっ!」

突き破られたように勢いよく扉が開き、京介とグラシアが吹き飛ぶように中へ吸い込まれた。
京介が思わず固く目を瞑る。一瞬浮遊感が生まれ、すぐに地を転がるように体が揺さぶられた。
草原に飛ばされた時と同じ感覚に、今度は素早く目を開ける。

内藤「よっしゃ成功」
藍「京ちゃん!」

最初に見えたのは藍の姿。その側に内藤が、さらに向こうでディフェレスに来て出会った面々がこちらを見ていた。
屋上に戻ってきたのか、とぼんやり考えていた京介に、藍が飛び付くように駆け寄る。

藍「よかった…私のせいでどこかに消えちゃったもんね」

⏰:08/02/10 11:58 📱:P903i 🆔:F7TzN6YU


#424 [◆vzApYZDoz6]
京介の顎の下に藍の顔がすっぽり収まる。
藍がさらわれたのはつい数時間前なのに、京介は起きている藍を何年か振りに見た気がした。
京介はスキルを発動したままで、体は紅く光っており髪は逆立っている。

京介「ああ…悪かっ」
藍「てゆうかその髪とか何!?」
京介「たぶっ!!」

腕を回そうとした京介の顎に、勢いよく顔を上げた藍の頭頂部が激突した。

藍「あっ…ごめん!」
京介「いや、大丈夫…」
内藤「お前ら、そうゆう事は後にしな」

内藤が横を見ながら2人を諌める。内藤の視線の先には、まだ鼻血を出したまま蹲っているグラシアがいた。

⏰:08/02/10 13:05 📱:P903i 🆔:F7TzN6YU


#425 [◆vzApYZDoz6]
京介「…なぁ、あいつに何があったんだ?」

京介が苦い表情を浮かべながら、グラシアを眺める。
草原で自分にすがるような態度を見せた事が少し気になっていた。

ハルキン「俺が話してやろう。いや、俺が話すべきだな」

京介の意思を理解しているかのように、ハルキンが唐突に、静かに口を開く。
それまで黙って俯いていたグラシアが、機嫌悪そうに上目でハルキンを睨んだ。

グラシア「話す必要は無い」
ハルキン「他の連中も知らん事だ。今が機だろう」

何か言いたげにしていたグラシアをハルキンが睨み付け黙らせる。皆を見回し、咳払いを切って話し出した。

ハルキン「…この話は10年前まで遡る」

⏰:08/02/11 16:36 📱:P903i 🆔:hd/VybYQ


#426 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「10年前…ディフェレスはローシャのある施設で、ある研究が行われていた」
京介「研究?」
ハルキン「強大な能力の付加研究…地球人のレンサーが持つ強力なスキル、それをディフェレスの人間にも発現させよう、って研究だ」

その研究は、地球人を調べる事から始まった。
地球のレンサーを何人か、神隠し等といった現象に見せ掛けて秘密裏にディフェレスに運び込み、体細胞の構造から食生活に至るまで細かく分析した。

ハルキン「結果、レンサースキルを司る遺伝子から、地球人だけが持つ特殊な細胞が発見された」

⏰:08/02/12 00:33 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#427 [◆vzApYZDoz6]
本来、スキルの遺伝子は誰にでもあるもの。それをたまたま発現できた者が、レンサーと呼ばれた。

ハルキン「その特殊な細胞自体はどの地球人も同じものを持っていて、持って生まれた資質や生活環境によって姿を変える事も分かった」

研究者は孤児院や兵隊学校等、様々な場所から資質と才能に溢れた子供を集め、その特殊な細胞をレンサースキルを司る遺伝子に組み込んだ。
また、スキルを確実に発現させる為に能力開発手術を施し、同時に手術と人工発現の痛みに耐えられるよう訓練させた。

ハルキン「手術は問題なく成功。子供達は様々な、かつ強力なスキルを発現させる事に成功した」

⏰:08/02/12 00:44 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#428 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「中には、スキルは発現しても強力じゃかった子供もいた。…その子供は失敗作として処分されたがな」

成功した子供達のスキルは、戦闘向きの強力な能力や超絶的な回復能力、人の心を読む能力など、ありとあらゆるもの。
子供達はその施設内で、スキルの性質に合った様々な訓練を受けて育った。

ハルキン「子供達はディフェレスの各地でそのスキルを生かす予定だった。だが、世の中そう上手くはいかない」

スキルを持った子供達の中でも、特に際立って強大な力を発揮する子供がいた。
その子供も小さな頃は従順だったが、歳を重ねるに連れて反抗的に、また性格も残虐になっていった。

⏰:08/02/12 01:02 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#429 [◆vzApYZDoz6]
その子供に不安を感じた研究者は、その子供を牢に閉じ込めた。
いくら能力が強力とはいえ、そんな危険な子供を世に送り出す訳にはいかない。研究者達の話し合いで、その子供の処分が決定された。
だが、処分の為に牢に行ってみるとその子供はいなかった。壁には丸く切り取られたかのような穴。
不安になった研究者が他の子供が寝泊まりする居住区へ向かうと、そこにあったのは壁や床中に滴り溜まる血と、子供達の死体。

ハルキン「処分を恐れたんだろう。自分の力を見せ付ければ処分を取り消してもらえる…そう考えての行動は、逆効果だった」

⏰:08/02/12 01:15 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#430 [◆vzApYZDoz6]
その場にいた研究者が、返り血を浴びて突っ立っているその子供に銃口を向けた。
その子供は、殺される前に研究者を殺した。殺した研究者の手に握られる拳銃をもぎ取り、天井に向けて発泡。
銃声を聞き付け集まった他の研究者へ、返り血を浴びたままで叫んだ。

ハルキン「俺の力を見ていろ、とな。そうしてその子供が施設を飛び出したのは、研究が始まってから6年後の話だ。もう分かるな?その子供が、そこの馬鹿だ」
グラシア「馬鹿な…なぜ貴様がそこまで知っている!?貴様は何者だ!?」
ハルキン「ただのレンサーさ。地球人の細胞を埋め込まれながら、強力な力を発現できず処分された…な」

⏰:08/02/12 01:29 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#431 [◆vzApYZDoz6]
京介「処分された子供、ってハルキンの事だったのか…」
ハルキン「ああ。俺の空間制御能力は、当時は今と比べ物にならない程弱かった。スキルとしても他の連中に目劣りしたからな」
グラシア「貴様が…あの研究の失敗作だと?お前は研究を知る者の1人だと…」
ハルキン「そう言っておけばお前は油断するだろう?それが馬鹿だと言うんだ、馬鹿」
グラシア「ぐっ…!」

グラシアの体が震える。
自分より劣る失敗作に見下ろされる屈辱感に、怒りで拳を握りしめた。

ハルキン「殺された研究者と子供達の代わりだ。お前は倒す」
グラシア「五月蝿い!俺は、俺の力をあのオヤジ共に…認めさせてやるんだ!!」

⏰:08/02/12 01:48 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#432 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「それは無理だ。強力なスキルを研究した目的は、人の役に立つ子供の育成の為。だがお前は…ただの殺人者だ」
グラシア「黙れ!!」

蹲っていたグラシアが屋上の床を殴って立ち上がり、ハルキンに掴みかかろうとする。
だがそれは敢えなくかわされ、逆にカウンターの蹴りが顔面に突き刺さった。
転がるように吹き飛び、屋上のフェンスにぶつかって停止する。

ハルキン「それに、研究者もその研究からは手を引いた。お前を認める者なんざ誰もいないさ」
グラシア「……」

蹴られた顔を押さえ、痛みに対し静かに悶絶するグラシア。その表情は段々と虚ろになっていく。

⏰:08/02/13 01:45 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#433 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「もう、諦めろ。お前は…終わりだ」
グラシア「……フフフ、フヒャヒャヒャ!」

何がおかしいのか、グラシアは狂ったように笑いだした。
頬を大きく釣り上げて、歯茎が見える程の笑みを作る。

グラシア「こうなったら…貴様ら全員道連れだ!」

口を大きく開け、続いて思い切り噛み締める。歯が擦れる音と共に、グラシアの奥歯に仕込まれていた何かの機械が潰れた。
同時に、京介らが居る基地から遠く離れた所にある、ミサイル発射基地。
グラシアの奥歯に仕込まれていた機械から絶えず発せられていた周波が途絶えたのをうけて、1つのミサイルが京介らの基地に向けて発射された。

⏰:08/02/13 01:56 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#434 [◆vzApYZDoz6]
京介「…?」
内藤「何も起こらないが」
グラシア「直ぐに分かるさ。直ぐになぁ!」

グラシアが懐に手を突っ込み、素早く拳銃を取り出す。黒光りする銃口が、直ぐ様藍に向けられた。

グラシア「フハハハ、死ねぇ!」
内藤「ちっ!」

すかさず内藤とハルキンが駆け出し、ジェイト兄弟の駆る巨人が剣を振り下ろす。
だが剣は避けられ、既に指が引き金に掛けられている状態では内藤とハルキンは間に合わない。
それを見てリーザとハル兄弟が藍の方へ走り出すが、盾になるには藍との距離が離れすぎていた。
しかし、皆がそれらの動作を起こす前に、京介が走り出していた。

⏰:08/02/13 02:06 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#435 [◆vzApYZDoz6]
京介「うおおおお!!」

柄にもない叫びを上げて、京介は人生で一番速く走っていた。
グラシアが引き金を引く寸前で飛び出し、体ごとグラシアにぶつかる。

京介「おらぁ!!」
グラシア「ぐっ…俺は…!」

発射された銃弾は体当たりによって軌道が反れ、あらぬ方向へ飛んでいった。
体当たりされたグラシアの体はフェンスを勢いよく突き破り、屋上から投げ出され宙を舞った。

グラシア「俺は…認めて…褒めて…」

何かに憑かれたような目をして落下していくグラシアを、京介は見向きはしなかった。

⏰:08/02/13 02:16 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#436 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「なんだ…ここはどこだ?」

屋上から落下したグラシアは、なぜかどこかの部屋にいた。
驚き辺りを見回すと、埃を被ったベットや、カバーを掛けられた少し古くさい感じのする機械群。
そこはレンサースキル研究が行われた場所。グラシアとハルキンに縁のある場所。
無意識にテレポートスキルでも使ったのか、と一瞬思ったが、イルリナとの距離を離された為に貯めていたスキルは使えなかったはず。だが、理由が何にしろ、自分は今ここにいる。
その時、部屋の外から足音が響いた。
やがてゆっくりと部屋の扉が開き、人が入ってくる。

「やはり来たか…いずれ来ると思っていた」

⏰:08/02/13 02:29 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#437 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「チーフ…いや…父さん?」
父「待っていたよ、グラシア」

そこに居たのは、研究の第一人者だった人間。
グラシアを閉じ込め、処分という決断を下した人間。
責任と息子への情けから、せめて自分が処分しようと、1人で幼きグラシアの牢にへ赴いた人間。
居なくなっていたグラシアを探しに居住区へ行き、グラシアを撃ち殺そうとした人間。
銃口を向けられ、反射的にグラシアに殺された人間。
グラシアが只1人殺した研究者。
そして、グラシアの父親だった人間。
殺したと思っていた父親が、目の前にいた。

グラシア「ああ…父さん…?…なんで…死んだんじゃ…」

⏰:08/02/13 02:39 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#438 [◆vzApYZDoz6]
父「今までよく頑張ったな。苦労したろう?」
グラシア「父さん…!」
父「お前を研究体にした父さんを許してくれとは言わない。だがお前は私の研究の成果であり、誇りだ」

グラシアが目に涙を浮かべて、殺した筈の父親にすがり付く。

父「お前のした事は許される事じゃない。でも父さんだけは許してあげよう」

父親はグラシアを優しく片手で抱き寄せた。

父「だからもう…おやすみ」

残る手に握られた拳銃をグラシアのこめかみに当てた。乾いた銃声が響くのと同時に、グラシアの意識が完全に途絶える。

基地の地面に激突したグラシアの顔は、憑き物が落ちたような穏やかな目をしていた。

⏰:08/02/13 02:52 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#439 [◆vzApYZDoz6]
京介「スキルなんてものがあるから…レンサーなんてものが居るから、こんな事になったのか?」
内藤「かもしれんな。人の業、というやつだ」
京介「…」

京介は、落ちていったグラシアを追わなかった。
死んでしまったのかは知らない。少し気になったが、グラシアは京介をディフェレスに巻き込んで藍を拐った張本人だ。
京介はハルキンの話を聞いた時、不憫に思いこそはしたが同情はしなかった。

藍「…京ちゃん」

フェンスを背にして渋い表情を浮かべていた京介に、藍が寄り添うように近付いた。両手で京介の片手を握り、恥じらうように視線を落とすその姿は、なんともいじらしい。

⏰:08/02/13 04:40 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#440 [◆vzApYZDoz6]
京介「どした?」
藍「…その、お礼忘れてたし…助けてくれてありがと」

俯いたまま小さく呟く藍を見て、京介の表情が柔らかく綻んだ。

京介「いいよ、俺がしたくてした事だし」
藍「…なによ、格好つけちゃって!」
京介「って、それはちょっとひどくね?」
内藤「いいじゃないか、ツンデレ」
京介「いやいや、一体何の話?」
ライン「いいねぇ、若いって」
レイン「いや、俺達も十分若いぞ。と言うわけで嫁にならんか?」
リーザ「丁重に、お断りしますわ」
ガリアス「…恋愛、か。全くついていけんな」
ブロック「右に同じく。俺にとってはバイクが恋人さ」
フラット「上に同じく。俺にとっては以下略」

⏰:08/02/13 04:52 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#441 [◆vzApYZDoz6]
藍の一言をきっかけに、さっきまでの戦闘が嘘のように場の雰囲気が和む。
皆を一頻り見渡して、ハルキンが満足そうな笑みを浮かべた。

ハルキン「一件落着、だな」
アリサ「帰りましょ、バニッシちゃん♪」
内藤「おいやめろ、くっつくな」
レイン「あーうぜぇうぜぇ」
ライン「おもいっきりひがむな」
京介「……ま、何はともあれ、これで終わったんだな」
ラスダン「いいや。…まだ終わってないみたいだよ」

1人浮かない声のラスダンに、全員が振り返る。
ノートパソコンを具現化し、自分が今しがた頭の中で見ていた映像をディスプレイに表示させ、皆の方に向けた。

⏰:08/02/13 05:11 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#442 [◆vzApYZDoz6]
そこに映っていたのは、携帯型のミサイル等とは比較にならない程の大きなミサイル。
1基の大陸間弾道弾が、京介達がいるこの基地へ、猛スピードで飛んできていた。基地との距離を見る限り着弾まであと僅かしか無いだろう。

内藤「あいつの言ってた道連れとは、これのことか…!」
リーザ「早く逃げましょう!」

一行が踵を返し、屋上の扉へ向かう。
その時、要塞内部で大きな爆発が連続して発生した。
ハルキン「ちっ!誰かが自爆スイッチでも押しやがったか!?」

続いて起こる激しい縦揺れに要塞が耐えきれず、京介達の足下から真っ二つに分かたれた。

⏰:08/02/13 12:22 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#443 [◆vzApYZDoz6]
亀裂が走った要塞屋上で、一行は完全に2手に別れた。

内藤「全員無事か!?」

内藤が辺りを見回す。
亀裂を挟んで内藤がいる側は、自分の腕にくっついていたアリサと、後ろで傍観していたハル兄弟、ガリアス。ジェイト兄弟とバイクも居た。
階段は、亀裂を挟んだ向こう側。間に走る溝は深く、階段からは脱出出来そうにもない。

ブロック「みんな掴まれ!!」

だが、内藤側には鉄の巨人がいた。屋上から飛び降りて脱出するのは可能だろう。
内藤が爆音に掻き消されまいと、声を張上げた。

内藤「ハルキン!川上!そっちは頼んだぞ!」

⏰:08/02/14 01:28 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#444 [◆vzApYZDoz6]
任せろ、という京介の叫びが返ってくる。内藤はそれを確認し、鉄の巨人の元へ駆け出した。
既にエンジンを吹かして準備万端整う巨人の右腕にガリアスが、左腕にハル兄弟が掴まっている。

アリサ「早く!♪」

アリサが大振りに手招きする。自爆の影響で激しく縦に揺れる屋上を這うように走り、アリサを抱え込んで、ちょうど巨人の肩にあたる突起に手を掛けた。

フラット「しっかり掴まってろ、舌噛むなよ!いくぜ!」

アクセルを吹かし、クラッチを弾くように離す。
駆け出した巨人がフェンスを突き破り、内藤の体に浮遊感が生まれる。
次に訪れるであろう落下感に備え、内藤が片目を強く瞑った。

⏰:08/02/14 01:38 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#445 [◆vzApYZDoz6]
京介「藍、走れるか!?」
藍「大丈夫!急ごう、京ちゃん!」

京介とハルキンの居る階段側に別れたのは、戦力はさして大きくない藍とラスダン、そして手負いのリーザ。
怪我人を守らねばならぬ状況で、懸命に非常通路の大螺旋階段を降りていた。
京介が藍の手を引きながら落ちてくる瓦礫から藍を守り、ハルキンが手負いのリーザに肩を貸しながら瓦礫を潰して道を開く。ラスダンが脳内で頭上を視て状況を見極め、出来るだけ落下物の少ない道を先導する。
そんな風に、出来るだけ全力で螺旋階段が終わる2階に到着した。

ハルキン「あと少しだ!」
京介「よし…うわっ!」

⏰:08/02/14 01:50 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#446 [◆vzApYZDoz6]
要塞のどこかで2次爆発が起きた。
立っていられない程の揺れと耳をつんざくような爆音。それに加えて、さっきよりも大きな瓦礫が、まるで壁のように落ちてくる。
1階へ降りる階段は廊下の端。だが、そこまでの道程の間に落ちてきた瓦礫が立ち塞がった。

京介「道が!」

行く手を阻まれ、全員が足を止める。
激しい縦揺れでまともに走れていなかった為、巻き込まれる事は無かった。
だが振り返るとそこにも降り注ぐ無数の瓦礫が。

ハルキン「こっちもか!」

瓦礫に挟まれ密閉空間となった廊下から脱出するには、床を壊すしかない。
だがそれよりも先に、瓦礫の塊が京介達の頭上に襲い掛かった。

⏰:08/02/15 01:05 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#447 [◆vzApYZDoz6]
京介「くそっ!」
藍「きゃっ!」

藍が咄嗟に目を瞑り、京介が落ちてくる瓦礫を叩き散らす為身構える。
ハルキンの空間制御は間に合わない。これだけの数と質量の瓦礫を潰しきるのは不可能に近い。
それが分かっていてもハルキンが構えた、その時。

廊下の壁を勢いよく突き破って、無数の隼が現れた。
その隼は全て純白で、体は肉ではなく紙吹雪の塊。
不意の出来事に京介の動きが止まるが、瓦礫の方は隼が次々と粉塵に変えていき、落ちてこない。
程無くして、隼が突き破り穴が空いた壁から、青い巾着袋を片手にクルサが出てきた。

クルサ「危ないところだった…」

⏰:08/02/15 01:15 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#448 [◆vzApYZDoz6]
京介「あっ!あんたは確か…えーっと…」
ハルキン「クルサ!助かったぞ!」
京介「それだクルサ!ありがとう!」
クルサ「うん…くっそ、バニッシの奴こっぴどくやってくれた」

クルサは右手に巾着袋を持ち、左手で右肩を押さえている。
片足を引き摺り苦し気な表情を浮かべるその姿は、内藤に倒された時のダメージを負ったままのようだ。
頭上では隼が最後の瓦礫に突進し、落ちてくる瓦礫は一段落した。
だがしかし、直ぐに次の瓦礫がやってくるだろう。
ラスダンがクルサに肩を貸したのを確認し、ハルキンが床を見据えて拳を振りかぶる。
だがそれは、壁が豪快に吹き飛んだ事によって邪魔された。

⏰:08/02/15 01:27 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#449 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「今度は何だ?」

吹き飛んだ壁は、クルサが出てきた穴の対面側。
ハルキンが舌打ちをして、むせ返りそうになる土埃に鼻と口を押さえながら、かなり派手に空いた巨大な穴の向こうを見る。
そこに居たのは鉄の巨人。だが壁を破壊したのは、巨人の足元にいるハル兄弟の双砲撃だった。

ライン「逃げ道は確保してやったぞ!」
レイン「次の瓦礫が来る前に降りてこい!」
ハルキン「ええい、余計な事を…」
京介「いいから行こうぜ!」

京介が、速く走れない藍を脇に抱えて駆け出した。
ハルキンもリーザを肩に担ぎ上げ走り出す。
しかし、別段身体能力の高くないラスダンと怪我人のクルサは、初動が遅れた。

⏰:08/02/15 01:37 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#450 [◆vzApYZDoz6]
一番に穴に辿り着いたのは京介と、脇に抱えられた藍。振り返ると、すぐ後ろにハルキンが走ってきていた。
まだ奥にいるラスダンとクルサが気になったが、早く穴から飛び降りろ、と顎で指示するハルキンに促され、眼下の地上へ飛び降りた。
続けざまにハルキンが穴に到着し、担ぎ上げていたリーザを降ろす。

ハルキン「1人で飛び降りれるか?」
リーザ「…何とかいけそうですわ」
ハルキン「よし。俺はあいつらを連れて来る」

ハルキンがリーザを送り出し、まだ穴から距離のある場所にいるラスダンとクルサを見る。手助けに行こうと踏み出そしたその時。

とうとう、ミサイルが着弾した。

⏰:08/02/15 01:46 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


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