校内戦争
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#170 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「ぐっ…!!」

かなり強く体を打ったのか、倒れた反動で男子の手からナイフがこぼれ落ちた。
司は相手より早くそれを拾い上げるとバットを振り上げた。

「ひっ…ひぃい!」

男子は両手で頭を庇い目を瞑ると、椅子を薙ぎ倒し死体を乗り越えながら大きく後ずさった。
司は這うようにして逃げる相手に間合いを詰める。
ふと、男子の様子がおかしい事に気が付いた。
体を縮こませらて、見てわかるくらい怯えていた。
浮言のように何かを呟いている。
見ていれば、ガタガタという音が聞こえてきそうなくらい小刻みに震えているのだ。

「殺さないでくれ…お願いだ…殺さないで…」

カタカタと震えながら、男子はぶつぶつと同じ事を繰り返していた。

「………」

司はバットを静かに下ろした。

⏰:08/01/24 20:27 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#171 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「裕也…?」

その光景を見ていた信一が、男子の顔を伺うように視線を送りながら口を開いた。
男子は依然として震えている。
目には涙さえ伺えた。
信一の声が聞こえないのか、かなり錯乱しているようだ。

「裕也?…裕也っ!」

信一は男子に駆け寄ると思い切り抱き締めた。

「嫌だ!やめてくれ!殺さないでくれ!頼む!!離せっ…離してくれ!」

男子は大声を上げると信一から逃れるように手足をばたつかせた。
信一はさらに抱き締める手に力をこめた。

「裕也!俺だ!三組の信一だ!もう大丈夫だぞ!助けにきたんだ!」

言うと、男子の動きが弱まった。

「…信一?」

男子は息を荒げながらも、ようやく目を開いた。

「もう安心しろ。おまえは助かったんだ…」

信一は安心させようと優しく抱き締める。
裕也と呼ばれた男子は糸が切れたように泣きじゃくり始めた。

「信一ぃ!…俺っ…殺されっかと思った…!」

⏰:08/01/24 20:40 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#172 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
その始終を見ていた者は、皆表情が曇った。
裕也の怯え方は尋常じゃなかった。
よほどひどい目に逢ったに違いない、と。
しばらく、沈黙が続いた。
裕也の啜り泣く声のみが、辺りに響いた。

「生き残りの…確認を」

重々しく口を開いた。
司の言葉に神田を含めた数人が教室内を捜索しだした。
司は裕也と信一を横目に見る。
だいぶ落ち着いてきたようだ。
その証拠に、信一と何度か言葉を交わしている。

「…大丈夫か?」

司が声を掛けると裕也の言葉に頷いていた信一が顔を上げた。

「何とかな…落ち着いてきたみたいだ」

「すまねぇ…な」

裕也がバツが悪そうに頭を下げた。

⏰:08/01/24 20:49 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#173 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
..続き
ってのが連続で見にくい!
ミスですね…
ともあれ休憩したらまた書きます。

⏰:08/01/24 20:50 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#174 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「あっちに二人…倒れてる。まだ、生きてるはずだ…」

裕也は信一に体を預けたまま、右手を上げ先程隠れていた机を差した。

「…残りは?」

信一の問いに裕也は眉を歪めると首を横に振った。

「そうか…」

「あいつら…いきなり現われて…」

裕也は思い出すように言うと、表情が強ばった。

「その時の事…詳しく聞かせてくれ」

司はその言葉に反応すると二人の近くに片膝を付いた。

「あぁ…」

裕也は深くため息を吐き、ぽつりぽつりと話し始めた。

⏰:08/01/24 21:40 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#175 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
二十分程前の事である。
丁度、司たちが野球部の部室から移動を始めた頃であった…

一組……裕也たちは家庭科室付近の廊下に待機していた。
家庭科室からは見えない、本館と南館を繋ぐ廊下であった。
実は、十分以上も前からここにいるのだ。
何故早く中に入らないのか。
それには理由があった。
閉めきられた扉の向こうである目的地、家庭科室にあった。

⏰:08/01/24 21:48 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#176 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
どうやら、先客がいるらしいのだ。
一年か、三年かはわからない。
どちらにせよ、最悪なことには変わりはなかった。
何にしても家庭科室には確かにいるのだ。
先程から、閉めきられた扉のスモークガラスにちらちらと黒い影が映っていた。
さらには耳を澄ませば話し声すら聞こえる。
どうするか…。
不意を突いて突入するか。
または諦めるか。
その二択で悩まされていた。
小声で議論を始めてから、かれこれ十分以上経っている。

⏰:08/01/24 21:55 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#177 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
これからどうするか、話し合いを始めた。
しかしこうしている間にも相手が出てきてしまうかも知れないのだ。
ゆっくりしている暇はない。
その焦りが、皆の思考回路を狂わせているのも事実であった。
お陰で、一向に話が進まない。
自分の意見を言って、実際にその通りに行動して全滅でもしたら…と、皆口をつぐんでいた。

「…突入しよう」

皆が右往左往している時、ようやくはっきりと意志を表示する者が現われた。

⏰:08/01/24 22:05 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#178 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
しかし、言ったは良いものの、意に反する者も出てきた。

「待て、よく考えろ。家庭科に先を越されたって事は、先にやつらに刃物類を取られたって事だ」

「確かに…このまま戦ったら確実にこちらの方が被害が大きいだろうな」

「司も無益な戦いは避けろって言ってたしな」

さらさらと反論を唱える。
しかし、ならば諦めるか、と言えば、否定派は言葉を詰まらせてしまった。
やはり下手に自分の意見が間違っていたら、と思うと意見を言えないのだ。

⏰:08/01/24 22:09 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#179 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
ここで戦えば被害が出る…最悪の場合は全滅だ。
しかし、戦わなければ戻った所で仲間たちに何を言われるかわからない。
負け犬、臆病者、と罵られるのか。
あるいは司なら「よく無事で帰ってきた」と笑顔で迎えてくれるかもしれない。

⏰:08/01/24 22:19 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#180 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
どちらにしても、戦わない方が良いに決まっている。
しかし自分の「諦めよう」の一言で戦わなかったとしよう。
仲間の所に戻って臆病者扱いされた時、その矛先は誰に向くだろうか?
もちろん、「諦めよう」と言いだした自分であろう。
自分の発言で助かったくせに、一組の連中は他の組に味方するかも知れない。
そうなれば自分は学年を追い出されるだろう。
それは野獣がうろつくジャングルに裸で放り出されたようなものだ。

⏰:08/01/24 22:20 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#181 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
それを考えると、自分の意見を言えないのだ。
しかし、どんなものであろうと、行動を起こさない者に女神は頬笑まない。
焦りから冷静さを失っていた彼らには、それを見極めることは出来なかった。
そして、最悪の出来事が起こった。

⏰:08/01/24 22:23 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#182 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
今日は目が痛いのでこれで終了です。
見てくれている方、ありがとうございます。

⏰:08/01/24 22:25 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#183 [我輩は匿名である]
面白いです。
作者さんのペースで頑張ってください

⏰:08/01/26 22:53 📱:V803T 🆔:7gi9Y.5Y


#184 [我輩は匿名である]
>>150-200

⏰:08/01/27 01:35 📱:W51CA 🆔:v/7zddrU


#185 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
>>183
ありがとうございます。
そう言ってもらえるのが何より嬉しいですね。
>>184
安価ありがとうございます。
つい忘れてしまうので助かります。

⏰:08/01/27 22:10 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#186 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
突然、隊列の後方に騒めきが広がった。
議論を交わしていた先頭集団を含む最前列の者たちは、何事かと立ち上がる。
視線がそれを捉えた瞬間、皆、目を疑った。
自分たちのいる廊下の本館側に抜ける廊下の突き当たりに、一クラス分ほどの黒い集団が立ち止まって偵察するようにこちらを見ているのだ。
各自、手には武器のような物が伺えた。
話では、本館に行ったクラスはない…つまり、仲間ではない。
瞬時に、敵だと察した。

⏰:08/01/27 22:25 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#187 [我輩は匿名である]
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300

⏰:08/01/27 22:32 📱:SO902i 🆔:0Qfk0p3w


#188 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「逃げろ!」

誰もが硬直状態にある時、不意に、誰かが叫んだ。
その言葉に、飛んでいた意識が戻ってくる。
同時に、底知れぬ恐怖心が駆り立てられた。
皆がわらわらと、蜘蛛の子の散ったように走りだした。
我先にと廊下を駆ける。
死にたくない、そう恐怖していた。
止まれば殺される。
今にも後ろから手が伸びてきて肩を掴まれるような、そんな感覚に陥っていた。
周りを見れば戦おうとする者はおらず、それが戦意を失わせ恐怖心を更に深くしていった。

⏰:08/01/27 22:35 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#189 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
戦意を喪失した者に残っているのは、逃げることであった。
仲間などに気を配っている暇はなかった。
とにかく逃げなければと、後ろから怒濤の如く押し寄せる足音から逃げるのに必死だった。
守らねばならぬ存在である女子でさえ、邪魔だと感じた。
一人追い越せば、そいつの死と引き換えに自分は死から遠退き助かる。
しかし一人追い越されれば死に近付き恐怖する。
『生』を巡って全力で駆けていた。

⏰:08/01/27 22:44 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#190 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
多数の足音と悲鳴が混沌する中を、裕也は走っていた。
不意に、前方を走っていた女子が転んだ。
巻き込まれるように二、三人が横倒しになる。
それを横目に見ながら、裕也はほくそ笑んだ。
俺のために死んでくれ。
無意識にそう思っていた。
生への執着心が生み出したその思考に、誰よりも裕也自身が驚いていた。
自分はこんな汚い人間だったのかと、葛藤した。
後方から響く足音に、はっと我に返る。
思考を吹き飛ばすように頭を振った。
裕也は倒れている集団の横を全力で駆けていった。

⏰:08/01/27 22:55 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#191 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「マジかよ…」

裕也が葛藤していた時、絶望すら伺える声が、隣から聞こえた。
その言葉の意味がわからずに横に目をやると、声の主であろう男子は光を失った目で、正面を見据えていた。
不審に思い自らも視線を正面に送れば、そこに立ちふさがっていた思わぬ壁に、思わず足を止めてしまった。

「嘘…だろ」

やっと出た言葉がそれだった。

⏰:08/01/27 23:03 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#192 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
いつの間に出てきたのか、その集団は先程の家庭科室から出てきていた。
その証拠に各自手には鈍い光を放つ刃物がしっかりと握られている。
そんな集団が、廊下を塞いでいるのだ。
しかも仲間の元へ行ける唯一の逃げ道である南館の階段さえも塞いでいた。

「ちっくしょおぉぉ!!!!」

一組の先頭の一人が、叫びながらバット片手に突っ込んでいった。
もはや覚悟を決めたのか、次々と男子の後に続く。

⏰:08/01/27 23:13 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#193 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「……ちっ」

裕也も鉄パイプを握り締める。
心臓が高鳴るのがわかった。
ドクドクと血液を送り出して全身に行き渡らせる。
手が微かに震えていた。
深く深呼吸をしてわずかに乱れた息を整えると、しっかりと正面を見据えた。
もう、怖くない…。
意志とは裏腹に震える足を前に出せば、裕也は敵陣へと消えていった。

⏰:08/01/27 23:20 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#194 [我輩は匿名である]
>>160-200

⏰:08/01/28 08:15 📱:W51CA 🆔:GXnLqWTY


#195 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「…そうか」

話の内容に表情を険しく歪めていた司は静かに俯いた。

「辛かっただろ…よく頑張ったな」

「何人も…やられた。俺たちは追いやられるように家庭科室に転がり込んだんだ…だけど、奴らも入ってきて…皆は残り少ない戦力で玉砕覚悟で戦った」

「それで皆は…」

信一の言葉に裕也は黙って頷く。

「…死んだ。俺たち三人だけが何とか隠れて生き残ったんだ…」

言い終えると裕也は再び震えだした。
表情がみるみるうちに凍りついていく。
蒼白の顔には恐怖が浮かんでいた。

「すまない。思い出させちまったな…」

司は一旦言葉を切った。
怯えている裕也をゆっくりと抱き締める。

「よく…生きててくれたな」

⏰:08/01/30 22:00 📱:N900iS 🆔:☆☆☆


#196 []
おもしろい
アゲ

⏰:08/02/03 11:03 📱:D704i 🆔:JjpTVdAM


#197 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「叫び声が…何人もの叫び声が耳から離れないんだ」

裕也は現実から逃げるように固く目を閉じる。
両手を耳に当てて一切の音を遮断した。

「裕也…」

信一は裕也を支える手に力を込めた。

「耳をつんざくような…悲痛な叫び声が…たくさんの人が目の前で殺されて行った…!」

「助けてくれ…あいつがっ…あいつがくる!」

信一の手に小刻みな震えが伝わる。
裕也が怯えきった様子で身を縮こませていた。

「…あいつ?」

今まで心配そうに眺めていた司が、その言葉に表情を歪めた。

「裕也、あいつって誰だ?」

司の声に反応を示せば、静かに顔を上げた。
乱れた精神を落ち着かせると、ゆっくり話し出した。

⏰:08/02/03 14:09 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#198 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「わからない…。ただ、わかってるのは一年ってことだけだ…。あいつは…人間じゃない…」

「…特徴は?」

「頭から返り血を浴びて…目についた奴から殺す…圧倒的な強さだった…何人もの男子をたった一人で倒していった…。真っ赤に充血した目…鬼のような形相……そして…」

裕也は言葉を切る。
苦しそうに目を細めると、言葉を繋げた。

「笑ってた…」

その内容に黙って話を聞いていた司は眉を歪めた。

「…笑ってただと?」

⏰:08/02/03 14:17 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#199 [ゆう]
この小説面白いです

最後まで頑張って下さいP

⏰:08/02/06 21:44 📱:M-SKIN 🆔:PZjO7AN2


#200 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「馬鹿な…」

この理不尽な戦いを楽しんでいるとでもいうのか?
司はさらに表情を険しくした。
…注意する必要がありそうだな。
頭の中で思考を凝らした結果、好戦的という言葉しか浮かばなかった。

「…今日はもう終わりにしよう」

ぽつりと呟くと静かに立ち上がった。
辺りを一瞥してから口を開く。

「皆、引き上げだ。三階に戻ろう」

⏰:08/02/06 22:06 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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