Castaway-2nd battle-
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#1 [◆vzApYZDoz6] 08/02/22 18:19
スレ立てとかないと忘れそうなんで…

これで2作目です
初作『Castaway』↓の続編です
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/6763/

感想はこちらに
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3130/

ちなみにコテコテのバトルファンタジー小説です
それから多分、かなり更新が遅くなるかもしれませんorz
数少ない読者さんに申し訳ない…

#284 [我輩は匿名である]
 
敵の襲来時に、パンデモの住民が敵と共に地球に…内藤やアリサ、ハルトマンがいる地球に、ワープする──


「アリサ、バッシュ、イルリナに、バンもだな。そして『管制役』と、地球にいるハルトマン…
こちらはリーザとシーナ、ジェイト兄弟にラスカ、ラスダン、内藤、そして川上京介。

…何年ぶりだろうな。パンデモとバウンサーの“主力”たちが、一堂に会するのは」


──それは、2大勢力の全てを結集しての、『総力戦』の開始を意味していた。


 

⏰:11/03/06 18:23 📱:P08A3 🆔:Mq.0sahk


#285 [我輩は匿名である]
 


年季がかった換気扇が吐き出すそれのような低いエンジン音を聞きながら、京介は嘆息ついて壁にもたれ掛かる。
そのままずり落ちるように床にへたれこみ、辺りを見回した。

無機質な壁や天井の所々から配管がせり出す室内は、天井近くの小窓から僅かに明かりが届くのみで非常に薄暗かった。
無造作に置かれた小型のコンテナや段ボール箱、端に置かれた古びたロッカーが、ここが貨物室である事を実感させる。

ここに閉じ込められてからおよそ二時間あまりが経過していたが、京介は未だ脱出できずにいた。

「はぁ…くっそー、出られないんじゃ俺がここに来た意味ねーじゃん」

どうやら電波が入らないらしく、携帯電話はずっと圏外。外に助けは呼べなかった。

⏰:12/02/04 06:02 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#286 [我輩は匿名である]
唯一の出入り口である分厚い水密扉を睨みながら、京介は溜め息をつく。
扉を開けるハンドルは内側にもついてはいるが、外からロックが掛かっているようで右にも左にも回らない。
体当たりでぶち破ろうと試みたりもしたが、ぶつけた肩が外れそうになっただけだった。

これが半年前なら、スキルの身体強化によって蝶番をぶち壊すぐらいはできていただろうが、今の京介はせいぜい常人より少し力が強い程度。
ただの扉ならまだしも、頑丈な水密扉を破るなど、考えるまでもなく不可能である。

「こういう時に、スキルを捨てた事をちょっと後悔するぜ……いやいや。過ぎた力はタメにならん」

⏰:12/02/04 06:03 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#287 [我輩は匿名である]
京介と藍が保有していた強力なスキル。
自身が戦いに巻き込まれる原因にもなったそれは、半年前に自ら消滅させた。
理由は単純。“もうこんな事に巻き込まれたくないから”だ。
それは自分のためというより、藍の事を考えての選択だった。

確かに、漫画のようなその能力を消滅させる事に未練のようなものが無かった訳ではない。
だが、そういう事への憧れよりも、平穏で普通な生活をしたいという感情の方が大きかった。
だからこそ、自ら進んで能力を消滅させた。

自分よりも大事なものがある。その意思を、自身ではっきりと認識するために。
藍を守ることに、その能力は必要ない。

「何だってこんな事になっちまったんだろうな…」

しかし、半年が経った今、京介はまたしても同じ因果に巻き込まれている。
幸いにも、藍にはまだ手が及んではいないが、それも時間の問題だった。

⏰:12/02/04 06:04 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#288 [我輩は匿名である]
ロモが言うには、夜が明ける頃には歌箱市の制圧が始まるらしい。
内藤らがいるとはいえ、ロモの口振りでは大した問題ではないように聞こえた。

視線を上げ、小窓の向こうに見える暗闇を眺める。
最初はそこからちょうど綺麗な満月が見えていたが、今は沈んでしまったようで見えない。
夜明けは、そこまで遠くなかった。

「……何とかして出ないとな。藍のためにも」

制圧が始まれば藍に危害が及ぶのは確実。それまでに脱出する必要がある。
京介は立ち上がり、再び辺りを見回した。


 

⏰:12/02/04 06:07 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#289 [我輩は匿名である]
 


「しっかし、強化服ってぇーのはいつ着ても慣れないねぇー」

「………ねぇ……」

「おーぅ、どうしたトビーちゃんよ?」

「……本当に…よかったの…?」

「………ふーむ」

コートの下の強化服に手を這わせるロモを、トビーが見つめる。

珍しくこちらを向いて話しかけてきたトビーの視線を避けて、ロモは煙草の煙を深々と吸い込んだ。
肺には入れずに、口から柔らかく吐き出して鼻から再び吸い込む。
鯉の滝登りというやつだ。

そのまま目一杯まで空気を吸い込み、そして細く、長く、たっぷりと時間をかけて吐き出していく。
ぶれないトビーの視線を目の端で意識しながら、じきに帳を上げる眼下の街に目をやった。

⏰:12/02/04 06:08 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#290 [我輩は匿名である]
ロモとトビーは、歌箱市内の住宅街が見渡せるビルの屋上にいた。
タンカーが停泊している港は地図でいえばちょうど真反対で、港が西にあるのに対し、ここは東の端である。
ここには歌箱市唯一の大学があり、学生マンションを始めとした学生向けの店舗や施設などが数多く軒を構えている。
また歌箱市を南北に縦断する片側三車線の幹線道路もすぐそばを走っているため、
生活都市圏である歌箱市でも特に人口の多い地域だ。

京介と藍が住むマンションも、ここから見える場所にある。

「…ま、お仕事ってぇーのは楽しくねーとよぉー、やる気出ねーからなぁー」

「…ぼくは……楽な方がいい…」

「なぁーに、トビーちゃんのお守りが俺の仕事さぁー。心配すんなってぇ」

そのマンションを眺めながら、ロモは目を細め、煙草で口に詮をする。
その様子を見ていたトビーはロモから視線を外し、そう遠くない場所に見える大学のキャンパスを眺めた。

夜明け前の薄暗い風景に、自身を主張するかのように真っ白な校舎が浮かんでいる。

⏰:12/02/04 06:09 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#291 [我輩は匿名である]
「………でも……強化服までは…いらないと思う……」

「お仕事を楽しくするには、刺激ってぇーやつが必要なのよぉ。なぁー、おめーら?」

「はっ、仰る通りです!」

ロモが後ろを振り返ると、誰もいなかったはずのそこに、いつの間にか十数人の人影があった。
全員、ロモがコートの下に着ている物と同じ、周囲に溶け込むような黒の身体強化用ラバースーツを着ている。
ロモの直属の戦闘員たちは、皆一様にロモに向かって敬礼していた。

「んで、どーよ手筈は?」

「万端整っております」

戦闘員の一人が答える。
ロモは満足げに前を向いて煙草を燻らし、その様子を見ていたトビーは無表情に明後日のほうを向いた。

トビーの視線の先には、だいぶ低い位置に沈んだ満月が輝いている。
雲ひとつない、綺麗な月夜。それもあと一時間もせずに明けるだろう。
もうすぐ、ロモの『仕事』が始まる。

⏰:12/02/04 06:12 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#292 [我輩は匿名である]
「……また…一緒にゲームしたいな…」

「ま、そいつぁー本人次第だろうよぉ。雇われモンは、手前の仕事をこなすのみさぁー」

「……ロモは…仕事ねっしん……」

「それでこそ俺よぉー。…さーて、そいじゃー景気付けに、一発かますとするかねぇー」

煙草をくわえ、人差し指と親指でフィルターをつまみなおす。
もう片方の手は自分の首筋についた強化服のアタッチメントに触れていた。

⏰:12/02/04 06:12 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


#293 [我輩は匿名である]
 
「さぁーて…お前ら。お仕事の、時間だぜ」

「はっ! 全員、投与開始!」

「「投与開始!」」

同様に、背後の戦闘員たちも首筋に手を当て、ロモの言葉に合わせてアタッチメントを操作する。
動脈と繋がったナノサイズのシリンジから、感覚鋭敏化の薬剤が投与され、瞬く間に全身に行き渡る。

「さぁ行くぞぉー。二束三文稼ぐために」

強化服は全員が装備済み。五感も強化された。戦闘準備は万端。

ロモが、煙草を根元まで深く吸う。
それを合図に、戦闘員がビルから散り散りに飛び降りていく。

短い煙草を空中に向け、そして弾き飛ばした。


「今宵もせっせと大爆発、っと」

爆音が、静寂を破る。


爆炎に照らされたロモの歪んだ口元を、トビーが静かに眺めていた。


 

⏰:12/02/04 06:14 📱:P08A3 🆔:/TXcO8aQ


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