Castaway-2nd battle-
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#112 [◆vzApYZDoz6]
「それで、今日はどうしたのかしら?」
「内藤先生に晩ごはんごちそうしてもらおうと思ったんですけど…」
「あらー♪ それなら私が作ってあげるわよ♪」
「あっ、本当ですか?」
「ええ♪ でも食材が無いから買い出しに行かないとね♪」

有紗はちょっと待っててね、と言い残して、着替えるためにパタパタと2階へ上がっていった。

それと同時に今まで玄関に留まっていた京介が、それを察したのかリビングに入ってきた。

「何してるのよ?」
「いや、上行ったかなーって…」
「ヘンタイ」
「なんでそれがヘンタイになるんだよ…」

⏰:08/04/15 04:01 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#113 [◆vzApYZDoz6]
「だいたいじろじろ見すぎなんだから! きもいし!」
「見てねーよ! いきなりあんな格好で出てきたら、誰だってびっくりするだろ!」

「あっ、そう。胸もおっきかったしね?」
「お前より全然でかいよな」
「京ちゃんのバカ!」
「いやっ、冗談だって!」

放っておけば延々と続きそうな痴話喧嘩を繰り広げる2人の尻目で、さっさと着替えを終えた有紗が2階から下りてきた。

着替えたと言ってもインナーの上にジャージを着ただけという、ものすごくアレな格好だが。

化粧も最低限のナチュラルメイクで、どうやら有紗は軽い外出程度なら外見はあまり気にしない性格らしい。

⏰:08/04/15 04:01 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#114 [◆vzApYZDoz6]
「あらあら、喧嘩?」
「京ちゃんがやらしい目で有紗さん見てたから」
「だからやらしい目では見てねーって! びっくりしただけだ」
「……もしかして私が原因かしら」

いたずらっぽく舌を出しながら、机の上に置いてあった財布をポケットに入れる。

靴を履きながら、また痴話喧嘩を再開している2人に声をかけた。

「どっちかついてきてくれない?」
「あっ、じゃあ私行きます!」

先に返事をしたのは藍。
京介を冷たく一瞥してさっさと歩き出し、玄関でもう一度振り返った。

「2階へ上がったらはったおすからね!」

そう言い放って乱暴に扉を閉めた。

⏰:08/04/15 04:02 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#115 [◆vzApYZDoz6]
バタン、と玄関のドアがやや強めに閉まる音が響く。

「…それはお前の台詞じゃねーだろ!」

あっという間に1人取り残された京介は、ドアに向かって文句を叫んでいた。

【なお、すぐにしょぼくれて大人しくなると思うので、スルーします。】


「…っておい待ちやがれてめえ!!…」


────────────


「……あれ?」
「どうかしたの?」
「なんか今、京ちゃんに『てめえ』って言われたような…」

ここは内藤宅の近所にある、普通のスーパーマーケット。
カートを押している藍が、謎の空耳を聞いていた。

⏰:08/04/15 04:03 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#116 [◆vzApYZDoz6]
「なんか分からないけど、京ちゃんがすごく哀れな気がする…」
「あら、ちゃんと心配してるのねぇ」
「べっ、別に心配なんかしてないですよ!」

会話しながら店内を回る。有紗が食材をカートへどんどん放り込んでいく。

「…有紗さんは、内藤先生と仲いいですよね」
「そーかしらねぇ…あっ、これも買っちゃお♪」

そう言って手に取ったのは伊勢海老。
まったく金銭感覚がよく分からない。

「藍ちゃんは、どうしてさっき京介くんと喧嘩したの?」

「…さっきの京ちゃんの言動にムカついたから」

「それ、なんでムカついたんだと思う?」

⏰:08/04/15 04:04 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#117 [◆vzApYZDoz6]
精肉コーナーで、牛から鶏まで一通りの肉をすべてカートへ放り込む。
一体何を作る気なのだろうか。

「……なんか、いやらしかったから?」

「ふふっ、まぁそれもハズレじゃないかもしれないけど♪ 的を射た理由が見つからないでしょ?
 『怒る』って、そんなものよ。何が気に入らないのか、あんまり分からずに怒鳴っちゃったりね」

一通り店内を回ってレジへ行くのかと思いきや、またUターン。

カートの中はすでに様々な食材で溢れかえっているというのに、まだ何か買うつもりらしい。

「『仲がいい』っていうのは、お互いに怒りあえる人のことだと思うの」

⏰:08/04/15 04:05 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#118 [◆vzApYZDoz6]
「喧嘩するほど仲がいい、ってことですか?」

「そうねぇ。自分が好いている相手には、自分の欲望が自然と向けられちゃうの。独占欲みたいなものかな。

 相手を知っている上で、それでも『ここがいや』だとか『こうしてほしい』だとか思うから、それを伝えるために怒るのよ。

 お互いがそれを抑えられないと衝突しちゃうんだけど、若いうちはそれがいいの」

「お話はなんとなく分かりますけど…」

2周目を終えて、ようやくレジへ歩みを向ける。

カートに詰め込まれた食材は、すでにカートから山盛りにはみ出していて、危ういところでバランスを保っていた。

⏰:08/04/15 04:06 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#119 [◆vzApYZDoz6]
「…若いうちは、って、有紗さんもまだ若いですよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない♪」

レジに立つ店員が、山盛りのカートにおっかなびっくり手を付ける。
量も半端ないので、会計に時間が掛かりそうだ。

「でも、私も昔は喧嘩ばっかだったわねぇ…」

その間に、有紗はパンデモでのことを思い出していた。

母親であるイルリナを人質に連れ去られる、その前まではよく内藤と痴話喧嘩も妬いていた気がする。

その頃は、精神的にはまだまだ若かったのだろう。

「私が年取ったのは、絶対グラシアのせいよ!」
「えぇ!?」

⏰:08/04/15 04:07 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#120 [◆vzApYZDoz6]

「…グラシアで思い出したけど、クルサちゃんって一体どうなったのかしらねぇ…」

有紗は、内藤らが地球に帰ったすぐあとに地球への扉をくぐった。

ハルキンには『こっちで探しておいてやるから、好き勝手してこい』と言われていたが、やはりどうなってるかは気になる。

「確か地球にも移動できるスキル持ってたから、生きてるなら地球に来ると思うけど…やっぱり助かってないのかな…」

クルサがディフェレスで行方不明になっている事など、有紗は知らない。


今現在、クルサが移動系のスキルで地球に来ている事など、なおのこと知るはずもなかった。


⏰:08/04/15 04:08 📱:P903i 🆔:u1DQTzs.


#121 [◆vzApYZDoz6]

─内藤の場合─

内藤や京介らが住む地球の1都市、歌箱市。

田舎ではないが決して都会でもないこの歌箱市の空は、まだ光化学スモッグに汚染されていない。

空はいつもよりも青く、暖かに晴れ渡っていた。
これを春の陽気と言うのだろうか。

「今日はいい天気だな…」

そんな空の下で、内藤は愛車の赤いRX−8を走らせていた。

特に何か用事があるわけではない。
ピカピカに磨き上げている愛車に乗ってドライブするのが、内藤の数少ない趣味のひとつだった。

内藤の乗った車はやがて、歌箱市を一望できる高台にたどり着いた。

⏰:08/05/02 03:12 📱:P903i 🆔:ANkVv1PE


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