Castaway-2nd battle-
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#214 [我輩は匿名である]
「アイツか…」

「…もしかして、リッキーとかいう奴?」

ラスダンが事も無げに聞いてきた。

「名前は知らん。風船を操るいけすかねぇ奴だったのは覚えてる」

「やっぱりね…でも残念、彼なら京介くんが倒しちゃったよ」

「つうことは、あの人形は別の奴か。…つうかアイツ、 あ の 京介ごときに負けたのか? 正真正銘の雑魚だなそりゃ」

「間違いなく雑魚だね。 あ の 京介くんにすら勝てないんだから」

「…あんたたち、京介に恨みでもあるの? 『あの』がやけに強調されてる気がするけど」

ラスカが呆れたように腰に手を当てた。


 

⏰:09/03/11 22:07 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#215 [我輩は匿名である]
「結界?」

ハルトマンに連絡を取ったきり黙っていたかと思うと、突然立ち上がり窓の外を眺めだした内藤。
その内藤が窓辺で呟いた言葉を、有紗が鸚鵡返しする。

内藤が振り返り、壁掛け時計を確認しながら答えた。
時刻は11時40分。もう少しで日付が変わる。

「ああ。何処のどいつの仕業かは分からないが、今展開されてる。
恐らく歌箱市全体を覆うように、な」

⏰:09/09/08 13:14 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#216 [我輩は匿名である]
再び窓を振り返り、空を仰ぎ見る。
夜の空に混じって、チューナーのずれたテレビ画面のような黒いノイズが、バケツの水をひっくり返したように急速に広がっていた。

ノイズが広がる方向の逆側へと目を走らせる。

ノイズの発生源となっている上空の下に、一際大きなビルが建っていた。
ノイズはそのビルの屋上から細く伸び、広がっている。

⏰:09/09/08 13:19 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#217 [我輩は匿名である]
「…有紗、後で仕事を頼んでいいか」

「いいけど。あなたはどうするの?」

「俺は俺でやる事がある」

そう言うと、内藤はピシャリと窓を閉めた。

と同時に、玄関の扉が慌ただしく開く音が聞こえる。

「来たか」

やがて、ハルトマン、シーナ、リーザの3人が入ってきた。

⏰:09/09/08 13:20 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#218 [我輩は匿名である]
3人を見た有紗が不思議そうな顔をする。

「あら…集まるのはいいけど、どうするのよ?
まだ京ちゃんの居場所わかってないんでしょ?」

確かに、現状敵や内藤の居場所を把握できていないので、やれることはあまりない。

「確認すべきことはいくらかあるが…まぁ今はいい」

「ところで…この事は浅香君には言ってあるのかね?」

ハルトマンが内藤と有紗ね間に口を挟む。

「いや…そもそも川上は浅香に何も話していなかったしな」

そう言って、内藤は煙草に火をつける。
深くゆったりと煙を吐き出して、天井を煽った。

⏰:09/09/08 13:20 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#219 [我輩は匿名である]
今の京介はスキルを失っているため、戦うことはできないだろう。
内藤もそれを知っている。
そして、京介がは今回の件に関わりたがっていない事も感じていた。

そこで、藍に何も伝えず、京介を藍につかせる事で、戦線から京介を外そうとしていた。
その矢先の誘拐、である。

敵が京介と藍を狙っているのは確実。
結果論だが、内藤の対応は後手に回ってしまったことになる。

ディフェレス側からシーナとリーザは来たものの、ハルキンらと直接コンタクトを取る手段もない。


状況は、どんどんと悪い方へ流れていた。

⏰:09/09/08 13:21 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#220 [我輩は匿名である]
「しかしそうなると、京介は敵がこちらにやって来ていることも知らんわけか…ちと厄介じゃのう」

ハルトマンが渋い顔を作りながら顎を擦る。
横から有紗が言葉を続けた。

「今藍ちゃんに誰もついていないのはまずいんじゃない?」

「そうですね、京介くんが狙われたのなら藍さんも───シーナ?」

相槌を打つリーザの視界に、窓を開けて外を見るシーナが映る。
気持ちのいい夜風が吹いていたが、風に当たっている訳ではなかった。
シーナはどこか遠くを見つめている。

⏰:09/09/08 13:21 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#221 [我輩は匿名である]
「どうかしたの?」

「お姉ちゃん、普通こんな時間に船なんて動いてないよね?」

「えっ? ええ、まあ…夜中の3時だもの……って、ちょっとシーナ!?」

言うやいなや、シーナは窓から飛び出していた。


 

⏰:09/09/08 13:22 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#222 [我輩は匿名である]
 


歌箱市の最南端には小さな工業港がある。
貨物ターミナルも兼用していて、昼間は鉄鋼を積んだタンカーやコンテナ船が行き交っている。
岸壁のクレーンは荷物の積み降ろしに忙しなく動き、コンテナを積んだトレーラーの出入りも多い。

当然だが今の時間帯は人の姿もなく、昼間は動いている岸壁のクレーンやトレーラーも沈黙している。
聞こえるのはテトラポッドにぶつかり弾ける波の音。

その音に被さって、遠くから音吐朗々と汽笛が響きだす。
沖合いに浮かぶ巨大な船体が、闇に紛れるように前照灯を消して、港に近付いていた。

⏰:09/09/08 13:23 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#223 [我輩は匿名である]
「あれは…タンカー?」

接岸部から少し離れたコンテナに隠れて様子を窺っていたシーナがそれに気付く。

「それもかなり大きいものみたいですね」

「夜行船、ってわけではなさそうじゃの」

「ってお姉ちゃんにハルトマン!?」

「あなたが急に飛び出すから、追ってきたのよ」

「おかしいの…今の歌箱には外からは入ってこれん筈じゃが」

ハルトマンが顎を摩りながら、いぶかしげに遠方のタンカーを見つめる。

結界によって入ってこれない筈のタンカーは悠々と入港し、さっさと碇を下ろして接岸した。
開いた後部ハッチから十数人の人影が出てくる。

⏰:09/09/08 16:23 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


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