Castaway-2nd battle-
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#221 [我輩は匿名である]
「どうかしたの?」

「お姉ちゃん、普通こんな時間に船なんて動いてないよね?」

「えっ? ええ、まあ…夜中の3時だもの……って、ちょっとシーナ!?」

言うやいなや、シーナは窓から飛び出していた。


 

⏰:09/09/08 13:22 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#222 [我輩は匿名である]
 


歌箱市の最南端には小さな工業港がある。
貨物ターミナルも兼用していて、昼間は鉄鋼を積んだタンカーやコンテナ船が行き交っている。
岸壁のクレーンは荷物の積み降ろしに忙しなく動き、コンテナを積んだトレーラーの出入りも多い。

当然だが今の時間帯は人の姿もなく、昼間は動いている岸壁のクレーンやトレーラーも沈黙している。
聞こえるのはテトラポッドにぶつかり弾ける波の音。

その音に被さって、遠くから音吐朗々と汽笛が響きだす。
沖合いに浮かぶ巨大な船体が、闇に紛れるように前照灯を消して、港に近付いていた。

⏰:09/09/08 13:23 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#223 [我輩は匿名である]
「あれは…タンカー?」

接岸部から少し離れたコンテナに隠れて様子を窺っていたシーナがそれに気付く。

「それもかなり大きいものみたいですね」

「夜行船、ってわけではなさそうじゃの」

「ってお姉ちゃんにハルトマン!?」

「あなたが急に飛び出すから、追ってきたのよ」

「おかしいの…今の歌箱には外からは入ってこれん筈じゃが」

ハルトマンが顎を摩りながら、いぶかしげに遠方のタンカーを見つめる。

結界によって入ってこれない筈のタンカーは悠々と入港し、さっさと碇を下ろして接岸した。
開いた後部ハッチから十数人の人影が出てくる。

⏰:09/09/08 16:23 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#224 [我輩は匿名である]
「うひゃー、出る出るまだ出る」

「シーナ、貴女ってば本当にもう……」

「見るからに怪しいのう、あいつら」

まさか偶然、結界に穴が空いたなんて事はないだろう。
事態は内藤らが思っていたよりも大事になってきていた。

というのも、船から下りてきた集団。
男女混合、全員が見覚えのあるラバースーツのような物を身に纏っている。

「街中であんな格好、あたしはできないね」

「そういう事じゃないでしょうに…あれはハル兄弟が着ていたものね」

「ウォルサーの肉体強化スーツじゃな。…それに…」

⏰:09/09/08 16:24 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#225 [我輩は匿名である]
中央にいる、その集団に指示を出しているらしい女に、ハルトマンは見覚えがあった。

細身の、しかし決して華奢ではない鍛えられた肉体。
黒すぎて青く見えるストレートヘアーが、闇の中で艶めいている。

タンカーから下りた集団の指揮を、セリナが執っていた。

「あやつは確か『7人』の生き残りじゃな…となると内藤が適任かのう」

「さっきからぶつぶつ言ってどうしたのよ?」

「それよりもあの方達、明らかにこちらに向かってきている気がしますが…」

⏰:09/09/08 16:25 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#226 [我輩は匿名である]
リーザが剣袋から刀を取り出し、鞘を左手に納め身構える。
同時にシーナも刀を手にした。

対して、散開しつつ徐々にこちらに歩いてくる敵集団。
半分程は様子を見ているのか動こうとしない。

「なんともやる気満々じゃの」

「まぁ、お帰り願える雰囲気じゃないのは確かねー」

「ハルトマンさん、お手並み拝見させていただきます」

「言うのう。言っておくが手助けはせんぞ?」

「あら、それはこっちのセリフよ!」

「では行くぞ。とりあえず全員倒すつもりでのう!」

⏰:09/09/08 16:49 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#227 [我輩は匿名である]
ハルトマンが駆け出し、2人の剣士がそれに続く。
対して身構える敵。数は6人。

「はっ!」

「それっ!」

リーザとシーナの抜き打ちで敵2人が地に臥せる。
続いてハルトマンの拳が1人の下顎を打ち抜き、その間に切り返し薙ぐ刃が2人を斬り臥せた。

この時点で6人いた敵は1人を残すのみ。
だが、最後の1人は笑っていた。

「ずいぶん余裕みたいねー」

「シーナ、残りの方が来る前に…」

「避けろ!!」

⏰:09/09/08 16:50 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#228 [我輩は匿名である]
ハルトマンの叫びに反応し、リーザが横に飛ぶ。
同様にシーナとハルトマンも回避。気付けば背中合わせに集まっていた。

3人を取り囲むのは、先程倒したはずの敵5人。
傷口から血を滲ませながら平然と立っている。
全員が薄ら笑いを浮かべていた。

「んんー…? もしかして全員レンサー?」

「どうやらそのようね。再生タイプかしら」

「なら、多少手荒くてもいいわけね!」

「おい、いかんぞ!」

⏰:09/09/08 16:51 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#229 [我輩は匿名である]
暫く戦いから離れていたからか、覇気余るシーナが衲咸する。
おかげで場の流れが変わり、シーナが向かった方向以外の敵が一斉にリーザとハルトマンに襲いかかった。

「言わんこっちゃないのう」

「リーザったら…」

「それに、奴らは再生するだけではないぞ」

⏰:09/09/08 16:51 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#230 [我輩は匿名である]
「今度は再生する暇なんてあげないからね!」

数メートルを二足で駆け、流れる視界に敵を捉える。
数は2人、左右に展開。近いのは左。

左の敵に肉薄し、ブレーキの勢いをそのままに体ごと水平に薙ぐ。
その一刀は敵の鼻先をかすめ空を切った。

そのままバックステップで距離をとる敵から、今度は右の敵に気を移す。
敵は地を滑るように間合いを詰め、流れるような動作で拳を突き出した。

予想よりも動きが良い。
久しぶりの実戦にしてはいささか血の気が多いが、これこそ本分だとシーナは肌で感じていた。

⏰:09/09/08 16:51 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


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