Castaway-2nd battle-
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#142 [◆vzApYZDoz6]
京介のスキルは確かに消滅したが、付加価値としてあった身体強化能力はまだ残っていた。
だが、それもどんどん弱まってきている。
(もし本当に敵がいて、遭遇なんかしたりしたら…)
半年前なら身体強化だけでも戦えた。
だがはたして今の状態で、いざという時に藍を守れるのだろうか。
京介の心情を察した内藤が、ゆっくりと口を開いた。
「…俺もアリサも1人で戦える。お前は敵に遭遇したら藍を守ることだけ考えてろ」
「……ん、分かった」
「アリサには俺が伝えておく。…藍に話すかどうかはお前が決めろ。とりあえず今日は帰るんだ」
:08/05/07 02:52 :P903i :TWhWMPbI
#143 [◆vzApYZDoz6]
「京ちゃん、どうしたの? さっきからずっと黙って」
最寄り駅から京介達の住むマンションまで、歩いて約5分。
藍と一緒に家路についていた京介は、先ほどの内藤の話についてずっと考えていた。
一応、軽く周囲を警戒しながら。
内藤の話は、まだ半信半疑だった。
「ね、京ちゃん。そういえばさっき内藤先生と何話してたの? 殴られてはいないみたいだけど」
「殴られて、って……まぁ色々話してたんだよ」
藍に言うべきかどうか、少し迷っていた。
さっきの内藤の口振りから察するに、どうやら内藤は有紗と共に敵を探すつもりだろう。
:08/05/07 02:53 :P903i :TWhWMPbI
#144 [◆vzApYZDoz6]
京介は、それならば身辺の警戒だけをしようと思っていた。
わざわざ敵を探しに行くのなんて面倒だし、戦いもできればしたくない。
というか、他人より少し身体能力が高いだけの今の自分が、どれだけ役に立てるのだろうか。
そうなると現時点で藍に話す意味もあまりないし、もし敵に遭遇したら藍を守りながら逃げればいい。
わざわざ自分から厄介事に関わる必要はないし、藍を関わらせる必要なんてもっとなかった。
「色々って何?」
「別にいいから…また今度話すからさ」
「ふーん。教えてくれないわけね」
「いやそういうのじゃなくて…」
「もーいいから」
:08/05/07 02:55 :P903i :TWhWMPbI
#145 [◆vzApYZDoz6]
そうとだけ言うと、藍はもう視界に入っている自宅マンションへさっさと歩いていった。
「何だよあいつ…最近変だな」
その理由はもしかしたら自分にあるのかもしれないが、考えても分からなかった。
「はー、敵さんもいるわけだし…問題が増えてばっかりだ」
大きくため息をつく。
考えすぎて知恵熱でも出しそうだ。
辺りはすでに真っ暗。
とりあえず明日も学校だし、今日は家に帰って休みたかった。
マンションへ小走りに向かい、1階の郵便受けを確認する。
チラッと横を見ると、上へ向かう階段が見えた。
(そういえば…敵さんはどこから来るんだ?)
:08/05/07 02:56 :P903i :TWhWMPbI
#146 [◆vzApYZDoz6]
半年前、ディフェレスへの扉は階段の横部分に出現した。
その扉がディフェレスに繋がったのは藍の能力だったが、扉を作ったのはウォルサーの誰かだ。
その誰かがもしまだ生きているなら、もちろん京介と藍がこのマンションに住んでいるのは知っているはず。
間違いなくここに扉を作るだろう。
もしそうなれば、寝込みを襲われただけで終わりだ。
京介の背筋に一瞬、悪寒が走った。
あまり考えたくはないが、その可能性は高い。
休む暇などあったものじゃない。
「これじゃ寝れないじゃん…明日内藤に相談するか…」
考えても埒があかない。
とりあえず、階段をのぼった。
:08/05/07 02:56 :P903i :TWhWMPbI
#147 [◆vzApYZDoz6]
とん、とん、と。
一定のリズムで階段を上がっていく。
そのリズムに合わせて、階段横のあの場所に、小さな光が生まれていた。
階段をのぼる音が小さくなっていくのに比例して、光は静かに、渦を巻きながら徐々に大きく膨れていく。
京介は気付かず、4階の自宅のドアに手をかける。
それと同時に、光の膨張が止まる。
光は階段横の狭いスペース全体に広がっていた。
京介がドアを開き、中に入る。
ドアが閉じられると同時に、光は弾けるように消え失せ、代わりに小さなドアが出現していた。
間も無くしてその小さなドアから、男が身を屈めて出てきた。
:08/05/07 02:58 :P903i :TWhWMPbI
#148 [◆vzApYZDoz6]
「到着ー、っとぉ」
頭にハンチング帽、口には煙草をくわえて。
コートのポケットには、ビニールフィルムが剥がされただけの新品の煙草が何箱も詰め込まれている。
ドアから出てきたのは、ロモだった。
「異常はなし、かぁ。おまえらぁ、出てきていいぞぉー」
小さなドアの向こうに向かって話しかけると、中からは同じ格好をした男がぞろぞろと出てきた。
10人程度だろうか。皆、特撮にあるような体にピッタリとしたラバースーツを着ている。
「どうですか、隊長」
「まぁいいんじゃねぇのぉ? とりあえず煙草がないか確認しとかないとなぁ」
:08/05/07 02:59 :P903i :TWhWMPbI
#149 [◆vzApYZDoz6]
ロモが少し目深にハンチング帽をかぶりなおす。
短くなった煙草をポイ捨て、すぐに新しい煙草を取り出した。
口にくわえて火をつけ、深くひと吸い。
煙を吐き出しながら、後ろの男たちに向き直った。
「お前らは俺が言うまで待機しとけよぉ。せっかくここから出てきたんだからなぁ」
「イエッサー!」
後ろの同じ格好の男たちが、一斉に同じ敬礼のポーズをとる。
それを見たロモは満足そうに笑い、再び振り返ってゆっくりと歩き出した。
:08/05/07 03:00 :P903i :TWhWMPbI
#150 [◆vzApYZDoz6]
「さぁーてとぉ。それじゃいっちょ、お仕事開始しますかねぇ…」
再びハンチング帽をかぶりなおす。
最後に煙草の煙を深く吸い、かかとで火を消した。
薄く笑みを浮かべながら、マンションを出る。
ロモと男たちの姿が、歌箱市の夜闇の中へと消えていく。
その姿が完全に見えなくなる頃には、階段横の小さなドアも消えていて。
跡には、煙草の吸い殻2つと微かな残り香があるだけだった。
:08/05/07 03:02 :P903i :TWhWMPbI
#151 [◆vzApYZDoz6]
あげまーす
来週あたりに更新予定
:08/07/07 16:15 :P903i :MX0aIOhE
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