Castaway-2nd battle-
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#182 [◆vzApYZDoz6]
「身柄を頂きにきたわりに、危害は加えない? どういうつもりだよ」

何かしてきてもすぐに対応できるように警戒しながら、構えだけ解く。

ロモはさっき火を着けたばかりの煙草を中程まで吸い、京介の右斜めあたりにポイ捨てた。
再び新しい煙草を一本取り出し、火を着ける。

「俺ァ争い事が嫌いなんでさぁー。できれば平和的についてきてほしいわけよぅ」
「それは無理な相談だな」
「だよなぁー、そうだよなぁー。じゃ、諦めるわぁ」
「…!?」

ロモはそう言うと、手にしていたリアルキアイダーを飲み干して地面に置き、京介の方へ向かって歩き出してきた。

⏰:08/08/29 22:07 📱:P903i 🆔:saOknxQ2


#183 [◆vzApYZDoz6]
ロモが動き出したのを確認して、素早く身構える。
その時に、ドリブルしていたスチール缶に足が当たりロモの前に転がった。

だがロモはスチール缶や京介をまったく気にもせず、当たり前のように隣を通りすぎる。
京介が慌てて振り返ると、ロモはまた煙草をポイ捨てしていた。

「…本気で帰る気か? 一体何しに来たんだ?」
「だぁから平和的に、っつうのが好きなんだよぅ。あんたぁ、戦いたいのかい?」
「いや…そういうわけじゃねーけど…」

そうだろう、と言いながらロモはまた煙草を取り出す。
呆れたヘビースモーカーだ。

⏰:08/08/29 22:08 📱:P903i 🆔:saOknxQ2


#184 [◆vzApYZDoz6]
まったく何を考えているのか分からなかった。
本当についてこいと言いにきただけなのか、それとも偶然会っただけで、武器を持っていないのか。

確かに、今遭遇したのは偶然だろう。
わざわざウォルサーの人間だと名乗ったのも、出鼻をくじいて主導権を握ろうとしたからなのかもしれない。

そう考えると、さっさと帰ろうとしているのも納得できなくはない。

(帰るって言ってるし、無理に突っかかる事もないか…?)

そう考えたのが甘かった。

ほんの少し、意識しない程度に緊張が解け、力が抜ける。
些細な無意識下での油断。

ロモはそれを見逃さなかった。

⏰:08/08/29 22:09 📱:P903i 🆔:saOknxQ2


#185 [◆vzApYZDoz6]
「あんたぁ…甘いねぇ」

ロモは鼻で笑い、京介に向かって吸いかけの煙草を指で弾く。

京介は視界こそロモに向けていたが、突然飛んできたために反応が遅れる。
自分に向かう煙草が、なぜかスローモーションに見えた。

その遅れた視界は、久しぶりに味わう命に関わる緊張感。
ただの煙草だというのに、距離が縮まるほどに心臓の高鳴りが早まっていく。
直感は、すでに己の敗北を認識していた。

「平和的にって話、ありゃ嘘だ」

ロモが捨てた煙草は計3本。京介の背後、右、前方に1本づつ。
今飛んできた4本目が、京介の左側。

それらが全て、爆発した。

⏰:08/08/29 22:10 📱:P903i 🆔:saOknxQ2


#186 [◆vzApYZDoz6]
「しまっ――!」

四方を囲まれ逃げることもできず、京介の体が爆炎に包まれる。
炎は大したことはないが、指向性を持った爆発の衝撃が京介を四方から押し潰した。

崩れ落ちる京介の目に映るのは、余裕で煙草をふかすロモの姿。
その煙草はまだ火を着けたばかりだったが、ロモは最後にそれを放り投げた。

放物線を描いて、京介の眼前に煙草が落ちる。
火の着いたばかりの煙草は小さな爆発を起こし、その衝撃はピンポイントに京介の顎を打ち抜いた。

(藍……くっ…そ…)

⏰:08/08/29 22:11 📱:P903i 🆔:saOknxQ2


#187 [◆vzApYZDoz6]

程なくして爆音を聞き付けたコンビニの店員が様子を見にきたが、そこにあったのは焦げた跡と煙草の吸いがら。

そして、コンビニに並べられている新商品のジュースの空き缶が2つ、転がっているだけだった。

⏰:08/08/29 22:12 📱:P903i 🆔:saOknxQ2


#188 [◆vzApYZDoz6]


時間軸は元に戻る。
午後11時半。ハルトマン達が内藤からの連絡を受けて、急ぎ足で内藤宅へ向かっているちょうどその頃。

歌箱市内のとあるホテルの最上階の一室に、窓から夜景を眺める1人の人間がいた。

男か女かはよく分からない。
というのも、体は細く小さくて、髪はさながら貞子のように長いため、見た目からは判断できないからだ。

その人間は窓辺からの景色に飽きる事なく、まるで何かを探しているかのように、ひたすらに外を眺めていた。

ちょうどその時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

⏰:08/09/17 23:57 📱:P903i 🆔:PrwlaPVk


#189 [◆vzApYZDoz6]
窓辺から離れ、緩慢な動作で扉を開けてやる。
ハンチング帽を被り、大きな荷物を担いだ男が入ってきた。

「いよーう、ただいま帰ったぜトビーちゃん。ほれ、オレンジジュース」
「……ん…お…かえり…」

入ってきたのはロモで、それを迎えた髪の長い人間はトビーだった。

トビーはロモからオレンジジュースを受け取りつつも、視線は大きな荷物に向けられていた。
ロモはそんなことお構いなしに、コンビニで買っておいたコンビーフにかぶりつく。

「コンビーフってなぁー男の味だよなぁー」
「………ねぇ…」
「んん?」
「…なに…それ…」

⏰:08/09/17 23:57 📱:P903i 🆔:PrwlaPVk


#190 [◆vzApYZDoz6]
当然コンビーフのことを訊いたのではない。
トビーが指差しているのは例の大きな荷物で、その荷物はモソモソと動いていた。

というか、普通に人だった。

後ろ手に縛られ猿轡をされているが、呻きすらしないところを見ると相当弱っているらしい。

見れば服の所々に焦げ跡がつき、破れている。
そのことからロモと交戦したんだろうということはわかるが、わざわざ連れ帰ってくるとは、一体何者なのだろうか。

「なにっておめぇ、こちらに転がっておわすのが地球人レンサーの川上京介くんよ」
「……なん…で…連れてきた…の…?」

⏰:08/09/17 23:58 📱:P903i 🆔:PrwlaPVk


#191 [◆vzApYZDoz6]
「いやそれがなぁ…不意にとはいえ会っちまった手前スルーするわけにもいかず、ついハッタリかまして連れてきちまってよぅ」
「…ばか」

実のところ、ロモが京介や藍を捕まえるために来た、という話は嘘だった。

ロモの仕事は、断層結界を張る役目であるトビーの護衛と身辺の世話。
ただそれだけなのに、ばったり会ってしまったのだから困る。

一応連れ帰ってきたものの、これからどうするかは考えていなかった。

「まぁ…しばらく置いとこうぜ。それよりトビーちゃんよぅ、ちゃんと仕事はやったのかい?」
「…まだ……さっき…ついたばかり…」

⏰:08/09/17 23:58 📱:P903i 🆔:PrwlaPVk


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