Castaway-2nd battle-
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#211 [我輩は匿名である]
朝方のこの時間なら、耕作に勤しむ者がこの北側にいてもおかしくないのだが、その姿は見えない。
それどころか、見渡す限りパンデモのどこにも人の姿は見えなかった。

耳に入るのはせわしなく飛び交う朝鳥の鳴き声だけ。
人の声は聞こえてこない。

「視聴覚遮断型の結界か…? ラスカ、どうだ?」

ハルキンが言う前から、既にラスカは結界解析作業に入っていた。
答はすぐに返ってきた。

「おかしいね…どうも、結界が張られていないみたい」

「張られていない?」

「形跡はあるんだけど。それもなかなか強力なヤツの、ね」

⏰:09/03/11 22:04 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#212 [我輩は匿名である]
「…ラスダン!」

「分かってる」

ラスダンもまた言われる前に動いていた。
宙空に片手をかざし、小型のノートパソコンを出現させる。
画面を睨むラスダンが、眉間に皺をよせ渋い顔を作った。

「…人っ子一人見当たらない。人形ならうじゃうじゃいるけどね」

「人形…?」

「中には甲冑とかマネキンみたいなのも混じってるけど」

⏰:09/03/11 22:04 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#213 [我輩は匿名である]
ハルキンが記憶の糸を辿る。
半年前の戦いの時、確か人形を操る奴がいたはずだ。

「名前は…なんつったっけかな」

額に手を当て唸るハルキンを見て、ラスカが聞いた。

「誰か心当たりがある奴でもいるの?」

「ああ。人形の方ならな」

確か、風船で作った人形に自分が出したガスを吹き込み、そのガスを操って人形を動かす、という能力だったはず。

応用すれば、甲冑やマネキンにガスを注入して操るぐらいはできるだろう。

⏰:09/03/11 22:05 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#214 [我輩は匿名である]
「アイツか…」

「…もしかして、リッキーとかいう奴?」

ラスダンが事も無げに聞いてきた。

「名前は知らん。風船を操るいけすかねぇ奴だったのは覚えてる」

「やっぱりね…でも残念、彼なら京介くんが倒しちゃったよ」

「つうことは、あの人形は別の奴か。…つうかアイツ、 あ の 京介ごときに負けたのか? 正真正銘の雑魚だなそりゃ」

「間違いなく雑魚だね。 あ の 京介くんにすら勝てないんだから」

「…あんたたち、京介に恨みでもあるの? 『あの』がやけに強調されてる気がするけど」

ラスカが呆れたように腰に手を当てた。


 

⏰:09/03/11 22:07 📱:P903i 🆔:MWxFamuw


#215 [我輩は匿名である]
「結界?」

ハルトマンに連絡を取ったきり黙っていたかと思うと、突然立ち上がり窓の外を眺めだした内藤。
その内藤が窓辺で呟いた言葉を、有紗が鸚鵡返しする。

内藤が振り返り、壁掛け時計を確認しながら答えた。
時刻は11時40分。もう少しで日付が変わる。

「ああ。何処のどいつの仕業かは分からないが、今展開されてる。
恐らく歌箱市全体を覆うように、な」

⏰:09/09/08 13:14 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#216 [我輩は匿名である]
再び窓を振り返り、空を仰ぎ見る。
夜の空に混じって、チューナーのずれたテレビ画面のような黒いノイズが、バケツの水をひっくり返したように急速に広がっていた。

ノイズが広がる方向の逆側へと目を走らせる。

ノイズの発生源となっている上空の下に、一際大きなビルが建っていた。
ノイズはそのビルの屋上から細く伸び、広がっている。

⏰:09/09/08 13:19 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#217 [我輩は匿名である]
「…有紗、後で仕事を頼んでいいか」

「いいけど。あなたはどうするの?」

「俺は俺でやる事がある」

そう言うと、内藤はピシャリと窓を閉めた。

と同時に、玄関の扉が慌ただしく開く音が聞こえる。

「来たか」

やがて、ハルトマン、シーナ、リーザの3人が入ってきた。

⏰:09/09/08 13:20 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#218 [我輩は匿名である]
3人を見た有紗が不思議そうな顔をする。

「あら…集まるのはいいけど、どうするのよ?
まだ京ちゃんの居場所わかってないんでしょ?」

確かに、現状敵や内藤の居場所を把握できていないので、やれることはあまりない。

「確認すべきことはいくらかあるが…まぁ今はいい」

「ところで…この事は浅香君には言ってあるのかね?」

ハルトマンが内藤と有紗ね間に口を挟む。

「いや…そもそも川上は浅香に何も話していなかったしな」

そう言って、内藤は煙草に火をつける。
深くゆったりと煙を吐き出して、天井を煽った。

⏰:09/09/08 13:20 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#219 [我輩は匿名である]
今の京介はスキルを失っているため、戦うことはできないだろう。
内藤もそれを知っている。
そして、京介がは今回の件に関わりたがっていない事も感じていた。

そこで、藍に何も伝えず、京介を藍につかせる事で、戦線から京介を外そうとしていた。
その矢先の誘拐、である。

敵が京介と藍を狙っているのは確実。
結果論だが、内藤の対応は後手に回ってしまったことになる。

ディフェレス側からシーナとリーザは来たものの、ハルキンらと直接コンタクトを取る手段もない。


状況は、どんどんと悪い方へ流れていた。

⏰:09/09/08 13:21 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


#220 [我輩は匿名である]
「しかしそうなると、京介は敵がこちらにやって来ていることも知らんわけか…ちと厄介じゃのう」

ハルトマンが渋い顔を作りながら顎を擦る。
横から有紗が言葉を続けた。

「今藍ちゃんに誰もついていないのはまずいんじゃない?」

「そうですね、京介くんが狙われたのなら藍さんも───シーナ?」

相槌を打つリーザの視界に、窓を開けて外を見るシーナが映る。
気持ちのいい夜風が吹いていたが、風に当たっている訳ではなかった。
シーナはどこか遠くを見つめている。

⏰:09/09/08 13:21 📱:P903i 🆔:jTdFI3VM


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