Castaway-2nd battle-
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#212 [我輩は匿名である]
「…ラスダン!」
「分かってる」
ラスダンもまた言われる前に動いていた。
宙空に片手をかざし、小型のノートパソコンを出現させる。
画面を睨むラスダンが、眉間に皺をよせ渋い顔を作った。
「…人っ子一人見当たらない。人形ならうじゃうじゃいるけどね」
「人形…?」
「中には甲冑とかマネキンみたいなのも混じってるけど」
:09/03/11 22:04 :P903i :MWxFamuw
#213 [我輩は匿名である]
ハルキンが記憶の糸を辿る。
半年前の戦いの時、確か人形を操る奴がいたはずだ。
「名前は…なんつったっけかな」
額に手を当て唸るハルキンを見て、ラスカが聞いた。
「誰か心当たりがある奴でもいるの?」
「ああ。人形の方ならな」
確か、風船で作った人形に自分が出したガスを吹き込み、そのガスを操って人形を動かす、という能力だったはず。
応用すれば、甲冑やマネキンにガスを注入して操るぐらいはできるだろう。
:09/03/11 22:05 :P903i :MWxFamuw
#214 [我輩は匿名である]
「アイツか…」
「…もしかして、リッキーとかいう奴?」
ラスダンが事も無げに聞いてきた。
「名前は知らん。風船を操るいけすかねぇ奴だったのは覚えてる」
「やっぱりね…でも残念、彼なら京介くんが倒しちゃったよ」
「つうことは、あの人形は別の奴か。…つうかアイツ、 あ の 京介ごときに負けたのか? 正真正銘の雑魚だなそりゃ」
「間違いなく雑魚だね。 あ の 京介くんにすら勝てないんだから」
「…あんたたち、京介に恨みでもあるの? 『あの』がやけに強調されてる気がするけど」
ラスカが呆れたように腰に手を当てた。
:09/03/11 22:07 :P903i :MWxFamuw
#215 [我輩は匿名である]
「結界?」
ハルトマンに連絡を取ったきり黙っていたかと思うと、突然立ち上がり窓の外を眺めだした内藤。
その内藤が窓辺で呟いた言葉を、有紗が鸚鵡返しする。
内藤が振り返り、壁掛け時計を確認しながら答えた。
時刻は11時40分。もう少しで日付が変わる。
「ああ。何処のどいつの仕業かは分からないが、今展開されてる。
恐らく歌箱市全体を覆うように、な」
:09/09/08 13:14 :P903i :jTdFI3VM
#216 [我輩は匿名である]
再び窓を振り返り、空を仰ぎ見る。
夜の空に混じって、チューナーのずれたテレビ画面のような黒いノイズが、バケツの水をひっくり返したように急速に広がっていた。
ノイズが広がる方向の逆側へと目を走らせる。
ノイズの発生源となっている上空の下に、一際大きなビルが建っていた。
ノイズはそのビルの屋上から細く伸び、広がっている。
:09/09/08 13:19 :P903i :jTdFI3VM
#217 [我輩は匿名である]
「…有紗、後で仕事を頼んでいいか」
「いいけど。あなたはどうするの?」
「俺は俺でやる事がある」
そう言うと、内藤はピシャリと窓を閉めた。
と同時に、玄関の扉が慌ただしく開く音が聞こえる。
「来たか」
やがて、ハルトマン、シーナ、リーザの3人が入ってきた。
:09/09/08 13:20 :P903i :jTdFI3VM
#218 [我輩は匿名である]
3人を見た有紗が不思議そうな顔をする。
「あら…集まるのはいいけど、どうするのよ?
まだ京ちゃんの居場所わかってないんでしょ?」
確かに、現状敵や内藤の居場所を把握できていないので、やれることはあまりない。
「確認すべきことはいくらかあるが…まぁ今はいい」
「ところで…この事は浅香君には言ってあるのかね?」
ハルトマンが内藤と有紗ね間に口を挟む。
「いや…そもそも川上は浅香に何も話していなかったしな」
そう言って、内藤は煙草に火をつける。
深くゆったりと煙を吐き出して、天井を煽った。
:09/09/08 13:20 :P903i :jTdFI3VM
#219 [我輩は匿名である]
今の京介はスキルを失っているため、戦うことはできないだろう。
内藤もそれを知っている。
そして、京介がは今回の件に関わりたがっていない事も感じていた。
そこで、藍に何も伝えず、京介を藍につかせる事で、戦線から京介を外そうとしていた。
その矢先の誘拐、である。
敵が京介と藍を狙っているのは確実。
結果論だが、内藤の対応は後手に回ってしまったことになる。
ディフェレス側からシーナとリーザは来たものの、ハルキンらと直接コンタクトを取る手段もない。
状況は、どんどんと悪い方へ流れていた。
:09/09/08 13:21 :P903i :jTdFI3VM
#220 [我輩は匿名である]
「しかしそうなると、京介は敵がこちらにやって来ていることも知らんわけか…ちと厄介じゃのう」
ハルトマンが渋い顔を作りながら顎を擦る。
横から有紗が言葉を続けた。
「今藍ちゃんに誰もついていないのはまずいんじゃない?」
「そうですね、京介くんが狙われたのなら藍さんも───シーナ?」
相槌を打つリーザの視界に、窓を開けて外を見るシーナが映る。
気持ちのいい夜風が吹いていたが、風に当たっている訳ではなかった。
シーナはどこか遠くを見つめている。
:09/09/08 13:21 :P903i :jTdFI3VM
#221 [我輩は匿名である]
「どうかしたの?」
「お姉ちゃん、普通こんな時間に船なんて動いてないよね?」
「えっ? ええ、まあ…夜中の3時だもの……って、ちょっとシーナ!?」
言うやいなや、シーナは窓から飛び出していた。
:09/09/08 13:22 :P903i :jTdFI3VM
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