Castaway-2nd battle-
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#22 [◆vzApYZDoz6]
ブロックが今更ながらラスダンの能力を思い出す。

その身に特殊な能力を保持するレンサー。
その能力は総称してレンサースキル、揶揄してスキルと呼ばれる。

ラスダンのスキルは『サイレントハッカー』。
特定した場所の様子を、頭の中で映像として見る事ができる。
遠い場所ほどノイズが掛かるが、目の前の生き物なんかなら胃の中身までも見る事が可能。
一定範囲内の全体視も可能で、ラスダンが頭の中で見ているこの基地の全景に、ここにいる5人以外の人影は無かった。
一応ブロックが胸部コクピットに戻り、動体感知器を確認するが、やはり敵は居なさそうだ。

⏰:08/02/27 02:42 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#23 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「そう言う事。さ、早く行こう」

ラスダンが意地悪く笑いながら、再び歩を進める。
そもそもラスダンを連れてきたのは、そのスキルで探し物を見つけるためだ。
サイレントハッカーを使えば、瓦礫の中にある刀や人など容易に発見出来るだろう。
発見出来るだろうが。

ラスダン「クルサは…生きていないかな、さすがに」

ラスダンの表情が少し曇る。
クルサは半年前の戦いでグラシアに体を支配され、生きた人形とされていた。
最終的に支配は解けたが、ミサイルと爆弾で潰れる要塞の瓦礫からラスダンとハルキンを守るため、その身を犠牲にした男。

⏰:08/02/27 02:43 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#24 [◆vzApYZDoz6]
クルサは、ラスダンの目の前で瓦礫に被われた。
普通に考えて生きてはいないだろうし、そこにあるのは悲惨に潰れた遺体だけだろう。
いや、半年も経っているのだから、既に肉は朽ち骨となっているかも知れない。
だが、身をはって助けてくれた人間をそのまま放置する事はできない。
せめて、手厚く葬ってやり、墓標の前で礼を言いたい。
恐らくハルキンも同じ気持ちで、探してこいと言ったのだろう。

ラスダン「…先に刀の方を探そう」

探し物は、恐らくすぐに見つけられる。
ラスダンは、感傷に浸っている今にクルサの遺体を直視すれば、泣きそうな気がした。

⏰:08/02/27 02:44 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#25 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「なんでよ?」
ラスダン「いいから」

気分的に何と無くだが、泣いてる所は見られたくなかった。
シーナはそれを分かっているかのように、ふふっ、と鼻で笑う。

シーナ「全く変なとこで臍曲がりねー」
ラスダン「いいからさ。どこに落としたの?」
シーナ「あれは確かハル兄弟と戦った時だったから…右側手前の連絡通路じゃないかな」

シーナが記憶の糸を辿る。
ハル・ラインに心臓を貫かれ、普通なら死ぬ場面。
ほとんど自分の意思とは関係なく立ち上がり、自分の限界を越えた能力で傷は癒え、いつの間にか手に握っていた刀は血を吸い染まっていた。
あれは一体何だったのだろうか。

⏰:08/02/27 02:45 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#26 [◆vzApYZDoz6]
ただ、自分の姉であるリーザは、この半年間ずっと同じ事を言っていた。
忘れた刀を早く取りに行こう、と。

シーナ「ま、いっか」

刀が手元に戻ってきたら姉に聞いてみよう。
そう考えた所で刀を忘れたと思しき場所に着いたので、さっさと思考を打ち切った。

連絡通路は1階にある。上に屋根も無いので、瓦礫はあまり積もっていなかった。

フラット「瓦礫で潰れてるんじゃ…とか思ってたけど、大丈夫っぽいな」
シーナ「まぁ、潰れてても打ち直すし大丈夫よ」
リーザ「…瓦礫があったとしても潰れてない筈ですよ」

リーザが呟いた言葉の意味を、シーナはその時はまだ理解できなかった。

⏰:08/02/27 02:46 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#27 [◆vzApYZDoz6]
ラスダンが目を閉じて、頭の中で瓦礫の奥を探る。
シーナとリーザはその様子を黙って見つめ、ジェイト兄弟は興味無さげに明後日のほうを向いていた。

5分程経っただろうか。
ラスダンは相変わらず目を閉じたままで、何も言わない。それどころか、眉根を寄せて口をへの字に結び、どんどん表情が険しくなっている。
やがて浅く長い溜め息吐き、頭を掻きながらゆっくりと瞼を上げた。

ラスダン「駄目だ」
シーナ「へ?」
ラスダン「いくら探しても刀が見つからない」

ラスダンは言いながら手を前にかざし、ノートパソコンを具現化。
キーボードを少し叩き、2人に見せるように画面を向けた。

⏰:08/02/27 02:47 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#28 [◆vzApYZDoz6]
画面に写っていたのは瓦礫の内部。
だが一部分だけ、円形に切り取ったようにぽっかりと瓦礫が無い。
そしてその周りに積もる瓦礫も、一部分だけ同様に瓦礫が無い。
まるで円形の部分から瓦礫を砕いて脱出したかのように、瓦礫の無い部分が一筋の道となって続いていた。
そして何より、円形の部分の中央に、どす黒く変色し固まった血溜まりがある。シーナはすぐにそこがどこか分かり、隣のリーザと顔を見合わせた。

画面に写されているそこは、シーナとハル・ラインが戦った場所。
刀を忘れてきた場所。
その映像が示す事。
刀は、誰かによって持ち去られた可能性がある、という事。

⏰:08/02/27 02:48 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#29 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「どう思う、これ?」
シーナ「さぁ…でも刀が勝手に動くわけないしね…」
リーザ「…あの刀が人の手に渡ったら不味いわ」
シーナ「…お姉ちゃん、何か隠してない?」

シーナの刀。それは昔リーザから譲り受けたもの。
だがリーザがその刀を振るっていた姿は、シーナは見たことがない。
そしてシーナも、その刀を使ったのは半年前の戦いが初めて。
元々性能は抜群だったが、リーザからは大事に保管しておいてと言われたからだ。
あの刀は、血を吸っていた。血を吸って強くなっていた。

なぜ、大事に保管すべき刀を、血を吸い上げる得体の知れない刀を、シーナに渡したのか。

⏰:08/02/27 02:48 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#30 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「あの刀…一体何なの?そう言えば銘も無かったわね」
リーザ「……」

リーザは答えず、パソコンの画面を睨んだまま、顎に手を当てている。
顔は少し青ざめている。
その様子を見て話したがっていないと思ったのか、ラスダンがノートパソコンを閉じて口を割った。

ラスダン「とりあえず話は後。まだクルサも探さなきゃいけないしね」

そう言って歩き出す。ジェイト兄弟も同様に、クルサが埋まっている地点へ向かう。
そこへ着くまで、リーザは終始押し黙ったまま。
それは、後に来るかもしれない災いを否定する、隠蔽ための沈黙だった。

⏰:08/02/27 02:55 📱:P903i 🆔:gXUb2t3s


#31 [◆vzApYZDoz6]
1階ロビー跡付近に到着し、ラスダンが再び目を閉じる。
さっきの連絡通路とは違い、ここは瓦礫だらけ。
探すのにも一手間いるし、見つけて瓦礫を掘り起こすのは大手間だろう。
それを考えてか、ジェイト兄弟がバイクを取りに戻っていった。

5分経った。ジェイト兄弟が巨人を走らせ戻ってきたが、ラスダンは依然目を閉じたまま。
更に5分。ラスダンはやはり目を開けない。それどころか、顔はどんどん険しくなる。
刀を探していた時と同じだ。
やがてラスダンがゆっくりと瞼を上げる。
まさかいないのでは、と誰もが抱いた思考は、的中した。

ラスダン「…駄目だ、見当たらない…」

⏰:08/02/28 05:08 📱:P903i 🆔:cgwrsj8w


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