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#525 [きのこ。『私の夢。2/3。』]
ただ一つだけまだ続いてるものもある。近所の田中さんが教えてくれたもので、確か「ラブレター作戦」とか言っていたかな。作戦と言っても簡単なもので、毎日のお弁当にメッセージカードを添えるだけのものだ。
最初はメッセージを書いて入れとくだけだったが、旦那が見てるのか見てないのかわからなかったので最近では返事欄なるものを作り旦那からの返事を楽しみに待つという作戦に変更した。


予想通り、始めて一年が経つが届く事のないラブレターばかり増えていく。始める当初からわかりきっていたが、いつかはいつかはと期待しつつ今に至る。


「愛してる」
この言葉までは望まないが、
「ありがとう」
この一言が欲しかった。そしていつものようにお弁当にメッセージカードを添える。

⏰:08/11/28 22:28 📱:D905i 🆔:yAoJO7js


#526 [きのこ。『私の夢。3/3。』]
「おかえりなさい、今日もお仕事大変だった?」
「…うん。」
いつもと変わらない会話。
お弁当と水筒を手渡されキッチンに向かう。
「いつになったら返事くれるんだろう…。」
ため息だけが出る。
空のお弁当箱を広げ洗おうとした瞬間、一枚の紙が足下に落ちた。
「一方通行の可哀想な私のラブレター…。」
そう言い手紙を拾い上げた。


「あっ。」
そこには久しく見ていない旦那のミミズみたいな字が見えた。
(もしかして…。)
と心躍らせながら、やっと報われた私のラブレターに興奮隠せず、
「ありがとう…かな。」
「お弁当おいしかった…かな。」
もしかしたら無口な彼だからこそ手紙では大胆に
「愛してる。かも」
などとまるで恋する乙女の様に想像を膨らませながら手紙を見た。



「麦茶に砂糖を入れるな。」



25年前にタイムスリップ出来るならあの頃の私に言いたい。
「麦茶に砂糖を入れて飲むのやめよ。」
とね。



そして私は今朝も麦茶に砂糖を入れる。
手紙はもう入れていない。その代わりに離婚届でも入れようかと思う今日この頃。

⏰:08/11/28 22:30 📱:D905i 🆔:yAoJO7js


#527 [きのこ。]
久々にきました
やっぱここゎ楽しいねみなさんの作品見て勉強にしてます

⏰:08/11/28 22:32 📱:D905i 🆔:yAoJO7js


#528 [我輩は匿名である]
>>527
乙でーす

俺も久々になんか書こうかな

⏰:08/11/30 22:32 📱:P903i 🆔:2BN2KbTQ


#529 [我輩は匿名である]
僕は呼びかける

「聡子…聡子聞いてくれよ?…」

彼女は黙っている

僕のことなど完全に無視だ

当然っちゃ当然か

僕が悪いんだから

「アドレスも連絡先も…相手からの履歴も消した…もう電話もメールもしないし、外で会ったりなんか絶対にしないから」

それでも、彼女の瞳の色は少しも変わらない

許す気などない…その決意に満ちた目だ

彼女がこういう目をしている時は絶対にテコでも折れない

何日でも僕を“シカト”し続ける

「許してくれ…本当に心から反省しているんだ」

彼女の髪の毛が一房、ふわりと揺れた

あ……嗤っているのかい?


>>530(僕の彼女2/3)に続く...

⏰:08/12/02 10:07 📱:PC 🆔:☆☆☆


#530 [我輩は匿名である]
「聡子ごめんよ…許す気になったのか?」

でも彼女は何も言わず、ただ妬まし気な目で僕を睨め付けるばかり

彼女が何を考えているのか

僕にはとんと理解できない

浮気のことがばれて、今朝家を追い出されたかと思えば、急に呼び出して「話し合いたい」だなんて…

嗤っているように見えた彼女の表情は、いつもどおりのポーカーフェイスに戻っていた

ふと、僕は気付いた

目の端に映る、ひらひらと風にゆられるカーテン

12月のこの時期にカーテンを開けっ放しにするなんて、と僕は窓を閉めに窓際に歩み寄った

「…閉めるよ」

キィキィ音をたてながら、窓を閉めた

いい加減、建て付けが悪くなったな…修理屋にでも見て貰うか

ぼんやり考えながら、僕は彼女の方に向き直った

どれだけ時間がかかっても構わない

彼女を説得しなければ…


>>531(僕の彼女3/3)に続く...

⏰:08/12/02 10:18 📱:PC 🆔:☆☆☆


#531 [我輩は匿名である]
「許す気なんてないわ」

ずっと黙っていたのに、彼女が口を開いた

やはり許せないか…当然だ… 僕はすっかり彼女を説得する気が失せてしまい、その場で項垂れた…これでもう、終わりなのか、と―

「だからアナタも、もう観念して」

次の瞬間、右の前頭部に激しい衝撃 何かがあたったような…続けざまに数回の衝撃の後、僕はその場に倒れ込んだ

意識を失う直前、僕の目に飛び込んできたのは、鎌を左手に持った女の姿
それは“彼女”ではない、別の女。彼女はまだ椅子に座ったまま、変わらぬ瞳で僕を睨んでいる

「………お前……………なんで……」

僕のつぶやきをかき消すように、最期の一撃が僕の頭めがけて振り下ろされた

女はしばらくそのままボンヤリと立っていたが、ハッと気がついたようにその鎌を、座っている“彼女”に無理矢理握らせた

死後硬直が始まっている“彼女”の手は固かったが…

「…これでよかったのよね?聡子さん」

女はそれだけ言い残すと、ゆっくりと部屋を出て、それきり二度と戻らなかった。

⏰:08/12/02 10:46 📱:PC 🆔:☆☆☆


#532 [渚坂 さいめ]
あげます

⏰:09/01/03 15:06 📱:F905i 🆔:DDHmQNGU


#533 [願いを叶えるための遺言(1/2)]
「死ぬ前に一度だけ死んでみたかったわ」

そう言ってクスリと笑う彼女の唇はまるで朝露に濡れた百合の花のように艶めかしく、僕の視線を捕らえて離さなかった。


「なにを言っているのかよく分からないよ」

思ったままを口にした僕は急に自分がとても幼稚で無知な人間のように感じられた。

彼女といるとそんな風に自分を見てしまうことが度々あったのだった。

外を歩いていても、昼食をとっていても……。そして僕と一緒に深い闇のようなベッドの中でまどろんでいる時でも。

彼女は息を吐くのと同じぐらい自然にポロリと訳の分からない言の葉を零す。


「あなたにはまだ分からないわね……」

そして決まってそう言うのだった。


そしてその言の葉はコーヒーをまだ苦いと感じてしまうような、まだ大人になりきれていない自分の内側を、尖ったナイフで削り取られるような感覚を引き起こす。

僕は密かに彼女の言葉を、いや、彼女を一点の光も届かないような心の奥の方で恐れていたのかもしれない。

⏰:09/01/13 23:20 📱:F905i 🆔:cnnAJJEE


#534 [願いを叶えるための遺言(2/2)]
僕は胸に広がる恐れを押しのけるように、力任せに隣で微笑んでいる彼女を抱きしめた。

僕が恐れる言の葉を零す唇を僕の唇を使って無理矢理塞いでやると、またも自分は幼稚な人間だと虚ろな思考が僕を責める。

それは本当に惨めで、なんて滑稽な姿なんだろうか。


「死にたいなんて言うなよ……」

それが今、僕に言える最大限の彼女への抵抗だった。



そして次の日の朝、彼女は僕の前から忽然と姿を消した。

彼女は己の願いを成し遂げたのだ。

僕の目の前から消えることで、僕の中のリアルな彼女は消え去ってしまった。

もうその柔らかい胸に顔を沈めることも、優しい微笑みも、僕を突き刺す鋭い言の葉も、僕の隣にはいない。つまり死んだも同然なのだ。


けれど彼女はこの世界から消えたわけではない。

彼女はまだどこかで呼吸をしている。

シーツに染み込んだ彼女の残り香がそう言っている気がした。

---end---

作者は
元:紫陽花
現:渚坂 さいめ です^^

⏰:09/01/13 23:22 📱:F905i 🆔:cnnAJJEE


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