【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#537 [[はつこい](2/3)あかり]
女だった。顔はもう思い出せない。
けれど優しい声色だったのは覚えている。
こうやって話していた様子を思い出すと、必ず胸が焦げるような感じがした。
それと同時に、酷く甘く、酷く熱く、酷く切なくと、激しく気が昂った。
:09/02/15 22:38 :SH904i :oDtqLGpY
#538 [[はつこい](3/3)あかり]
この熱情は何だろう。
この淡い心は何だろう。
悶々と考えるが、答えは出ない。
春が好きだ。
その春がまたやって来る。
行ってみようか。
不意にそう思った。
行ってみようか、あの場所へ。あの桜並木が続く公園へ。
もしかしたら、答えが出るかもしれない。
:09/02/15 22:41 :SH904i :oDtqLGpY
#539 [渚坂さいめ[ホワイトデー(1/3)]]
ある晴れた日、僕は突然声をかけられた。
「お、おい。お前ホワイトデーって何すればいいか分かるか?」
声をかけてきたのは宇峰央里だった。
ホワイトデー?
確かにそんな行事があった気はするけど……、そんなに目を血走らせて内容を考えるような行事だったかな?
「何って言われても……。そもそも央里は誰かからチョコ貰ったわけ……?」
「ゔ……。えーと、ハルキに貰った」
そう言えばハルキはみんなにチョコを配ってたっけ。
僕は……あれ?貰ったっけ?
「だからさ、バレンタインデーのお返しって何あげていいか分かんなくって。
傳って経験豊富そうだし、なんか知ってるだろ!?」
「いや、僕は決して経験豊富じゃない。そこは否定させてもらう。
でもまぁ、聞いた話では普通ホワイトデーにはマシュマロをあげるらしいけど……」
「ハルキ、マシュマロ嫌いって言ってた……」
「あれ?なんで嫌いって知ってんの……?」
「……っ、たまたま聞こえたんだよ!!」
:09/03/27 00:27 :F905i :ErRKzwfM
#540 [渚坂さいめ[ホワイトデー(2/3)]]
ははーん。
リサーチ済みって事は央里も何気にハルキの事が気になってんだな。
ホワイトデーのお返しと言えばマシュマロって相場が決まってるんだけど、それが嫌いだったから焦って僕を頼ってきたわけね。
ここは僕の出番って事か。
「そーだね……。食べ物は好き嫌いが分からないからやめた方がいいかも。もっと無難に……」
「無難に?」
「無難に花束とかでいいんじゃない……?」
「花束!!それいいな!!!!早速買ってくるわ」
「あ……」
行っちゃった。
花言葉には気をつけた方がいいよー、って言いたかったのに。
僕の経験上、女の子って花言葉とか細かいところに敏感だからね。
ま、店員さんが選んでくれるから心配いらないかな。
って、もう帰ってきた。
あーあー、そんなに振り回したら花びらとれちゃうって。
バカ、ハルキはあっちだって。男子トイレに居る訳ないだろ……。
そうそうそっち。
さて、僕は隠れて様子を見守りますかね……。宇峰央里の一世一代の晴れ舞台ってやつかな。
:09/03/27 00:28 :F905i :ErRKzwfM
#541 [渚坂さいめ[ホワイトデー(3/3)]]
「ハ、ハルキ……。これバレンタインデーのお返し……」
「……何これ?」
ぅわ……。
ハ、ハルキの目が怖い!!頑張れ央里!!もう一押しだ!!そのまま押し倒してしまえ……!!
うん。押し倒しちゃ駄目だけど、ハルキもまんざらじゃないみたいだし……。
これはひょっとしたら、ひょっとするかも。
「ゔ、ちょっと汚くなっちゃったけど花束だよ……。食べ物は何が好きか分かんなかったからモノにしてみました」
「ふーん……。この黄色いの、なんて花?」
「えっと、忘れた……」
「あっそ。……でも、ありがとう」
おっ!!
いい感じになってきた!!
じゃあ、覗き見なんて野暮なまねはこの辺にしといて、おじゃま虫な僕は退散するとしようかな。
ちなみに央里が買ってきた花の名前は「サンピタリア」で、花言葉は「愛の始まり」。
本人が花言葉を知っていたとは考えられないけど、偶然にしちゃあ今の央里にピッタリな花だと思っちゃうのは僕だけかな?
傳・央里・ハルキ [jpg/38KB]
:09/03/27 00:32 :F905i :ErRKzwfM
#542 [渚坂さいめ]
以上、アダムの唄の番外編でした
本編→http://bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/8607/
貼っているイラストは絵師様に描いてもらったものです。今考えると、なんとなくラノベっぽいですねw
イラストの無断転載・二次発布はやめてください
:09/03/27 00:34 :F905i :ErRKzwfM
#543 [渚坂さいめ]
:09/03/27 00:45 :F905i :ErRKzwfM
#544 [【いつか、また1/3】みぉり]
「さてっ……と、これで全部かな?」
最後の段ボールを玄関先に運んで、ふぅっとため息をつく
振り返った部屋はガランとしていて、何もない
二人の写真も、季節ごとに飾った花も
お揃いのコップもお箸も………
「………空っぽ…だ」
私の心に、ぽっかり空いた穴と同じ
:09/03/27 04:26 :N905i :9cJ2rwVY
#545 [【いつか、また2/3】みぉり]
やけに声の響く部屋を見回して、ふと目についたのは柱の傷
『ー……ね?私のほうが高いでしょ?』
『んなの、俺がすぐに抜いてやらぁっ!!』
…………こんな傷つけちゃって
そこにあるのは、二人の記憶
彼と私の背比べの跡
くすっと笑って、その傷を撫でる
いくつか刻まれたその傷は、彼の背丈ばかりが伸びた証
3年前より2年前が、2年前より1年前が、ぐんと成長した証
「おいっ!!荷物まだかぁ?」
下から呼び掛ける父の声に、はっと、慌てて部屋を出る
:09/03/27 04:34 :N905i :9cJ2rwVY
#546 [【いつか、また3/3】みぉり]
靴を履いて、もう一度くるりと部屋を見回す
私がこれから入る場所は木のぬくもりはない、鉄筋造りの建物らしい
一刻も早く、私はそこを出られるようにならなくてはいけない
彼に手を上げない、強い心を持った母親になって
胸を張って彼を迎えに行くために
彼と共に、この部屋に帰ってくるために
また、あの柱に彼の記憶を刻めるように……
深く息を吸い込み、扉を閉めながら誓う
いつかまた、必ず帰ってくるからとー………
:09/03/27 04:46 :N905i :9cJ2rwVY
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