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#555 [愛し(1/2)]
愛しい。

愛しい。

朝からずっと、こんなことばっかり考えてる。

愛しい。

仕事が手につかない。
早く家に帰りたい。

家には世界で一番愛しい妻と世界で一番かわいい娘が待っている。

俺、本当に結婚してよかった。

⏰:09/05/16 13:48 📱:N905i 🆔:☆☆☆


#556 [愛し(2/2)]
結婚してから2年。
ずっと幸せだったけど、最近娘が生まれてからは本当に幸せで。
家にいて娘を見ていると、嬉しいような、なんだか泣きたくなるようなそんな気持ちになる。
古文には「愛し(かなし)」という言葉がある。語源は「愛する人を思うと、幸せと同時にもの悲しくなるから」らしい。

まさにそれ。
愛しすぎて感極まってきちゃうんだよな。


俺、これからもっといい「お父さん」になるから。頑張って二人を守るから。

だから、いつまでも笑っていて。

⏰:09/05/16 13:56 📱:N905i 🆔:☆☆☆


#557 [渚坂]
定 期 あ げ !

⏰:09/05/25 19:58 📱:F905i 🆔:Kt2brzEY


#558 [1日(1/2)]
今日も彼女は、とっておきの笑顔を見せながら僕に話し掛けてくる。

「おはよう」

たったこの一言が、僕にとってどれだけ嬉しいことか。
毎朝この言葉で、僕は1日頑張ろうと心から思えるんだ。

はじめはまったく僕になついてくれなくて、本当に困った。
どんな話をしても、どんな動作をとっても反応は皆無と言っていいほど。
当時新米だった僕は、こんな仕事選ぶんじゃなかったかなって苦悩する日々が続いた。

⏰:09/05/25 20:44 📱:N905i 🆔:☆☆☆


#559 [1日(2/2)]
ある日、僕が趣味のトランペットを磨いていたときのこと。
「…それ、なに」
僕はもちろんびっくりして、「こ、これかい?これはトランペットって言うんだよ」とつぶやきながら、マウスピースを取り付けて吹いてみた。

「…!」

その日から、彼女は少しずつ心を開いてくれるようになった。

動かない手足。
細い腕に突き刺さる点滴。彼女はそれでも懸命に、僕のする話に相づちを打ち、笑い、泣き、驚いた。

やがて人工呼吸機が取り付けられるようになってからも、僕は毎日変わらず彼女に様々な話をした。


あとになって僕は彼女の余命を知らされた。

不思議と気分は穏やかだった。


余命があろうとなかろうと、僕にできることはただ一つ。
1日を無駄にしないこと。1日1回、彼女に話を聴かせてあげる、ただそれだけのことがどれほど彼女を助けているのかは分からない。

けれど、自己満足かもしれないけど…
僕は彼女の笑顔が見れることしかやりたくないんだ。逆に言えば、それしか方法がないんだ。



今日も彼女はとっておきの笑顔を見せながら、僕に話し掛けてくる。

「ありがとう」

⏰:09/05/25 21:00 📱:N905i 🆔:☆☆☆


#560 [[世界が開いた夏(1/3)]渚坂]
チリン―……

風鈴の音が耳に心地よい涼を運ぶ季節、私は一度目の前の縁側に腰掛け、ただ黙々と本を読む男に尋ねたことがあった。お前は私が不気味ではないのか、と。


「不気味?はは、まさか」


カラカラと渇いた笑い声とともに私の疑問は否定された。やつは左手にもっていた小説をパラパラとめくっていたかと思えば、何かを思い出したように頭を上げその漆黒の瞳が強く私を見つめた。
もちろん、彼の瞳に映る私の姿はない。私は鏡にも映らないし、水面にも映らない存在だから。


「いくら君が霊魂だとしても僕はちっとも怖くないよ。むしろ大歓迎だね」


それはお前が小説家だからだろう?ネタが欲しいだけなのだろう?と言い返せば、やつは私から視線を小説へと戻して小さく笑うだけだった。否定は、しない。


「現実は小説よりも奇なりと言ってね、僕は君のような存在が大好きなんだよ」

「……それは告白として受け取っていいのか?」

「それは困るね。幽霊に惚れるほど僕は愚かじゃない」


嗚呼、私がやつの家に来て一年が経つ。つまり都内の一角に隠れるようにして佇むこの家の主人と出会って一年が経つ。最初は私が他の人間に見えないことがすごく怖くて、自分は本当に死んだのだと痛感し涙を流すこともしばしばあった。

だが、それにももう慣れた。


「霊魂という存在にはたいそう興味があるけれど、君自身には全く興味ないから安心してよ」


真っ直ぐに私を見つめて話すやつの言葉は、もう動いていない私の心の臓に爪をかけ、深い傷をつける。

それにはまだ、慣れない。

……私が人間に恋して一年が経つ。

⏰:09/07/11 19:00 📱:F905i 🆔:tSzZ2Nw.


#561 [[世界が開いた夏(2/3)]渚坂]
チリン、チリン―――……


やつは一日を縁側に座って過ごす。左手には読みかけの小説を、足下には蚊取り線香を設置して。
少し伸びた前髪の下には銀縁の眼鏡をかけ、やつが鬱陶しそうにスラリと長い足を投げ出せば、たとえ今の格好が甚平姿だとしても誰もが見とれてしまう。


「四条センセ、こんにちは。もちろん原稿できてますよね?」


そして、たまにやってくる編集局の人間に自作の小説の原稿を渡しては、また縁側に座り読書へと耽る。これが小説家『四条幸彦』の生活パターンだった。


「先生また一人で本読んでるんですか?たまには運動したらどうです」


夏であるにも関わらず、黒いスーツ姿の編集局の人間(名は清水という)は、来る度にやつを気遣う言葉と表情を見せる。
ぱっちりと開いた瞳、ほのかに上気した桃色の頬。この女は世間一般に言う『美人』の分類に属していると私は思う。


「君みたいな目麗しい女性と一緒なら運動してもいいよ」

クスクスと笑いながらやつは立ち上がり、部屋の中へ消えていく。


「ちょっと先生、それって私のこと美人だっておっしゃってるんですかー?」

「ふふ、そうとってもらって構わないよ。はいこれ、原稿」


先生は口が達者だから、とかなんとか言うにも関わらずしっかりと熱気を持った彼女の視線は艶めかしくやつを絡め取る。その光景は女の私から見ても背中がゾクゾクするような色気を感じた。

⏰:09/07/11 19:01 📱:F905i 🆔:tSzZ2Nw.


#562 [[世界が開いた夏(3/3)]渚坂]
たっぷりと見つめ合った後、清水さんはやつから原稿を受け取った。清水さんに私は見えない。だから見せつけているわけではないのだろうけど、それでも私は心を焦がしてしまう。

“私には肉体があるのよ”そう言われてる気がして、血液の通わない私の体が熱くなる。


「んふふ、今日は仕事中なんでもう帰りますね。今度オフの日に食事にでも誘いますわ。もちろん二人っきりで…。じゃあまた、センセ」


月に一回、仕事として清水さんは家にやってくる。そして月に五回彼女は“四条幸彦”の“密接な関係を持つ女”として家にやってきては密接な夜を過ごしている。



チリン、チリン、チリン―――……

もちろん事情を営んでいる間は縁側に出て邪魔にならないようにしているが、それでもやっぱり胸が苦しい。


「人間に惚れるなんて、なんて愚かな幽霊……」

自嘲気味に笑うと少し気が楽になった。




この家に来て一年。
やつに恋い焦がれてもう一年。
この一年の間にやつは恋人を六回変えた。この一年の間に私は六回も劣等感を味わったことになる。



チリン、チリン、チリン、チリン―――……


……嗚呼、風鈴の音が忌々しい。

⏰:09/07/11 19:02 📱:F905i 🆔:tSzZ2Nw.


#563 [我輩は匿名である]
あげるぜゴルァ!

⏰:09/07/29 12:25 📱:P903i 🆔://8hkJbU


#564 [渚坂]
定期あげ!

⏰:09/08/17 00:16 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


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