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#222 [ビリヤード(1/2)◆vzApYZDoz6]
ビリヤードが好きだった。
百円二百円のジュースを賭けて勝負するのが好きだった。
ゲーセンの地下のビリヤード場は、俺たちの戦場だった。

今では、百円二百円じゃ満足できなくなっていた。

「……今日の勝負は?」
「ナインボールでどうだい?」
「シンプルだな、いいぜ」

学生時代よりもゼロの数が4つか5つは多い。
下手をすれば人1人の命とすら釣り合うような金額を賭けて、俺は今日も勝負する。
VIPしか入れない裏のカジノで、学生時代の連中とは腕も気構えも違う、裏のハスラー達と。

「バンクショットはどうにも苦手でね」

先攻を取られた負け惜しみのセリフを聞き流し、俺はふっと鼻で笑った。

ブレイクショットには自信がある。
どうすれば、たった1発でナインの黄色い球を落とせるか。
俺は、そればかりを研究してきたからだ。

「悪いな。この勝負、俺の勝ちだ…!」

ボロい商売に笑いそうになるのを堪えながら、静かにキューを構える。

一気に撞きだしたその瞬間に、俺の携帯に着信が入った。

⏰:08/03/19 21:58 📱:P903i 🆔:/loXYyno


#223 [ビリヤード(2/2)◆vzApYZDoz6]
「!?」

ポケットからの振動で、前に置いた指が上ずる。
同時にキューも上を向き、手玉が10センチも進まないうちに止まった。
痛恨のミスだ。

「奇妙なこともあるのだな。ブレイクショットには……なんと言っていたかな?」
「…ブレイクショットはどうにも苦手でな」

勝負の結果は、まぁ言いたくないと言えば察しがつくだろう。
家財道具から当面の生活費まで、根こそぎ持っていかれた。
いや、元々持ち合わせが賭け金に足りていなかったんだ。この程度で済んだのは運がいいほうだ。

「にしても……」

一体、誰があのタイミングで電話なんかしてきたのか。
アレさえなければ、と多少恨みがましく思いながら携帯を見ると、1通のメールが届いていた。
どうやら電話ではなくメールだったらしい。

「ちっ、あの野郎…」

メールの送り主は、学生時代によく勝負していたビリヤード仲間の1人だった。

『元気かー。久しぶりにビリヤードやらねぇか?最近俺もリッチになってきたし、晩飯でも賭けて勝負しようぜ!』

「……まったく……」

誰のせうで、今の俺が素寒貧になったと思ってるんだか。
だが、たまには昔の勝負を思い出すのもいいかもしれない。
丁度ヒヤヒヤしっぱなしの勝負にも、飽きがきてた頃だ。いや、言い訳じゃなく本心から。
俺は携帯のメモリーからそいつの番号を選んで、受話口を耳に当てた。


とりあえず今日のところは、晩飯代でも稼がせてもらうとするか。

⏰:08/03/19 21:59 📱:P903i 🆔:/loXYyno


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