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#323 [花蓮◆i9NT5SD3jQ]
「待ってたわ」
部屋に入ると同時に声がかかった。薄暗い部屋の中、彼女の声が普段より透き通って聞こえる。電気はついていない。窓から差し込む月光だけがここに唯一光をくれる。
「何の様だ」
不機嫌さを隠す事なく尋ねる。
しかし実際には理由など聞くまでもない。彼女が私を呼ぶ時の理由など一つだけだ。今までも、そしてこれからも、未来永劫変わらない。
「いつものヤツよ。それよりそんなに怒らないでくれる? 私までイライラするじゃない」
口調こそ荒々しいが表情に怒気は見られない。相変わらずよくわからない奴だ。
「わかったわかった。じゃあさっさとやるぞ」
軽くため息をつき、思考を打ち切る。これから行うことに比べたら何の価値もない。
「じゃあやるよ?」
そう言い彼女は私の方を向いて綺麗に笑った。何度見てもこの表情には慣れない。だが不思議と心が落ち着いていくのを感じる。そして彼女と私の口から言葉が発せられる。
「保守」
――世界が光に包まれた。

⏰:08/05/04 00:20 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#324 [花蓮◆i9NT5SD3jQ]
さて、久しぶりの投下なんだがもうネタが切れてしまった。
誰かオラにネタを分けてくれ!

⏰:08/05/04 00:22 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#325 [◆vzApYZDoz6]
俺は人混みが嫌いだった。
それぞれが好き勝手に行動し、耳障りな騒音を作り出す。
それぞれが好き勝手に行動し、人の視界を妨げる。

俺は、そんな人混みが嫌いだった。

人混みから離れるために、街の外れへ向かう。
できるだけ静かな場所へ、一直線に。
少し歩けば、雑音が薄れ人も少なくなっていく。

代わりに、家が多くなる。

どれも同じ大きさ、同じ外観で、表札が違う。
新築の頃は使われていた家も、しばらく時が経てば住民は少なくなっていく。

そんな家の群れを眺めながら歩いていると、ある一軒の家の表札に目が止まった。
なにか、心が惹かれる表札。
家の中を覗いてみたが、すでに住民は誰もいないらしい。

それもそのはず。ここは街の一番端、街の入口から最も遠い場所だ。
人なんているわけがない。

だが、なぜか心が惹き付けられる。
前の住民達の生活跡を見ていると、とても楽しそうな風景が頭に浮かんだ。
もっと早くこの家を見つけていれば、俺もこの中に入れたのだろうか。

俺は、この家の住民に戻ってきてほしいと思った。
戻ってきたら俺も仲間に入りたいと思った
そのためなら何でもしてやろうと思った。

一通り家の中を見渡して、ゆっくりとドアを閉める。
息を整え、少しの期待を込めて呟いた。

「保守」

ドアから手を離し、再び表札を眺めながら歩きだす。
口元には、微かに笑みが浮かんでいた。

⏰:08/05/05 13:59 📱:P903i 🆔:Dlid82FI


#326 [度忘れではない(3/3)◆vzApYZDoz6]
携帯電話を紛失した。
多分、昼寝してる間に無くなったのだろう。
目が覚めて、とりあえず時間を確認しようと思ったところで気が付いた。

「あれ…おかしいなー」

しばらく自分が寝ていたリビングを探してみるが、どうにも見付からない。

仕方ないので家電から携帯電話にかけて探す事にした。
バイト帰りでそのまま寝てしまったためにマナーモードにしたままだが、一応震えるんだしどうにかなるだろう。
そう思って、家の子機からダイヤルする。

「……あれー…?」

結果、どうにもならなかった。
ドコモの携帯でよかった。
契約しない限り留守番電話サービスは受けられないので、留守電になることもない。

などとズレた事を考えながら、家の中をしらみ潰しに歩き回る。
リビングやダイニングは粗方探し終えたし、残るは自室しかない。
だがバイトから帰ってきて1度も自室には入ってないし、さすがにないだろう。
「まいったなこりゃ…」


さて、どうするべきか。
もう1時間ぐらいは探しただろう。
外では陽が傾きかけて、ゆっくりと地平線へ沈んでいっている。
焦りと疲れがどっと吹き出てきた。

⏰:08/05/06 02:49 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


#327 [度忘れではない(2/3)◆vzApYZDoz6]
「…もう疲れたな」

早く小説板に行きたいのに。
mixiがやりたいのに。
悶々としながら、とりあえず休憩するために自室に戻る。
自室のドアを開けると、ベッドの脇に大量に積まれた漫画が目に入った。

「よう」

続いて、積まれた漫画をベッドに転がって読みふける妹。
何をやってるんだ、と突っ込む前に、積み上げられた漫画の上に俺の携帯を発見した。

「あー! てめ、それ俺の携帯じゃねぇか!」

声を張り上げながら手を伸ばす。
だがその前に、妹が無駄に意地悪い笑みを浮かべながら携帯を取り上げてしまった。
そのままベッドから立ち上がった。

「どうよ、携帯電話のない生活ってのは? あん?」

口の悪い女だ。
玄人じみた台詞なのは、俺に説教でもしてるつもりだからなのだろうか。
何やら教訓めいた事でも伝えたいらしい。

「すごく…つまらないです」

「だろ? 人間は、便利のために作ったものに、逆に振り回されることもあるんだぜ?」

⏰:08/05/06 02:49 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


#328 [度忘れではない(3/3)◆vzApYZDoz6]
演説めいたその言葉は、どこかで聞いたような気がした。

何故だろうと考えている俺の視線が、ふと妹が持つ漫画『さよなら絶望先生』に向く。
そういえば『さよなら絶望先生』にそんな台詞があった気がする。

その後は、妹の付け焼き刃の説教を延々と聞かされた。
全体的に漫画をパクっていた気もするが、『人と人との触れ合いが大切だ』という信念は伝わってきたように思う。

結局、なぜか俺が謝って説教は終了した。
返してもらった携帯をすぐさま開いて確認する。
どこもいじられていなかった。

続いて、習慣的にパソコンを立ち上げる。
起動中のディスプレイを眺めているあいだ、こんなんだから妹に説教されたんだな、と自嘲した。


ちなみに妹はかなりの機械オンチで、携帯すらロクに操作できずよく俺に泣き付いてくる。

⏰:08/05/06 02:50 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


#329 [◆vzApYZDoz6]
久々に普通ネタ投下w


>>326は(1/3)ですね、間違えた

⏰:08/05/06 02:51 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


#330 [[元気玉(1/2)]紫陽花]
「こら――!!テレビばっかり見てないで宿題しなさい」

「うぇ――――い」

少年は母親と思われる女性にあからさまに上辺だけの返事をして視線をテレビへと戻した。
少年は宿題もせずに一体何を見ているのか?
広いリビングに設置されたテレビの映し出されているのは……

ドラゴンボール


ドラゴンボール
それは多くの人をその独自の世界の虜にさせ、世界中を魅了した有名な漫画……。
少年の年齢は9〜10歳ほどだろうか。世代こそ違うがこの少年もこの漫画に魅了された一人のようだ。

アニメの中では一番のクライマックスをむかえているようで少年も握り拳を作っている。

『オラに元気を分けてくれ!!』

テレビの中の主人公が叫ぶ。
それと同時に場面は人々が両手をあげているところに変わった。先ほどの叫びに答えるように一人また一人と両手を天高く、大空に向かってあげだす。

⏰:08/05/06 08:09 📱:F905i 🆔:3F5UizrQ


#331 [[元気玉(2/2)]紫陽花]
『もっと……元気を!!』

その言葉を聞いた瞬間、少年の握り拳がピクリと動いた。
そしてそのまま、少年もテレビの中の人々のように両手を真っ直ぐにあげだした。

「俺の元気もあげるよ!!頑張ってそいつをやっつけて〜!!」

少年の願いが通じたのか主人公の上に発生していたエネルギー弾は見事に悪役に命中したようだ。

「やった――!!」

少年は自分が勝ったかのように喜びそしてはしゃいだ。

いつの時代も漫画、アニメといったものは人々の心に勇気を与え感動も与えてきた。
そしてこれらを見て感動を覚えた人によって次の世代へと伝わり、世代を越え時代を越えて永遠に止まることのない曲線を描くことになるだろう。

今まさに、この少年もその曲線を描くことになるであろう人間となったのだ。

「テレビ終わったんでしょ〜?宿題しなさい!!」

「……今、元気を分けたから無理〜」


「…………………」

---end---

⏰:08/05/06 08:10 📱:F905i 🆔:3F5UizrQ


#332 [君とコーヒー(1/3)◇東脂ヤ転
「遥、コーヒー入った・・・」
そこまで言うとまた気がつく。

「そっか・・・居ないんだった・・・」

彼女がこの家を出て行ってから2週間が経つ。

毎朝二人分のコーヒーを入れるのが日課だった俺は、こうしてたまに、もう居ない遥の分までコーヒーを入れてしまっていた。

最初は楽しかった同棲生活も、お互いが忙しくなるにつれ、喧嘩の絶えない日々が続いた。

⏰:08/05/07 15:59 📱:W52P 🆔:NK/CCjVE


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