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#403 [保守ネタ1/2]
…まずい。
このままでは遅刻してしまいそうだ。
私はギラギラと照り付く炎天下の路上を、全力で駆けていた。
くしゃくしゃ着崩れたスーツを直す暇も、額から流れる汗にへばり付く髪の毛を直す余裕もなく、ただただ走っていた。
「……くそっ!」
足が縺れ息が切れる。
参ったな。後5分で会議だってのに…。
私はようやく辿り着いた会社の自動ドアを滑り込むようにしてくぐり抜ける。
ひんやりとした冷気が体を包み込みとても心地が良い。
だが、歩く余裕などはない。
…急がねば。
辺りを一瞥すると受付を通過しエレベーターへ走る。
角を曲がればエレベーターが見えてくるはずだ。
私の心臓は角を曲がると同時に、ひどく跳ね上がった。
「…まずい」
エレベーターはすでに到着しており、搭乗員を待っている状態だった。
会議室は46階だ。とても階段で上れるような高さじゃない。エレベーターも一度上がったら今度はいつ下りてくるかわかったものじゃない。このエレベーターを逃せば遅刻は免れないだろう。
思わず立ち止まっていた私は、瞬時に悟ると直ぐさま走り出した。
:08/05/31 23:28 :SH905i :☆☆☆
#404 [保守ネタ2/2]
ふと、目の前に同じく急ぎ足の男性がいた。
彼は私より遥かに早くエレベーターに乗り込んだ。
私は距離的に厳しいことを感じながらも諦めなかった。
彼の背中を追うように足を早める。
しかし無慈悲にもエレベーターの扉が閉まりだしてしまった。
同時に中で息を整えている彼と目が合う。
私はついに諦め速度を減速する。
閉まりゆく扉の向こうで彼が動いたのが見えた。
すると突然、完全に閉まりかけていた扉が再び開きだす。
「どうぞ」
彼の笑顔が、緩い歩調で歩く私を見据えていた。
「どうも…」
一礼すると息を乱した己の姿に気まずそうに入る。
入り口に向き直すと、また一人、こちらに走ってくる者がいた。
私はエレベーターのボタンを確認する。
私が“開”と掛かれたボタンに手を伸ばすよりも早く、彼の手がそれを押さえた。
続いて聞こえた彼の小さな声。
「…保守」
ボタンに伸びてかけいた手を下ろすこともせず、私は横目に彼を見遣る。
同時に彼と目が合った。
彼は依然としてこちらを見据えながら、口元に柔らかい笑みを浮かべた。
つられるようにして私も微笑む。
「…保守」
私は照れ臭そうに返す。
新たな搭乗者がエレベーターに入って来た。
:08/05/31 23:28 :SH905i :☆☆☆
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