【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#436 [[名も無き花(1/1)桃色]]
先日、旦那と娘を連れて実家にご飯を食べに行った。

いつもは寄り付かない庭に、何となく出てみる。

誰も手入れをしていないので荒れ放題だ。

片言の日本語を話せるようになった娘が嬉しそうに

「おはな」

と言っている。

見ると伸びきった雑草の間に名も知らぬ白くて可愛いらしい花がいくつか咲いていた。

母にいつ植えたのか尋ねると、首を横に軽く振る。
だがその後語られた一言に私は心を揺さぶられた。

「あそこね、偶然かもしれないけど‥キューちゃんを埋めたところなのよ」

キューちゃんとは、昔幼かった弟が一生懸命に可愛がっていたハムスターの名だ。

なんだかいてもたってもいられずもう一度庭へ行き、娘と一緒に花壇の前で手を合わせた。

⏰:08/07/05 01:51 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#437 [桃色]
>>436
↑ちなみに実話デス↑

⏰:08/07/05 01:53 📱:SH703i 🆔:/fZibtYw


#438 [咲笑]
桃色サンめちゃめちゃ文章上手ですね
もっと書いてほしいですP

⏰:08/07/06 23:48 📱:W53S 🆔:u2w2uFNs


#439 [[闇夜の雨、月(1/1)]蜜月◆oycAM.aIfI]
真っ暗な空。それをどんよりと覆い隠す雲。そしてその雲が悲しみを誘うように落とす雨粒。
そんな雨の降る深夜に、一人の少女が空を眺めていた。

町も静まり返る時刻に、彼女は自室の窓枠に肘をかけ憂いを含んだ表情でぼんやりと一点を見つめている。晴れていれば月が存在するはずの一点を。

随分長い間そうして雲を眺めていた彼女は、おもむろに側にあった携帯電話を手に取る。折り畳まれたそのボディを器用に片手で開くと、小気味のよい音がした。
しかし液晶画面を見た彼女の顔は暗い。雲に覆われた空よりも。
(連絡……来ないなぁ)
口には出さずに心の中だけでそう呟くと、
「はぁ」
と小さなため息を一つ。恐らくは想い人からの連絡を待っているのだろう。
彼女は下唇を噛むと、親指を素早く移動させながらボタンを押し、何やら新しい画面を開く。

しかし指の動きは止まってしまった。
真剣な目で闇に浮かぶ白い画面を見つめる彼女。

しばらくしてようやく指を動かした。
ゆっくりとボタンに親指を乗せ、カチッ、と鳴らすと――画面は真っ黒になってしまった。
「ふぅ……」
携帯電話を折り畳みベッドに放り投げると、彼女は再び窓の向こうに目をやった。さっきと同じ姿勢で、肘を窓にかける。

しかし――その目には、固い決意の光が宿っていた。

⏰:08/07/07 02:18 📱:SH903i 🆔:iEqgZovM


#440 [桃色]
>>438咲笑サン

ありがとうゴザイマス!
マタ話しが浮かんだら書かせていただきマスねp(^^)q

⏰:08/07/07 11:28 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#441 [[記憶のカケラ(1/2)桃色]]
毎日毎日オレの世話を焼く女。飯の世話から何から何まで。

俺が何か言うたびに一喜一憂する女。

正直頭が上がらない。

それに、オレだけに見せる最高の笑顔‥

たまらない。こいつのためなら何でもできる。

だけど最近おかしいんだ。

今まで「アー」だの「ウー」だのしか言えなかったオレの口から、段々言葉が話せるようになってきた。

もちろんそれを聞くたびに、あいつはオレを抱きしめて喜ぶ。

それと同時にオレがオレじゃなくなってくんだ‥

⏰:08/07/07 21:33 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#442 [[記憶のカケラ(2/2)桃色]]
‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥
『お誕生日おめでとう圭』
「圭が生まれてもう一年か」

「ねぇあなた、この間雑誌で読んだんだけど、赤ちゃんって前世の記憶があるらしいの。だけどそれを覚えているうちに話してしまわないように、おしゃべりができるまでに時間がかかるんですって」

「へぇ、じゃあ圭もその記憶ってのがまだあるのかな?」

「どうなのかしら?ねぇ、圭ちゃん‥」

⏰:08/07/07 21:35 📱:SH703i 🆔:uiLDk8VY


#443 [[夏の教室(1/3)]紫陽花]
むせかえるような生ぬるい風。半袖のシャツから伸びる腕に容赦なく熱を浴びせる太陽。

そんな灼熱の外の世界とは裏腹に窓一枚隔てたこの部屋は心地良い一定の寒を保っていた。

まさに科学の進歩。この世界にとってクーラーはなくてはならない生活の必需品だろう。

「あの……さ」

そんな外とは別世界のこの部屋には一人の男と一人の女2、3個の机を隔ててが立っていた。さながら、その数メートルが彼らの心の距離と言ったところだろうか。

女の左手には教科書、右手には鞄のファスナーを開けようとしたのか小さな金具が握られている。

「……なに?」

女は男の顔も見ず淡々と帰り支度を進める。この男の話に、さほど関心がないようだ。

「葛城、これから帰る…よね?」

彼女の名前は葛城と言うらしい。男は下を向き、まるで親の様子をうかがう小さな子供のように怯えた表情で声を震わせながら彼女に問う。

⏰:08/07/09 00:40 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#444 [[夏の教室(2/3)]紫陽花]
「……えぇ、帰るわよ。授業、終わったもの」

彼女は手元の教科書から目を離さず数メートル先に立ち尽くす男に素っ気なく答える。

生徒もおらず、窓も閉め切ってある放課後のこの部屋には彼女の声だけが静かにそして微かに響く。


その言葉を聞いた瞬間、男は意を決したように両手の拳を握りしめ勢いよく頭を上げた。先ほどとは違い、彼の表情に怯えはない。
この男の決意が空気を伝い彼女にも届いたのだろうか、帰り支度をやめ彼女も顔を上げた。

そして二人の視線がぶつかる。

「あのさ、葛城。……俺一緒に帰っていい?」

彼女の瞳が一瞬動く。窓から差し込んでいる光は机と机、向かい合っている二人の間を静かに照らす。男の視線は真っ直ぐに彼女をとらえ、彼女も彼の視線に答えるように瞳を合わせる。

⏰:08/07/09 00:41 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#445 [[夏の教室(3/3)]紫陽花]
少しの沈黙。校庭で力の限り声を張り上げる野球部の声が聞こえるほど静寂は続いた。

「……別に、いいけど」

静寂を破ったのは彼女の方だった。

「本当に!?」

男の瞳は驚きと歓喜の輝きを放ち、きつく握られていた拳はいつの間にか解かれていた。

「私、教室の鍵を返してくるから先に昇降口で待ってて」

彼女はまたも視線を鞄に戻し帰り支度を始めた。

「分かった!!待ってるから」

そう言って男は顔を赤らめながら鞄を背負い、照れくさそうに彼女を見つめながら教室を後にした。

男がいなくなった直後、彼女は帰り支度をする手を止めた。そして、その手はゆっくりと上に伸び彼女の顔を覆った。

「……緊張した」

顔を覆った細く今にも折れてしまいそうな指の間から見える彼女の顔は照りつける太陽よりも熱を帯び、紅く紅く火照っていた。

彼女一人残された教室には既に電源の切られたクーラーからの残された冷気が漂っていたが、それほどの少量の冷気では彼女の火照った心を鎮めることは出来なかった。

---end---

⏰:08/07/09 00:41 📱:F905i 🆔:☆☆☆


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