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#494 [瞼の憂い(1/3)夕凪]
それは、まだ私が十代だった頃。親戚の居る0県へ電車で行った帰り道に出会った出来事だ。
私は、乗り継ぐ駅を間違え、見も知らぬ土地の小さな駅で、夕日を恨めしく睨んだ。駅の地図によると、故郷の隣のF県の、小さな村のようだった。故郷へは、県境の山を越えるか、大きく迂回するしかない。どちらにしても、その日の内の帰宅は無理だった。乗り継ぎを間違えた自分と、折り返しの電車の無い小さな山村をうらんだ。
仕方なく駅を出ると、古びた木製のベンチに、美しい和装の女性が座っていた。女性は当時の私と同じ位の年頃にみえた。少し虚ろな目で、小さく鼻歌を歌っている。彼女に宿はないかと尋ねた。彼女は、ゆっくりした喋りで、宿はないが、自分の家に空き部屋が有るので家に来ないか、と提案した。十代の私には願ってもない事で、鼻息あらく頷いた。美女の家へ向かう道のりで、彼女が二十歳で伊織と言う名である事、街へ戻る電車は三日後にしか出ないという事を知った。
肩を落とし着いた場所は、大きな洋館で伊織さんは、そこのお嬢様のようだった。大きな扉の前で、姉やさんに訳と私の名前(木村衛)を名乗り中に入った。
:08/09/22 14:35 :SH902iS :☆☆☆
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