>>7?
「もう寝ちまったか…」
また掛けなおすか、と耳から受話器を離す。
だが終話ボタンを押そうとする前に、僅かな大きさだがバイブ音が聞こえてきた。
どうやら自分の家にあったらしい。男はバイブの音を辿って歩き回った。
しかし、どうやら部屋の中には無いようだ。
いったん廊下に出ると、バイブ音が少し大きくなった。電話は近い。
しかし、不審な事にそれは2階から響いているようだ。
2階には1度も行ってない筈なんだが。そんなに酔ってたかな…
とりあえず2階に上がり、そろりそろりと廊下を歩く。
廊下の端に近付くにつれ、バイブ音がよく聞こえる。
だが、廊下の端に辿り着いても携帯電話が見当たらない。否、廊下の端からバイブ音が聞こえる訳ではない。
だがバイブ音が聞こえる一番近い場所は廊下の端。
「………?………」
男が、ゆっくりと視線をあげる。
ちょうど天井まで向かった時に、終話ボタンを押した訳でもないのにバイブ音が止まった。
垂れ下げた手に握る受話器から、微かに聞こえる友達の声。
「…これお前の携帯だろ?とりあえず今は眠いから後で持っていってやるよ…」
電話が切れた。
耳をすますと、荒く小さな呼吸音が聞こえてくる。
――そこに居るのは、誰だ?