*柴日記*
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#572 [向日葵]
青年は起き上がると辺りを見回し、吹っ飛んでいた眼鏡をかけると、祐子の方を見た。

やっぱり……。

今日本をぶちまけていた青年だ。

青年はへらぁっと笑った。

「あぁどうも。また会ったね」

「どんくさいにも程があるだろお前」

頭に乗っていた上靴を取って顔の前に出す。

「色々考え事してたら足が滑っちゃって」

アハハハと笑うこののんびりさはどこからやって来るのだと裕子は目を半目にする。

⏰:08/09/09 02:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#573 [向日葵]
青年はよいしょと立ち上がろうとして固まる。

「……どうした?」

「足が痛くて立てないみたいなんだぁ」

またアハハハと笑う。

……コイツある意味すげぇ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちゃんと乗ったか?」

「アハハ、ごめんね迷惑かけてー」

まったくだ……。

立てない青年を放っておく訳にもいかないので、祐子は青年をおぶる。

⏰:08/09/09 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#574 [向日葵]
「力持ちだねー」なんてのんきに背後で喋るものだから祐子はイラッとした。

なんであたしがこんな目に合わなくちゃならないんだっ!!

ふと、前に突きだしている彼の手を見れば、綺麗な白い、けれどしっかりした手だった。

祐子の手は、毎日生傷が絶えない。
残ってしまうだろう傷痕だってある。

こんなどんくさい奴と、自分と、一体何がどう違うか、祐子には分からなかった。

保健室に着いたはいいが、中には誰もいなかった。
置いてあるホワイトボードには“職員室にいます”と記されている。

⏰:08/09/09 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#575 [向日葵]
待っていてもいつ帰ってくるかなんて分からない。
ならばさっさと手当てをして帰ろう。

「座れ」

素直に座った彼の近くにある救急セットから湿布と包帯を取り出す。

靴下を脱がせば彼の足首は見事に腫れていた。

「くじいたみたいだな。とりあえず後で病院行けよ」

「病院はやだなー。僕薬が嫌いなんだよねー」

知るか。

「にしても手慣れてるね」

「まぁな」

「どうして?」

「関係ねぇだろーが。おら、終わったぞ。あたしチャリだから家まで送ってやるよ」

⏰:08/09/09 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#576 [向日葵]
またおぶろうと思って屈もうすると青年は祐子の手を引いて、目の前の空いているもう1つの椅子に座らせた。

「オイなんだよ。さっさと帰っぞ!」

「まだ君の手当てが終わってないよ」

「はぁ?怪我なんざしてねぇよ」

「痛くないの、これ」

ふわりと彼の手が、彼女の手に触れる。
それが、さっき見た、綺麗で微かに羨ましく思った手だと思えば、祐子は払いのける。

「い、痛くなんかないっつーの……っ!」

顔が無駄に熱い。

⏰:08/09/09 02:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#577 [向日葵]
なんだコレ!!

しかし構わず彼はまた触れ、目の前で微笑む。

眼鏡の奥の柔らかい印象のたれ目が細められる。

「でも君、女の子だから。傷残っちゃ困るでしょ?」

「は……っ!?お、お、女の子ぉっ!?」

声が微かに裏返る。

ローラー付きの椅子を利用して、ザッと後ずさる祐子。

「寒い事、い言ってんじゃねぇぞ!そう言えば黙って手当て出来ると思ってんのか!」

「そうじゃないよ。一般論述べただけ」

⏰:08/09/09 02:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#578 [向日葵]
「難しい事言ってんなっ!」

「ハイハイ。とりあえず見せてね」

消毒駅を浸した脱脂綿が頬に当たる。
このくらいの傷なんて慣れっこだ。
もっと酷い怪我だってした事がある。

なのに何故、消毒する時、痛くないかドキドキするように、こんなにも心が乱れているのだろう……。

なんとなく、祐子は落ち着かなかった。

「ハイ、いいよ。次は気をつけてね」

「気をつけれたらな」

「ん?」

⏰:08/09/15 00:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#579 [向日葵]
「……何もない。家まで送る。さっさと乗れ」

青年は素直に祐子の背に乗る。
祐子は自転車通学していたので、彼を後ろに乗せるつもりでいた。

「あっ」

突然青年が祐子の耳元で声を上げる。

「うるせーな……。なんだっ!」

「君の名前思い出した!森下祐子さんだよね」

「だったらなんだ……」

「恐いって有名な」

「だから何」

⏰:08/09/15 01:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#580 [向日葵]
「鬼みたいだって噂の」

「だったら何なんだよっ!」

質問しているのに青年は聞いてるのかいないのか話続ける。
祐子は苛立ってつい声を荒げる。

いますぐ手を離して青年を乱暴に降ろしてやりたい衝動にかられるが、深呼吸して必死に感情を抑える。

「うーん……納得出来ない。やっぱり噂は噂だね。そう思わない?」

「てめぇ殴られたいのか……だったら何だって言ってんだろうがっ!」

「こんなに優しいのに、皆はどこを見ているんだろう……」

⏰:08/09/15 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#581 [向日葵]
祐子はぴたりと足を止める。

本気でそう思ってる風に喋るから、祐子は信じられない気持ちでいっぱいだったが、すぐに思い直す。

あぁ……コイツは変人なんだ……。
あたしを優しいだなんて思うだなんて、よっぽど頭がおかしいのだろう……。

「おいお前」

「何?森下さん」

「あたしだけ名前バレてるなんて気分悪い。お前、名前は……?」

コイツは頭がおかしい。
女の子扱いするし、寒い事言うし、ましてや自分と普通に接する。

そう思っていながら、祐子は少し、ほんの少しだけ、彼を知りたいと思っていた。

⏰:08/09/15 01:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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