*柴日記*
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#390 [向日葵]
柴……貴方の好きなのは本当に私?
貴方は私を早代さんと重ねてはいない?
ああ、柴……、偉そうな事言ってごめんなさい。
何が“変化を怖れないで”よ……。
今、柴が違うように見えただけで、私はとても怖れている。
いつか柴の本当に好きな人が私ではないかと気づいてしまったら……。
「早く、行って!」
震えないように、毅然と柴を見つめて言う。
柴はやはり困っていた。
:08/06/25 00:43
:SO903i
:☆☆☆
#391 [向日葵]
お願い行かないで……。
そのまま困って、私のそばにいて……。
お願い、柴……。
「……分かった。行ってくる」
そう言って柴は、早代さんが走って行った方へと行ってしまった。
ホラね……。
大切で、特別だと思った人は、やっぱり皆私から去っていく。
ううん違う。
行かせたんだ、私が……。
私の事はいいから、幸せになってと、自らその引き止めるべき手を離していたんだ……。
:08/06/25 00:46
:SO903i
:☆☆☆
#392 [向日葵]
柴も……お母さん達も……。
「柴……」
私がつけてあげた名前……。
視界が突然滲む。
涙が次から次へと流れていった。
どうしてだろう。
もう見えないのに、柴が走って行った方向を見つめながら思った。
どうしてだろう……。
もうね、柴が、ここへは戻ってこないような気がするの……。
「バイバイ……」
この言葉しか、出てこないの……。
:08/06/25 00:49
:SO903i
:☆☆☆
#393 [向日葵]
:08/06/25 00:50
:SO903i
:☆☆☆
#394 [向日葵]
でもいいや……。
柴が幸せになるなら、笑って毎日が過ごせるようになったら……。
そこに私達はいないけれど……。
いいの。
柴。
柴は自分の幸せを祈って。
もう悲しまないように……。
「お姉ちゃん!」
後ろから声が聞こえてきた。
でも私は振り向く事が出来なかった。
「お姉ちゃんただいま!どうかした?向こう向いて」
:08/06/29 01:49
:SO903i
:☆☆☆
#395 [向日葵]
どうやら桜らしい。
桜は私の顔を後ろから覗き込んで驚く。
「お姉……ちゃん……」
「桜……幸せを願うって難しいね……」
どんなに口で言っても、頭では分かっていても、やっぱり思ってしまうのは……。
「そばにいて欲しかった……っ。ずっとずっと、一緒にいたかった……っ!」
大好きだったのに、言う事さえ出来なかった。
言ってあげられなかった。
柴はいっぱい気持ちを伝えてくれたのに……。
:08/06/29 01:53
:SO903i
:☆☆☆
#396 [向日葵]
「柴が……行っちゃったよぉ……っ!」
桜に抱きついて、私はわぁっと泣いた。
ただ悲しくて、ただ切なくなった。
背中を押したのは自分のくせに、今になって後悔した。
あの観覧車の中、柔らかく茶色い髪の毛が、懐かしく感じた……。
:08/06/29 01:56
:SO903i
:☆☆☆
#397 [向日葵]
―*9日目*―
しばちゃんがいなくなっちゃったの。いちごさみしいな。でもね、いちばんさみしそうなのは、おねえちゃんなの。
(神田家・三女・苺談)
柴がいなくなって4日が経った。
何の音沙汰もない空白の時間は、気持ち悪くて仕方なかった。
それでも私の毎日は、いつも通りにやって来て、朝ご飯を作る時、いつもはある頭の重みがないのが物足りなかった。
:08/06/29 02:00
:SO903i
:☆☆☆
#398 [向日葵]
―――――――…………
「旅行?」
「ウン。今度の金土日使って、椿んちが持ってる別荘まで遊びに行かない?」
「湖が綺麗に見える場所なんです……」
「いらない奴もついてくるけどね……」
不機嫌そうに呟く美嘉を見て、椿に「誰が?」と目で問いかける。
椿は苦笑いしながら答えた。
「婚約者の方も、ついて来るとおっしゃってまして……」
「ああ……私はいいけど……」
:08/06/29 02:05
:SO903i
:☆☆☆
#399 [向日葵]
「美嘉はぜーったいあんな奴認めないんだからね!!」
そんな美嘉の言葉にも、椿はにこにこ笑う。
その笑顔が、前に話していた時よりも幸せそうに感じたのは気のせいなのだろうか?
幸せ……。
窓から空を眺める。
今日は少し曇り空だ。
灰色の雲が重たそうに感じる。
『越』
……同じ灰色なのに、綺麗に感じないのは、どうしてなんだろうなぁ……。
:08/06/29 02:09
:SO903i
:☆☆☆
#400 [向日葵]
******************
某所の高級住宅街でも一際大きく豪華な家が伊勢屋家の物だ。
その中にある一室に柴はいた。
4日前。
とりあえず来てちゃんと話合ってくれと訴える早代に渋々ついて行き、すぐに父と会えるのかと思いきや、父はその前の日から出張でフランスへ行ってるらしく、会う事は不可能だった。
それならばと帰ろうとした柴を、早代は止めた。
[どうして帰ろうとするの?貴方のお家はここでしょ?]
[前はね。今は違う。家族以上に家族な人達が俺を待ってるんだ]
:08/06/29 02:15
:SO903i
:☆☆☆
#401 [向日葵]
越……。
心の中で呼ぶ。
早く会いたい。
本当に自分は越から離れて良かったのかずっと考えていた。
好きと言ったのに、早代を追いかけてしまった……。
[もうこの家にはなんの未練もない。俺の事なら、探さないでいいから]
そう言って早代の隣を通り過ぎて間もなく、柴の前にがたいのいい男2人が立ちはだかった。
思わず驚く柴の隙をついて、2人は柴を取り抑えた。
:08/06/29 02:19
:SO903i
:☆☆☆
#402 [向日葵]
[ちょ、お前らなんだ……っ!]
そして連れてこられた部屋が現在いる柴の部屋だったのだ。
外からしか鍵は開けられず、窓からの脱出を試みるも2階だ。
しかも下には先ほどのSPらしき男達が何人かいた。
携帯も圏外。
連絡を取れないのはそのせいもあった。
そろそろ閉じ込められるのに限界を感じてきた柴は、部屋にあった大きくフカフカしたベッドに身を沈めた。
すると、ドアをノックされた。
返事をせずにいると、静かにドアが開かれる。
:08/06/29 02:25
:SO903i
:☆☆☆
#403 [向日葵]
「大和君、起きてる?」
早代だ。
起き上がって、戸口にいる早代を睨む。
「どうしてこんな事されなきゃなんないの?俺帰りたいんだけど」
「……私は、貴方にここへ帰ってきて欲しいの……」
「早代は父さんの妻だろ?なのに俺に執着するのは間違ってる」
口ごもる早代。
しかし柴は容赦しなかった。
「間違いだったのは確かに俺だ。でも離れて分かった。俺は早代に逃げてただけだって」
:08/06/29 02:28
:SO903i
:☆☆☆
#404 [向日葵]
誰も愛してくれない。
無気力になっていた自分。
そんな中、愛してくれた早代。
恋だと思った。
でも実は違った。
自分が何者か分からないから早代でその存在する意味を確かめていただけだったのだ。
自分で、見つけようともせずに……。早代を、利用してしまったのだ。
早代もまた、望んでない結婚を、柴に、いや大和に逃げる事で何もかも見ないようにしていた。
2人の間に、やはり愛などなかったのだ。
:08/06/29 02:33
:SO903i
:☆☆☆
#405 [向日葵]
[力を合わせて乗り換えていける]
そう言ってくれたのは……。
[安心していいんだよ]
そうやって、逃げず、手を取り合って、困難を乗り越えようと言ってくれたのは、越ただ1人だった。
越。
何でも越えれるようにと願いを込めて名付けられた彼女の名前。
彼女の何事にも前向きな姿、でも、触れれば壊れてしまいそうな脆さに、自分は惹かれたのだ。
「俺は逃げない。逃げたくない。早代、逃げちゃダメなんだ」
:08/06/29 02:38
:SO903i
:☆☆☆
#406 [向日葵]
悲痛な顔をして聞いていた早代は、急にハッと背後に視線を向けた。
「旦那様が、帰って来たみたい……」
柴は立ち上がった。
会うのは何ヶ月ぶりだろう。
柴は父が苦手だった。
呼べば振り向くも、何の感情もない目が怖くて堪らないからだ。
今も胸の奥で、鼓動がスピードを上げていってる。
[大丈夫]
柴はハッとした。
越……?
:08/06/29 02:43
:SO903i
:☆☆☆
#407 [向日葵]
>>319に感想板があるんで、良かったらお願いします

:08/06/29 02:43
:SO903i
:☆☆☆
#408 [向日葵]
携帯変わりましたが向日葵です

:08/07/07 00:21
:SO906i
:☆☆☆
#409 [向日葵]
彼女がいる訳がない。
そう思っていても、柴は辺りを見渡さずにはいられなかった。
あぁでももう大丈夫だ。
越が見守ってくれている気がするから……。
柴は早代の後をついて行った。
―――――――――…………
「旦那さま、大和君が帰って参りました」
中から返事はなかった。
本当に帰って来たのか?と柴は疑問に思った。
しばらく沈黙が続く。
早代は辛抱強く返事を待っている。
「大和を入れなさい」
:08/07/07 00:33
:SO906i
:☆☆☆
#410 [向日葵]
早代は目だけで柴に入れと促す。
柴はもう1度ノックをしてからゆっくりとドアを開けた。
「失礼します……」
ドアの閉まる音が、やけにやかましく感じた。
父は椅子にもたれて窓の方を向いている為、柴には背を向けている。
その表情は、怒っているのか、やっぱり無表情なのかは確認出来なかった。
「どうして、俺を……?」
重苦しい空気に堪えきれず、柴が口を開いた。
父が座っている椅子が、短くギィッと軋む。
:08/07/07 00:40
:SO906i
:☆☆☆
#411 [向日葵]
やがて長いため息が聞こえた。
「やはり苦手だ」
「は……?」
父は椅子から立ち上がり、窓辺に立つ。
ようやく見えた父の姿に、そういえばこんな姿をしていたっけと柴は呑気に思った。
たった数ヶ月の筈なのに、とても長い間会っていなかった気がするのは何故だろう。
「私の会社は、先々代から続くものでな……。常に成績が全ての家系だったんだよ」
何を話したいのかさっぱりな柴だが、首を傾げながらも父の淡々とした口調に耳を傾けた。
「私は、父や祖父の厳しい顔しか思い出せない……」
:08/07/07 00:46
:SO906i
:☆☆☆
#412 [向日葵]
そんなの自分だって同じだと柴は思った。
厳しい顔か無表情な顔しか自分は見た事はない。
ただ……と柴は思う。
依然父は窓の外を見たままだ。
「私はそんな両親が嫌いでね……。どうして私自身を見てくれないのかと頭を抱えたものだよ」
「それが……なんなの……」
柴が静かな問うと、父はゆっくりと振り向き、柴を真っ直ぐに見つめた。
父とこうして喋るのは、初めてな気がした。
「それが嫌だから、私は繰り返したくないと思ったんだ」
:08/07/10 23:34
:SO906i
:☆☆☆
#413 [向日葵]
嫌だって……。
だけど自分は……と柴は顔を少し険しくした。
その柴の思いに気づいたのか、父が口を開く。
「驚いたんだ。繰り返したくないと言いながら、私はお前が生まれて、いざ行動にうつした時、愛し方が全くわからなかったんだ」
「嘘だ」
反射的に柴はそう答えた。
「自分がしてもらいたい事をすればいいんじゃないのか……?」
:08/07/10 23:38
:SO906i
:☆☆☆
#414 [向日葵]
父は自分の両手を見つめる。
そしてまた柴を見つめた。
「いざとなるとね、自分が何をしてもらいたかったか分からなくなるんだ……。自分はどう愛して欲しかったのか、何をして欲しかったのか……」
そう言われて柴はハッとする。
その言葉に、納得してしまったからだ。
愛情が欲しいと思った。
でも愛情と言うのはどういう風にもらうのか、柴は知らない。
そうしたものをこめて接してもらった事がないからだ。
どうして欲しいか分かったのは早代が現れ、越が現れたからだ。
早代が自分を可愛がり、越はたくさんの笑顔をくれてからだ。
:08/07/10 23:45
:SO906i
:☆☆☆
#415 [向日葵]
自分は誰かから抱き締めてもらいたかったし、抱き締めたかった。
成長する過程で、親が赤ん坊を抱くのを大切とするように。
自分は、抱き締められた記憶すら、小さい頃にはなかった。
「じゃあ、今何をしたいか分かるの?分かるなら、俺が出ていく時、早代に酷い事したの?」
まだ納得してないような態度をとり、父の本当の気持ちを引き出すよう尋問する。
父は苦い顔をして机に寄りかかり、目を伏せた。
「あれは、確かに酷かったと思う……。怒りに任せてしていい事ではない……」
:08/07/10 23:50
:SO906i
:☆☆☆
#416 [向日葵]
伏せた目を覆うように、片手で目元を隠す。
そしてボソリと呟く。
「怖かった……。また去っていくのかもしれないと思うと……」
柴は、実は知っていた。
前の母親が出て行ってしまった日、柴は通りかかったのは父の書斎だった。
少し開いたドアの隙間から見る父は、窓辺に手をつき、肩を落としていた。
それこそが、父の本当の姿ではないのか?と思ったのを、柴は今でも覚えている。
「それでも早代がそばにいてくれたのが嬉しかった。私はこんなだから、それを詫びる事も未だ出来ていないが……本当に申し訳なかったと思ってる……。早代も、大和……、お前も……」
:08/07/10 23:58
:SO906i
:☆☆☆
#417 [向日葵]
>>319に感想板があるので良ければお願いしますm(__)m
:08/07/10 23:58
:SO906i
:☆☆☆
#418 [向日葵]
父は柴に歩みよる。
何も言わず、ただじっと柴を見つめたかと思うと、ためらいがちに手を伸ばし、柴の頭を柔らかくくしゃりと撫でた。
「本当は、抱き締めてみたいものだけど、今はこれが精一杯みたいだ……」
父が苦笑いを浮かべる。
柴は目が潤む。
この温かな瞬間を、どれほど自分は待ち望んでいただろうか。
抱き締めてくれなくてもいい。
不器用に撫でてくれる手から、何もかもが伝わってくる。
「大和、うちへ戻ってきなさい……」
柴はうつむいて、ひそかに目をこすった。
:08/07/16 00:38
:SO906i
:☆☆☆
#419 [向日葵]
「もう少し……考えさせてほしい……」
こちらに戻るというのは、越達と離れなきゃならないということ。
柴はまだ、越や他の皆とは離れたくない気持ちでいっぱいだった。
「分かった……とりあえず、お互いのリハビリもかねて、2、3日ここで泊まるというのはどうだ?」
越や、越達は、心配してるかな……。
ふと柴は思う。
父の問いには答えず、柴は唐突に言う。
「電話を貸してくれる?」
*******************
仕事が休みだった主婦祐子はリビングで雑誌を読みながら軽く茶をしばいていた。
:08/07/16 00:45
:SO906i
:☆☆☆
#420 [向日葵]
今日の午後の予定をあれやこれや考えていた祐子は越の様子が気になっていた。
いつも通り、朝早く起きて皆の為にご飯を作って、苺や空の面倒を見てから学校へ行く。
それは別にいいのだ。
行動がおかしいのではない。
越が身にまとっているそのいつも通りすぎる雰囲気がおかしいのだ。
ちょうど4日程前。
祐子は残業で遅く帰っていた。
玄関を開ける前にふと気づく。
リビングの明かりがついているのだ。
どうせ消し忘れだろうと、「ったく」と思いながら帰宅した祐子を待っていたのは、ソファに縮こまって座っていた越だった。
:08/07/16 00:52
:SO906i
:☆☆☆
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