よすが
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#590 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>620-650

⏰:22/10/25 17:29 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#591 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>650-680

⏰:22/10/25 17:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#592 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしはテレビの電源を付ける父を見ながら、ちょっと前までは自分もこの輪の中にいたんだなあと頬を緩めた。ふとテレビの上にある電子時計が目に入れば、今日は日曜日だと認識する。

⏰:22/10/25 17:45 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#593 [○○&◆.x/9qDRof2]
休日にも仕事があったなんて、お父さんは大変だな。労いの言葉を考えていたら、突然携帯電話が鳴った。この曲は私の携帯だ。父は「何の音だ?」と立ち上がり音源を探し始めた。

「良枝、携帯が鳴っているみたいだけど、おまえのじゃないのか?」
「携帯?いいえ、私のじゃないみたい。この曲、千恵のじゃない?」

⏰:22/10/25 17:45 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#594 [○○&◆.x/9qDRof2]
キッチンから帰ってきた返事に「千恵の?」と呟いた父は何かを思い出したように母の鞄を漁り始めた。

「あったあった」

上半身を上げた父の手には私の携帯電話が握られていた。私の携帯電話はどうやらあの事故から無傷だったようだ。

「千恵の携帯に電話がきてるぞ」

⏰:22/10/25 17:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#595 [○○&◆.x/9qDRof2]
着信音が消えると当然のように携帯を開く父に「勝手に見たら千恵が怒りますよ」と母が訝しいげな顔を覗かせた。ごもっともだ。いくら死んだとはいえ、娘の携帯を見るのは失礼だろう。

「それもそうだな…と、おや?」

⏰:22/10/25 17:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#596 [○○&◆.x/9qDRof2]
これは…、と父が眉をしかめた。私は不審に思い、父の凝視する携帯を覗き込んだ。

「良枝、確か孝君って男の子が千恵の友達にいたよな?」

そう言う父の横で驚く私。
着信履歴のディスプレイに映し出されていたのは、孝の名前だった。

「ええ、いますけど.......」

それが?と疑問を含ませた母の声。

「どうやら、その彼からだ」

⏰:22/10/25 17:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#597 [○○&◆.x/9qDRof2]
ちょうど料理を終えた母は炒飯を両手に抱えてリビングに姿を現した。皿をテーブルに並べ終わると母も父の横から携帯を覗く。

「孝君から?あら本当。珍しいわね。千恵の口から孝の名前を聞いたのは小学校以来だから、何だか久しぶりね」

エプロンで手を拭いながら懐かしそうに目を細める母に、父は小さく笑いを落とす。

⏰:22/10/25 17:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#598 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そういえば、そんな悪ガキもいたな。何だ良枝、ダメとか言いながら結局おまえも千恵の携帯を見てるじゃないか」

依然として笑いながら言う父に、母はむっとしながら眉を潜めた。

「私はいいんですよ。千恵とはとても仲が良かったですもの。そんなことより、ご飯出来ましたよ。早くテーブルについてください」

⏰:22/10/25 17:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#599 [○○&◆.x/9qDRof2]
はいはい、と苦笑しながら携帯電話をソファに置くと、父はテーブルに歩いて行った。わたしの脳裏に孝の姿が過ぎった。どうしたんだろう。私の葬式があった日から、孝のことばかりだ。柄にもなく昔のことを思い出すときも、孝とのことばかり。

⏰:22/10/25 17:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#600 [○○&◆.x/9qDRof2]
走馬灯にしては長すぎるし、内容が孝中心すぎる。私は自分に苛々してきた。死んだ時にひどく頭でも打ったのだろうか。人のことでこんな風に悩むなんてこれまでになかった。ましてや相手はあの孝ときた。

⏰:22/10/25 17:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#601 [○○&◆.x/9qDRof2]
生前は無視を決め込んでいたような孝に何故今頃?そもそも何に悩んでいるのかすら明確でない。何故か孝中心に物事を考え、ようやく忘れたと思ったらすぐに孝が頭に浮かぶ。この繰り返しだ。原因不明のもどかしさは私の苛々を募らせるばかりだった。どうにも気が治まらない私は、外に出た。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#602 [○○&◆.x/9qDRof2]
孝に直接会うためだ。会って原因を確かめる。聞くことは叶わなくても、糸口くらいはわかるかもしれないと考えたのだ。しかし、何故孝は電話をしてきたのだろうか。私の携帯電話に掛けても誰も出ないのはわかっているだろうに。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#603 [○○&◆.x/9qDRof2]
間違い電話?いや…間違いだったらあんなに長くコールしていないだろうし、さすがに間違いに気付くだろう。では何故?何の目的で?

「……駄目だ」

いくら考えても答えは出て来なかった。久しぶりの孝の家に緊張しているのだろうか。割と近所にあるため、家の位置は忘れていない。不思議な感覚だ。九年ぶりの孝の家。あの頃はよく遊びに行ったものだ。今では曖昧な古い記憶でしかない。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#604 [○○&◆.x/9qDRof2]
「わ、懐かしい…」

私は思わず立ち止まってしまう。白い壁に茶色の屋根。二階建ての西山家は孝と弟、そして両親の四人家族だ。緊張感が沸いて来るのがわかる。玄関をくぐれば記憶にある廊下や家具が迎えていた。お邪魔します、と土足のまま室内へ上がる。全然変わっていない。

⏰:22/10/25 17:48 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#605 [○○&◆.x/9qDRof2]
九年ぶりの孝の家はあまり覚えておらず、玄関から二階の孝の部屋までだけが特に鮮明だった。二階に上がって見覚えのある部屋の前に立つ。懐かしさからか、家にお邪魔してから終始私の頬は緩んでいた。ノックも出来ない私は、するりと部屋に入った。

「…いないじゃん」

⏰:22/10/25 17:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#606 [○○&◆.x/9qDRof2]
誰もいない小綺麗な部屋を見渡して溜め息を吐いた。テレビが置かれたせいか、記憶にある部屋より狭く見える。

「暇だし…捜そうかな」

背伸びをしながら呟くと、私は部屋を後にした。とは言ったものの、手掛かり無しでこの広い街から孝を見付けるのは至難の技だ。携帯電話も使えなければ、人に尋ねることも出来ない。孝を避けて九年間も過ごしていたため、習慣も知らないし、居そうな場所など見当も付かない。

⏰:22/10/25 17:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#607 [○○&◆.x/9qDRof2]
更に今日は日曜日だから学校は休み。さながら探偵気分の私は現状を悟れば悟るほど、気分は落ち込んでいく。まさに手掛かりゼロだ。とりあえず当てもなく路上を歩きながら、しらみ潰しに捜すことにした。そして、日が暮れたら孝の家で待ち伏せという作戦だ。

⏰:22/10/25 17:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#608 [○○&◆.x/9qDRof2]
こんな真面目に策を練ってまで孝を捜してる自分の姿に自嘲気味に笑う。しかし、この探偵ごっこは早くも終わってしまった。孝を捜し始めて十五分。孝の家の近くの公園で目標を発見。私はすたすたと孝に近付いた。

「やっと見付けた」

無反応の孝は悩ましげな固い表情でベンチに座っている。とりあえず私も隣に腰を降ろした。しばしの沈黙。

⏰:22/10/25 17:49 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#609 [○○&◆.x/9qDRof2]
「…暇だなぁ。何か喋ってよ」

もう五分はこの調子だ。
会話すら出来ないんだから、せめて何か行動してくれないと来た意味がない。


「…はぁ」

「…どうしたの?溜め息なんか付いちゃって」
「……」
「ま〜ただんまり?」
「もう、何か喋りなよ。私なんか死んでから独り言ばかりだよ?猫しか遊び相手いないし、つまんない」

⏰:22/10/25 17:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#610 [○○&◆.x/9qDRof2]
愚痴を言いながらも、私はわずかに微笑んでいた。孝の隣は居心地が良い。悪ふざけをしない孝は悪いもんじゃないなと、あの屋上でのひと時以来しばしば感じていた。沈黙すら楽しんでいる。

「…二時三十分か」

私が公園の時計を見て呟くと、孝の声とぴったり重なった。驚いて隣に視線を向ければ、孝も携帯電話の時計を見ていた。カチカチと、無造作にボタンを押す孝。

⏰:22/10/25 17:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#611 [○○&◆.x/9qDRof2]
私は先程の電話の件もあってつい画面を覗き込んだ。

「孝。…何考えてるの?」

画面には私の名前と電話番号が映っていた。しばらく停止した後、孝は通話ボタンを押した。ゆっくりと耳に近付けると、呼び出し音が響く。三回…、四回…。

⏰:22/10/25 17:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#612 [○○&◆.x/9qDRof2]
私は出るはずがない、と確信しながら、孝の行動の意味を考えていた。結論、理解不能。八回目を過ぎると、孝は電話を切った。溜め息を吐く孝を横目に、私は少し気まずさを覚えた。
孝が、教室で黙祷の時に見せた、私の机を見つめていた時のあの目をしていたのだ。何を考えているのか…私にはわからない。そう、思っていた。孝の漏らした言葉を聞くまでは。

⏰:22/10/25 17:50 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#613 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>510-610

⏰:22/10/25 17:51 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#614 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>500-600
>>600-650

⏰:22/10/25 17:52 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#615 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>700-730

⏰:22/10/25 17:53 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#616 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>730-760

⏰:22/10/25 17:53 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#617 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>760-790

⏰:22/10/25 17:53 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#618 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>610-640

⏰:22/10/25 17:58 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#619 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......千恵。おまえはもう帰ってこないんだな、本当に、」

 不意打ちだった。

 有り得ないと思っていたことが現実に起きた瞬間、わたしは顔に熱が昇るのを感じた。かぁっ、と頬が熱くなる。孝は、わたひを想ってくれていたのだろうか。張り合い相手がいなくなったのを、寂しがってくれていたのだろうか。

⏰:22/10/25 17:59 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#620 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは初めて見た、孝のそんな姿を。九年前に反発しだした関係が、九年ぶりに修復に向かった気がした。よくわからないが、わたしは気恥ずかしさでいっぱいだった。この感覚は知っていた。昔、体験したことがある。

⏰:22/10/25 17:59 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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