よすが
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#710 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......やめてくれよ、シャレにならない」

 彼は和やかな風を装っているが、どこか謎めいた雰囲気を持っていて、わたしには彼がそれを懸命に隠そうとしているように思えた。そうしてわたしたちは駅を出て、タクシー乗り場に出た。

「本当にくるの?」
「勿論行きますよ」

⏰:22/10/25 18:32 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#711 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼は困った様子だった。それでもわたしは、どうしても彼と二人きりになりたかった。

「.......まぁいいか」

タクシーで彼の宿泊するホテルへ向かう。カウンターで受け付けを済ませ、自販機でココアを買ってくれた。あったかい。部屋につき、直ぐにわたしたちは並んでソファーに座った。

⏰:22/10/25 18:33 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#712 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いい部屋ですね。小説家というのは儲かるんでしょうか」
「君も小説家になるか?」
「無理ですよ。わたしにはそんな才能ないです」
「そうかな?同じ父親の血をひいてるんだ。君にも少なからず小説家の才能があるかもしれないぜ」

⏰:22/10/25 18:33 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#713 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼はココアをずずっと音を立ててすすった。蝉の鳴き声さえ届かないこの部屋に静寂がたちこめる。


「あなたは、最初から知っていたんですね。私が、あなたの父親である大高秋人と再婚相手との間に出来た子供だって」
「.......知っていたよ。だから君からファンレターが届いたときは心底びっくりした」

⏰:22/10/25 18:33 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#714 [○○&◆.x/9qDRof2]
「父を、大高秋人を恨んでいますか?」
「勿論恨んでいるよ。あの人のせいで母は自殺未遂までした。結局離婚したけど、母はまだあの人を愛していたんだ。そして僕が君と同じ中学二年生のとき、ついに母は自殺した」

⏰:22/10/25 18:33 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#715 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......父から聞きました。母は、わたしの母は今でも教師として働いています。わたしに会おうと言ってきたのは、わたしの両親への復讐のためなのですか」


「そうだ、と言ったら?」
「煮るなり焼くなり好きにしてください。わたし、殺されてもいい覚悟で今日ここへ来たんです」

⏰:22/10/25 18:34 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#716 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......ひとつ聞かせてくれよ。君はいつから俺の正体に気付いてた?」
「つい最近です。父は、いまでもあなたから貰った押し花のしおりを大事に使っているんです」


「.......本当は。今日君に僕の正体を明かし、殺してやるつもりだった。俺が、血の繋がるたった一人の母親をなくしたように、あいつらに大事な一人娘を失う悲しみと苦痛を与えてやりたかった」

⏰:22/10/25 18:34 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#717 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼は泣いていた。わたしは両親を恨んだ。もしもわたしが、大高秋人と早川あゆみの子供じゃなかったら、少しでも彼のこころを癒してあげられたかもしれない。もしもわたしが血を分けた妹じゃなかったら、彼に対して抱いてしまったこの感情も報われることがあったかもしれない。

⏰:22/10/25 18:34 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#718 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼の細い肩にそっと触れる。その瞬間、揺さぶられるような衝撃を受け、後ろに倒れた。手首を強く握られ、押し倒されていた。


「あの人がまだしおりを持っていたのは予想外だった。復讐なんかしたところでどうにもならないことなんてわかってる。それでも、俺は幸せそうに、のうのうと生きてるあいつらに復讐しないと気がすまないんだ」

⏰:22/10/25 18:34 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#719 [○○&◆.x/9qDRof2]
 これは彼なりの復讐なのだろう。


 その日、二人は罪に堕ちた。

 彼の熱が、わたしの中で溶けていくのを感じた。



 わたしは三日間彼と行動を共にした。次の作品ではこの樫ノ宮町をモデルとした舞台で小説を書くのだそうだ。

⏰:22/10/25 18:34 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#720 [○○&◆.x/9qDRof2]
「父に会っていかなくていいんですか」

 わたしたちは、彼が昔、猫を埋めたという場所にいた。途中で買った花を添え、二人で手を合わせる。

「君の貞操を奪ったって言ったらあの人はどんな顔をするんだろうね」
「.......父は、あなたが小説家になったことを知っていると思います。父の部屋には永原愛の小説が全て揃えてありました」

⏰:22/10/25 18:35 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#721 [○○&◆.x/9qDRof2]
「はは、まぁ偶然だろ。俺は、あの人たちに会うつもりはないよ」

 三日という時間はあまりにも短く感じた。駅のホームで、帰りの新幹線がくるのを待ちながら、二人でココアを飲む。駅のなかは蒸し暑く、汗で肌はじっとりとぬれている。.......彼はもう二度とわたしには会ってくれないだろう。

⏰:22/10/25 18:35 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#722 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼にとって、わたしなど憎むべき存在でしかないのだ。やがて新幹線が到着したことを知らせるアナウンスが流れた。



「梨菜、さよなら」



 そう言い残し彼の背中は人混みの中へ消えていった。目頭が熱くなり、涙が溢れてとまらなかった。

⏰:22/10/25 18:36 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#723 [○○&◆.x/9qDRof2]
「お兄ちゃん!」


 悲痛なわたしの叫び声は駅中に響いても彼のこころにとどくことはなかった。




 お兄ちゃん。
 どうか、幸せになって。

⏰:22/10/25 18:36 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#724 [○○&◆.x/9qDRof2]
 いつか素敵な女性と結婚し、あなたが子供の頃夢見た理想の家庭を築いてください。家族というのは悪いもんじゃないんだってことをどうかあなたにだけは知ってほしいのです。



BLUE BIRD[完]

⏰:22/10/25 18:36 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#725 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>690-720

⏰:22/10/25 18:36 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#726 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>680-730

⏰:22/10/25 18:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#727 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>680-710

⏰:22/10/25 18:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#728 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>710-730

⏰:22/10/25 18:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#729 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>730-760

⏰:22/10/25 18:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#730 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>760-790

⏰:22/10/25 18:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#731 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>790-820

⏰:22/10/25 18:38 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#732 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>650-850

⏰:22/10/25 18:38 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#733 [○○&◆.x/9qDRof2]
 Dear my dear.
 and
 I love you.

 -------------------------

⏰:22/10/25 18:46 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#734 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>730-999

⏰:22/10/25 18:47 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#735 [○○&◆.x/9qDRof2]
腐女子「あれ?ここドコ?」


「.......なぜ、私はお花畑にいるのでしょうか」

 今日は新しいBL本が届くから、ワクワクテカテカしながら、学校から帰っていたはず。.......それがなぜ?
まさか、誘拐?いや、それはないか。高校生なんてデカイ対象をわざわざ狙わないだろう。だとしたら、帰り道に事故で?これって、死亡フラグどこらか.......死亡?わたしご臨終?


「嫌ああああぁぁぁ!どうしよう!まだBL本とか卑猥なCDとか腐的要素たっぷりのモノを処分してないよおおおぉぉお!」

⏰:22/10/25 19:23 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#736 [○○&◆.x/9qDRof2]
 あれらを見つけた両親の顔を想像しただけで。サーッと顔から血の気が消え失せた。ちなみに新しく購入した本は、眼鏡をかけた軍服青年の手に、これまた軍服を着た爽やか青年が口づけているという表紙のファンタジー系である。タイトルは『聖なる君主に祝杯を』だったはず。

⏰:22/10/25 19:23 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#737 [○○&◆.x/9qDRof2]
ファンタジーというだけあり、背景はヨーロッパのような豪華な部屋で、これから何かをやらかすといった雰囲気が見てとれた。それに期待したのが購入理由である。

「そんな説明してる場合じゃなかった!」

 とりあえず冷静になろう。花畑の他に何か見えないかと目を凝らした。だが、どうしてだか遠くの方がぼやけてしまって見えにくい。眼鏡が壊れてしまったのだろうか。

⏰:22/10/25 19:24 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#738 [○○&◆.x/9qDRof2]
慌てて眼鏡に手を掛けようとしたが、何の感触も掴めぬまま空をきった。眼鏡がない!何かの拍子で落ちたのかもしれない。眼鏡眼鏡と連呼しながら色とりどりの花を掻き分ける。だが、一向に眼鏡を見つけることは出来なかった。焦りと不安だけが積み重なってきて、潰れてしまいそうだ。


「眼鏡ってこれですか?」

⏰:22/10/25 19:24 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#739 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっ!それです!それなんです!ありがとうございます!もうなくしてたらどうしようかと思いました!」

 手渡された眼鏡を受け取り所定の位置にかけ直す。どうやら壊れてはいないみたいだ。あー良かった。これで一安心.......

 一安心?

 まさか人がいたなんて思いもしなかった!

「ごめんなさい、ごめんなさい!怪しい者じゃないんです!私は良い腐女子だよ!バイエルンに親戚はいないけど撃たないでー!」

⏰:22/10/25 19:24 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#740 [○○&◆.x/9qDRof2]
とっさにイタリア人の常套句を使ったが、それが面白かったのか相手は柔らかに笑った。

「いえ、俺の方こそ驚かせてしまったみたいで…すみません。撃ちもしませんし、捕まえもしませんから安心してくださいお嬢さん」

お 嬢 さ ん だ と !
なんて甘美な響きなんだ!

⏰:22/10/25 19:24 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#741 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼氏いない歴=年齢の私を一瞬でメロメロにした男性は、背が高くレモンが似合いそうなフレッシュな人だった。そういえば異国の服を着ている。コスプレ?

「あのっ!つかぬことをお聞きしますが、一体それは、何のコスプレなんですか?できればキャラクターの名前も!」

白いシャツにワイン色のネクタイ。上は深い緑色で金のボタン。ウエストあたりを黒革のベルトで締めている。ズボンも同じ色で、脛をゲートルで巻いている。見たことのない衣装だ。何かのゲームキャラだろうか。

⏰:22/10/25 19:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#742 [○○&◆.x/9qDRof2]
「コス…?この服はアルディナ国のミスリル城に仕えてる者に支給される服ですよ。階級が高い人はまた違ってきますが。あ、申し遅れましたね。俺の名前はキース・ウィルダム。キースと呼んでください、お嬢さん」


 それなんてRPG?

アルディナ国…。

⏰:22/10/25 19:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#743 [○○&◆.x/9qDRof2]
そんな地名があるゲームがあっただろうか。ニンテドーにもナコにも、ましてやSEGにだってないかもしれない。だとするとスクアニックスか…?いやもしかして漫画か…?私もまだまだ修行が足りないようだ…。日本の萌え産業は日々進化している。私が知らないことなど、きっとたくさんあるのだ。私はふっと自嘲するように笑った。


「あの、お嬢さん?お嬢さんのお名前は何て言うんですか?」
「名前?」

⏰:22/10/25 19:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#744 [○○&◆.x/9qDRof2]
萌えの前にただただ無力な私は自暴自棄になっていた。

「フッ、わたしは男性同士の恋愛を食い物にする、ただの腐女子さ」
「腐女子さんっていうんですか?変わったお名前ですね!まぁ、立ち話もなんですし、城の中へご案内いたします。どうぞこちらへ」

⏰:22/10/25 19:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#745 [○○&◆.x/9qDRof2]
腐女子というのは名前ではなく、職業みたいなものなのだか.......うん?城、だと?.......眼鏡をかけ正常な視力を取り戻した私は息を飲んだ。途切れた花畑の先には城がそびえ立っていた。あの有名なネズミの国にある城よりも大きい。中世ヨーロッパにでも迷いこんでしまったかのようだ。


「いやー、近々視察の方がいらっしゃるとは聞いていましたが、まさか女性だったなんて思いませんでした」

⏰:22/10/25 19:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#746 [○○&◆.x/9qDRof2]
あまりの事に私は言葉を失った。何がどうなっている!頭は混乱しているが、本能的に分かることが一つだけあった。


 ココ日本ジャナイヨー。私があまりの事に白目をむいているのに、キースさんは「紅茶がいいですか?それともハーブティー?」などと暢気に聞いてくる。はっと我に返り、私は思い出したように口を開いた。日本じゃないってことは、外国なのか?

⏰:22/10/25 19:26 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#747 [○○&◆.x/9qDRof2]
でもアルディナ国なんて聞いたことがない。そもそも学校と家の往復距離の間にアルディナ国なんてなかったし、登校するときも「ちょっと通りますよ」といってこの城の前を通ることもなかった。だとしたら!私の中で確信が二つうまれた。


 1つ目は、下校中に空間が歪み異世界に飛ばされた。

⏰:22/10/25 19:26 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#748 [○○&◆.x/9qDRof2]
そしてもう1つは…、夢オチ。どちらにしてもこの状況、非日常だ。誰しもが憧れる二次元的イベントではないか。ここは流されるまま流されていこう!そうしよう!

「それじゃあ、紅茶をいただこうかしら」

こうなったら楽しんだもん勝ちである。

「分かりました!紅茶ですね!」

弾んだ声でキースさんは城の中を先導して行く。私もそれに続いた。


「それにしても、壊れてなくて良かったですね!眼鏡!」

⏰:22/10/25 19:26 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#749 [○○&◆.x/9qDRof2]
本当に良かった。

「だって眼鏡というのはとても高価で、貴族の、それも魔法高等試験に合格しないと得られない物ですもんね」


…あれ?私の知ってる眼鏡と違う。

「俺の友人にもかけてるやつがいるんですが、そいつとなら魔法の話で盛り上がるかもしれません!今度紹介しますよ!」

魔法の話で盛り上がる。あいにく私は試験に合格してないし、魔法だって使えない。ただの腐女子である。盛り上がるならBLの話で盛り上がりたい。
男が二人.......そう。そこからが試合開始な訳である。

「あっ!、キースじゃねーか!」

ちょうど螺旋階段を登り終え、部屋が点在する廊下に出た時声が聞こえた。後ろを振り返ると男の人が立っていた。私の中で試合開始のホイッスルが鳴った。キースさんと同じ深緑色の軍隊の制服なのだが、ネクタイを緩く結び胸元がはだけ、いくらか着崩した格好だった。

⏰:22/10/25 19:27 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#750 [○○&◆.x/9qDRof2]
そういえば、衝撃的なことが多すぎて観察する余裕がなかったが、この二人.......どちらもイケメンである。キースさんは明るい茶色の、無造作だが邪魔にならない長さの髪型だ。柔らかに笑むその姿はまさに優しいお兄さん!


さっき声をかけてきた人は褐色の肌で、白銀の少し長めの髪を後ろに流している。右の目に眼帯をしていた。

⏰:22/10/25 19:28 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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