よすが
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#780 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>780-810

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#781 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>810-840

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#782 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>840-870

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#783 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>870-900

⏰:22/10/25 19:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#784 [○&◆oe/DCsIuaw]
 雨が降っていた。
 もうすぐ秋の気配を感じながら帰宅したわたしは、まるで捨て犬みたいに縮こまって、悲しそうにうつ向いてる彼と出会ったのです。


しばにっき

⏰:22/10/25 20:06 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#785 [○&◆oe/DCsIuaw]
「お母さああん!人拾ったあ!」
「え.......ちょ、あんた、そんな犬拾ったみたいなテンションで!」

 優雅に紅茶をすすっていたお母さんは、わたしの叫びにびっくりした。そんなわたしはずぶ濡れの彼を家にいれて、タオルを貸してやった。

「ハイ。拭いて。風邪ひいちゃうから」

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#786 [○&◆oe/DCsIuaw]
わたしの言葉なんか聞いてないのか、綺麗な茶色い髪から滴る雫もそのままに、彼はぼんやりしていた。お母さんが風呂を沸かしてあげると言って、風呂場へ向かった後、あたしは彼を拭いてあげる。そこで、ハッとする。伸びている髪の毛の隙間から覗いた瞳は、グレーだった。外人さん?もしかして、日本語通じないとかかな。

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#787 [○&◆oe/DCsIuaw]
「わ、ワットユアネーム?」

カタコトな英語で話かければ少し反応したのか、こちらを見た。

「分かるから、日本語」

ぽつりとだけど、確かにそう言った。

「良かった!あ、あたしは神野絵子(かんの えこ)。この家の長女。あなたは?」

さっきまで私に向けていた魅力的な瞳を僅かにそらして、またポツリと呟いた。

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#788 [○&◆oe/DCsIuaw]
「勝手に.......呼べばいい」

何でだろう。でも何故か分かる事は、彼はとても傷ついてるように見えると言う事。何故、そんな悲しい目をしているんだろう。

「どうして……うちの前にいたの?」
「.......疲れた。どこにも行く場所なくて、さまよって、休んでただけ」

⏰:22/10/25 20:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#789 [○&◆oe/DCsIuaw]
行く場所がない?つまり家出って事なのかな。そう思いながら、今日初めてあった人をあれこれ詮索するのはよくないと思い、私は何も聞かなかった。

「じゃあ……とりあえず貴方は柴(しば)ね。犬みたいにうちの前にいたから!」

特に反応する訳でなく、柴は黙ったまま私に拭かれた。



「行くとこないっていうなら、まぁいてもいいよ」

⏰:22/10/25 20:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#790 [○&◆oe/DCsIuaw]
お母さんは寛大すぎる程寛大で、お母さんだけど男気溢れる人だ。柴がお風呂に入ってる間、さっき彼から聞いた事をお母さんに言ったところ、さっきのような返事が帰ってきた。

「今更家族が1人増えようが5人増えようがどうでもいいよ」

⏰:22/10/25 20:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#791 [○&◆oe/DCsIuaw]
「5人て……。そうなったら大家族だよお母さん」
「あぁ!おねーちゃん!」

後ろから声がするので振り向いてみれば、三女で4歳のいちごと、長男で10歳のそらがそこにいた。苺はトテトテと走ってきて私の足に抱きついた。

「おかえりなさぁい!あのね、いちご今日おうたおぼえたんだよー!」
「そうなんだぁ。またお姉ちゃんに聞かせてね。」

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#792 [○&◆oe/DCsIuaw]
苺は「うん!」と元気よく言って、お母さんの膝によじ上った。

「えこ姉!俺今日野球でホームラン打ったよ!」
「空はさすがだねー!この調子で頑張りなよ!」

空はニカッと笑う。それにつられて私も笑うと、玄関の方から叫び声が聞こえた。

「うわぁぁ!!」
「あ、さくらおねえちゃんだ!」

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#793 [○&◆oe/DCsIuaw]
さくらとは、次女で14歳。おそらく部活から帰って来たのだろう。それはいい。多分.......柴がいたな。玄関へつけば、風呂上がりで、さっきと変わらず頭びちょびちょの柴と、見知らぬ柴に驚いた桜がいた。

「え!?ちょ、お姉ちゃんこの人誰?」
「柴。ちょっと柴。ちゃんと頭拭かなきゃダメでしょうが」

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#794 [○&◆oe/DCsIuaw]
すると、柴は頭にタオルを乗っけて、私に頭を差し出してきた。拭けと言ってるらしい。桜の叫びにかけつけた苺と空も、驚いていた。

「わ!誰?」
「いちごのおにいちゃん?」

.......いっぺんに説明しなくちゃならないようだった。


 小さな苺もいると言う事で、分かりやすく丁寧に話した所、最初こそ驚いたものの、皆次第に納得していった。

⏰:22/10/25 20:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#795 [○&◆oe/DCsIuaw]
「分かったよお姉ちゃん」
「俺も」
「いちごもー!」

皆が了解したと言う事で、私は柴が使う部屋へと案内した。丁度1つ余っているので、そこにする事にする。階段を上がって、空いてる部屋へと案内。柴は黙々とついてくる。ドアを開けると、何もない空間が広がっている。

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#796 [○&◆oe/DCsIuaw]
「じゃあここね。布団はまた持ってくるから」
「.......てない」

「え?」

柴は入口に止まったまま、窓を見つめて何か呟いた。柴よりも先に部屋に入ってた私は、柴に寄っていってもう1回何を言ったか尋ねた。

「何?」
「似てない.......誰ひとりとして、兄弟も、親子も」

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#797 [○&◆oe/DCsIuaw]
「.......そっか」

私はにこっとして、質問に答える。

「皆、施設からこの家に来たから。似てなくて当然なんだよ」

私は皆、桜も空も苺も……皆施設から今のお母さんの所へ引き取られた。お母さんは、子供が欲しいけど出来なくて、ずっと悲しんでいた。そんな時、私達を見つけてくれた。

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#798 [○&◆oe/DCsIuaw]
血の繋がりなんてないけど、愛情一杯に育ててくれた。私は5歳の時、両親から捨てられた。それでも今のお母さんが大事に育ててくれたおかげで、今は何も寂しくもないし、怖くもない。

「本当の兄弟じゃなくても、皆大切よ」

柴は静かに私を見つめ返す。灰色の瞳でじっと見つめられるば、少しドキドキした。

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#799 [○&◆oe/DCsIuaw]
「いいな」
「え?」

.......と、突然、柴が被さってきた。急なので、バランスを崩した私の体は、柴と共に倒れる。ドスンと派手な音を立てると、私はムクリと起き上がった。

「あいったたたた。ちょっと柴!何すん」
「スー……スー……」

え、寝ちゃった?

⏰:22/10/25 20:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#800 [○&◆oe/DCsIuaw]
確認するまでもなく、ピクリとも動かず柴は寝息を立てる。何か……謎めいた人だなぁ。歳は20ちょっとくらい。長身、どちらかといえば美形。そして灰色の瞳。一体どこの人なんだろうか。結果として膝枕をしなくちゃならない羽目になった私は、柴の寝顔を見ながらぼんやりと色々考えた。

⏰:22/10/25 20:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#801 [○&◆oe/DCsIuaw]
眠りがもとから浅いのか、1時間経つと柴は目を覚ました。覚えてないのか、半目で辺りを見渡す。そんな仕草に、あたしは笑ってしまった。

「本当犬みたい!柴って名前あってたみたいね」

柴は少し首を傾げてから、座って頭をポリポリかいた。私のビジョンからは、子犬が後ろ足で頭をかいてるように見える。

⏰:22/10/25 20:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#802 [○&◆oe/DCsIuaw]
「お腹空いてない?喉は渇いてない?」

柴は頭をかくのを止めて、またあたしをじっと見つめる。見つめながら、眉間のしわを深くした。何か、私悪い事言ったっけ?

「馬鹿らしい」

は?

「赤の他人家にあげるなんてどういう神経してんだか。第一そんなに親切にして何なの?媚売ってんの?」

⏰:22/10/25 20:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#803 [○&◆oe/DCsIuaw]
最後の言葉を言い終わると同時に、私は柴の両方の頬をつねってやった。そして間近で怒った顔をする。

「二度と、あたしの家族の悪口言わないで」

媚なんて売った事はない。困っているなら助けてあげたい。そんな、ただ優しい心をそんな風に言うなんて許さない。

⏰:22/10/25 20:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#804 [○&◆oe/DCsIuaw]
「少なくとも、私はこの家族を誇りに思ってる。本当の家族であろうがなかろうが関係ない。本当の皆の心を見ずに、悪く言うのは止めて」

そうして、私は頬から手を離す。依然、まだ顔も気持ちも怒ったままだ。柴はつねられた頬をさすりながら、ぼんやりと足元を見ていた。少し、言いすぎた?

⏰:22/10/25 20:12 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#805 [○&◆oe/DCsIuaw]
でも柴が悪いのよ。私の家族を、あんな風に.......。

「うらやましい.......」

柴がまたポツリと言う。私は眉を寄せて柴を見る。柴はまたさっきのように悲しい目をしていた。灰色の瞳に憂いの色が混ざる。

「悪く言ってごめん」

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#806 [○&◆oe/DCsIuaw]
あれ、意外と素直。

「でもお人好し」

でもやっぱり毒舌。

「いいの。誰かにとってはお人好しでも、誰かにとっては救いになってるかもしれないでしょ?」

柴は珍しい物のように私をじっと見つめる。そんなにおかしい事言ったかな。すると、カタと音がしたので振り向くと、そこに苺が覗いていた。苺は恐る恐る部屋に入って来て、柴の近くで止まった。

⏰:22/10/25 20:12 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#807 [○&◆oe/DCsIuaw]
最初は上から下まで何度も観察して、その内ににこぉっ笑った。

「しばおにいちゃん。いちごおにいちゃんとあそびたいな」

柴は軽く目を見張ると、少し表情を柔らかくしたのが分かった。目元も笑みを含んでいる。苺も柴を気に入ったのか、生意気に膝の上に乗ってる。

「兄弟いたの?」
「弟がね、」

⏰:22/10/25 20:12 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#808 [○&◆oe/DCsIuaw]
柴は苺の頭を撫でながら言う。苺のおかげで柴の警戒していた空気が緩和されてる。だから私もなんなく喋る事が出来た。

「何歳くらい?」
「この子と同じくらい。」
「“このこ”じゃないよ。いちごだよ!」

苺の主張に、思わず笑ってしまう。

「苺ー!ちょっとおいでー!」

⏰:22/10/25 20:12 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#809 [○&◆oe/DCsIuaw]
桜の呼ぶ声に、元気よく「はーい!」と答えて苺は言ってしまった。まるで空気を和らげに来ただけみたいな苺に、私は胸が温かくなった。

「あの子はいつからこの家の子?」

柴から喋り出したので、私は少し驚いた。

「苺は赤ちゃんの時から。でも本当の家族じゃない事はもう知ってるよ」

⏰:22/10/25 20:13 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#810 [○&◆oe/DCsIuaw]
柴は苺が行ってしまったドアを見つめる。あんな小さな子に、そんな酷な事をとでも思ってるんだろうか。

「俺もこの家に拾われたかった、」
「柴?」

さっきもそうだった。「いいな」とか「羨ましい」とか、どうして他の家庭を羨んでばかりいるんだろう。そしてそういう時、いつも寂しくて悲しい顔をするのだろう。

⏰:22/10/25 20:13 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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