他人の情事(18禁)
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#931 [○○&◆.x/9qDRof2]
そしておれは、見てしまった。
彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。
「……見ないでよ」
:22/10/18 21:50
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#932 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。
「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」
おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。
:22/10/18 21:50
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#933 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。
:22/10/18 21:50
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#934 [○○&◆.x/9qDRof2]
ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。
:22/10/18 21:51
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#935 [○○&◆.x/9qDRof2]
それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。
:22/10/18 21:51
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#936 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。
「出てって」
:22/10/18 21:51
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#937 [○○&◆.x/9qDRof2]
そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。
:22/10/18 21:51
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#938 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。
:22/10/18 21:51
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#939 [○○&◆.x/9qDRof2]
そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。彼女のグループの一員となった、というのが正しい。
:22/10/18 21:51
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#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。
:22/10/18 21:52
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