・・万華鏡・・
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#267 [果樹]
また俯きそうになった顔を必死に上げ、私は総より一歩前に出て振り返る。
そして笑顔を作り、総の腕をグイグイ引っ張って総を急かす。
「俺は荷物持ちか」
私には聞こえなかったが、この時総はため息をついていた。
――――――――・・・・
「つかさ・・・お前買いすぎじゃねぇ?」
:08/06/09 22:08
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#268 [果樹]
どっさりと腕に下げた紙袋を持ちながら呆れ顔で総が聞いてくる。
「だって楽しいんですもの!」
私は満面の笑みで総に笑いかけた。
総はそんな私に仕方がないなぁというような笑みを返した。
「お嬢様!」
「は・・・萩野っ!!」
:08/06/09 22:09
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#269 [果樹]
聞き覚えのある声に振り向くと、50m先に厳しい顔をした萩野がいた。
私の身体がビクッと跳ねる。
「探しましたよ。ご自宅の方にお戻り下さい」
ツカツカと私の目の前まで来た萩野は、厳しい目つきをしながらも恭しく頭を下げた。
「い、嫌ですっ!!」
顔が強張る。
:08/06/09 22:10
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#270 [果樹]
「またそんな我儘をお言いになって。いい加減にして下さいお嬢様」
「っ!!」
顔を上げた萩野の目つきがさらに厳しいものになり、私を捕らえる。
その目に捕らえられた私は、つい身体が動けなくなる。
「さぁ帰りますよ」
グッと腕を掴まれ、そこに力が加えられる。
:08/06/09 22:11
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#271 [果樹]
「い、嫌・・・」
振り払いたいのに力じゃ適わない自分が悔しい。
「あのー俺抜きで話進めないで貰えますか?」
そんなピリピリした雰囲気の中で一つの声と共に、にゅっと手が挙がった。
「貴方は?」
萩野が私から総に視線を移す。
「時田総一郎。つかさの家庭教師」
:08/06/09 22:12
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#272 [果樹]
「ああ、貴方でしたか。お嬢様を誑かして連れ出したのは」
「萩野!!失礼なこと言わないで!あれは私の意志で出て行ったのです」
私が萩野の言葉に反抗するように大きな声で怒鳴ると、萩野は冷ややかな目で私を見てからふっと嫌な笑みを溢す。
「まぁどちらでもよろしいですが。さぁ、参りますよ」
:08/06/09 22:13
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#273 [果樹]
萩野が私の手を力づくで引っ張る。
しかしその萩野の手は、総によって振り払われた。
「おいおい、嫌がる女を無理やり連れて行こうとするのは、ちょっと男としてないんじゃねぇのか?」
いつものにやけ顔と違う怖い顔を総は萩野に向ける。
萩野の眼光が鋭く光る。
:08/06/09 22:14
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#274 [果樹]
「貴方には関係の無い事だ。第一貴方、少々お嬢様と一緒に時を過ごしたからといってお嬢様のすべてを知ったつもりか?お嬢様の幸せを考えてものを言うんだな」
「っ・・・」
総は言葉に詰まって口を閉ざしてしまった。
そんな総に萩野は勝ち誇ったような顔をしてから、少し緩めた顔で私に向き直る。
:08/06/09 22:15
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#275 [果樹]
「さぁお嬢様。参りますよ。旦那様もご心配なさっています」
「嘘よ・・・」
顔がまた俯く。
お父様が私を心配してるなんて、そんなの嘘・・・。
お父様は一度だって私に優しい顔も悲しい顔も見せたことがない。
涙だって・・・。
「嘘ではございません。旦那様のお気持ちも少しはお考え下さい」
:08/06/09 22:15
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#276 [果樹]
「っ!」
「さぁお車にお乗り下さい」
私たちの側につけた車に萩野は私を無理やり押し込もうとする。
「いや・・・。総!総っ!」
私は周りの目を気にすることなく叫んだ。
力の限り総の名前を叫んだ。
でも総は俯いて、私の方を見ようとはしない。
:08/06/09 22:16
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