・・万華鏡・・
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#66 [果樹]
なぁ咲良・・・。
俺はどうすればいいんだ・・・っ!?



「千晃くん・・・?」

名前を呼ばれ、顔を上げると咲良がこっちを見て笑っていた。

「咲良・・・!」

「私の病気のこと聞いちゃった・・・?」

起き上がって俺の方を見て、どこか悲しげに聞いてくる咲良。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#67 [果樹]
なんでわかったのだろうかと疑問に思っていたら、咲良の指が延びてきて、俺の目元に触れる。

「泣いてる・・・」

見ると、咲良の指には水滴がついていた。

俺の涙・・・?

いつのまにか俺の目からは涙が溢れていた。

俺は急いでそれをカーディガンの袖口で拭った。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#68 [果樹]
「もうっ宮島先生のお喋り!」

と咲良は冗談めかしげに怒っていた。

そして咲良はうつ向き哀しそうな表情でぽつりぽつりと話し始めた。

「私ね・・・学校ってまともに行ったことなかったの。小さい頃からずっと病院にいて、病院の中だけしか知らなかった。だからこの学校に通えた時すごく嬉しかったんだ。友達もできて、毎日楽しかった。でも、もう限界かなぁ・・・」

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#69 [果樹]
「咲良・・・」

咲良の目から一筋の涙が流れ落ちた。

「自分と同じ名前の・・・桜の花の下で千晃くんにも会えたのに・・・。なんであたしの心臓はちゃんと動いてくれないのかなぁ・・・っ」

ポタポタと咲良の目から流れ落ちた涙が布団に染みをつくった。

咲良は声を出すまいと下唇を噛んで必死に声を押し殺していた。

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#70 [果樹]
俺はそんな咲良が無償に愛しく感じて心臓がぎゅうっと痛くなった。


気が付けば俺は、自分の腕の中にその小さな身体を収めていた。


「俺が毎日見舞いに行くから!桜の花持って見舞いに行くからっ・・・だから早く治せよ!そんで元気になったらいっぱい遊びに行こう!なっ?」

⏰:08/06/02 13:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#71 [果樹]
俺の目からは拭ったはずの涙がまた溢れていたが、そんなことも気にせず俺は力いっぱい咲良を抱き締めた。


今俺にできることはこれくらいしかなかった。


すると咲良も俺の服をぎゅっと掴んで、「・・・・うん!」と涙を流しながらも笑顔で答えた。

⏰:08/06/02 13:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#72 [果樹]
それから咲良は、ちゃんと病院に戻った。

もちろん俺は桜の花を持って見舞いに行ったが、最初、枝を折って持っていったら咲良にこっぴどく叱られた。

咲良いわく、桜の枝は生えてきたりしないから折っちゃ駄目だったらしい。

それからは花びらを持って見舞いに行くと、咲良は笑って「ありがとう」と大事そうにその花びらを栞にしていた。

⏰:08/06/02 13:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#73 [果樹]
でも桜は咲いている時期が決まっているため散ってしまうと中々手に入れるのが難しかった。

でも俺はどうしても咲良に桜を見せてやりたくて、ネットや雑誌を使ってたくさん調べて毎日毎日なんとか咲良の元に桜の花を届けた。

その度に咲良は嬉しそうに笑うから俺はそれだけで、心が温かくなった。


そして季節は過ぎていった。

⏰:08/06/02 13:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#74 [果樹]
いつだったか嬉しそうに咲良が話してくれたことがあった。

「あたしの読んでいる本の詩の中にね、一番好きな詩があるの。それはね」



それは・・・――――

.

⏰:08/06/02 13:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#75 [果樹]
“僕はいつも窓から外を見ている

楽しそうな笑い声に耳を傾けるだけの僕

そんな僕をいつも励ますのは窓から見える桜の花

そこから動けない君はまるで僕そのもの

でもいつかこの足で陽の光のあるところに出られたなら僕はまず君の側で本を読もう

そしてこう言うんだ

『ああ、幸せだな』”

⏰:08/06/02 13:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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