・・万華鏡・・
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#205 [果樹]
相手をしても仕方がないので、私は時田先生と目を合わせないでひたすら目の前の問題を解いた。
「つーかお前さ。頭良いんだから家庭教師なんかいらなくね?」
今のは家庭教師としてあるまじき言葉だろう。
私は、また溜め息をつくと時田先生をちらりと見る。
「先生何も知らないんですね」
:08/06/05 15:04
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:☆☆☆
#206 [果樹]
私が言葉を掃き捨てるように言うと先生は「何を?」と言って全く分からないという顔をした。
だから私は、問題を解きながら淡々と言葉にする。
「家庭教師っていうのは建前です。父の目的は私の監視ですから」
「監視・・?」
先生は眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をする。
:08/06/06 00:52
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#207 [果樹]
私は、手を休めることなく問題を解きながら先生の疑問に答える。
「私は父が決めた道を歩んで将来は父の跡を継ぐ。全て決められた事柄を私は実行するだけ。あなたは私が変な行動をしないように監視するんです」
淡々と述べる私に、先生は更に眉間に皺を寄せて、私を見てくる。
「お前はそれで満足なのか?」
:08/06/06 00:52
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:☆☆☆
#208 [果樹]
満足・・・?
私はついふふっと笑ってしまった。
「私に自由はありませんから・・・」
満足だなんて一度も思ったことない。
いくら高いお洋服やブランド品を買って貰っても心までは満たされない。
一人で買い物も行けず、遊びに行くことも出来ない。
:08/06/06 03:03
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#209 [果樹]
ただ籠の中でじっとして、父に飼われている鳥そのもの。
いくら籠の中で羽ばたいたって飛べるわけもなく、ただただ必死にもがくだけの滑稽な姿。
自由になりたいって何度も思った。
でもそれは叶わない夢。
籠の中で飼われている鳥は、籠の中から出ることを許されない。
:08/06/06 03:03
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:☆☆☆
#210 [果樹]
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」
そう言ってにっと笑った先生は、いきなり椅子から立ち上がると、テラスに通じる窓を開ける。
8月とはいえ、少し涼しい風が部屋の中に入ってくる。
一瞬風の冷たさに驚いて目を瞑る。
目を開けると、先生はテラスの手摺に片足をかけていた。
:08/06/06 03:04
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#211 [果樹]
「え?ちょ・・先生何してるんですか?!危ないですよ!」
私はありえない光景に驚き、止めるために近付こうとした時、先生が振り返った。
「あれ?心配してくれんの?」
「ばっばかだって言ってるんです!」
にっと笑って言う先生に対して、私は何故か顔が熱くなった。
:08/06/06 03:04
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#212 [果樹]
先生は、そんな私を見てふっと笑うとテラスから飛び下りた。
「きゃっ・・せ、先生?!」
私は急いでテラスに出て下を覗くと先生が背中を向けて立っていた。
私は先生が生きていたことに胸をほっと撫で下ろす。
「おいで。」
:08/06/06 03:05
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#213 [果樹]
先生はさっきと同じ顔で笑って両手を広げる。
「だ、だめ・・・いけません。」
私はここから出られない・・・。
ぎゅっと目を瞑り視界から先生を消す。
それでも耳から先生の声が入ってくる。
「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ。」
:08/06/06 03:05
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#214 [果樹]
「―――――っ!!」
どうしてこの人はこんなことをいうのだろう・・・。
私はいつの間にか瞑っていた目を開けて先生の方を見ていた。
ふらっと先生に導かれるまま行ってしまいそうになった時、部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「お嬢様?どうかなさいましたか?お嬢様?!」
:08/06/06 03:06
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