ギンリョウソウ
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#390 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・

椿は庭の阿舎(アズマヤ)にいた。
柱に寄りかかるようにしてしゃがみ込んでいる。

膝を抱え、その膝に顔を埋めるようにして、荒くなる息を沈めようと頑張っていた。

椿は限界だった。
足枷をつけられて自由を奪われているような気持ちでいた。

好きでもない人と何度も唇を重ね、好きな人には傷つける態度で接するしか出来ない自分にも苛立っていた。

いっその事……消えてしまいたい……。

どう頑張ったって自分は母のようになれないのだと思ってしまえばそれも許せない事実だった。

⏰:08/09/04 02:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#391 [向日葵]
誰の傷を癒す事も出来ない。
傷つけてしまうだけの自分。
足を引っ張ってしまうだけの自分。

こんな役立たずな自分なんて、要に好きでいてもらう資格はない……。

顔をあげて、袖でもう1度口を拭く。

赤くなろうが、痛くなろうがどうでもいい。

ただあの瞬間の出来事、感触。
全てを無かった事にしてしまいたい……っ。

椿はひたすら口を拭く。
しかしその手は止められた。
手首を掴む手に、椿はビクリと肩を震わして小さく「ひ……っ」と悲鳴を漏らす。

⏰:08/09/04 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#392 [向日葵]
「僕だよ椿」

要の声だった。
もう暗くなってしまった庭園には、彼の姿はあまり見えないけれど、柔らかな声音は彼のものだった。

それでも、椿の震えは治まらない。

「ご……めなさ……。ただ、寒い……だけです……」

寒さなんて感じない。
いや、感じれない。
椿の頭の中は、もう破裂寸前だった。
そんな椿の前に、要は片膝をつく。

彼女の姿は、彼女が要の姿を見えないように見えないが、何かに怯えているのだけは、掴んでいる華奢な手首から伝わってきた。

⏰:08/09/04 02:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#393 [向日葵]
「ちゃんと呼吸出来てる?なんか息が荒いよ?」

「大丈……夫……です……」

「落ち着いて。大丈夫、僕はここにいるから。椿、落ち着くんだ」

促されるように、椿は落ち着こうとする。
何回も深呼吸して、荒い息を穏やかにしようとする。
要は手首から手を移動させ、椿の指先を包むようにして握る。

指先は、驚く程冷たくなっていた。

椿が段々落ち着いてきたらしい。
耳だけで聞く彼女の息遣いがゆっくりになった。

手を握っていない方の手で、そっと彼女の肩に触れれば、また大きくビクリと震えた。

⏰:08/09/04 02:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#394 [向日葵]
彼女が何に怯えているのかは要には分からない。

だがとりあえず、聖史から聞いた事を話す。

「あの人から聞いたよ。椿……君、あの人とキスしたんだってね」

椿は息を吸って止まる。
夢の中の要が目の奥に映し出される。
我慢出来なくて、椿は声を押し殺して涙を流す。

「椿……」

「違うんです……っ、私、すご、く嫌で、逃げたくても逃げれなくて……っ」

望んだんじゃない。
好きな訳でもない。

⏰:08/09/04 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#395 [向日葵]
いやらしい女だなんて思わないで。
嫌いにならないで。

「私はしたくてしたんじゃないんですっ!私はそんな事したくなかったっ!そんな……要さまを裏切るような事……っ」

椿は声を荒げて要に訴える。
それに要は驚いた。
椿の本気の否定。
どんな言葉を受けても、笑顔で堪え、全て受け入れていたあの椿が、自分の過ちを全て否定した。

思いをどうにか聞き入れて欲しくて、声をあげてしまった椿はもう声を押し殺して泣く事が出来なくなった。

嗚咽を漏らし、鼻をすする。

そんな椿の両手を、優しく、しかし強く、要は握りしめ、自分の胸元に持っていく。

⏰:08/09/04 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#396 [向日葵]
「椿、大丈夫だよ……。僕は君を責めたりしない」

椿がこちらを見つめるのが分かる。
多分そこにあるだろうと微かな光に見える椿の目をまっすぐ見つめ、要は続ける。

「僕はちゃんと分かってるから。君がそういう子じゃないって知ってるから。……だから、幻滅なんてしない。嫌いになんか、ならないよ」

要は握っている椿の手に力が入るのを感じた。
椿は目をギュッと瞑ってうつむいた。

「信じれない?それじゃ言うよ。僕は君が好きだ」

椿の手が、ピクリと固まる。
彼女は少し身じろぎする。

⏰:08/09/04 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#397 [向日葵]
「椿が好きだよ。信じてくれないなら信じてくれるまで何度でも言う。好きだから、嫌いになんかならないから。ずっと、そばにいるから……」

椿の中に棲んでいた悪夢の塊が、次々に流れ去っていく。

嘘なんて感じない彼の言葉に、椿は自分から要の胸に飛び込む。

急にやって来た重みに、一瞬ぐらついたが、すぐにその細い体を自分の腕で包む。

椿は腕だけで、彼が自分を好きなのが分かった気がした。
だから椿も伝えたかった。

だから思いきりその胸にしがみついた。





どれくらい時間が経っただろう。

⏰:08/09/04 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#398 [向日葵]
寒さをようやく感じる余裕の出来た椿の肩には、要の上着がかかっている。

2人は座りながら天高く昇っていく三日月を見上げていた。
手は、強く握られたまま……。

「そうだ。君の友達を今から呼ぶ事は出来ないかな?」

唐突に要が言った。
要は椿にかけている上着の内ポケットから携帯を取り出し時間を確認する。

「8時……、かぁ。別に来れない時間でもないし」

「どうして呼ぶのですか?」

「君を僕の代わりに守ってもらう為」

⏰:08/09/04 02:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#399 [向日葵]
「え……」と呟く椿の頬に、要は触れる。
すると椿は小さくびくりとしてしまって、申し訳なさそうにうつむく。

「まだ恐い?」

「……すいません」

「いいよ。それだけ君が嫌がってたって事さ」

要は自分の携帯を椿に差し出す。

椿はそれを黙って受け取る。

「今からあの人に勝利を告げにいく。1人で僕のそばにいるのは心細いだろうから、友達に君のそばにいてもらう。その方がきっといいよ」

⏰:08/09/04 03:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#400 [向日葵]
「電話しろと、言う事でしょうか」

「正解」

椿は携帯を開き、美嘉の家の電話番号を押す。
押してから携帯を耳に当てて呼び出し音を聞きながら、なんとなく要の方を見た。

要は椿の視線に気づくと、柔らかく微笑む。
月明かりに照らされた彼の顔はいつもより素敵に見えた。
だから椿はドキドキ高鳴る胸を抑えねばならなかった。

しばらくして、美嘉が電話に出る。
訳を話せば「すぐ行く!」となんだか張り切っていた。

「自転車でとばして10分ぐらいで着いてみせると意気込んでました」

⏰:08/09/04 03:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#401 [向日葵]
「面白いよね君の友達」

要はクスクス笑いながら立ち上がり、椿を立たせた。

「椿が僕を選んでくれて良かった。自惚れてないと信じていいんだよね?」

椿は決意をかためたように神妙に頷く。
だから要も微笑む。
握っている手をしっかりと握り直す。

「良かった」

握っている手を持ち上げ、 淑女にするようなキスをする。

要の唇を感じれば、椿は息が出来なくなりそうだった。

「リハビリ。徐々に慣れていこうね」

⏰:08/09/04 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#402 [向日葵]
椿を気遣うその目に椿はうっとりとしていた。

母のようになれない。
誰かを傷つけるしかない自分。

そんな自分でも、要は好きだと言ってくれる事が嬉しい。
震えてしまうのは要のせいじゃない。
正直まだ恐い部分はある。

それでも、要が触れていけばいく程、その恐怖心が消えていくような気がした。

キキーッと派手な音が乾いた空気に響く。
どうやら美嘉が到着したらしい。

「行っておいで。玄関前で待っててあげるから」

⏰:08/09/04 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#403 [向日葵]
要に背中を押されて促されるようにして椿は足を進める。
その途中で何度も要の方を振り返る。
彼はいつになく穏やかに微笑んで椿を見つめている。

門までくれば、自転車に跨がった美嘉がいた。

「やっほー椿っ!」

椿は何も言わず美嘉に抱きついた。

「え?椿、どうしたよっ」

椿はただ抱きつきたかった。
よく考えれば、今からあんな事をされたとはいえ、聖史の求婚を断り、傷つけてしまうのだ。

けれどこのむずむすとする幸せをどうする事も出来ず、美嘉にだきつく事で鎮めようとする。

⏰:08/09/05 02:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#404 [向日葵]
「美嘉ちゃん。私……要さまが大好きみたいです……」

しばらくぼんやりとしていた美嘉は、椿を抱き締め返す。

「ノロケならまた後で聞いてあげる。そりゃ耳がタコになっちゃうくらいにねっ。でも椿、良かったね……」

もしかすると美嘉は父よりも椿が幸せになる事を望んでいたのかもしれないと思えば、激励の言葉に胸が切なくなる。

「はい……」

「ま、とりあえず行こう。大好きな要さまが待ってんでしょ」

美嘉はニカッと笑うと自転車を隅に止めて椿と手を繋いで歩き出す。
玄関前には言った通り要が待っていた。

そして要を見れば、浮わついた心を封印して、椿は覚悟を決める。

⏰:08/09/05 02:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#405 [向日葵]
要が開けるドアは、運命の扉のような重いものに感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「話って何か」

応接間にいた聖史は自分のノート型パソコンで仕事をしていた。

要が聖史のそばに進み出る。

「椿は僕を選んだ。君が用意した作戦は失敗だ。僕は椿をそう簡単に見放したりはしない」

聖史のキーボードを打つ手がピタリと止まる。
ため息をついて、していた眼鏡を外すと彼は立ち上がって要と向き合う。

「椿が言った事が全て正しいと?そんなの嘘かもしれないじゃないか」

余裕なのか、なんなのか、聖史は微笑む。
そう言われて要がどんな反応をするか椿は心配だった。

⏰:08/09/05 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#406 [向日葵]
「そんな訳ない」

きっぱりとした口調で要が言った。

「椿は嘘をつくような子じゃない。君はおかしい。好きな子を犠牲にしてまで自分のものにするなんて間違えてる」

聖史は歩いてドア近くまで歩く。
そして手を振り上げたと思うと、近くにあった花瓶を手で払い落とす。
耳障りな音が、応接間に響く。

美嘉はそんな聖史を初めて見るので、驚きを隠せないでいた。

「君には本当に腹が立つよ……」

品定めのように、割れた花瓶の破片を広いあげる。

⏰:08/09/05 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#407 [向日葵]
そしてまたこちらへ歩み寄る。

「君さえいなかったら……椿は僕のものなのに……っ!」

破片が握られた手を、要に降り下ろす。
それは要の胸めがけて真っ直ぐに下ろされていく。

椿が咄嗟に出ていく。
要の前に躍り出た細い椿の腕に、破片が突き刺さる。

「いやぁっ!椿っ!」

美嘉が叫ぶ。

椿の白い服が、段々と赤くなっていく。
絨毯の上に、聖史はポトリと破片を落とした。
要は痛さでよろめく椿を支える。

「全部……全部要くんのせいだ!!君のせいで椿が……っ!」

⏰:08/09/05 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#408 [向日葵]
素早く聖史のそばに進み出た美嘉が、力一杯聖史の横っ面をグーで殴る。

女の子と言えど、突然の攻撃に驚いた聖史は尻餅をついた。

「最低っ!見損なったよ聖史兄ちゃんっ!なんで全部人のせいにしてるの!?何よ要くんのせいって!」

要はグーで殴る女の子を初めて見たので呆気にとられていた。
とりあえず椿の傷の治療をと、メイドの佐々木を呼ぶ。

ただならぬ空気と、椿の負傷に驚いた彼女は、すぐに椿を連れて出て行った。

それを見送った要は、再び部屋の中を見る。

⏰:08/09/05 02:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#409 [向日葵]
「椿を手に入れる為なら何をしてもいいの?椿が嫌がっても、傷ついても、それでも自分のものに出来たら満足だって言うの!?バッカじゃない!?椿の幸せの事なんてひとっつも考えてないじゃないっ!!」

普通ここで自分が怒る筈なのにと、要は冷静に今の状況を分析していた。

聖史はうつむいたまま動かない。
それでも容赦なく美嘉は攻撃する。

「椿が幸せになれない相手なんて美嘉は絶対許さないっ!椿の事考えない相手なんてふさわしくないっ!聖史兄ちゃんはふさわしくないっ!」

聖史の手がピクリと動いたかと思うと、ギュッと絨毯を握る。

⏰:08/09/05 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#410 [向日葵]
>>405

誤]話って何か
正]話って何かな?

⏰:08/09/05 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#411 [向日葵]
「君達に僕の気持ちが分かる筈ない……。いつの間にか婚約して、その相手の要くんこそ椿の事を考えてなさそうだった。どんなに大事に椿を扱っても、常に彼女の心は別の方へ向いていた……」

聖史はギリッと歯噛みする。

「大事に扱っても無駄なら、力づくでと思ったんだ……。それなら手に入るんじゃないかって……」

聖史はふらりと立ち上がる。
ドアの方へ向かう彼の顔を見た要は、眉を寄せた。

彼が泣いていたからだ。

「僕はもう……帰るよ……」

パタンと虚しくドアが閉まる。

⏰:08/09/05 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#412 [向日葵]
椿を思うあまり、狂気の沙汰となった彼は、もしかしたら随分前から心がズタズタに壊れてしまっていたのかもしれない。

彼が壊した、この花瓶のように……。

「……で、君は何を泣いているんだ」

美嘉が肩を震わせて泣いていた。
要に言われて、袖で乱暴に顔を拭う。

「色んな思いが交差してぐちゃぐちゃになったらなんか出てきたのっ!」

「単純だね君は」

「素直って言ってよ!椿にゾッコンなアンタなんかに言われたくないわっ!」

⏰:08/09/05 02:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#413 [向日葵]
要は咳き込む。

ゾッコンて……。

「それにまだ、アンタの事は完璧に認めた訳じゃないんだからねっ!聖史兄ちゃんに言った言葉は自分も含まれていると思いなさいっ!」

そう言われて、椿を思えば、椿の様子が気になった。
自分を庇って負った怪我。
彼は責任を感じていた。
そんな彼に気づいた美嘉は言った。

「早く行きなさいよ。私はここの片付けをしておくから」

「……ありがとう……」

そう告げた直後、ドアをノックされた。

⏰:08/09/05 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#414 [向日葵]
入って来たのは見た事ないメイドだった。
一礼すると背筋を伸ばして話し出す。

「椿お嬢様の事なのですが、担当医が只今いらっしゃって治療中でございます」

「怪我の具合は?」

要が問う。

「あまり大きな傷ではありませんが、深く切れておりまして、縫わなきゃならないと言っております」

要は苦しそうにため息を吐いた。
自分の不注意で椿に怪我をさせてしまった。
しかも彼女は女の子だ。
たとえ見えない場所と言えど、傷跡が残らないといいが……。

⏰:08/09/06 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#415 [向日葵]
結局美嘉と何人かのメイド達とで一緒に部屋の片付けを済ませた要は、帰ると言う美嘉を見送る為、門前まで来た。

自転車に鍵を入れながら美嘉は言う。

「椿怪我してんだから変な事しないでよ」

「あのね、君は何を勘違いしてるか知らないけど僕はそこまで理性の無い人間ではないから」

「君じゃない」

美嘉は自転車に股がる。

「美嘉は美嘉って言うの」

きょとんとしていた要は、やがて美嘉が自分の事を少し認めてくれたのに気づく。

「僕は要」

⏰:08/09/06 02:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#416 [向日葵]
美嘉はニカッと笑うと自転車をこぎだし、後ろを振り向いて要に手を振る。

「じゃ、椿よろしく頼むよーっ!」

夜だと言う事を忘れて美嘉は元気に叫ぶ。
そして猛スピードで帰って行った。

そんな彼女の後ろ姿を楽しそうに微笑みながら要は見送る。

椿といい美嘉といい、相手の事を思いやれるいい子だと素直に思った。

――――――――…………

まるで要状態。

3針縫った傷は痛くはないが見ればフッと意識がとびそうになる。

⏰:08/09/06 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#417 [向日葵]
包帯を巻いてあまり動かさないようにと言われた椿は腕をあまり振らずに歩き、自分の部屋へ向かう。

そういうば美嘉や要は帰ってしまったのだろうか?
そして聖史は、どうなったのだろうか……。

椿は少々重い気分を抱えながら部屋のドアを開けた。

「おかえり」

椿のベッドに要が座っていた。

「要さま……」

「傷は?痛い?」

「痛み止めを飲みましたんで、今は大丈夫です……」

⏰:08/09/06 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#418 [向日葵]
「そう……」

椿は無意識に要の隣に座る。
それに気づいた要は微笑んで、椿の手を柔らかく包み込む。

椿はそれに気づくと要の方を向くが、すぐにうつむいてしまう。
そしてそのまだ慣れない甘い空気に堪えれず、要に訊く。

「聖史さまは……どうなさりましたか……?」

「君の友人……じゃなかった、美嘉が激怒して、こてんぱんにされた後に帰ってしまったよ」

「こてん……ぱん……」

椿はある事に気づく。

「要さま、美嘉ちゃんの名前……」

⏰:08/09/06 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#419 [向日葵]
「うん。読んでもいいって」

その意味が分かった椿は、嬉しそうに笑う。
その笑顔を眩しそうに、でも愛おしそうに要は見つめる。

「ねぇ椿、今度こそいい?」

「え?」

要はポケットから何かを取り出す。
それは数時間前に差し出された、椿がついた婚約指輪だった。

椿は少し戸惑いながらも、恥ずかしそうに小さくコクリと頷く。
要は箱から指輪を取り出して、椿の左手を取る。

細い指に、小さな銀色の椿が光る。
サイズがぴったりなのに驚く。
要はいつ知ったのだろう。

⏰:08/09/06 02:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#420 [向日葵]
それが不思議に思うから、要をじっと見る。

「ん?何?」

「私、サイズ言いましたでしょうか……?」

「佐々木さんに教えてもらったんだよ。君がいつも身につけている装飾品を作っている会社のリストを貰ってね」

それこそいつの間にしたのだろうと思う。
しかしそれよりも、指にはまった未来を約束する銀の輪の方に気がいってしまう。

「僕のは普通なんだ。でも指輪の裏には君と僕のイニシャルが掘ってある」

見せてくれた要は指輪を自分ではめてしまう。

⏰:08/09/06 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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