ギンリョウソウ
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#401 [向日葵]
「面白いよね君の友達」

要はクスクス笑いながら立ち上がり、椿を立たせた。

「椿が僕を選んでくれて良かった。自惚れてないと信じていいんだよね?」

椿は決意をかためたように神妙に頷く。
だから要も微笑む。
握っている手をしっかりと握り直す。

「良かった」

握っている手を持ち上げ、 淑女にするようなキスをする。

要の唇を感じれば、椿は息が出来なくなりそうだった。

「リハビリ。徐々に慣れていこうね」

⏰:08/09/04 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#402 [向日葵]
椿を気遣うその目に椿はうっとりとしていた。

母のようになれない。
誰かを傷つけるしかない自分。

そんな自分でも、要は好きだと言ってくれる事が嬉しい。
震えてしまうのは要のせいじゃない。
正直まだ恐い部分はある。

それでも、要が触れていけばいく程、その恐怖心が消えていくような気がした。

キキーッと派手な音が乾いた空気に響く。
どうやら美嘉が到着したらしい。

「行っておいで。玄関前で待っててあげるから」

⏰:08/09/04 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#403 [向日葵]
要に背中を押されて促されるようにして椿は足を進める。
その途中で何度も要の方を振り返る。
彼はいつになく穏やかに微笑んで椿を見つめている。

門までくれば、自転車に跨がった美嘉がいた。

「やっほー椿っ!」

椿は何も言わず美嘉に抱きついた。

「え?椿、どうしたよっ」

椿はただ抱きつきたかった。
よく考えれば、今からあんな事をされたとはいえ、聖史の求婚を断り、傷つけてしまうのだ。

けれどこのむずむすとする幸せをどうする事も出来ず、美嘉にだきつく事で鎮めようとする。

⏰:08/09/05 02:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#404 [向日葵]
「美嘉ちゃん。私……要さまが大好きみたいです……」

しばらくぼんやりとしていた美嘉は、椿を抱き締め返す。

「ノロケならまた後で聞いてあげる。そりゃ耳がタコになっちゃうくらいにねっ。でも椿、良かったね……」

もしかすると美嘉は父よりも椿が幸せになる事を望んでいたのかもしれないと思えば、激励の言葉に胸が切なくなる。

「はい……」

「ま、とりあえず行こう。大好きな要さまが待ってんでしょ」

美嘉はニカッと笑うと自転車を隅に止めて椿と手を繋いで歩き出す。
玄関前には言った通り要が待っていた。

そして要を見れば、浮わついた心を封印して、椿は覚悟を決める。

⏰:08/09/05 02:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#405 [向日葵]
要が開けるドアは、運命の扉のような重いものに感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「話って何か」

応接間にいた聖史は自分のノート型パソコンで仕事をしていた。

要が聖史のそばに進み出る。

「椿は僕を選んだ。君が用意した作戦は失敗だ。僕は椿をそう簡単に見放したりはしない」

聖史のキーボードを打つ手がピタリと止まる。
ため息をついて、していた眼鏡を外すと彼は立ち上がって要と向き合う。

「椿が言った事が全て正しいと?そんなの嘘かもしれないじゃないか」

余裕なのか、なんなのか、聖史は微笑む。
そう言われて要がどんな反応をするか椿は心配だった。

⏰:08/09/05 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#406 [向日葵]
「そんな訳ない」

きっぱりとした口調で要が言った。

「椿は嘘をつくような子じゃない。君はおかしい。好きな子を犠牲にしてまで自分のものにするなんて間違えてる」

聖史は歩いてドア近くまで歩く。
そして手を振り上げたと思うと、近くにあった花瓶を手で払い落とす。
耳障りな音が、応接間に響く。

美嘉はそんな聖史を初めて見るので、驚きを隠せないでいた。

「君には本当に腹が立つよ……」

品定めのように、割れた花瓶の破片を広いあげる。

⏰:08/09/05 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#407 [向日葵]
そしてまたこちらへ歩み寄る。

「君さえいなかったら……椿は僕のものなのに……っ!」

破片が握られた手を、要に降り下ろす。
それは要の胸めがけて真っ直ぐに下ろされていく。

椿が咄嗟に出ていく。
要の前に躍り出た細い椿の腕に、破片が突き刺さる。

「いやぁっ!椿っ!」

美嘉が叫ぶ。

椿の白い服が、段々と赤くなっていく。
絨毯の上に、聖史はポトリと破片を落とした。
要は痛さでよろめく椿を支える。

「全部……全部要くんのせいだ!!君のせいで椿が……っ!」

⏰:08/09/05 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#408 [向日葵]
素早く聖史のそばに進み出た美嘉が、力一杯聖史の横っ面をグーで殴る。

女の子と言えど、突然の攻撃に驚いた聖史は尻餅をついた。

「最低っ!見損なったよ聖史兄ちゃんっ!なんで全部人のせいにしてるの!?何よ要くんのせいって!」

要はグーで殴る女の子を初めて見たので呆気にとられていた。
とりあえず椿の傷の治療をと、メイドの佐々木を呼ぶ。

ただならぬ空気と、椿の負傷に驚いた彼女は、すぐに椿を連れて出て行った。

それを見送った要は、再び部屋の中を見る。

⏰:08/09/05 02:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#409 [向日葵]
「椿を手に入れる為なら何をしてもいいの?椿が嫌がっても、傷ついても、それでも自分のものに出来たら満足だって言うの!?バッカじゃない!?椿の幸せの事なんてひとっつも考えてないじゃないっ!!」

普通ここで自分が怒る筈なのにと、要は冷静に今の状況を分析していた。

聖史はうつむいたまま動かない。
それでも容赦なく美嘉は攻撃する。

「椿が幸せになれない相手なんて美嘉は絶対許さないっ!椿の事考えない相手なんてふさわしくないっ!聖史兄ちゃんはふさわしくないっ!」

聖史の手がピクリと動いたかと思うと、ギュッと絨毯を握る。

⏰:08/09/05 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#410 [向日葵]
>>405

誤]話って何か
正]話って何かな?

⏰:08/09/05 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#411 [向日葵]
「君達に僕の気持ちが分かる筈ない……。いつの間にか婚約して、その相手の要くんこそ椿の事を考えてなさそうだった。どんなに大事に椿を扱っても、常に彼女の心は別の方へ向いていた……」

聖史はギリッと歯噛みする。

「大事に扱っても無駄なら、力づくでと思ったんだ……。それなら手に入るんじゃないかって……」

聖史はふらりと立ち上がる。
ドアの方へ向かう彼の顔を見た要は、眉を寄せた。

彼が泣いていたからだ。

「僕はもう……帰るよ……」

パタンと虚しくドアが閉まる。

⏰:08/09/05 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#412 [向日葵]
椿を思うあまり、狂気の沙汰となった彼は、もしかしたら随分前から心がズタズタに壊れてしまっていたのかもしれない。

彼が壊した、この花瓶のように……。

「……で、君は何を泣いているんだ」

美嘉が肩を震わせて泣いていた。
要に言われて、袖で乱暴に顔を拭う。

「色んな思いが交差してぐちゃぐちゃになったらなんか出てきたのっ!」

「単純だね君は」

「素直って言ってよ!椿にゾッコンなアンタなんかに言われたくないわっ!」

⏰:08/09/05 02:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#413 [向日葵]
要は咳き込む。

ゾッコンて……。

「それにまだ、アンタの事は完璧に認めた訳じゃないんだからねっ!聖史兄ちゃんに言った言葉は自分も含まれていると思いなさいっ!」

そう言われて、椿を思えば、椿の様子が気になった。
自分を庇って負った怪我。
彼は責任を感じていた。
そんな彼に気づいた美嘉は言った。

「早く行きなさいよ。私はここの片付けをしておくから」

「……ありがとう……」

そう告げた直後、ドアをノックされた。

⏰:08/09/05 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#414 [向日葵]
入って来たのは見た事ないメイドだった。
一礼すると背筋を伸ばして話し出す。

「椿お嬢様の事なのですが、担当医が只今いらっしゃって治療中でございます」

「怪我の具合は?」

要が問う。

「あまり大きな傷ではありませんが、深く切れておりまして、縫わなきゃならないと言っております」

要は苦しそうにため息を吐いた。
自分の不注意で椿に怪我をさせてしまった。
しかも彼女は女の子だ。
たとえ見えない場所と言えど、傷跡が残らないといいが……。

⏰:08/09/06 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#415 [向日葵]
結局美嘉と何人かのメイド達とで一緒に部屋の片付けを済ませた要は、帰ると言う美嘉を見送る為、門前まで来た。

自転車に鍵を入れながら美嘉は言う。

「椿怪我してんだから変な事しないでよ」

「あのね、君は何を勘違いしてるか知らないけど僕はそこまで理性の無い人間ではないから」

「君じゃない」

美嘉は自転車に股がる。

「美嘉は美嘉って言うの」

きょとんとしていた要は、やがて美嘉が自分の事を少し認めてくれたのに気づく。

「僕は要」

⏰:08/09/06 02:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#416 [向日葵]
美嘉はニカッと笑うと自転車をこぎだし、後ろを振り向いて要に手を振る。

「じゃ、椿よろしく頼むよーっ!」

夜だと言う事を忘れて美嘉は元気に叫ぶ。
そして猛スピードで帰って行った。

そんな彼女の後ろ姿を楽しそうに微笑みながら要は見送る。

椿といい美嘉といい、相手の事を思いやれるいい子だと素直に思った。

――――――――…………

まるで要状態。

3針縫った傷は痛くはないが見ればフッと意識がとびそうになる。

⏰:08/09/06 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#417 [向日葵]
包帯を巻いてあまり動かさないようにと言われた椿は腕をあまり振らずに歩き、自分の部屋へ向かう。

そういうば美嘉や要は帰ってしまったのだろうか?
そして聖史は、どうなったのだろうか……。

椿は少々重い気分を抱えながら部屋のドアを開けた。

「おかえり」

椿のベッドに要が座っていた。

「要さま……」

「傷は?痛い?」

「痛み止めを飲みましたんで、今は大丈夫です……」

⏰:08/09/06 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#418 [向日葵]
「そう……」

椿は無意識に要の隣に座る。
それに気づいた要は微笑んで、椿の手を柔らかく包み込む。

椿はそれに気づくと要の方を向くが、すぐにうつむいてしまう。
そしてそのまだ慣れない甘い空気に堪えれず、要に訊く。

「聖史さまは……どうなさりましたか……?」

「君の友人……じゃなかった、美嘉が激怒して、こてんぱんにされた後に帰ってしまったよ」

「こてん……ぱん……」

椿はある事に気づく。

「要さま、美嘉ちゃんの名前……」

⏰:08/09/06 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#419 [向日葵]
「うん。読んでもいいって」

その意味が分かった椿は、嬉しそうに笑う。
その笑顔を眩しそうに、でも愛おしそうに要は見つめる。

「ねぇ椿、今度こそいい?」

「え?」

要はポケットから何かを取り出す。
それは数時間前に差し出された、椿がついた婚約指輪だった。

椿は少し戸惑いながらも、恥ずかしそうに小さくコクリと頷く。
要は箱から指輪を取り出して、椿の左手を取る。

細い指に、小さな銀色の椿が光る。
サイズがぴったりなのに驚く。
要はいつ知ったのだろう。

⏰:08/09/06 02:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#420 [向日葵]
それが不思議に思うから、要をじっと見る。

「ん?何?」

「私、サイズ言いましたでしょうか……?」

「佐々木さんに教えてもらったんだよ。君がいつも身につけている装飾品を作っている会社のリストを貰ってね」

それこそいつの間にしたのだろうと思う。
しかしそれよりも、指にはまった未来を約束する銀の輪の方に気がいってしまう。

「僕のは普通なんだ。でも指輪の裏には君と僕のイニシャルが掘ってある」

見せてくれた要は指輪を自分ではめてしまう。

⏰:08/09/06 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#421 [向日葵]
でもそれで良かった。

「はめて」と言われても、椿はきっと恥ずかしくて出来なかっただろう。

そして気づけば、また椿がどうしたらいいか分からない雰囲気になってしまった。

顔にかかる艶がある長く黒い髪の毛を、要はそっとよける。
うつむいていた椿の顔が少し現れる。
椿はこわごわと視線を上げる。
すると要は笑う。

「なに緊張してるのさ」

「い、いえ……」

徐々に要が近づくのを視界の隅で捕らえる。

⏰:08/09/06 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
どうすればこの空気に溶け込む事が出来るのか分からず、体を硬直させる。
目をギュッとすれば、耳と感触しか頼りがない。

要の大きな掌が、耳元から頬を温かく包み込む。
体の力が、どうしてか少し安心したので少しずつ抜けていく。

「やっぱりまだ触れると恐い?」

心配そうな要の声に、目をゆっくり開けると、彼の方を見る。

心底心配する彼に、胸の中に温かさが広がっていく。

「え、えっと……。今はただ、恥ずかしいだけなんです……」

正直に告げれば、要はアハハと笑った。

⏰:08/09/06 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
「本っ当可愛らしいな君は」

そんな事を言うから恥ずかしくなる。
そんなのを言うなら要だって……。

「素敵……」

「へ?」

うっとりしていた椿はしばらく固まって、やがて真っ赤になりながら口を抑えると要から離れる。

心の中で言うつもりだった言葉が表に出てしまった。
これは最高に恥ずかしい。

要も椿がそんな事を言うだなんて思わないから、椿の顔を包み込んだままのところで手が固まり、ぽけっとしていた。

⏰:08/09/06 03:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
椿は顔を両手で隠して座ったままベッドに突っ伏す。

「ご、ごめんなさいっ……!言うつもりなんて全くなくって、でも言った事は本当でして、いえ、そうじゃなくって、えと……っ」

しどろもどろ。錯乱状態。
今の椿はそんな感じだ。

とりあえず椿が何度も忙しなく謝り続けていると、要は吹き出し、声を上げて笑い出した。

「面白すぎっ!」

立ち上がり、椿の前まで行くと、床に膝をついて椿の頭を撫でる。
「顔を上げなよ」

「む、無理です……っ」

⏰:08/09/06 03:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
「椿……」

優しく名前を呼べば、椿はゆっくりと顔を要に向ける。顔は未だ隠しているが、指の隙間を微かに見えるぐらいに開いて見ている。

なめらかな黒い髪の毛から少し覗いている耳と頬は、これまでにないくらい真っ赤だ。

「真っ赤な顔でも上げてよ。椿の顔見たいからさ」

椿は身を起こして、ちょこんとベッドに座り直す。

「椿の顔、椿色だ」

楽しそうに要が笑うから、椿は両手で頬に手を添え熱を確かめながらも笑った。

要は椿と目線を合わせる。

⏰:08/09/07 02:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
目が合えば、やっぱり照れくさくて2人して笑ってしまう。

そこで初めて、要は椿が自分に対して心からの笑顔を向けてくれたと嬉しくなった。

そして必ず幸せにしてみせると、心に誓う。

⏰:08/09/07 03:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
[第10話]

新幹線に乗った椿、美嘉、要の3人は少し前に起こった出来事を何回も思い出しながらぼんやりとしていた。

「すごかったなぁ……アレ」

美嘉が呟く。
それに椿がこくこくと頷く。

「あんな事、ドラマしかやらないと思ってた」

椿はまたこくこくと頷く。

―――――――――…………

それは4日程前から話は遡る。

[別荘へ行かないか?]

いつものように椿宅へ来た要は、抜糸してだいぶ治った手で椿と手を繋ぎ、庭を散歩していた。

⏰:08/09/07 03:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
椿の腕は、抜糸までもう暫くはかかるが、だいぶ良くなっている。

[別荘ですか?]

[と言っても君の別荘だけどね。僕のはほとんど外国にあるし、前に社長にいつでも使ってくれと言われてたのを思い出したんだ]

椿も両手で足りる程しか行った事はない。
行ってみたいと単純に思うが……。

2人きりだろうか……。

[美嘉でも誘ったらどうかな?この前の1件では、色々と世話になったし]

この前の1件とは、聖史の事だ。
風のたよりに聞けば、彼はドイツの方へ行ったらしい。

⏰:08/09/07 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
もう会う事はないのだろうか……。
それでも今は、距離を置きたいから、ホッとしているのは確かだ。

[で、行く?]

[ハイ、美嘉ちゃんも一緒なら行きます]

[“なら”って何?……椿、僕が君を襲うとでも思ってるの?]

[えぇっ……!?]

要と2人きりは気まずい。
だがそれは恋人同士の空気に慣れてない椿がただ困るだけで、こんな態度では要が気分を害してしまうのではないかと心配していたからだ。

しかし美嘉が来てくれるのならばその空気は幾分か無くなり、自分もいつもみたいに振る舞えるだろうと考えていただけだ。

⏰:08/09/07 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
[私はそんないやらしい考えは……っ]

[いやらしいって、まるで僕がそうみたいじゃないかっ!]

些細なケンカは嫌いだ。
だから椿は余計に混乱する。

[そんな事思った事はないです……っ!要さまは素敵な紳士だと思い……]

ここまで言って、自分が恥ずかしい事を言っている事に気づいた椿は顔を背けて顔を赤らめる。

それには要もなんとなく黙ってしまい、恥ずかしい居心地の悪さを2人して感じる羽目になった。

[……とにかく……]

しばらくして、要が咳払いを軽くすると口を開いた。

⏰:08/09/07 03:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#431 [向日葵]
[行くならば、しっかり用意をしておいてくれ]

そうして美嘉に言えば、2つ返事で行くと言った。
美嘉は越も連れて行こうと言う。

それには椿も賛成だった。

近頃の彼女は、前よりもぼんやりし何より悲しそうだった。
どうやら原因は彼女の大切な人である柴にあるらしかった。

心配した椿と美嘉は、誘ってみると、越も行くと行った。

ここから今日の話になる。

駅についてコンビニでお菓子でも買おうと言っていると、例の彼が越を迎えに来てあっという間に連れ去ってしまったのだ。

⏰:08/09/07 03:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#432 [向日葵]
3人は驚きのあまりそこでしばらく立ち尽くす。
やがて動けるようになっても夢ごごちのようにフワフワしていた。

――――――――…………

「しかし彼女に彼氏がいたんだね」

買った水を飲みながら要が言う。
椿は首を傾げる。

「まだ恋人って訳ではないらしいのです。大切な人とは思ってるらしいですが……」

「まるでアンタ達みたいね」

ポテトチップスの袋をパーティー開けしながら美嘉が言う。

⏰:08/09/07 03:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#433 [向日葵]
「失礼な。僕たちは恋人だし、恋人同士以上に婚約者だ」

要は椿の肩を引き寄せ、前に贈ったお互いの指にはまった指輪を見せる。

「椿、迷惑なら今のうちに断りな」

「まだ言うか君は」

でも椿は美嘉のその言葉が、前と違って本気ではなく、茶化しているだけだと思えば嬉しくて密かに笑う。

窓の外を見れば、過ぎ行く景色が心を躍らせた。
いい天気だし別荘の周りは自然に溢れている。

きっといい思い出になるだろう。

⏰:08/09/07 03:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#434 [向日葵]
―――――――――…………

ついた別荘は2階建ての大きな建物だった。

中は木目調で、自然の暖かさがある造りになっている。

「ねえねえ椿、湖に行こうよ!キラキラ綺麗だよ!」

少し離れた所にあるのだ。

「行っておいで。僕は少し寝るよ」

と要は2階へ続く階段へ行く。
どうやら休みを貰う為、切り詰めて仕事をし疲れているらしかった。

「何かありましたら、電話してくださいね」

手を振りながら要は2階へと姿を消して行った。

⏰:08/09/07 03:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#435 [向日葵]
椿は美嘉と共に湖の近くまで歩いて行く。
周りに紅葉ももうすぐ終わる木が沢山あり、枯れ葉の茶色ささえ、なんだか愛おしく思える。

「椿、昔よくやったよね、これ」

一輪の花を、美嘉がブチリと雑に引っこ抜く。

「花占いですね」

「ちょっとやってみない?」

「でも何について占うんです?」

「私がやりたいのはまた違う花占いなの」

そう言って美嘉は花びらを1枚1枚今度は丁寧に取る。

⏰:08/09/14 01:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#436 [向日葵]
花びらが無くなった花はポイッと可哀想なくらい簡単に捨てられる。

「この頃読んだ漫画であったの。その名も子宝占い」

「子宝占い?」

「まぁ見ててよ」

美嘉は花びら全部を片方の手に乗せ握る。
そして手の甲を上へ向けて指をゆっくりと開く。
何枚か、草びれた花びらが草の上へ落ちていく。

掌をまた上へ向ければ、花びらが2枚ついていた。

「これが、美嘉が将来産む子供の数。2枚だから、美嘉は2人っ」

⏰:08/09/14 02:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#437 [向日葵]
「へぇー……」

美嘉はまたその辺から花を引っこ抜いて椿に差し出す。

「はい椿も」

「あ、はい……」

美嘉と同じようにして、椿は掌を開く。
花びらがまた落ち、掌を見て、椿と美嘉は驚く。

「あ、あれ……?」

美嘉は少しうろたえる。

椿の掌には、花びらは1枚もついていなかったのだ。

椿は掌を見たまま固まる。

「だ、大丈夫!たかが漫画に書いてたネタだし、本当に当たる訳じゃないよっ!」

⏰:08/09/14 02:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#438 [向日葵]
椿は「そうですね」と弱々しく微笑む。

“たかが漫画に書いてた占い”

そう思っていても、自分の弱い体を考えれば、その占いが実は当たっているのではないかと椿は不安だった。

子供は出来ない?
それとも、椿が会えなくなる……?

しかし、美嘉も悪気があったのではないし、楽しませようとさせてくれだと分かるから、気にしないようにする。

せっかく久々の、平和な日常なのだから……。

―――――――――…………

⏰:08/09/14 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#439 [向日葵]
しばらく散歩をした椿と美嘉は、そろそろ帰ろうかと別荘へ帰ってきた。

美嘉はお茶でもしようとお湯を沸かす。
椿は「ならば」と要を起こしに2階へと向かう。

要の部屋前へ来て、寝ているとはいえノックもせずに入るのは失礼だと思い、静かにノックをする。

「要さま……?失礼します……」

そろりとドアを開ければ、爽やかな風が入る。
入って直ぐのベッドには要はいない。

少し歩けば、窓の近くにある椅子に、片足をあげてそれに頬杖するように要が寝ていた。

⏰:08/09/14 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#440 [向日葵]
開け放した窓から入る風が、要の髪と膝に置いている読みかけの本をペラペラとめくる。

ギシギシ軋む床のせいで、要が起きないようにゆっくり近づいた椿は、要を覗き込む。

じっと見つめれば見つめる程、吸い込まれるように椿の顔が近づく。
その時、僅かに笑うように息が漏れる音が聞こえた。

「……そんなに近くで見なくてもいいよ」

「え……?」

目をパチリと開けた要と目が合う。
潤んだ彼の瞳に自分が映っているとぼんやりと思った椿を、笑みを含んだ要の目が見つめ返す。

⏰:08/09/14 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#441 [向日葵]
「君はときどき大胆だね。首に君の髪が当たってこそばいんだけど?」

まだなんだかぼんやりしている椿は目線を下にする。
ボタンを何個か外し、ネクタイを緩めたそのカッターから綺麗な鎖骨と首筋が見える。

それが目に入れば、椿は今自分がどれ程近くにいるかが分かり、飛びのく。

「あっ!ご、ごめんなさ……っ!私っ……」

動揺しすぎて足がからまる。
椿は思いきり床に倒れた。

「ちょ、大丈夫?」

要は椿を抱き起こす。
腕にある怪我を気にしながら優しく。

⏰:08/09/14 02:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#442 [向日葵]
「あの、私、お茶するので起こしに来ただけなんですっ」

顔を真っ赤にして言うものだから、要は笑う。

「分かってるよ。椿がそんな邪な気持ち持ってない事くらい。……ん?なんか手に草がついてるけど?」

要は椿の草がついてる手を持ち上げ、指でつまみ上げる。
ほんの小さな草が掌についていた。

「あぁ……多分美嘉ちゃんと子宝占いをした時」

「子宝占い?」

椿の言葉を遮り、要が声をあげる。

⏰:08/09/14 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#443 [向日葵]
椿はハッと気づいて両手で口を隠す。

「ちがっ、違うんですっ!えと、美嘉ちゃんが、あの……っ!」

こんな密着した状態の時にこんな話は恥ずかしすぎる。
そう思った椿は急いで離れようとする。
すると要が椿の耳元に唇を近づけ、触れるか触れないかの位置で囁く。

「椿……少し気が早いんじゃない……?」

椿の顔は更に赤くなる。
もう涙目だ。

「違うんです……っ!だから……っ!」

「ねぇ何の音ー?」

⏰:08/09/14 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#444 [向日葵]
ノックも無しに美嘉が入ってくる。

咄嗟に離れる事が出来なかった2人はそのまま美嘉の方を見る。
美嘉も2人を見る。

しばらくそのまま固まる。

しかし徐々に美嘉の顔は険しくなっていく。

それもその筈。
今の状態はどう見ても要が椿を襲おうとしているように見えるのだから。

椿は涙目で顔を真っ赤にして要を押し返そうと彼の胸辺りに手を当てているし、彼は彼で椿を抱え、顔を近づけている。
その顔が状況が状況なだけに色っぽくもいやらしく美嘉には見えるのものだから美嘉の顔に険しさが増す。

⏰:08/09/14 02:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#445 [向日葵]
「あ……んた……ねぇ……」

「美嘉、違う。いや、違わないんだけど違う」

要は椿をパッと離し手を突き出して否定をする。
が、そんなのが美嘉に通用する訳もなく、美嘉は目をこれでもかという程つり上げて要を睨む。

「この……万年発情男――――っ!!」

椿は咄嗟にサッと避ける。
美嘉は要に飛びかかり髪を引っ張る。
要が「痛い」と連呼し許しを請うが、「問答無用」と美嘉は要を痛めつける。

その隙に椿は部屋を出ていく。
廊下に出て、要と美嘉の喧騒を聞きながら肺が空になるまで息を吐いた。

⏰:08/09/14 02:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#446 [向日葵]
>>444

誤]見えるのものだから
正]見えるものだから

⏰:08/09/14 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#447 [向日葵]
ドキドキ高鳴る胸がうるさい。
早く静かになってくれと願う。

下におりれば、お茶の用意が大方済んでいた。
あとはお茶うけを用意するぐらいだろうと、食器棚に置いてある高そうな大皿を出して、持ってきていたクッキーやらを並べる。

紅茶が冷めてはいけないと、ティーコーゼをかけ、2人を待つ。

そういえば着いたら連絡して下さいと、佐々木に言われたのを思い出して、椿は携帯を鞄から出す。

電話に出た佐々木は「楽しんで下さいね」と優しく言うと、電話を切った。
椿も携帯を閉じる。

そして気づく。

⏰:08/09/17 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#448 [向日葵]
「どうしたんでしょう……」

2人が一向におりてこない。

もしや大喧嘩になっているのではないかと再び上へ向かう椿。

部屋の前まで来て、ノックしようとすると、中から声が聞こえてきた。

「そんなの自分で訊きなさいよ」

美嘉の声だ。
ノックしようとした手を引っ込めて、思わず立ち聞きしてしまう。

「訊いたら気づいてしまう。僕は気づかれないようにしたい」

「それでも本人が1番と思うのがいいじゃない」

「そういうのは人の気持ちがまず1番だろ」

⏰:08/09/17 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#449 [向日葵]
何の話なのだろう……。

立ち聞きしては失礼だと今気づき、椿はまたノックしようとする。

「椿には絶対バレないようにしてくれよ。大事な事なんだから」

ドアに触れようとする寸前で椿の手は止まる。

バレてはいけない……?私に……?

すると呼び鈴が鳴った。

ビクリとした椿は、今来たかのようにノックをする。

「は、入ります」

ドアを開ければ、要と美嘉はそこにいた。

⏰:08/09/17 00:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#450 [向日葵]
今の話を聞いてしまったせいか、「何?」と訊ねる美嘉の声の調子や、椿を見て口元に笑みをたたえる要が、なんだか白々しく見えてしまう。

そんな自分が嫌だから、椿は笑顔で2人に話かける。

「お茶、冷めてしまいますから……。早く下へ行きましょう」

「あ、そうだった!」

美嘉は慌てて下へと向かう。
その美嘉を、要が呼び止める。

「美嘉」

「心配しなくても分かってんよ」

美嘉は下へと走っていった。

⏰:08/09/17 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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