ギンリョウソウ
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#401 [向日葵]
「面白いよね君の友達」

要はクスクス笑いながら立ち上がり、椿を立たせた。

「椿が僕を選んでくれて良かった。自惚れてないと信じていいんだよね?」

椿は決意をかためたように神妙に頷く。
だから要も微笑む。
握っている手をしっかりと握り直す。

「良かった」

握っている手を持ち上げ、 淑女にするようなキスをする。

要の唇を感じれば、椿は息が出来なくなりそうだった。

「リハビリ。徐々に慣れていこうね」

⏰:08/09/04 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#402 [向日葵]
椿を気遣うその目に椿はうっとりとしていた。

母のようになれない。
誰かを傷つけるしかない自分。

そんな自分でも、要は好きだと言ってくれる事が嬉しい。
震えてしまうのは要のせいじゃない。
正直まだ恐い部分はある。

それでも、要が触れていけばいく程、その恐怖心が消えていくような気がした。

キキーッと派手な音が乾いた空気に響く。
どうやら美嘉が到着したらしい。

「行っておいで。玄関前で待っててあげるから」

⏰:08/09/04 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#403 [向日葵]
要に背中を押されて促されるようにして椿は足を進める。
その途中で何度も要の方を振り返る。
彼はいつになく穏やかに微笑んで椿を見つめている。

門までくれば、自転車に跨がった美嘉がいた。

「やっほー椿っ!」

椿は何も言わず美嘉に抱きついた。

「え?椿、どうしたよっ」

椿はただ抱きつきたかった。
よく考えれば、今からあんな事をされたとはいえ、聖史の求婚を断り、傷つけてしまうのだ。

けれどこのむずむすとする幸せをどうする事も出来ず、美嘉にだきつく事で鎮めようとする。

⏰:08/09/05 02:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#404 [向日葵]
「美嘉ちゃん。私……要さまが大好きみたいです……」

しばらくぼんやりとしていた美嘉は、椿を抱き締め返す。

「ノロケならまた後で聞いてあげる。そりゃ耳がタコになっちゃうくらいにねっ。でも椿、良かったね……」

もしかすると美嘉は父よりも椿が幸せになる事を望んでいたのかもしれないと思えば、激励の言葉に胸が切なくなる。

「はい……」

「ま、とりあえず行こう。大好きな要さまが待ってんでしょ」

美嘉はニカッと笑うと自転車を隅に止めて椿と手を繋いで歩き出す。
玄関前には言った通り要が待っていた。

そして要を見れば、浮わついた心を封印して、椿は覚悟を決める。

⏰:08/09/05 02:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#405 [向日葵]
要が開けるドアは、運命の扉のような重いものに感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「話って何か」

応接間にいた聖史は自分のノート型パソコンで仕事をしていた。

要が聖史のそばに進み出る。

「椿は僕を選んだ。君が用意した作戦は失敗だ。僕は椿をそう簡単に見放したりはしない」

聖史のキーボードを打つ手がピタリと止まる。
ため息をついて、していた眼鏡を外すと彼は立ち上がって要と向き合う。

「椿が言った事が全て正しいと?そんなの嘘かもしれないじゃないか」

余裕なのか、なんなのか、聖史は微笑む。
そう言われて要がどんな反応をするか椿は心配だった。

⏰:08/09/05 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#406 [向日葵]
「そんな訳ない」

きっぱりとした口調で要が言った。

「椿は嘘をつくような子じゃない。君はおかしい。好きな子を犠牲にしてまで自分のものにするなんて間違えてる」

聖史は歩いてドア近くまで歩く。
そして手を振り上げたと思うと、近くにあった花瓶を手で払い落とす。
耳障りな音が、応接間に響く。

美嘉はそんな聖史を初めて見るので、驚きを隠せないでいた。

「君には本当に腹が立つよ……」

品定めのように、割れた花瓶の破片を広いあげる。

⏰:08/09/05 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#407 [向日葵]
そしてまたこちらへ歩み寄る。

「君さえいなかったら……椿は僕のものなのに……っ!」

破片が握られた手を、要に降り下ろす。
それは要の胸めがけて真っ直ぐに下ろされていく。

椿が咄嗟に出ていく。
要の前に躍り出た細い椿の腕に、破片が突き刺さる。

「いやぁっ!椿っ!」

美嘉が叫ぶ。

椿の白い服が、段々と赤くなっていく。
絨毯の上に、聖史はポトリと破片を落とした。
要は痛さでよろめく椿を支える。

「全部……全部要くんのせいだ!!君のせいで椿が……っ!」

⏰:08/09/05 02:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#408 [向日葵]
素早く聖史のそばに進み出た美嘉が、力一杯聖史の横っ面をグーで殴る。

女の子と言えど、突然の攻撃に驚いた聖史は尻餅をついた。

「最低っ!見損なったよ聖史兄ちゃんっ!なんで全部人のせいにしてるの!?何よ要くんのせいって!」

要はグーで殴る女の子を初めて見たので呆気にとられていた。
とりあえず椿の傷の治療をと、メイドの佐々木を呼ぶ。

ただならぬ空気と、椿の負傷に驚いた彼女は、すぐに椿を連れて出て行った。

それを見送った要は、再び部屋の中を見る。

⏰:08/09/05 02:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#409 [向日葵]
「椿を手に入れる為なら何をしてもいいの?椿が嫌がっても、傷ついても、それでも自分のものに出来たら満足だって言うの!?バッカじゃない!?椿の幸せの事なんてひとっつも考えてないじゃないっ!!」

普通ここで自分が怒る筈なのにと、要は冷静に今の状況を分析していた。

聖史はうつむいたまま動かない。
それでも容赦なく美嘉は攻撃する。

「椿が幸せになれない相手なんて美嘉は絶対許さないっ!椿の事考えない相手なんてふさわしくないっ!聖史兄ちゃんはふさわしくないっ!」

聖史の手がピクリと動いたかと思うと、ギュッと絨毯を握る。

⏰:08/09/05 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#410 [向日葵]
>>405

誤]話って何か
正]話って何かな?

⏰:08/09/05 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#411 [向日葵]
「君達に僕の気持ちが分かる筈ない……。いつの間にか婚約して、その相手の要くんこそ椿の事を考えてなさそうだった。どんなに大事に椿を扱っても、常に彼女の心は別の方へ向いていた……」

聖史はギリッと歯噛みする。

「大事に扱っても無駄なら、力づくでと思ったんだ……。それなら手に入るんじゃないかって……」

聖史はふらりと立ち上がる。
ドアの方へ向かう彼の顔を見た要は、眉を寄せた。

彼が泣いていたからだ。

「僕はもう……帰るよ……」

パタンと虚しくドアが閉まる。

⏰:08/09/05 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#412 [向日葵]
椿を思うあまり、狂気の沙汰となった彼は、もしかしたら随分前から心がズタズタに壊れてしまっていたのかもしれない。

彼が壊した、この花瓶のように……。

「……で、君は何を泣いているんだ」

美嘉が肩を震わせて泣いていた。
要に言われて、袖で乱暴に顔を拭う。

「色んな思いが交差してぐちゃぐちゃになったらなんか出てきたのっ!」

「単純だね君は」

「素直って言ってよ!椿にゾッコンなアンタなんかに言われたくないわっ!」

⏰:08/09/05 02:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#413 [向日葵]
要は咳き込む。

ゾッコンて……。

「それにまだ、アンタの事は完璧に認めた訳じゃないんだからねっ!聖史兄ちゃんに言った言葉は自分も含まれていると思いなさいっ!」

そう言われて、椿を思えば、椿の様子が気になった。
自分を庇って負った怪我。
彼は責任を感じていた。
そんな彼に気づいた美嘉は言った。

「早く行きなさいよ。私はここの片付けをしておくから」

「……ありがとう……」

そう告げた直後、ドアをノックされた。

⏰:08/09/05 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#414 [向日葵]
入って来たのは見た事ないメイドだった。
一礼すると背筋を伸ばして話し出す。

「椿お嬢様の事なのですが、担当医が只今いらっしゃって治療中でございます」

「怪我の具合は?」

要が問う。

「あまり大きな傷ではありませんが、深く切れておりまして、縫わなきゃならないと言っております」

要は苦しそうにため息を吐いた。
自分の不注意で椿に怪我をさせてしまった。
しかも彼女は女の子だ。
たとえ見えない場所と言えど、傷跡が残らないといいが……。

⏰:08/09/06 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#415 [向日葵]
結局美嘉と何人かのメイド達とで一緒に部屋の片付けを済ませた要は、帰ると言う美嘉を見送る為、門前まで来た。

自転車に鍵を入れながら美嘉は言う。

「椿怪我してんだから変な事しないでよ」

「あのね、君は何を勘違いしてるか知らないけど僕はそこまで理性の無い人間ではないから」

「君じゃない」

美嘉は自転車に股がる。

「美嘉は美嘉って言うの」

きょとんとしていた要は、やがて美嘉が自分の事を少し認めてくれたのに気づく。

「僕は要」

⏰:08/09/06 02:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#416 [向日葵]
美嘉はニカッと笑うと自転車をこぎだし、後ろを振り向いて要に手を振る。

「じゃ、椿よろしく頼むよーっ!」

夜だと言う事を忘れて美嘉は元気に叫ぶ。
そして猛スピードで帰って行った。

そんな彼女の後ろ姿を楽しそうに微笑みながら要は見送る。

椿といい美嘉といい、相手の事を思いやれるいい子だと素直に思った。

――――――――…………

まるで要状態。

3針縫った傷は痛くはないが見ればフッと意識がとびそうになる。

⏰:08/09/06 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#417 [向日葵]
包帯を巻いてあまり動かさないようにと言われた椿は腕をあまり振らずに歩き、自分の部屋へ向かう。

そういうば美嘉や要は帰ってしまったのだろうか?
そして聖史は、どうなったのだろうか……。

椿は少々重い気分を抱えながら部屋のドアを開けた。

「おかえり」

椿のベッドに要が座っていた。

「要さま……」

「傷は?痛い?」

「痛み止めを飲みましたんで、今は大丈夫です……」

⏰:08/09/06 02:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#418 [向日葵]
「そう……」

椿は無意識に要の隣に座る。
それに気づいた要は微笑んで、椿の手を柔らかく包み込む。

椿はそれに気づくと要の方を向くが、すぐにうつむいてしまう。
そしてそのまだ慣れない甘い空気に堪えれず、要に訊く。

「聖史さまは……どうなさりましたか……?」

「君の友人……じゃなかった、美嘉が激怒して、こてんぱんにされた後に帰ってしまったよ」

「こてん……ぱん……」

椿はある事に気づく。

「要さま、美嘉ちゃんの名前……」

⏰:08/09/06 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#419 [向日葵]
「うん。読んでもいいって」

その意味が分かった椿は、嬉しそうに笑う。
その笑顔を眩しそうに、でも愛おしそうに要は見つめる。

「ねぇ椿、今度こそいい?」

「え?」

要はポケットから何かを取り出す。
それは数時間前に差し出された、椿がついた婚約指輪だった。

椿は少し戸惑いながらも、恥ずかしそうに小さくコクリと頷く。
要は箱から指輪を取り出して、椿の左手を取る。

細い指に、小さな銀色の椿が光る。
サイズがぴったりなのに驚く。
要はいつ知ったのだろう。

⏰:08/09/06 02:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#420 [向日葵]
それが不思議に思うから、要をじっと見る。

「ん?何?」

「私、サイズ言いましたでしょうか……?」

「佐々木さんに教えてもらったんだよ。君がいつも身につけている装飾品を作っている会社のリストを貰ってね」

それこそいつの間にしたのだろうと思う。
しかしそれよりも、指にはまった未来を約束する銀の輪の方に気がいってしまう。

「僕のは普通なんだ。でも指輪の裏には君と僕のイニシャルが掘ってある」

見せてくれた要は指輪を自分ではめてしまう。

⏰:08/09/06 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#421 [向日葵]
でもそれで良かった。

「はめて」と言われても、椿はきっと恥ずかしくて出来なかっただろう。

そして気づけば、また椿がどうしたらいいか分からない雰囲気になってしまった。

顔にかかる艶がある長く黒い髪の毛を、要はそっとよける。
うつむいていた椿の顔が少し現れる。
椿はこわごわと視線を上げる。
すると要は笑う。

「なに緊張してるのさ」

「い、いえ……」

徐々に要が近づくのを視界の隅で捕らえる。

⏰:08/09/06 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
どうすればこの空気に溶け込む事が出来るのか分からず、体を硬直させる。
目をギュッとすれば、耳と感触しか頼りがない。

要の大きな掌が、耳元から頬を温かく包み込む。
体の力が、どうしてか少し安心したので少しずつ抜けていく。

「やっぱりまだ触れると恐い?」

心配そうな要の声に、目をゆっくり開けると、彼の方を見る。

心底心配する彼に、胸の中に温かさが広がっていく。

「え、えっと……。今はただ、恥ずかしいだけなんです……」

正直に告げれば、要はアハハと笑った。

⏰:08/09/06 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
「本っ当可愛らしいな君は」

そんな事を言うから恥ずかしくなる。
そんなのを言うなら要だって……。

「素敵……」

「へ?」

うっとりしていた椿はしばらく固まって、やがて真っ赤になりながら口を抑えると要から離れる。

心の中で言うつもりだった言葉が表に出てしまった。
これは最高に恥ずかしい。

要も椿がそんな事を言うだなんて思わないから、椿の顔を包み込んだままのところで手が固まり、ぽけっとしていた。

⏰:08/09/06 03:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
椿は顔を両手で隠して座ったままベッドに突っ伏す。

「ご、ごめんなさいっ……!言うつもりなんて全くなくって、でも言った事は本当でして、いえ、そうじゃなくって、えと……っ」

しどろもどろ。錯乱状態。
今の椿はそんな感じだ。

とりあえず椿が何度も忙しなく謝り続けていると、要は吹き出し、声を上げて笑い出した。

「面白すぎっ!」

立ち上がり、椿の前まで行くと、床に膝をついて椿の頭を撫でる。
「顔を上げなよ」

「む、無理です……っ」

⏰:08/09/06 03:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
「椿……」

優しく名前を呼べば、椿はゆっくりと顔を要に向ける。顔は未だ隠しているが、指の隙間を微かに見えるぐらいに開いて見ている。

なめらかな黒い髪の毛から少し覗いている耳と頬は、これまでにないくらい真っ赤だ。

「真っ赤な顔でも上げてよ。椿の顔見たいからさ」

椿は身を起こして、ちょこんとベッドに座り直す。

「椿の顔、椿色だ」

楽しそうに要が笑うから、椿は両手で頬に手を添え熱を確かめながらも笑った。

要は椿と目線を合わせる。

⏰:08/09/07 02:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
目が合えば、やっぱり照れくさくて2人して笑ってしまう。

そこで初めて、要は椿が自分に対して心からの笑顔を向けてくれたと嬉しくなった。

そして必ず幸せにしてみせると、心に誓う。

⏰:08/09/07 03:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
[第10話]

新幹線に乗った椿、美嘉、要の3人は少し前に起こった出来事を何回も思い出しながらぼんやりとしていた。

「すごかったなぁ……アレ」

美嘉が呟く。
それに椿がこくこくと頷く。

「あんな事、ドラマしかやらないと思ってた」

椿はまたこくこくと頷く。

―――――――――…………

それは4日程前から話は遡る。

[別荘へ行かないか?]

いつものように椿宅へ来た要は、抜糸してだいぶ治った手で椿と手を繋ぎ、庭を散歩していた。

⏰:08/09/07 03:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
椿の腕は、抜糸までもう暫くはかかるが、だいぶ良くなっている。

[別荘ですか?]

[と言っても君の別荘だけどね。僕のはほとんど外国にあるし、前に社長にいつでも使ってくれと言われてたのを思い出したんだ]

椿も両手で足りる程しか行った事はない。
行ってみたいと単純に思うが……。

2人きりだろうか……。

[美嘉でも誘ったらどうかな?この前の1件では、色々と世話になったし]

この前の1件とは、聖史の事だ。
風のたよりに聞けば、彼はドイツの方へ行ったらしい。

⏰:08/09/07 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
もう会う事はないのだろうか……。
それでも今は、距離を置きたいから、ホッとしているのは確かだ。

[で、行く?]

[ハイ、美嘉ちゃんも一緒なら行きます]

[“なら”って何?……椿、僕が君を襲うとでも思ってるの?]

[えぇっ……!?]

要と2人きりは気まずい。
だがそれは恋人同士の空気に慣れてない椿がただ困るだけで、こんな態度では要が気分を害してしまうのではないかと心配していたからだ。

しかし美嘉が来てくれるのならばその空気は幾分か無くなり、自分もいつもみたいに振る舞えるだろうと考えていただけだ。

⏰:08/09/07 03:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
[私はそんないやらしい考えは……っ]

[いやらしいって、まるで僕がそうみたいじゃないかっ!]

些細なケンカは嫌いだ。
だから椿は余計に混乱する。

[そんな事思った事はないです……っ!要さまは素敵な紳士だと思い……]

ここまで言って、自分が恥ずかしい事を言っている事に気づいた椿は顔を背けて顔を赤らめる。

それには要もなんとなく黙ってしまい、恥ずかしい居心地の悪さを2人して感じる羽目になった。

[……とにかく……]

しばらくして、要が咳払いを軽くすると口を開いた。

⏰:08/09/07 03:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#431 [向日葵]
[行くならば、しっかり用意をしておいてくれ]

そうして美嘉に言えば、2つ返事で行くと言った。
美嘉は越も連れて行こうと言う。

それには椿も賛成だった。

近頃の彼女は、前よりもぼんやりし何より悲しそうだった。
どうやら原因は彼女の大切な人である柴にあるらしかった。

心配した椿と美嘉は、誘ってみると、越も行くと行った。

ここから今日の話になる。

駅についてコンビニでお菓子でも買おうと言っていると、例の彼が越を迎えに来てあっという間に連れ去ってしまったのだ。

⏰:08/09/07 03:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#432 [向日葵]
3人は驚きのあまりそこでしばらく立ち尽くす。
やがて動けるようになっても夢ごごちのようにフワフワしていた。

――――――――…………

「しかし彼女に彼氏がいたんだね」

買った水を飲みながら要が言う。
椿は首を傾げる。

「まだ恋人って訳ではないらしいのです。大切な人とは思ってるらしいですが……」

「まるでアンタ達みたいね」

ポテトチップスの袋をパーティー開けしながら美嘉が言う。

⏰:08/09/07 03:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#433 [向日葵]
「失礼な。僕たちは恋人だし、恋人同士以上に婚約者だ」

要は椿の肩を引き寄せ、前に贈ったお互いの指にはまった指輪を見せる。

「椿、迷惑なら今のうちに断りな」

「まだ言うか君は」

でも椿は美嘉のその言葉が、前と違って本気ではなく、茶化しているだけだと思えば嬉しくて密かに笑う。

窓の外を見れば、過ぎ行く景色が心を躍らせた。
いい天気だし別荘の周りは自然に溢れている。

きっといい思い出になるだろう。

⏰:08/09/07 03:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#434 [向日葵]
―――――――――…………

ついた別荘は2階建ての大きな建物だった。

中は木目調で、自然の暖かさがある造りになっている。

「ねえねえ椿、湖に行こうよ!キラキラ綺麗だよ!」

少し離れた所にあるのだ。

「行っておいで。僕は少し寝るよ」

と要は2階へ続く階段へ行く。
どうやら休みを貰う為、切り詰めて仕事をし疲れているらしかった。

「何かありましたら、電話してくださいね」

手を振りながら要は2階へと姿を消して行った。

⏰:08/09/07 03:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#435 [向日葵]
椿は美嘉と共に湖の近くまで歩いて行く。
周りに紅葉ももうすぐ終わる木が沢山あり、枯れ葉の茶色ささえ、なんだか愛おしく思える。

「椿、昔よくやったよね、これ」

一輪の花を、美嘉がブチリと雑に引っこ抜く。

「花占いですね」

「ちょっとやってみない?」

「でも何について占うんです?」

「私がやりたいのはまた違う花占いなの」

そう言って美嘉は花びらを1枚1枚今度は丁寧に取る。

⏰:08/09/14 01:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#436 [向日葵]
花びらが無くなった花はポイッと可哀想なくらい簡単に捨てられる。

「この頃読んだ漫画であったの。その名も子宝占い」

「子宝占い?」

「まぁ見ててよ」

美嘉は花びら全部を片方の手に乗せ握る。
そして手の甲を上へ向けて指をゆっくりと開く。
何枚か、草びれた花びらが草の上へ落ちていく。

掌をまた上へ向ければ、花びらが2枚ついていた。

「これが、美嘉が将来産む子供の数。2枚だから、美嘉は2人っ」

⏰:08/09/14 02:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#437 [向日葵]
「へぇー……」

美嘉はまたその辺から花を引っこ抜いて椿に差し出す。

「はい椿も」

「あ、はい……」

美嘉と同じようにして、椿は掌を開く。
花びらがまた落ち、掌を見て、椿と美嘉は驚く。

「あ、あれ……?」

美嘉は少しうろたえる。

椿の掌には、花びらは1枚もついていなかったのだ。

椿は掌を見たまま固まる。

「だ、大丈夫!たかが漫画に書いてたネタだし、本当に当たる訳じゃないよっ!」

⏰:08/09/14 02:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#438 [向日葵]
椿は「そうですね」と弱々しく微笑む。

“たかが漫画に書いてた占い”

そう思っていても、自分の弱い体を考えれば、その占いが実は当たっているのではないかと椿は不安だった。

子供は出来ない?
それとも、椿が会えなくなる……?

しかし、美嘉も悪気があったのではないし、楽しませようとさせてくれだと分かるから、気にしないようにする。

せっかく久々の、平和な日常なのだから……。

―――――――――…………

⏰:08/09/14 02:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#439 [向日葵]
しばらく散歩をした椿と美嘉は、そろそろ帰ろうかと別荘へ帰ってきた。

美嘉はお茶でもしようとお湯を沸かす。
椿は「ならば」と要を起こしに2階へと向かう。

要の部屋前へ来て、寝ているとはいえノックもせずに入るのは失礼だと思い、静かにノックをする。

「要さま……?失礼します……」

そろりとドアを開ければ、爽やかな風が入る。
入って直ぐのベッドには要はいない。

少し歩けば、窓の近くにある椅子に、片足をあげてそれに頬杖するように要が寝ていた。

⏰:08/09/14 02:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#440 [向日葵]
開け放した窓から入る風が、要の髪と膝に置いている読みかけの本をペラペラとめくる。

ギシギシ軋む床のせいで、要が起きないようにゆっくり近づいた椿は、要を覗き込む。

じっと見つめれば見つめる程、吸い込まれるように椿の顔が近づく。
その時、僅かに笑うように息が漏れる音が聞こえた。

「……そんなに近くで見なくてもいいよ」

「え……?」

目をパチリと開けた要と目が合う。
潤んだ彼の瞳に自分が映っているとぼんやりと思った椿を、笑みを含んだ要の目が見つめ返す。

⏰:08/09/14 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#441 [向日葵]
「君はときどき大胆だね。首に君の髪が当たってこそばいんだけど?」

まだなんだかぼんやりしている椿は目線を下にする。
ボタンを何個か外し、ネクタイを緩めたそのカッターから綺麗な鎖骨と首筋が見える。

それが目に入れば、椿は今自分がどれ程近くにいるかが分かり、飛びのく。

「あっ!ご、ごめんなさ……っ!私っ……」

動揺しすぎて足がからまる。
椿は思いきり床に倒れた。

「ちょ、大丈夫?」

要は椿を抱き起こす。
腕にある怪我を気にしながら優しく。

⏰:08/09/14 02:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#442 [向日葵]
「あの、私、お茶するので起こしに来ただけなんですっ」

顔を真っ赤にして言うものだから、要は笑う。

「分かってるよ。椿がそんな邪な気持ち持ってない事くらい。……ん?なんか手に草がついてるけど?」

要は椿の草がついてる手を持ち上げ、指でつまみ上げる。
ほんの小さな草が掌についていた。

「あぁ……多分美嘉ちゃんと子宝占いをした時」

「子宝占い?」

椿の言葉を遮り、要が声をあげる。

⏰:08/09/14 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#443 [向日葵]
椿はハッと気づいて両手で口を隠す。

「ちがっ、違うんですっ!えと、美嘉ちゃんが、あの……っ!」

こんな密着した状態の時にこんな話は恥ずかしすぎる。
そう思った椿は急いで離れようとする。
すると要が椿の耳元に唇を近づけ、触れるか触れないかの位置で囁く。

「椿……少し気が早いんじゃない……?」

椿の顔は更に赤くなる。
もう涙目だ。

「違うんです……っ!だから……っ!」

「ねぇ何の音ー?」

⏰:08/09/14 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#444 [向日葵]
ノックも無しに美嘉が入ってくる。

咄嗟に離れる事が出来なかった2人はそのまま美嘉の方を見る。
美嘉も2人を見る。

しばらくそのまま固まる。

しかし徐々に美嘉の顔は険しくなっていく。

それもその筈。
今の状態はどう見ても要が椿を襲おうとしているように見えるのだから。

椿は涙目で顔を真っ赤にして要を押し返そうと彼の胸辺りに手を当てているし、彼は彼で椿を抱え、顔を近づけている。
その顔が状況が状況なだけに色っぽくもいやらしく美嘉には見えるのものだから美嘉の顔に険しさが増す。

⏰:08/09/14 02:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#445 [向日葵]
「あ……んた……ねぇ……」

「美嘉、違う。いや、違わないんだけど違う」

要は椿をパッと離し手を突き出して否定をする。
が、そんなのが美嘉に通用する訳もなく、美嘉は目をこれでもかという程つり上げて要を睨む。

「この……万年発情男――――っ!!」

椿は咄嗟にサッと避ける。
美嘉は要に飛びかかり髪を引っ張る。
要が「痛い」と連呼し許しを請うが、「問答無用」と美嘉は要を痛めつける。

その隙に椿は部屋を出ていく。
廊下に出て、要と美嘉の喧騒を聞きながら肺が空になるまで息を吐いた。

⏰:08/09/14 02:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#446 [向日葵]
>>444

誤]見えるのものだから
正]見えるものだから

⏰:08/09/14 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#447 [向日葵]
ドキドキ高鳴る胸がうるさい。
早く静かになってくれと願う。

下におりれば、お茶の用意が大方済んでいた。
あとはお茶うけを用意するぐらいだろうと、食器棚に置いてある高そうな大皿を出して、持ってきていたクッキーやらを並べる。

紅茶が冷めてはいけないと、ティーコーゼをかけ、2人を待つ。

そういえば着いたら連絡して下さいと、佐々木に言われたのを思い出して、椿は携帯を鞄から出す。

電話に出た佐々木は「楽しんで下さいね」と優しく言うと、電話を切った。
椿も携帯を閉じる。

そして気づく。

⏰:08/09/17 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#448 [向日葵]
「どうしたんでしょう……」

2人が一向におりてこない。

もしや大喧嘩になっているのではないかと再び上へ向かう椿。

部屋の前まで来て、ノックしようとすると、中から声が聞こえてきた。

「そんなの自分で訊きなさいよ」

美嘉の声だ。
ノックしようとした手を引っ込めて、思わず立ち聞きしてしまう。

「訊いたら気づいてしまう。僕は気づかれないようにしたい」

「それでも本人が1番と思うのがいいじゃない」

「そういうのは人の気持ちがまず1番だろ」

⏰:08/09/17 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#449 [向日葵]
何の話なのだろう……。

立ち聞きしては失礼だと今気づき、椿はまたノックしようとする。

「椿には絶対バレないようにしてくれよ。大事な事なんだから」

ドアに触れようとする寸前で椿の手は止まる。

バレてはいけない……?私に……?

すると呼び鈴が鳴った。

ビクリとした椿は、今来たかのようにノックをする。

「は、入ります」

ドアを開ければ、要と美嘉はそこにいた。

⏰:08/09/17 00:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#450 [向日葵]
今の話を聞いてしまったせいか、「何?」と訊ねる美嘉の声の調子や、椿を見て口元に笑みをたたえる要が、なんだか白々しく見えてしまう。

そんな自分が嫌だから、椿は笑顔で2人に話かける。

「お茶、冷めてしまいますから……。早く下へ行きましょう」

「あ、そうだった!」

美嘉は慌てて下へと向かう。
その美嘉を、要が呼び止める。

「美嘉」

「心配しなくても分かってんよ」

美嘉は下へと走っていった。

⏰:08/09/17 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#451 [向日葵]
「……どうか、されたんですか?」

もしかしたら聞けるかもしれない。

期待をこめて、椿は訊いてみる。
しかし要は笑みを浮かべる。

「ちょっとね」

ただそれだけ。
言うと要は下へと向かう。

1人残された椿は、自分には話してくれない要に悲しくなり、肩を落とす。

「美嘉ちゃんには……おっしゃってたのに……」

そう呟いてから、また呼び鈴が鳴った。

⏰:08/09/17 00:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#452 [向日葵]
ハッとした椿は小さく首を横に振って、気を取り直す。

下へ向かい、玄関へと向かう。

「ハイ……。あ……っ!」

「こんにちわ。椿さま」

そこにいたのは、要の従者である大久保だった。
いつもの優しげな笑みを浮かべ、椿に深々お辞儀をする。

「どうなさったんですか?」

「要さまに忘れ物を届けに参りました」

「そうですか……。あ、どうぞ中へ」

「失礼します」と言った大久保は中へと入っていく。

⏰:08/09/17 00:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#453 [向日葵]
「大久保さん、忘れ物とは……?」

「お仕事用の携帯電話と、あとは……ちょっとしたアドバイスを」

意味深に微笑む。
友のように接する事を許されてる彼は、要にとって本当に良き理解者なのだろう。

椿はハッと思い出す。

「大久保さん、この間はありがとうございました」

「この間……?……あぁ、いえ。解決なさいましたか?」

椿は少し顔を赤らめて柔らかく微笑むと、小さく頷いた。
大久保もにっこり笑う。

⏰:08/09/17 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#454 [向日葵]
そして思い出したようにクスクス笑い出す。

「だからですね……」

「え?」

「解決なさったのは、椿さまが悩んでいらっしゃった夜ですよね?」

「その通りですが、それが……何か……?」

大久保はまたクスクス笑い出す。
椿はそのそばで首を傾ける。

「すいません。要さまがあまりに分かりやすい態度だったもので」

「要さま?」

「帰って来た要さまは、それは穏やかな表情をしておりまして、椿さまの事をお訊きしましたら、嬉しそうに微笑んでご婚約の事をお話して下さいました」

⏰:08/09/17 01:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#455 [向日葵]
「あ……」

椿はまた赤くなりうつむく。
椿の手にある指輪の小さな輝きに目を細めながら、大久保は言う。

「要さまを、お願い致しします。椿さま」

その言葉に、責任感を感じた椿は神妙に頷く。

「何をお願いなんだ?」

要が姿を見せる。
大久保は楽しそうに笑う。

「内緒です。僕と椿さまの。ね?」

同意を求められ、慌てて頷く椿に、要は眉を寄せて不機嫌になる。

⏰:08/09/17 01:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#456 [向日葵]
ツカツカ歩いていくと、椿の腕を引っ張り、自分の腕で包む。

その姿に大久保はまた笑う。

「誰も取りはしませんよ要さま」

「取りはしなくてもお気に入りするだろう」

「大事な婚約者さまをそんな玩具扱いされてはなりませんよ」

一方的に要だけが火花を散らす。
しばらくそうして、3人はリビングへと向かった。

お茶を4人で飲んだ後、ふぅと満足のため息をついた美嘉は椿に言った。

「今度は2人で散歩に行ってきたら?後片付けは美嘉がやっとくからさ」

⏰:08/09/19 02:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#457 [向日葵]
「でも……」

「そうか、椿、行こう」

立ち上がった要は椿の腕を楽しそうに引く。
立ち上がるしかない椿は手を繋がれて要に導かれるままに進んでいく。

「あ、あの、要さま……っ、美嘉ちゃんに片付けを押し付けるのはっ」

「本人がいいって言ってるんだ。今は婚約者との時間を楽しみたい」

笑顔でそう言われてはもう何も言えない。

繋いでる手から胸の内へとキュウッとした苦しさが起こる。

⏰:08/09/19 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#458 [向日葵]
美嘉と行った湖とは逆の、林の中へと進んで行った。
歩を進める度、葉がパキパキと割れる。

上を見上げればぽっかり空いた木と木の間から青空が見える。

「いい所だよね、ここ。僕は気に入ったよ」

「私も好きです。一番四季を感じれる場所ですから……」

「そう……。ところで、さっき大久保と何を話してたの?」

椿は瞬きを繰り返す。
要が真っ直ぐに見つめてくる。

要をよろしくと言われ、自分は迷いも何もなく頷いた。
今思えば、躊躇いもなくそうした自分が気恥ずかしかった。

⏰:08/09/19 02:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#459 [向日葵]
椿は唇を少し噛んで赤くなりながらうつむく。
そんな椿に痺れを切らした要は繋いでる手をぐいっと引っ張って顔を近づける。

「言えないの?僕に隠し事するんだ?君は」

明らかに苛立っている。
もしかして散歩に出たのはこうして問い詰める為だったのだろうか?
大久保や美嘉が止めないから要は問い詰め放題だ。

しかし椿は表情にこそ出さなかったがムッとした。

要だって人の事は言えない。

「か……要さまこそ……教えて下さいません……」

ギリギリ聞こえるくらいの小さな声で椿は反抗する。

⏰:08/09/19 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#460 [向日葵]
その言葉に要は怪訝な表情をする。

「僕は何も隠しちゃいないよ」

「……み、美嘉ちゃんと何か話してたじゃないですか……」

「あぁ……。あれ?…………。いいじゃないか。君には関係ない」

関係ない。
そう突き放されて、椿の胸の鋭い痛みが走る。

しかしおかしいと椿は思う。
椿が関係ないのなら何故椿は聞いちゃいけない?

やっぱり隠しているではないか。
そう思うから、更に反発心はつのるばかり。

⏰:08/09/19 02:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#461 [向日葵]
「なら……私と大久保さんの話も、要さまには関係がありません……」

要は眉間に寄せていたシワを更に深くし、目元を険しくさせる。

「なんだそれ……。僕は将来君の夫になるんだ!妻の事を全て知る権利があるっ!」

屁理屈にしか聞こえない。

これには椿もさすがに眉を寄せる。

「夫婦になるのでしたら、平等であるべきだと思います……っ」

「亭主関白と言う言葉が日本古来からあるのを知ってるだろ。それなら平等ではなく、妻は控えめであるべきだ」

⏰:08/09/19 02:31 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#462 [向日葵]
ますます気にいらなくて、椿は怒りながらも悲しそうな目をする。

「要さまは……なんで私と結婚するのですか……」

「え……?」

要は驚く。
椿は繋いでいる手をスルリと離すと、少しずつ後ずさる。

「要さまは私に我慢しなくていいといいました。なのに控えめでいろと……要さまがする事なす事何か気になっても我慢しろと、そういう妻になれとおっしゃるのですか……」

要は苦しげな目をすると、その目を瞑り、深呼吸をする。

「椿……僕はそういうつもりじゃない……。とりあえず冷静に……」

⏰:08/09/19 02:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#463 [向日葵]
「私はどうすればいいんですか……。我慢するなと言われたり我慢しろと言われたり……っ。要さまにとって私が何か、今は分かりません……」

その言葉に、要は表情を消す。
椿はハッとする。
言い過ぎだったと気づく。

「……分かった。勝手にしろ……」

要はそう言うと椿の横を通り過ぎて行った。
椿はどうしてか頭がくらくらする感覚に襲われる。

どうしてこうなるの……?
何を言ってるの私は……。

椿は自分を責める。
その場に座り込んで、長く、苦いため息を吐く。

⏰:08/09/19 02:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#464 [向日葵]
恥ずかしがってないで言えば良かった。
そうしたらこんな喧嘩にならずに済んだのに……。

椿は振り向く。
要の姿はもうない。
今帰るのは気まずいから、もう少し外にいようと椿は決める。

そういえばと思い出した事がある。
この道をもう少し進めば、確か公園がある。

そこで時間を潰せばいい。

椿は林を更に奥へ進んで行った。

――――――――…………

乱暴にドアが閉められる。

⏰:08/09/19 02:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#465 [向日葵]
それに気づいた大久保はリビングから出てくる。
そしてキョトンとした。

「随分お早いですね。それに椿さまは……」

「知らない。そこら辺歩いてるんじゃない?」

「そんな適当な……」

リビングのソファにドカリと座り、足を組んで目を瞑る。

苛立ちを早く抑えて、椿の元へ行ってやらないと。
じゃないと彼女はずっと自分を責めたままだ。
独占欲にかられるせいで彼女にひどい言葉を吐かさせてしまった。

[要さまにとって私が何か、分かりません……]

⏰:08/09/19 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#466 [向日葵]
>>456

誤]お気に入りするだろ
正]お気に入りにするだろ

⏰:08/09/19 02:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#467 [向日葵]
>>460

誤]椿の胸の
正]椿の胸に

⏰:08/09/19 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#468 [向日葵]
「要さま、あまり自分中心な物言いをしてはなりませんよ。椿さまが戸惑ってしまわれます」

「……っなら!椿と秘密なんて作るなっ!」

大久保は困った顔をすると、ため息をついた。

「喧嘩の原因はそれなのですね」

「…………」

「とは言え、私にも責任はあるようですので、要さまにその秘密をお教えします」

大久保は椿と話していた事を洗いざらい話す。
椿の返事を聞いた要は愛おしさでいっぱいになったが、同時に首を傾げた。

⏰:08/09/21 01:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#469 [向日葵]
「それを何故隠すんだ?」

「私が内緒と言ったのでそれを守って下さったのでは?」

それにしては様子がおかしかったような……。

考えていると外が騒がしいのに気づく。
見れば雨が降り始めていた。
空は暗い灰色になり、雨足は段々と強さが増す。

要は血の気がザッと引くのが分かった。
椿がまだ帰ってこないからだ。

要は立ち上がる。
大久保も立ち上がるが、要に制された。

「大久保は美嘉とここにいて。椿が帰ってきても僕を探しに来ないよう引き止めて」

⏰:08/09/21 01:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#470 [向日葵]
「かしこまりました」

「あれ要?椿はどこ?」

ひょいとリビングに顔を出しに来た美嘉が要に訊く。
余計な心配をかけたくないし、今は全てを説明してる暇がない。

「湖を少し眺めたいから1人にしてくれって言われたんだ。急いで迎えに行ってくる」

「えぇっ!?大丈夫なの椿……っ!」

まったくだ。

要は玄関へと駆ける。

―――――――――…………

ぽつりと鼻先に何かが当たったので、雨か?と疑問に感じる前に雨足が増してきた。

⏰:08/09/21 02:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#471 [向日葵]
公園についてブランコに乗っていた椿はそのまま頭を冷やすかのように雨を全身に受ける。

早く帰りたい。

そう思うのに足が進んでくれないのはどうしてだろう……。

⏰:08/09/21 02:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#472 [向日葵]
ひとまずアンカーします

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:08/09/21 02:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#473 [向日葵]
[第11話]

椿はずっと思っていた。

実は不安だと言う事。

こんな自分を求めて、好きだとまで言ってくれた要。

が、しかし、自分はそんな彼に見合う人かが分からない。
自分は何も持っていない。
もっているとしたら、ただただ要が好きだと言う気持ちだけ。

それでも、触れられればどうしていいか分からず、彼が求める対応すら出来ない。

そんな何も出来ない自分が、彼に全てを預けてもいいのだろうか……。

いつかこんな自分を、彼はいらないと、捨ててしまわないだろうか……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さすがにこのままではいけないと思った椿は立ち上がり、元来た道を戻って行く。

⏰:08/09/21 02:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#474 [向日葵]
いや、戻って行ったつもりだったが、ここがどこなのかが分からない。

この場所の別荘は1番好きだが、来た事はあまりない。
前に来たのは5年程前だったか……。

他の別荘にだって行くし、椿の体、学校の事もあり、彼女は外へ出かける事が少ない。

この公園に来たのもほとんど手探り状態だったし、道しるべとしての印をつけるものも何も無かった。
なんとか帰れるだろうと思った自分が甘かった。
木だらけの林では、目印の物は、何1つとして無い。

それでも帰らねばと、椿は足を進める、

⏰:08/09/21 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#475 [向日葵]
>>474

誤]進める、
正]進める。

⏰:08/09/21 02:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#476 [向日葵]
携帯と思って開いて見るも圏外。
使い物にならない。

秋も終わりの冷たい雨は、椿の体温をどんどん奪っていく。

――――――――…………

「椿……」

さっきの場所へと戻って来た要は、その場に椿がいない事に落胆する。

だとすれば本当に湖に?
しかしここからでは湖は遠い。
なら林の中へ?

どちらにしろ動かなければならない事に変わりはない。

イチかバチかで、林の中へと進んで行く。

⏰:08/09/21 02:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#477 [向日葵]
林の中に道はない。
道なき道を進む足取りは迷いを含む。

椿はどちらへ向かっただろうか……。

ハッとして携帯を取り出す。
要のいる場所はちゃんと電波がある。
リダイヤルで椿の電話にかける。が、肝心の椿の方に電波がないらしく、アナウンスが流れる。

文明の利器はこういう時に役立つものじゃないのかと苛立つ。

雨足は霧雨から本格的な粒へと変わってくる。
さっきまで色づいて見えていた山は、灰色に見える。

地面から生えている草木に足を少しひっかけながらも要は進む。

⏰:08/09/27 02:25 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#478 [向日葵]
「椿ー!!」

叫んでみるも、エコーのように辺りに反響する自分の声と、雨の音しか聞こえない。
椿の返事らしきものは聞こえない。

遠くの方へ行ったのだろうか?
それともわざと返事をしない?

どちらにせよ、椿を見つけるのは難しいらしい。

――――――――…………

「ん……?」

振り向くが、自分が来た道しか目に入らない。
目をこらしても無駄に終わる。

椿は首を傾げる。

⏰:08/09/27 02:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#479 [向日葵]
今、要の声が聞こえた気がした。……空耳か。

しかしここはどこなのだろうと椿は意味もなく空を見上げる。
さっき要と来た時のようなホッとする青空は見えない。
広がるのは、濃い灰色だ。

視線を戻し、フゥとため息をつく。
ついた瞬間妙な機械音が鳴り響く。
周りが雨の音以外何もないからよく聞こえる。
驚いた椿はびくりとし、その音が自分のスカートのポケットから鳴っている事に気づいた。

「あ、電池が……」

鳴っていたのは携帯。
どうやら電池が切れたらしい。
これでは電波がたった時に連絡する術がない。

⏰:08/09/27 02:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#480 [向日葵]
急がなければと思いながら椿はブルッと震える。
寒いのだ。

両腕を抱くようにしてさする。
だが濡れてるので結局は同じだったりする。

キュッと唇を結び、また椿は歩き出す。

すると前方に何かが見えてきた。
濡れて邪魔な前髪を避けてよく見れば、美嘉ときた湖ではないか。

「で、出れた……っ」

湖のほとりまでやって来た椿は安堵感に包まれてその場にペタリと座り込む。

「良かったぁ……」

⏰:08/09/27 02:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#481 [向日葵]
雨に濡れる事なんて気にしない。
もう髪の毛から全身にかけてびしょ濡れなのだから。
ふと手に注目した椿は左手に光る指輪を見る。

婚約した証、将来を約束した証。

私はそれだけの価値がある?

気づけば指輪に軽く泥がついている。
指輪を外して、泥をはらう。

大事な大事な椿の形をした指輪。
そういえば、要は自分をギンリョウソウのようだと称していた。

あれはどういう意味なのだろう。

⏰:08/09/29 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#482 [向日葵]
ゴウッと風が吹く。
木々を揺らし、辺りを不気味な雰囲気にする。

恐くなりながら立ち上がった椿は、寒さを感じくしゃみをする。

その時だった。

「あぁ……っ!」

くしゃみをした時、手が滑って持っていた指輪を落としてしまった。
その後また強い風が吹く。
目を瞑り、それに耐えて辺りを見渡す。

…………指輪がない……。

椿は血の気が引くのを感じた。
不自然に息が荒くなり、膝をついて草をかきわける。

⏰:08/09/29 00:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#483 [向日葵]
しかしかきわけても、見えるは土のみ。
銀の輪は見当たらない。

椿は泣きそうになる。
もう1度落とした辺りを探す。

けれど指輪らしい感触も、姿形もない。

椿の焦りは更につのる。
ハッとして、目の前の湖を見る。

もしかして……落ちてしまった……?

そう考えるよりも、体が先に動いて、湖の中へと飛び込む。
冷たさを感じないくらいに冷たいが、今はそうも言ってられなかった。
何より今は指輪を見つけなければ。

⏰:08/09/29 01:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#484 [向日葵]
冷たさを感じないくらい冷たい。天気のせいで湖は波立っているし、見えたもんじゃない。

それでも手探りで探す。

もし見つからなかったら嫌われるかもしれない。
どうしてそんな大事な物を無くせるのかと。
今度こそ自分の前からいなくなってしまうのではないだろうか。

聖史がまだいた頃、何日も会ってくれなかった時の事を思い出す。
そしてやっと会えた日の事も思い出す。

どれだけ……嬉しかっただろうか……。

そう思えば、探す力が強まる。

⏰:08/09/29 01:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#485 [向日葵]
「もう少しあっちも……」

そう思い、足を進めた。

世界が急に、水の中になる。
突然の事に椿は驚き、体の空気を一気に吐き出してしまう。

深みにはまってしまったらしい。浅瀬とは違い足がつかない。
椿は焦って水面に手を伸ばす。
どうにか水面に出れても、服が重くて泳げない。

ゾクリとした。
自分はもしやこのまま……。
考えたくないから、なんとか浮き沈みしながらも息を吸い込む。
しかし限度がある。
酸素が足りない。

力も段々と出なくなってきた。

指輪も見つけれず、要にも謝れないままだ。

⏰:08/09/29 01:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#486 [向日葵]
全てを中途半端なままで、終わる。

要さま……。

「――――……きっ!」

水の中で目を開ける。

要さま?

そう思ってるうちに、自分の体に誰かの腕が巻きつくのが見え、そのままどこかに連れて行かれる。

しばらくすると、水面に顔が出た。
足りないと言わんばかりに息を吸い込み、急な酸素吸入は体に良くなかったらしく咳き込む。

「椿……っ」

そばにいるのは、要だった。
周りをゆっくり見れば、さっきまでいた浅瀬に戻っていた。

⏰:08/09/29 01:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#487 [向日葵]
「要さま……」

抱き締めたままの椿を、要は更にきつく抱き締めた。
力が出ないけれど、その腕に寄りかかり、安心する。

「良かった……早く見つけれて……」

苦しそうに言う要に、椿は心底申し訳ないと思った。
もしあのまま椿にもしもの事があったなら、1番苦しむのは要だっただろう。

「ってか、君は何をしてたんだ。危ないだろ、こんな天気にこんな場所で」

そこで椿はハッとして、要の腕から離れようとするが、要がそれを許さなかった。

⏰:08/09/29 01:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#488 [向日葵]
「なに、どうかした?」

椿の胸が不自然に高鳴る。
要に目を向ければ、真剣な顔で椿を見返してくる。
だから椿は言葉が出てこなかった。

嫌われるかもしれない。
そう思えば思うほど口も動かなくなってきて、小さくパクパクと動かす事しか出来ない。

「椿?」

要が名を呼ぶと、椿の目から涙が溢れる。

「本当に、どうしたの……?」

要は困り果て、椿を抱き締めるしか出来ない。
椿は彼の胸に顔を埋め、覚悟を決めて口を開く。

⏰:08/10/05 00:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#489 [向日葵]
「指輪……」

「指輪?」

「指輪……落とし……」

それを聞いて、要は椿をゆっくりと離してから手をじっと見る。
確かに、今朝まで椿の左手にあった銀色のものが無くなっている。
要は手を無表情で見つめる。
その顔が、怒りだと受け取った椿は、草の上に両手をつき、頭を下げる。

「ごめんなさいっ……!無くすつもりなんてなくって……、もしかしたら湖の中に落としてしまったかもって思ってさっき……っ。ごめんなさいっ!あんな大切なもの、無くしてしまって……ごめんなさい……っ」

⏰:08/10/05 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#490 [向日葵]
要は長いこと黙っていた。
その間、雨と風と、椿は椿自身の鼓動が聞こえた。
そして微かに、要のため息が聞こえた。

「それだけ、なんだね……」

「ごめんなさい」

「本当に腹が立つよ」

一際大きく、椿の胸が高鳴る。
草の上についてる手が震え出す。

「ごめ……なさ……」

謝罪の言葉を口にしようとすると、腕を引かれて要の方へ乗り出す形になった。
要を見れば、目に怒りがこもっていた。

⏰:08/10/05 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#491 [向日葵]
「僕がなんで怒ってるか分かる?」

「指輪を……無くしたから……」

「違う。君が僕をまだちゃんと理解してないからだ」

椿は分からなくて首を少し傾げる。
すると要の表情がほんの少し和らいだ。
彼の手が、冷えてしまった椿の頬を包む。

「僕が大事なのは指輪でもなんでもない。君なんだ。なのに君は、命を落としてしまったかもしれない事をしたんだ」

椿は目を見開く。

「こんな事、二度としないでくれ。僕はさっき、本当に心臓が止まってしまうほど焦ったんだからね」

⏰:08/10/05 00:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
椿は再びポロポロと涙を流す。

要は頬を緩め、親指で彼女の涙を拭ってやる。

「要さま……私でいいんですか……?」

「え?」

「私は……母のようにもなれず、要さまからもらった指輪を無くしてしまうような者です。ですが要さまは、私に沢山いろんなものを下さいます。しかし私は要さまに何1つ返せるものがありません。そんな私で……本当にいいのですか……っ?」

要は最初驚いたように椿を見ていたが、やがて穏やかに微笑むと、椿の髪をかき上げるようにして髪の奥まで指を滑らせ、そのまま引き寄せる。

⏰:08/10/05 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
「椿がそばに、ずっと笑ってそばにいて、僕を好きでいてくれるだけで充分だよ。他に必要なものなんて、何もないんだ……」

それだけ。ただそれだけでいい。
それを聞いて、椿は涙を更に流す。
要の胸元のシャツを握り締めて、しがみつくようにして泣いた。
要はそんな彼女を愛おしそうに抱き締め、なだめるように頭を撫でる。

それなら何もない私にも出来ると椿は思った。
そう思った瞬間、自分がどうしようもなく要が好きだとまた自覚したら、あまい感情が涙となって溢れてきた。

「そろそろ別荘に帰ろう。風邪をひいてしまうよ」

⏰:08/10/05 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
「あ、はい……、いた……っ」

どうしたのかと要が椿を見れば、治りかけていた傷が開いたのか、椿の服の腕の部分にうっすらと血が滲んでいた。

それを見て、要は下唇を噛む。

自分のせいだ……。

椿をふわりと抱き上げ、出来るだけ急ぎ足で別荘へと向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと何事!?」

2人の姿を見るなり、美嘉は驚いた。
しかし事情を聞くよりも2人に拭くものと着替えをと、美嘉と大久保は戸惑いながらタオルを持ってきた。

⏰:08/10/07 00:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#495 [向日葵]
「私、お風呂用意してくるね」

「では私は暖炉を準備して参ります」

椿の別荘には薪で暖める古い暖炉があった。
その準備が整う間、しっかりと水気を取る。

手を使うのを少し難しそうにしている椿を見かねた要は代わりに椿の体を拭いてやる。

「椿、大丈夫?」

「あ、あの、自分で出来ます」

「たまには甘えていいんだよ。お風呂が出来たら君が先に入るといい。あがったら僕が腕の治療をしてあげるから」

こくりと頷いた椿は、ハッとして自分の手を見つめる。

⏰:08/10/07 00:17 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#496 [向日葵]
無くしてしまった。
要は怒らなかったし、嫌いにもならなかった。
むしろ椿が1番大切だとまで言ってくれた。

だけど椿は、初めて好きになった人からの贈り物で、やっと気持ちを重ねた時に貰ったものだから、大切に大切にしておきたかった。

要はああ言ってくれたけれど、椿の心は、あと少し晴れなかった。

その様子に気づいた要は、頭を拭いてやってるついでに椿の目線をグイッと自分の方へ向かせた。

「気にしなくてもいい。気持ちを込めて、また指輪を君に送るから。今は自分の体を心配してくれ」

⏰:08/10/07 00:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#497 [向日葵]
ふわりと椿の瞼にキスを落とす。

椿は恥ずかしそうに口をキュッと結ぶと、素直にゆっくりと頷いた。

「要さま、椿さま、どうぞお部屋へ」

椿を先に部屋に通した大久保は、要を振り返る。

「下手に隠し事をなさいますと、こういう事が起こってしまうと反省いたしましたか?」

大久保の目は真剣だった。
彼は要の友人のような存在。
それは要が決めた事だ。

だから大久保は、さっきまで何が起きていたかを大体予想し、要の心配をすると共に叱っている。

⏰:08/10/07 00:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#498 [向日葵]
もう少し、椿を大切にするようにと。

「……あぁ。もうこりごりだ……」

それを聞いて、大久保はにこりと笑い、要も部屋へと通した。

――――――――…………

その晩、やはりというか、椿が熱を出してしまった。
つきっきりで看病したいと、美嘉に部屋を交代してもらい、要は椿が寝ているベッドの近くに椅子を持ってきて座った。

顔がほのかに紅潮している。
さっき熱を計れば39度近かった。
暑くはないだろうか。

「…………さ……い」

⏰:08/10/07 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#499 [向日葵]
潤み、うつろに開いた目で椿は要を見つめる。

聞き取りにくいし、椿もしゃべるのがキツイだろうと要は少し椿の方へと乗り出す。

「ん?何?」

「ごめん……な……さい。せっかくの、旅行なのに……こんな……」

「椿のせいじゃないよ。大丈夫だから。言ったでしょ?今は自分の体を心配してって」

優しく髪を撫でれば、心地よいのか椿の目はとろんとする。
疲れてるだろうから眠たいのかもしれない。
要は椿の手を怪我に響かないように慎重に握る。

⏰:08/10/07 00:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#500 [向日葵]
「僕はずっとここにいるから、安心して眠るといいよ」

「で……も……」

もう少し乗り出して、椿の額にキスを落とす。

「いいから……」

安心させるように微笑めば、椿はゆっくりと目を瞑った。
しばらくすると穏やかな寝息が聞こえてきたので、要はそこでようやくホッとした。

この頃失態続きだな……。

椅子の背もたれにもたれながらため息をつく。

大久保に怒られてしまうのも無理はない。

⏰:08/10/07 00:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#501 [向日葵]
うなされないか注意深く椿を見た要は、するりと彼女の手を離し部屋を出ていく。

階段を降りた所で、お風呂上がりの美嘉に会った。

「あれ、看病は?」

「用事があるからちょっと外へ出かけてくるよ」

「ちょっと待って。椿なんか元気なさそうだった。……なんで?」

要は眉を寄せる。
言ってしまえば、自分に対する美嘉の信用がまた薄れる。
あんな目に合わせたから、もう2度と椿に近づくなと言われてもおかしくはないだろう。

しかし彼女は椿の友達。
知る権利はある。

⏰:08/10/13 00:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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