ギンリョウソウ
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#440 [向日葵]
開け放した窓から入る風が、要の髪と膝に置いている読みかけの本をペラペラとめくる。

ギシギシ軋む床のせいで、要が起きないようにゆっくり近づいた椿は、要を覗き込む。

じっと見つめれば見つめる程、吸い込まれるように椿の顔が近づく。
その時、僅かに笑うように息が漏れる音が聞こえた。

「……そんなに近くで見なくてもいいよ」

「え……?」

目をパチリと開けた要と目が合う。
潤んだ彼の瞳に自分が映っているとぼんやりと思った椿を、笑みを含んだ要の目が見つめ返す。

⏰:08/09/14 02:22 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#441 [向日葵]
「君はときどき大胆だね。首に君の髪が当たってこそばいんだけど?」

まだなんだかぼんやりしている椿は目線を下にする。
ボタンを何個か外し、ネクタイを緩めたそのカッターから綺麗な鎖骨と首筋が見える。

それが目に入れば、椿は今自分がどれ程近くにいるかが分かり、飛びのく。

「あっ!ご、ごめんなさ……っ!私っ……」

動揺しすぎて足がからまる。
椿は思いきり床に倒れた。

「ちょ、大丈夫?」

要は椿を抱き起こす。
腕にある怪我を気にしながら優しく。

⏰:08/09/14 02:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#442 [向日葵]
「あの、私、お茶するので起こしに来ただけなんですっ」

顔を真っ赤にして言うものだから、要は笑う。

「分かってるよ。椿がそんな邪な気持ち持ってない事くらい。……ん?なんか手に草がついてるけど?」

要は椿の草がついてる手を持ち上げ、指でつまみ上げる。
ほんの小さな草が掌についていた。

「あぁ……多分美嘉ちゃんと子宝占いをした時」

「子宝占い?」

椿の言葉を遮り、要が声をあげる。

⏰:08/09/14 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#443 [向日葵]
椿はハッと気づいて両手で口を隠す。

「ちがっ、違うんですっ!えと、美嘉ちゃんが、あの……っ!」

こんな密着した状態の時にこんな話は恥ずかしすぎる。
そう思った椿は急いで離れようとする。
すると要が椿の耳元に唇を近づけ、触れるか触れないかの位置で囁く。

「椿……少し気が早いんじゃない……?」

椿の顔は更に赤くなる。
もう涙目だ。

「違うんです……っ!だから……っ!」

「ねぇ何の音ー?」

⏰:08/09/14 02:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#444 [向日葵]
ノックも無しに美嘉が入ってくる。

咄嗟に離れる事が出来なかった2人はそのまま美嘉の方を見る。
美嘉も2人を見る。

しばらくそのまま固まる。

しかし徐々に美嘉の顔は険しくなっていく。

それもその筈。
今の状態はどう見ても要が椿を襲おうとしているように見えるのだから。

椿は涙目で顔を真っ赤にして要を押し返そうと彼の胸辺りに手を当てているし、彼は彼で椿を抱え、顔を近づけている。
その顔が状況が状況なだけに色っぽくもいやらしく美嘉には見えるのものだから美嘉の顔に険しさが増す。

⏰:08/09/14 02:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#445 [向日葵]
「あ……んた……ねぇ……」

「美嘉、違う。いや、違わないんだけど違う」

要は椿をパッと離し手を突き出して否定をする。
が、そんなのが美嘉に通用する訳もなく、美嘉は目をこれでもかという程つり上げて要を睨む。

「この……万年発情男――――っ!!」

椿は咄嗟にサッと避ける。
美嘉は要に飛びかかり髪を引っ張る。
要が「痛い」と連呼し許しを請うが、「問答無用」と美嘉は要を痛めつける。

その隙に椿は部屋を出ていく。
廊下に出て、要と美嘉の喧騒を聞きながら肺が空になるまで息を吐いた。

⏰:08/09/14 02:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#446 [向日葵]
>>444

誤]見えるのものだから
正]見えるものだから

⏰:08/09/14 03:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#447 [向日葵]
ドキドキ高鳴る胸がうるさい。
早く静かになってくれと願う。

下におりれば、お茶の用意が大方済んでいた。
あとはお茶うけを用意するぐらいだろうと、食器棚に置いてある高そうな大皿を出して、持ってきていたクッキーやらを並べる。

紅茶が冷めてはいけないと、ティーコーゼをかけ、2人を待つ。

そういえば着いたら連絡して下さいと、佐々木に言われたのを思い出して、椿は携帯を鞄から出す。

電話に出た佐々木は「楽しんで下さいね」と優しく言うと、電話を切った。
椿も携帯を閉じる。

そして気づく。

⏰:08/09/17 00:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#448 [向日葵]
「どうしたんでしょう……」

2人が一向におりてこない。

もしや大喧嘩になっているのではないかと再び上へ向かう椿。

部屋の前まで来て、ノックしようとすると、中から声が聞こえてきた。

「そんなの自分で訊きなさいよ」

美嘉の声だ。
ノックしようとした手を引っ込めて、思わず立ち聞きしてしまう。

「訊いたら気づいてしまう。僕は気づかれないようにしたい」

「それでも本人が1番と思うのがいいじゃない」

「そういうのは人の気持ちがまず1番だろ」

⏰:08/09/17 00:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#449 [向日葵]
何の話なのだろう……。

立ち聞きしては失礼だと今気づき、椿はまたノックしようとする。

「椿には絶対バレないようにしてくれよ。大事な事なんだから」

ドアに触れようとする寸前で椿の手は止まる。

バレてはいけない……?私に……?

すると呼び鈴が鳴った。

ビクリとした椿は、今来たかのようにノックをする。

「は、入ります」

ドアを開ければ、要と美嘉はそこにいた。

⏰:08/09/17 00:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#450 [向日葵]
今の話を聞いてしまったせいか、「何?」と訊ねる美嘉の声の調子や、椿を見て口元に笑みをたたえる要が、なんだか白々しく見えてしまう。

そんな自分が嫌だから、椿は笑顔で2人に話かける。

「お茶、冷めてしまいますから……。早く下へ行きましょう」

「あ、そうだった!」

美嘉は慌てて下へと向かう。
その美嘉を、要が呼び止める。

「美嘉」

「心配しなくても分かってんよ」

美嘉は下へと走っていった。

⏰:08/09/17 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#451 [向日葵]
「……どうか、されたんですか?」

もしかしたら聞けるかもしれない。

期待をこめて、椿は訊いてみる。
しかし要は笑みを浮かべる。

「ちょっとね」

ただそれだけ。
言うと要は下へと向かう。

1人残された椿は、自分には話してくれない要に悲しくなり、肩を落とす。

「美嘉ちゃんには……おっしゃってたのに……」

そう呟いてから、また呼び鈴が鳴った。

⏰:08/09/17 00:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#452 [向日葵]
ハッとした椿は小さく首を横に振って、気を取り直す。

下へ向かい、玄関へと向かう。

「ハイ……。あ……っ!」

「こんにちわ。椿さま」

そこにいたのは、要の従者である大久保だった。
いつもの優しげな笑みを浮かべ、椿に深々お辞儀をする。

「どうなさったんですか?」

「要さまに忘れ物を届けに参りました」

「そうですか……。あ、どうぞ中へ」

「失礼します」と言った大久保は中へと入っていく。

⏰:08/09/17 00:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#453 [向日葵]
「大久保さん、忘れ物とは……?」

「お仕事用の携帯電話と、あとは……ちょっとしたアドバイスを」

意味深に微笑む。
友のように接する事を許されてる彼は、要にとって本当に良き理解者なのだろう。

椿はハッと思い出す。

「大久保さん、この間はありがとうございました」

「この間……?……あぁ、いえ。解決なさいましたか?」

椿は少し顔を赤らめて柔らかく微笑むと、小さく頷いた。
大久保もにっこり笑う。

⏰:08/09/17 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#454 [向日葵]
そして思い出したようにクスクス笑い出す。

「だからですね……」

「え?」

「解決なさったのは、椿さまが悩んでいらっしゃった夜ですよね?」

「その通りですが、それが……何か……?」

大久保はまたクスクス笑い出す。
椿はそのそばで首を傾ける。

「すいません。要さまがあまりに分かりやすい態度だったもので」

「要さま?」

「帰って来た要さまは、それは穏やかな表情をしておりまして、椿さまの事をお訊きしましたら、嬉しそうに微笑んでご婚約の事をお話して下さいました」

⏰:08/09/17 01:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#455 [向日葵]
「あ……」

椿はまた赤くなりうつむく。
椿の手にある指輪の小さな輝きに目を細めながら、大久保は言う。

「要さまを、お願い致しします。椿さま」

その言葉に、責任感を感じた椿は神妙に頷く。

「何をお願いなんだ?」

要が姿を見せる。
大久保は楽しそうに笑う。

「内緒です。僕と椿さまの。ね?」

同意を求められ、慌てて頷く椿に、要は眉を寄せて不機嫌になる。

⏰:08/09/17 01:07 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#456 [向日葵]
ツカツカ歩いていくと、椿の腕を引っ張り、自分の腕で包む。

その姿に大久保はまた笑う。

「誰も取りはしませんよ要さま」

「取りはしなくてもお気に入りするだろう」

「大事な婚約者さまをそんな玩具扱いされてはなりませんよ」

一方的に要だけが火花を散らす。
しばらくそうして、3人はリビングへと向かった。

お茶を4人で飲んだ後、ふぅと満足のため息をついた美嘉は椿に言った。

「今度は2人で散歩に行ってきたら?後片付けは美嘉がやっとくからさ」

⏰:08/09/19 02:04 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#457 [向日葵]
「でも……」

「そうか、椿、行こう」

立ち上がった要は椿の腕を楽しそうに引く。
立ち上がるしかない椿は手を繋がれて要に導かれるままに進んでいく。

「あ、あの、要さま……っ、美嘉ちゃんに片付けを押し付けるのはっ」

「本人がいいって言ってるんだ。今は婚約者との時間を楽しみたい」

笑顔でそう言われてはもう何も言えない。

繋いでる手から胸の内へとキュウッとした苦しさが起こる。

⏰:08/09/19 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#458 [向日葵]
美嘉と行った湖とは逆の、林の中へと進んで行った。
歩を進める度、葉がパキパキと割れる。

上を見上げればぽっかり空いた木と木の間から青空が見える。

「いい所だよね、ここ。僕は気に入ったよ」

「私も好きです。一番四季を感じれる場所ですから……」

「そう……。ところで、さっき大久保と何を話してたの?」

椿は瞬きを繰り返す。
要が真っ直ぐに見つめてくる。

要をよろしくと言われ、自分は迷いも何もなく頷いた。
今思えば、躊躇いもなくそうした自分が気恥ずかしかった。

⏰:08/09/19 02:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#459 [向日葵]
椿は唇を少し噛んで赤くなりながらうつむく。
そんな椿に痺れを切らした要は繋いでる手をぐいっと引っ張って顔を近づける。

「言えないの?僕に隠し事するんだ?君は」

明らかに苛立っている。
もしかして散歩に出たのはこうして問い詰める為だったのだろうか?
大久保や美嘉が止めないから要は問い詰め放題だ。

しかし椿は表情にこそ出さなかったがムッとした。

要だって人の事は言えない。

「か……要さまこそ……教えて下さいません……」

ギリギリ聞こえるくらいの小さな声で椿は反抗する。

⏰:08/09/19 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#460 [向日葵]
その言葉に要は怪訝な表情をする。

「僕は何も隠しちゃいないよ」

「……み、美嘉ちゃんと何か話してたじゃないですか……」

「あぁ……。あれ?…………。いいじゃないか。君には関係ない」

関係ない。
そう突き放されて、椿の胸の鋭い痛みが走る。

しかしおかしいと椿は思う。
椿が関係ないのなら何故椿は聞いちゃいけない?

やっぱり隠しているではないか。
そう思うから、更に反発心はつのるばかり。

⏰:08/09/19 02:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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