ギンリョウソウ
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#90 [向日葵]
「それは……」

「君は、何もかもに素直に従って、満足?」

椿から、笑顔が消える。

本当に、この人の、要の考えている事が分からない。
だから微笑んでいたいのに、簡単に笑顔を無くさせる。

抵抗しても、仕方ない事を何故させる……?

「要さまは……そんな私でも、満足なのでしょう……?」

要と目が合う。
目を合わせたのは、初めてな気がした。

⏰:08/06/30 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#91 [向日葵]
やがて、目に険しさを含ませると、彼は立ち上がった。

「ああそうだった。君が素直に従ってくれれば万々歳だ。忘れていたよ。これからもそうしてくれるとありがたいねっ」

やけくそに言うと、彼は出て行った。
半ば唖然としながら彼が出て行くのを椿は見ていた。

何を怒る事があるのだろう。本当の事な筈なのに……。

……まさか、励まそうとした……?
……そんな訳ない。
だから分かっているでしょう?何度も言ってるじゃない……。

彼が自分を心配する筈がないと……。

⏰:08/06/30 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#92 [向日葵]
******************

廊下を突き進みながら要は胸の奥にたまったモヤモヤにイライラしていた。

自分は彼女をどうしたいか分からなくなっている。
椿が言うように素直に従ってくれていれば彼としては満足なのだ。

それなのに要は、自分の前では無理に笑わないで欲しいと思ってしまったのだ。

いつの間にか出ていた真剣な言葉は、出れば出る程どうにか椿に届いてくれと願っていた。

しかし、彼女との壁はあまりに高く、理解してくれる気配すら感じなかった。

そしてその事にも、要は苛立っているのだ。

⏰:08/06/30 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#93 [向日葵]
自分が言って始めた事だ。
分かってる。

心を貰うのなんて簡単な事。巧みに並べた単語を繋げて口にすればいい。
ただそれだけだ。
だが、椿にそれは通用しないのだ。

嘘の言葉を、いつしか本当の言葉として引き出してしまう雰囲気を椿は持っている。

「……くそ……」

椿の心を乱すつもりが、自分が乱されているみたいで、当分要のイライラはおさまる気配はないようだ。

*******************

午後の部が始まる。

⏰:08/06/30 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#94 [向日葵]
日差しは少しマシになったものの、湿気や気温はマシにはならない。

まだフラフラしているので、美嘉が日陰にいなさいと怒っていたが、椿はサラリと流して今席にいた。

「椿さま」

背後から声がした。
振り向けば、要の従者がいる。

皆が何事かと従者を見るので、気をつかった椿は人があまりいない所へと移動した。

「えと、どうかなさいましたか……?」

「要さまから贈り物でございます」

⏰:08/06/30 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#95 [向日葵]
差し出されたのは、黒い日傘で、上品にレースがついてある綺麗な物だった。

「え、でも……」

「伝言もあります」

「伝言?」

「「すまなかった」とだけ、言っておりました」

椿は目を見開いた。

どうして謝るの……?

「要さまは、今から1週間程イギリスへ向かわれます。何かお伝えする事はありますか?」

渡された日傘に目を落とす。
これだって、要の作戦かもしれない。

⏰:08/06/30 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#96 [向日葵]
けれど、直接伝えてこない不器用な言葉や、ただ返せばいい日傘を買ってきて返す心遣いに、なんとなく胸が温かくなる。

「お気をつけて、とだけ、お伝え願えますか……?」

「かしこまりました」

それだけ言うと、従者は素早く身を翻し行ってしまった。

椿は、貰った日傘を差してみた。
日光に透けたレースを見ると、その柄は小さいけれど椿の形をしていた。

これは作戦?
……それとも。

⏰:08/06/30 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#97 [向日葵]
>>94

×今席にいた
○今席にいる

⏰:08/06/30 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#98 [向日葵]
携帯変えましたが、向日葵です

⏰:08/07/07 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#99 [向日葵]
「椿ー!そんなとこで何やってんのー?」

「あ……いえっ、今戻りますっ」

そう言って椿は美嘉の元へと駆け出した。

椿柄のレースが入った、日傘をさして……。

⏰:08/07/10 21:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
[第3話]

今日は生憎の雨。
どうやら台風が近づいて来ているらしい。
そんなジメジメした空気なのに、椿は広い書庫で探し物をしていた。

体育祭も終わり、今日は代休だ。
ゆっくり休めばいいものの、椿には気になる事があった。

それは、友人である越の家族、“柴”と名乗る男性の事だ。

体育祭で見た彼は、走る為に邪魔なのか、少し長い髪の毛を1つにまとめていた。


それでも椿には見た事がある顔だった。

余計な事だとは分かっている。
でも越に確かめて欲しかったのだった。
もしその人が、自分が知っている人ならば、何の為に越の元にいるのかと……。

⏰:08/07/10 21:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#101 [向日葵]
アルバムをさっきから探して写真とにらめっこするも、彼は写真が嫌いなのか写っているものが見つからない。

「んー……」

越を混乱させたくはないし、これは椿が勝手にやっている事だ。

もう諦めようか……。

椿はそう思い、立ち上がる。

「家宅捜査でもやっているのか?」

振り返れば、要がそこらに散乱しているアルバムを踏まないようにしてこちらに来ている。

「葵さま……。いらっしゃいませ」

椿は深々とお辞儀をしてから「あれ?」と思った。

⏰:08/07/10 21:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#102 [向日葵]
「今日は都内で会合とお聞きしたのですが……」

「何だか知らないけどどこかの重役が予定入ったから中止になったらしいよ。まったく、勝手もいい所だよね」

「で」と要は続ける。

「この騒ぎは何?探し物?」

「あ、ハイ……。友人に柴さまと言う方がいらっしゃいまして、気になる事があったんです……」

それを聞き終えると、要は眉を寄せて難しい顔をした。
椿は首を軽く傾げて、どうしたのかと思う。

「……気になる?」

「あ、ハイ……」

⏰:08/07/10 21:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#103 [向日葵]
「何気になるって」

要は椿に詰め寄る。
椿は目をまんまるくさせてから瞬きを何度か繰り返す。

「え、特には……意味は……」

「婚約者がいると言うのに堂々と浮気する気なの?君は誰のものか分かっているのか?」

そこまで言われ、椿は何故要の機嫌が悪いのかが分かった。
慌てて弁解する。

「そういう事ではありません……っ。恋愛感情って事ではなく、どこかで見た事があるから気になるって意味です」

要は椿をジーッと見つめる。
前のめりに見つめてくるので、徐々に椿の体がのけ反っていく。

「本当に?」

「は、はい……本当です……」

⏰:08/07/10 22:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#104 [向日葵]
「なんだか……返事が曖昧だ……」

それは要のせいだろう。

「そんな事は……」

「無い」と言いかけると、少しずらした足に、散らかしていたアルバムが当たる。
と同時に、のけ反っていた椿の体が更にのけ反った。

「キャッ……!」

「あぶ……っ」

ドスンと大きな音を立てて倒れる。
椿は目をギュッと瞑り、衝撃が来るのを待った。
しかし、いつまでたっても衝撃どころか、痛みすらこない。

⏰:08/07/10 22:12 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#105 [向日葵]
そっと目を開けると、まず天井が見え、そして……。

「ちょっと、大丈夫……?」

要の顔が間近にあった。

そして気づけば、自分の頭が床にぶつけないように、要の大きな掌がかばっていた。

しかし……。
先ほどといい今といい……。
さっきから要と近くで見つめあいすぎではないだろうかと椿は思った。
しかもこの格好だ。
椿の白い頬が赤く染まる。

「ちょ、ちょっと……!こんなお約束な格好になっただけで赤くならないでよ……っ!」

珍しく慌てて要は椿の腕を引っ張って起こす。

⏰:08/07/10 22:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#106 [向日葵]
2人して座り、気まずい雰囲気になる。

要はポリポリと頭をかく。

「椿ってさ……恋とかした事ないの?」

「そういうの、あまり分からなくて……。憧れの人ならいましたけど……」

「ふーん。どんな奴?」

椿は散らばっていた中にあるアルバムを1つ手にした。
パラパラとページをめくり、ある写真を指差す。

「こちらの方です。早乙女聖史さんと言う方で、小さい頃から仲良くしてもらってるんです……」

要は写真を覗き込む。

⏰:08/07/14 00:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#107 [向日葵]
写っているのは、柔らかな雰囲気をまとった10歳くらいの少年が、まだ3歳ほどの小さな椿を抱き締めて微笑んでいるものだった。

「兄のようになついていましたわ……。この頃は、聖史さまが忙しくて、会ってはいませんが……」

憧れと言うわりに、どこかうっっりしてその写真を見る椿に、要はムッとした。

「好きなの?」

また同じ事を言う要に椿は首を傾げる。

「明らかに、憧れって思ってない顔してるよ、椿」

それを言われ、椿の頬はまた赤くなった。
要はさらにムッとする。

⏰:08/07/14 00:24 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#108 [向日葵]
「つまんない……。僕は一旦帰るよ」

「あ、じゃあお見送りを……」

「いい。他の奴にうっとりしてる君に見送られたくなんかないねっ」

ズカズカと進んで行き、乱暴にドアを閉めた。
椿は片目を瞑ってそれをやり過ごす。

そして椿はまた写真に目を落とした。

本当に憧れだ。
物腰が柔らかく、優しく、頭の機転がいい聖史は、椿の良き兄的存在。
久しぶりに会いたいな、などと思えば、こんな自分の浮わついた心が要を不機嫌にさせたのかと少し落ち込む。

⏰:08/07/14 00:30 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#109 [向日葵]
自分は、要を怒らせてばかりだ。

それなのに、要は自分を気遣う一面を見せてくれたりもする。

体育祭の事は例え要の作戦だとしても、さっきのような突然の事態に作戦として素早く助ける事はきっと出来ない。

そんな所が、少しずつ椿の要に対する警戒心を解きつつあるのであった。

――――――――……

おかしい。
と要は帰っている車の中で思っていた。

前にせよ今にせよ、何故か椿にドンドンハマっているのでは?と感じる自分がいる。

⏰:08/07/14 00:35 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#110 [向日葵]
心を開いてくれない彼女にイライラしたり、自分以外の誰かをときめいた目線で見ていれば妬きもちを妬いたり……。

好きに慣れそうにないと思ったのに、彼女の何が自分を惹き付けるのだろうか……。

「大久保」

年若い運転手の従者に声をかける。

「ハイ」

「お前は椿嬢をどう思う?」

「椿さまですか……」

「客観的に見て彼女は可愛い部類なのか?」

モデルを見慣れている彼にはあと1歩椿のどの部分が可愛いのかを見抜けていない。

⏰:08/07/14 00:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#111 [向日葵]
「私は可愛いらしいと思いますよ。儚げで綺麗で……まるで桜のようじゃありませんか」

「フッ……桜か……。僕はギンリョウソウだと思うけどね……」

「ギンリョウソウ……ですか……?」

どうやら従者はギンリョウソウを知らないらしい。
それならそれでいいと、要は腕を組んで目を瞑る。

白く、ひかえめな存在である椿。
彼女こそ、ひっそりと小さく咲くギンリョウソウと称するにあった少女だ。

ただ、ギンリョウソウなどと名前も知られていたい花に例えるのはきっと失礼だろうと要は分かっていた。
それでも、従者が言うような桜などのポピュラーな名前の花は、彼には思いつかないのであった

⏰:08/07/14 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#112 [向日葵]
「要さま。一旦帰ると申しますが、帰ってからはもう外には行かない方がいいかと思われます」

「なんで?」

「天気がこれから雷雨になりますし、風も強まるみたいです。何かあっては大変ですから」

「んー……」

ん?
そう言えば、今日野々垣社長はあの屋敷にはいないのではなかったか?
確か店舗の視察で、先週から関西の方へ行っているとか……。

椿は……大丈夫なのだろうか……。

ハッとして首を振る。

⏰:08/07/14 00:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#113 [向日葵]
>>107

誤]うっっり
正]うっとり

⏰:08/07/14 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#114 [向日葵]
>>110
誤]好きに慣れそう
正]好きになれそう

間違いばかりですいません

⏰:08/07/14 01:01 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#115 [向日葵]
>>111

誤]知られていたい
正]知られていない

本当にすいません

⏰:08/07/14 01:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#116 [向日葵]
どうして椿の心配をしなくちゃならないんだ。
しかも彼女には、他の心配してくれる人が沢山いる。
自分が心配する必要なんてないのだ。

地面に大きな水たまりが出来はじめる。
要を乗せた車は、その水たまりに勢いよくタイヤを沈ませ、酷くならない内に、家へと帰って行った。

―――――――……

「お嬢様、今よろしいですか?」

アルバムをまた元の位置に戻し、自分の部屋に戻ったばかりだった椿は、自らドアを開ける。

立っていたのは、メイドの中でもよく自分を世話してくれる佐々木だった。

⏰:08/07/15 01:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#117 [向日葵]
「どうかなさいました……?」

「それが、旦那さまがこの天気のせいで今日は帰れないとおっしゃってるそうです」

「まぁ……」

椿は窓に目をやる。
さっきよりも雨は勢いを増し、ザーッと耳障りな音が響いている。

「大丈夫でしょうか……」

「椿さまには心配しないようにと伝言を預かっています。ですから大丈夫ですよ」

佐々木はにこりと笑う。
それにつられて、椿も微笑んだ。

「そうですね……。無事に帰ってくるよう待っていましょう……」

⏰:08/07/15 01:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#118 [向日葵]
父だけが私の望みだ、と椿は思う。

母が亡くなってから、まだ幼い椿を必死になって育て、愛してくれたのは父だ。
他の使用人達も、自分の事をよく見てくれたけれど、やはり1番は父だ。

父さえ無事でいてくれるなら、他に何もいらないのだ……。

雨足は強くなる。
多分警報くらいは出ているだろう。

「え?本当に?」

部屋の外から、微かに声が聞こえた。
椿と佐々木はその方へ向く。
廊下の向こうから、メイド2人が現れ、椿に気づくと慌てて頭を下げた。

⏰:08/07/17 23:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#119 [向日葵]
「どうかなさったんですか?」

「ええ実は……」

「や、やめて下さい!」

止めたのは、最近入ってきた新人のメイドだ。
椿とそんなに年は変わらなく、いつかじっくり話してみたいなと椿は思っていた。

そのメイドの様子が、おかしかった。

「何かあったのなら、教えて下さい」

心配そうな椿を見て、若いメイドはうつ向きくちごもる。
代わりに、彼女を指導していた少し年上のメイドが口を開く。

「この子、大久保さんと言うんですが……、大久保さんの実家が、山近くにありまして、どうやらこの雨で、実家近くで土砂崩れがあったそうです」

⏰:08/07/17 23:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#120 [向日葵]
「まぁ!大変!」

佐々木が声を上げる。

椿は窓の外を見る。
さっきまで激しく降っていた雨は、今度は少しおさまったようだった。
こくりと頷いて、大久保に歩み寄った。

「雨が今はマシになっています。大久保さんの実家はどちらですか?」

「車で、1時間程の……」

「今すぐお帰りになって下さい。このままじゃ、更に天気は悪くなります。そして佐々木さん、皆さんに、今日はもう帰るようにお伝えして下さい」

「お嬢様……っ!?」

⏰:08/07/17 23:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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